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思案の外  11
 また風邪をひいちゃいました。 季節の変わり目、きっと布団を蹴飛ばしているのかな。 
皆様もお気をつけ下さいませね。胃が痛いのに食欲低下が全く見られず、体重が減らない。
何故だろう(笑)



では、どうぞ。 
















目覚めると鈍い頭重感が襲って来た。 これもいつもと同じ。 ぽっかりと何かが抜け落ちたような気持ちで目覚めたが、直ぐに気持ちを取り直した。 今日は賀祥さんたちが西方へ戻る日。 
プロ妃としてちゃんと演技をして、お見送りくらいはきちんとしないと。

「お妃様、昨夜はお戻りと共に寝てしまわれて、お食事を御摂りになっておりません。 朝餉はしっかりとお召し上がり下さいませ。 ・・・・頭痛の方は如何でしょうか」
「薬湯も御用意しております。 粥も幾種か用意して御座いますので」
「いつもありがとう御座います。 そう言えばお腹がとても空いてます。 眠気が強くて忘れていましたが、これで少しは余計なお肉が減るといいのですが」

そう言って腰周りを擦りながら笑うと、侍女さんが悲しげな顔を見せて項垂れてしまった。 
思っても見なかった反応に 「ええっ?」 と、焦ったわたしが驚いた顔を向けると侍女さん達が 「陛下に片腕で持ち上げられておりますのに、これ以上お痩せになられたら・・・」 と真面目に心配してくれたのが判り、申し訳なくなってしまう。

「ちゃんと・・・・ 食べて、これ以上体力が落ちないようにしますね」

ちゃんと向き直ってそう告げると、侍女はほっとした顔で微笑んでくれた。
抱き上げられているところを普段どんな目で見られているのだろう。 侍女さんに心配されるのも申し訳ないが、着眼点が違うと恥ずかしくなってしまった。
 
食後いつもより少し豪華な衣装を用意され、賀祥さんの出立を見送りに向かうと、兄弟はわたしに直ぐに気付き笑顔を浮かべて近寄って来てくれた。 わたしだけが場にいたので安心しているのだろう、賀祥さんは柔らかな笑顔を浮かべている。 その笑顔を見て、侍女さんを近くの殿で待たせることにして良かったと、夕鈴は思わず苦笑した。

「お妃様には誠にお世話になりました。 次回王宮に来る際には是非、私の愛しい人をご覧頂きたく思います。 兄上の御子や奥方の件も早急に父と話し合い、どちらも納得出来るよう、私も出来る限り努める所存です!」
「賀祥様の愛しい人を・・・・・。 ええ! ええ、是非お会いしたいです!」
「祥と共に私も良き御報告が出来ますよう努めます。 頑固な父の説得にどれだけ時間が掛かろうとも、妻と子の為に誠意努力をして、私の家族にも会って頂とう存じます」
「わたしも御会いしたいです。 お待ちしております!」

真っ直ぐに笑顔を向けてくれる賀祥さんは、今や誰が見たって女性が苦手なんて言われても信じないような表情でわたしを見ていた。 賀祥さん絡みの密偵はどうなったのか判らないけど、こうして笑顔を浮かべて兄様と共に帰られる姿を見ることが出来たのだから、きっと全て上手くいくと信じるしかない。
下っ端妃の立場なので端の方で挨拶を済ませ、直ぐに場から離れようと踵を返すと近くに居た周宰相が青白い顔で、わたしを見つめながら近付いて来た。 
身体が強張るのは仕方ないだろう。 それでもその後が聞きたくて、宰相の顔を見つめる。

「嵐の中でもお妃様はしっかりと御立ちになられていた御様子ですが、御自身の御心を乱さずに保ち続けるのは御苦しい御様子。 ・・・・大木に頼ることも時には必要でしょう。 嵐は未だ過ぎ去ってはおりませぬ故、これ以上御心穢されぬよう御気を付け下さいませ」
「周宰相様・・・・・、まだ嵐が・・・・?」

