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思案の外  9
おかしい! 何故長くなる? 予定は未定で決定では無いと知っているが、毎回のように長くなるのが不思議でしょうがない。 うううう。 入学式は・・・・ 天気が良くて良かったです! うん。 



では、どうぞ。















侍医に症状を伝えると微妙な顔をされ、脈などを計ったあと出された薬湯を飲み、そのまま政務室へ向かうと聞き慣れた怒号が鳴り響いているのが解かった。 
走る官吏の姿と柳大臣の姿が見え、夕鈴は思わず書庫へと進路変更をすることにした。

「お妃ちゃん、政務室に顔出さなくていいのかい?」
「う・・・・・柳大臣もいたし、お忙しそうだから邪魔にならないよう、先に書庫の片付けをするわ。 薬湯を飲んだばかりだし、賀祥様のことも落ち着いたことだしね」

久し振りに書庫に入ると、書庫独特の香りに包まれ、何故か泣きたくなるほど安堵する。
その書庫に居た水月さんが穏やかな笑みを浮かべて拱手して来たと同時に驚いた顔になり 「お妃様、お加減が悪そうですね」 と眉を顰められ、夕鈴はそっと団扇で顔を隠しながら首を傾げて笑みを返した。

「風邪のようなので医局で薬湯を飲んで参りました。 でもたいした事はないので、お構いなく。 こちらが少し気になりましたので、後宮に戻る前に書庫の片付けをと思ったのですが、今、お邪魔でしょうか?」
「いいえ、私は書簡を取りに参っただけで御座います。 お妃様のお手を煩わせてしまいますが、どうぞよろしくお願い致します」

そのキラキラした笑みに昨夜思い出した紅珠が重なる。 
後宮に憧れ、陛下に恋し、そしてトラウマになるほど恐れた紅珠。 わたしが橋から落ちなければ、あんな風に酷く怒鳴られることもなく、紅珠は今でも陛下を恋い慕っていたことだろう。 
琴の音色を褒めに来た陛下が彼女の横に立たれた時は、なんてお似合いなのだろうと驚いて、小さく胸が痛んだことを思い出す。

「お妃様、やはりお顔の色が悪いように見受けられます。 片付けは次回にされて、お戻りになった方が宜しいかと存知ますが」
「あ・・・・。 では少しだけさせて頂き、直ぐに戻ることにしますね」

呆けている場合じゃないと、急ぎ小冊や書簡を片付け始めると心配げな視線を残して退室した水月と入れ違いに方淵が姿を見せ、少し憔悴して見える顔でいきなり睨み付けて来た。 
いつもの台詞が飛んで来るかと身構えていると、方淵が口を開こうとする直前に桐さんが官吏姿で書庫に顔を出し、わたしに拱手すると恭しく声を掛けてくる。

「お妃様、陛下より至急執務室へお越し下さいとの伝言を受け賜りまして御座います」
「陛下がですか? あら、先程政務室にて御話をされていたように思ったのですが・・・・。 そうですか、判りました。 では、直ぐに伺います」

陛下からの呼び出しとあって、方淵は苦々しげに妃を睨むに止めたようだ。 もちろん、わたしも冷ややかな妃スマイルを浮かべたまま、いつでも受けて立つわよ! という視線を投げ掛けておいた。 書庫を出るとすぐに浩大が桐に 「賀祥の件で何かあんのか?」 と訊ねる。

「いや、実は陛下ではなく、李順殿よりお妃を執務室に連れて来て欲しいと伝えられた。 まさか側近が妃を呼び付けるなど口には出せないから陛下の名を出したが、柳方淵がいたとはな。 まだ柳大臣と陛下は政務室で話し合いの最中のはず。 陛下が執務室に足を運ばれる前に早く李順殿に会ってくれ」
「そうね、陛下は理由をつけて柳大臣から逃げようとするかも知れないし、李順さんからの話の内容も気になるし。 直ぐに行きます!」

背を正して執務室に入ると李順さんが早速呼び出した訳を話し出した。

「賀祥の一件は聞いておりますか?」
「あ、はい。 先程・・・・・ 伺いました」
「夕鈴殿はすでに賀祥の兄にも会っているそうですね。 と、言うことですので、彼への試しは全て必要がなくなりました」

多少もやもやはするが、上司に必要ないと言われればそれは終了だ。 

「李順さん、それを伝えたくて執務室にわたしを呼び出したのですか? それなら桐さんに、そう言付けをされたら良かったですのに・・・・・」
「勿論、それだけではありませんよ。 賀祥の見合い相手にと用意されていた貴族の手の者が、数回王宮に入り込んでいることが判りました。 この間、四阿で騒動があったそうですが、それもそうです。 その貴族に不審な点があり調べていたのですが、賀祥の兄までもが王宮に来たために、更に動きが活発化されると思います」