空ろな目で見つめられ続け、夕鈴はそれ以上問えなくなった。 
急な眠気や頭痛、夢見の悪さ、女性恐怖症の賀祥さん指導、間諜、狼陛下からの翻弄など、これらが予言の嵐なのかと思っていたが、まだ続きそうな予言に背筋が伸びる。 
それに心が穢されるって、どういうことなんだろう。 意味が理解できずに困惑し、知らず眉根が寄っていたのか、わたしの顔をじっと見つめた宰相は小さく頷いた。

「御心の芯を動かさぬよう・・・・。 それだけで結構で御座いましょう」 
「こころの芯・・・・・」

プロの妃として堂々と演技を続けて居ればいいということだろうか。 
そう解釈したわたしは顔を上げると宰相に微笑んで頷いた。

「では、自分に出来ることを、しっかりと腰を据えて頑張ります」
「それで結構と存じます・・・・・・」

後押しして貰ったような気持ちになり、安堵出来た。 
自分はバイト妃としてきちんと演技をしようと気持ちを新たに、宰相へ御辞儀をする。
新たになった気持ちで、弘和殿近くで待っている侍女さんの元へ足を向けながら、この後の予定を考える。 後宮に戻ったら鬼の上司から出ている宿題にもう一度目を通し、そしていつも通りに後宮立ち入り禁止区域の掃除を・・・・・。

「あれ? 侍女さんがいない。 別のところに移動したのかな?」

待機している場所に侍女さんが居ないと気付き、周囲を見回しながら足を後退させる。 
もしも賀祥さんが王宮に来たことや、妃が容易に近付いたことに何か関連した動きがあるのだとしたら、危険があるかも知れない。 侍女さんも勿論気になるが、万が一を考えて浩大を呼ぼうか思案しつつ、出来るだけ人がいる場所へと移動した。

「お妃ちゃ~ん。 侍女は気にせず、そのまま後宮へと足を進めてくれるかな」
「こう・・・・。 わかったわ」

背後から聞こえて来る声に安堵して、言う通りに足を前へと進めることにした。 
宰相に言われたばかりじゃないか!と、わたしは毅然とした態度で背を正し、妃らしく歩き始めながら考える。 今、自分に出来ることはバイト妃として、陛下の敵に対して、囮になることだ。
 
気負ったまま歩き進め、忙しそうに書簡を持ち運ぶ官吏らにプロ妃の素晴らしい会釈をしながら、結局は何事も無く後宮近くの回廊へと近付いて来た。 
そうして、あと少し歩いたら後宮だと、気負っていた力を抜いた時だった。

「お妃様、後宮へとお戻りの途中でしょうか」

突然声を掛けて来たのは見知らぬ高官。 緊張しながら頷くと 「侍女は?」 と問われた。

「用事がありまして、先に部屋へ下がらせておりますの。 侍女に何か?」
「いえ、お一人で歩かれることなど滅多にありませんのにと思いまして」

なんと答えようかと微笑みながら黙していると 「そうですか。 お一人ですか」 と、高官は続けて話し続ける。 書庫以外でわたしに話し掛ける高官など滅多に居ない。 
明らかに怪しいなと思いつつ、妃スマイルを浮かべて高官を見つめ続ける。

「賀祥様のお部屋に何度も侍官を伴いお渡りになられておりましたが、陛下唯一のお妃様ともあろう御方が、何ゆえと思いましてね。 下っ端妃が国境副隊長殿に、どのような御用件があるのかと気になりまして」
「・・・・それは貴方にお知らせすることでは御座いません」

下賎な者を見るような目で見下ろされ、逆に気持ちが落ち着いたわたしは高官を見つめながら、彼の次の言葉を待つ。 すいっと近付いて来た高官は懐から小さな薬瓶を取り出して、その蓋を外した。 嗅ぎ慣れた匂いが鼻をつき、何だろうと眉根を寄せると途端に眩暈に襲われる。 
傾ぐ身体を回廊手摺に急ぎ凭れ掛け、訳が判らないまま、それでも高官を睨めつけた。 袖口で鼻元を隠した高官は、わたしに薬瓶を差し出しながら冷たい視線で見下ろし、低い声で語り掛けて来た。