賀祥さんが兄様のために王都に薬を取りに来たとは思わなかったのだろう疑惑の貴族は、王宮内部にまで偵察のための間諜を送り込み、調べていたという訳か。 
捕まった間諜や偵察に入り込んでいる輩は、見合いのために豪商貴族の婿として賀祥さんを調べていたのではなく、国境警備隊副隊長の彼の動きを捜査していたのだろうと、陛下から少しだけ話しを聞いている。
しかし、それ以上はバイトが関わるべきことではないだろう。 
境界線の向こうの話なので、口を挟まずに夕鈴は李順の話を黙って聞いていたが、ふと顔を上げると李順は薄い笑みを浮かべてわたしを注視している。 
嫌な予感がじわりと背を這い上がる気がした。 
しかし、それはバイト妃の仕事の一環であり、求められている以上仕事として割り切らないといけない。 もし危険なことがあれば浩大らが助けに来てくれるし、危険手当てが出るだろうから文句も言えない。 いや、文句を言える立場でもない。
夕鈴はこくんと唾を飲み込むと、口を開いた。

「・・・・どのようにして囮になりましょうか」
「察しが宜しいですね。 まあ、陛下唯一の妃が賀祥の部屋に赴くだけでも相手側は焦るでしょうから、夕鈴殿は妃として部屋へ行って下さい。 陛下に知られると煩いでしょうから、今の内に行って頂けると助かります」
「・・・・部屋に行くだけでいいのですか? 何か伝えることなどは」
「余計なことはせずに、部屋へ行くだけで充分です」

それ以上は何も言えず、バイト妃は賀祥の部屋へと向かうことになった。 
侍官姿の浩大が 「兄からも献上品が届いたんだろうな」 と呟いたので、道理で簡単に使われる訳かと乾いた笑いが零れる。 しかし、部屋に行くだけで本当に 『囮』 になるのだろうか。







「御兄弟で御歓談中とは存知ますが、失礼を致します。 先程はきちんと御挨拶も出来ず申し訳御座いませんでした。 改めまして、わたしは夕鈴と申します」

突然部屋に訪れたが、わたしの存在にすっかり慣れたのか、侍官姿の浩大を連れて行った為か、賀祥さんは穏やかな顔で出迎えてくれた。 先ほど会ったばかりの兄様もそんな賀祥さんの様子に驚いているようで、わたしに笑みを浮かべて微笑んでくれる。

「お妃様の御教授がとても良かったのでしょうね。 ・・・・・祥が女性に対してこのような態度を取れるなど、今まで想像もつきませんでした。 深く感謝申し上げます」

再び頭を下げられ、夕鈴はいいえと首を振った。

「賀祥様が努力なさった結果ですわ。 わたしはその手助けをさせて頂いただけで御座います」

柔らかく微笑み完璧なプロ妃を演じるわたしに少し動揺が戻った賀祥さんは、視線を逸らしながら訊ねて来た。 「何か話しがあるのか」 と。 
間諜が賀祥さんを調べに王宮に忍び込んでいると、その為に囮として自分が来たのだと、それを伝えていいものなのかまでは李順さんから聞いていなかったわたしは考え込んでしまった。 ただ李順さんに部屋に行くように言われたが、このまま直ぐに部屋から出てしまっては 『囮』 として役に立たないのではないだろうか。 せめて半刻くらいは時間を稼がなくては駄目だろう。
縋るように浩大を振り返ると、恭しく拱手して、代わりに賀祥の問いに答えてくれた。

「ここまで関わったお妃様は、賀家の行く末をご心配されております。 御兄弟でどのような話し合いをされるのか先行きを御懸念され、足を運ばれました」
「そうでしたか。 お妃様にそのような御憂慮をさせてしまい、大変申し訳御座いません。 今、兄上と話し合っていたところではありますが、まずは私も兄と共に父へと進言し、兄上の大事な方と御子を御認め頂けるよう説得してみることと致します」 

申し訳なさそうに拱手した賀祥が兄と視線を合わせて、大きく頷いている。

「そうですわね。 きっと御父君も解かって下さると信じて頑張って下さいませ」
「ありがとう御座います、お妃様」

兄弟で訴えれば父親だって人間だ。 孫可愛さに動くかも知れない。 
まずは歩み寄りと話合いが必要だろう。 押して駄目なら引くという手もある。 
それは一介の下っ端妃が言うことではないだろうから我慢することにして、わたしはお茶を淹れることにした。 

「お二人が頑張れますように、御茶に祈りを込めますね!」

賀祥さんの兄様がすごく驚いた顔を見せて慌てて立ち上がろうとしたけど、それを制して、させて下さいと二人のために御茶を淹れた。 これからの話し合いが上手くいって兄様の奥様と御子が認められますように、賀祥さんがお好きな方と幸せになれますようにと心から祈りを込めて。 ちらりと浩大を見ると小さく頷いていたので嬉しくなり、わたしはお茶を飲みながら兄様の奥様との出会いを聞いた。

 
豪商である賀家に出入りしている商売人の娘だった彼女と幾度か顔を合わせる内に少しずつ話す機会が増え、増えると同時に彼女から目が離せなくなった。 次に彼女が来る日が待ち遠しくなり、会えば離れがたくなり、そしてそれは彼女も同じだと気付いた。 
彼女が愛おしく、父に結婚の相談をしたが一笑され、直ぐに他家の女性との縁談を勧められることになり、驚愕したと当時を振り返った兄様は悲しげな笑みを浮かべた。
もちろん嫌だと抗ったのだが、賀家長子としての責を問われ、次男であった祥は当時まだ幼く武科挙の試験の為に日々勤しんでいたのを知っており、逃げ場をなくた自分は彼女に伝えた。
『君とは添えない』 のだと。 賀家の長子として君とは一緒になれないのだと。
身分の違いは判っていましたと微笑みながら離れて行った彼女がどうしても忘れられず、自分の式が近付くにつれ居ても立っても居られずに行方が判らなくなった彼女を探すと、妊娠していることが判った。 更に逃げようとする彼女を追い、自分の気持ちをこれ以上欺けないと気付き、そして彼女に誓った。 
他の誰とも子は作らない、これからも君が認められるよう誠心誠意努めると誓ったのだ。
自分が求めるとは君だけだと、添い遂げたいのは君だけだと伝え、そのための努力をし続けると彼女に約束をした。 その時の彼女の涙を胸に、父を説得する何かいい方法はないかと模索し続けていたと溜息を漏らす。

「まさか父がその後、嫁を幾人も用意するとは思わず、そこで身体の弱いフリをしたのですが・・・・。 落胆した父が弟に見合い話を振るとは思ってもいませんでした。 嫁達が祥に伽を求めているのは知っていましたが、祥が女嫌いなのを知っていた為、悪いとは思いながら放置していました。 祥、本当に悪かったな」
「いえ、兄上のお気持ちを知らずにいた私も悪いのです。 薬でどうにかなる問題ではなかったのですね。 これからは二人で協力し父を説得しましょう。 私も甥に早く会いたく存じます」

二人の柔和な笑顔を見て、心から安堵出来た。 
この二人なら大丈夫だろうと思えたわたしは、丁寧に挨拶をして部屋から退室した。 


回廊を歩き出すと途端に浩大が緊張した面持ちでわたしの前に立ち、先を先導し始めたから、李順さんの狙い通りに動きがあったのだと判る。 表情は穏やかなまま歩き進め執務室に入ると、直ぐに浩大が衣装を脱ぎ捨て窓から移動を始めた。
李順に 「素早い動きでオレも大変っすよ~」 とのんびりした言葉を残しながら消えて行くから、本当に大変なのか疑いそうになる。 

「侍女は賀祥の兄が来た時に後宮へと帰らせたそうですね。 浩大も出て行きましたので、用心のため浩大か桐が戻るまで、夕鈴殿は此処でこの冊子をお読みになっていて下さい。 あとで質問をしますから、しっかり読んでおくように。 いいですね?」
「・・・・・はい」

流石李順さん、抜かりなし。 
言った通りに早速動きはあったし、戻って来たわたしの為にお妃教育冊子を用意しているし、本当に悔しいほど有能な側近だ。 
そして執務室に残されたわたしは、独り寂しく勉強を開始することになった。








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:30:09 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
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2013-04-11 木 09:01:50 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。 私も李順さん好きー! コミックではおまけの四コマで陛下と自然を満喫している様子が莫迦受けでした! 長くなりそうですが、嬉しいコメントに感謝です。 まとまりがへたくそなので、いつも苦労する私ですがもう少し御付き合い下さいませ。
2013-04-11 木 16:18:15 | URL | あお [編集]
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2013-04-11 木 20:44:15 | | [編集]
男性だらけ!?
囮のためとはいえ、男性が居る部屋に入る夕鈴…
陛下に知られたら、刺客よりも大変な目にあいますよ?夕鈴(笑)

一人でお勉強も辛いですけど、後々役に立つはずです!正妃になった時とかに\(^o^)/
2013-04-11 木 21:02:27 | URL | ダブルS [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。 気付けば、あらあら、結構人が出ているわ~と他人事みたいに思っていたりして。 そろそろ纏めなきゃと思いながらも、ながーくなってしまう。 もう少しだけ御付き合い下さいませ。
2013-04-12 金 00:42:02 | URL | あお [編集]
Re: 男性だらけ!?
ダブルS様、コメありがとう御座います。 そうなんですよね。男性の部屋だからな~、浩大よりもやっぱり侍女・・・・。 と思ったのですが、敢えて突っ込んじゃいました。 勿論、まだ陛下は知らないことに。 次は陛下に翻弄される夕鈴を出したいなと思っております。それも可哀想か?
2013-04-12 金 00:43:48 | URL | あお [編集]
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