「・・・・原液ですから、少し・・・ きついでしょうかね」
「・・・こ、の匂い。 あたまが・・・・・」

ふふっと、くぐもった嗤いを零した高官はわたしの腕を掴みあげると、近くの部屋へ押し込んだ。 扉を閉めると薄暗い部屋の中でも判るほどの昏い笑みを浮かべ、床に倒れこんだわたしを見下ろしながら、同じ問いを繰り返す。

「賀祥より何を聞きました? それとも既に陛下に話が渡っているのでしょうか」
「な、んのことか・・・・。 それより、匂い・・・・・・」
「賀祥と陛下は到着時の宴でしか御会いしていなかった筈。 王宮までの道中に話していたとしたら、此処まで来る必要は無かったでしょうし、既に何かしらの動きがあって然るべきでしょう。 ・・・・・奴と一番御会いしていたのは貴女です、お妃様。 さあ、何を聞きましたか? それとも何か受け取ったのでしょうか」
「あ・・・・、ほんと・・・・ に、わからな・・・・・」

急激な眠気と共に頭の奥を揺さぶられるような声に支配され、高官を見ることさえ出来ない。 瞼が重く、指も動かせずに、だけど意識を手放せずに気持ち悪さに胸が苦しいと強く目を瞑る。

「賀祥から何を聞きましたか、何を受け取りましたか」
「が、しょう様は・・・・ 女性が苦手・・・・・ 好きな人のために頑張って・・・・・」
「 ? 何を言っている? 慣れるために何か受け取ったと?」

肩を強く揺さぶられ、頭の中がぐちゃぐちゃになる。 吐きそうなくらいの気持ち悪さに眉を顰めたまま 「違う・・・・」 と言うのが精一杯。 
わたしは賀祥様の女性恐怖症を治すお手伝いしかしていない。 何も聞いていないし、何も受け取っていない。 それは境界線の向こう側の話で、バイトが立ち入ることが出来る範囲の話しではない。 ただ眠い、気持ち悪い、吐きたい・・・・。 
もうこのまま落ちていきたい・・・・・。

「正直に話せばいいだけだ。 では賀祥の兄から受け取ったと?」
「あ、にい・・・ 様は、奥様が子供で・・・・・ 一緒に話をするって・・・・」
「・・・ちっ! 長く吸わせ過ぎたか? 賀祥からは何も聞いていないと言うのなら、何故これが何度も奴の部屋に行っていた? 四阿でも話をしていたと聞いたが・・・・。 もう一人侍官が居たと言っていたな・・・・。 そいつか?」

頭上で何かブツブツ呟いているのが聞こえてくるが、夕鈴の頭には意味を成しては届かない。 
沈みたいのに沈めない不快感と頭重感に身体を丸めて堪えるしか出来ず、嘔気に息を喘がせ続けていた。 この匂いを遠ざけて欲しいと思うのに、もう口も動かせない。 
頭の鈍い痛みが、だんだん鋭くなって来て、わたしの身体が震え始めた。


 





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:11:11 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
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2013-04-13 土 09:09:15 | | [編集]
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2013-04-13 土 12:48:23 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。 そうなんです、やっと終焉が近付きました。途中でいろいろ考えている内に、いつも終わりが変化しちゃうんですよね。困ったものです。地震、大変でしたね。ニュースでも大きく取り上げておりましたが、トラウマの方もいらっしゃるのではないかと、心配です。災害バックの再確認を是非。
2013-04-13 土 19:59:55 | URL | あお [編集]
Re: むしろ太れ(笑)
ダブルS様、コメありがとう御座います。いつも気になっていたんですよね。陛下って、片手で夕鈴を抱っこするでしょう? 夕鈴の体重が気になるわー。なるわー。なるわー・・・・。そして「ひょい」の文字があるでしょ?すごいわー。すごいわー。カッコいいよね。 最近抱っこされたことありますかぁ?
2013-04-13 土 20:10:38 | URL | あお [編集]
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2013-04-13 土 22:20:41 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。 風邪は熱も下がり、頭痛が残るばかりです。でもパソコン開いちゃう私は娘に怒られながらも、つい打ち込みしてたりして。 チョイ妄想が走って、違う話も書き殴り出し、こちらが遅々として進まない。 あわあわしながら見直ししてます。 もう少しで終わる予定なので、御付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-04-14 日 00:33:14 | URL | あお [編集]
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