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思案の外  12
寝ている犬の尻尾を引っ張ると、「何?」って顔で見てきます。その顔が可愛くて何度も尻尾を引っ張っていると、手の届かない場所に移動してしまいます。名前を必死に呼ぶけど、暫くの間は来てくれません。 そういう時は娘を撫で回します。犬は焼きもちを妬いて直ぐに飛んで来ます。そして捕まり尻尾を引っ張られます。夜はこれがCMのたびに繰り返されています。



では、どうぞ。














「おっ妃ちゃーんっ!! 遅くなって悪いっ! 大丈夫かぁ?」
「・・・っ! だ、誰だ!?」

内側から閂をしていたはずの扉が突然開いたことに驚き高官が振り向くと、隠密姿の浩大が飛び込んで来た。 その声に夕鈴が重い瞼をこじ開けると、ぼんやりと陛下の姿も見える。 
後ろへと退いた高官があっという間に浩大の持つ鞭なような暗器に捕縛され、床に倒れ込み、怯えた顔で周囲の様子を見て陛下の存在に気付くと引っくり返った声で悲鳴を上げた。 

「夕鈴、無事か? 浩大、捕縛後直ぐに刑吏へ引き渡し、吐かせろ!!」
「了解っす! おっと、証拠の薬瓶も引き上げるよ」

頬を叩かれ、ぼんやりした焦点を合わせると怒ったような狼陛下の顔が間近に迫っていて、何故怒っているのだろうと考えた瞬間、今まで一番鋭い痛みに襲われ顔を顰めて呻いてしまう。

「へい・・・・。 っ!」
「夕鈴、頭が痛いのか? 浩大、待て! ・・・・・・何故、我が妃がこのように苦しんでいるのか、正直に言え。 その薬瓶の中身は何だ?」
「ぐぅ・・・・。 それは陛下といえど答える訳には・・・・・」
「浩大、さっさと話しやすいようにしろ! 待つ間も惜しい」

短い返事の後、耳障りな鈍い音と共に悲鳴が聞こえた。 聞くに堪えない低い呻き声が耳に響き、顔を逸らそうとすると陛下の腕に囚われ男の声が途切れ、同時にあの匂いが消失する。 
暖かさに包まれ身体から力が抜けていくのを感じながら、そこでわたしは意識を放り投げた。

「・・・妃が目を閉ざしている間に遠慮することなく問おう。 この薬瓶と妃の部屋にあった香炉にはどのような作用があるのだ。 早く口を開かねば、後悔も出来なくなるぞ」
「ひっ・・・・、あ゛、あああっ!・・・・骨が・・・・ た、助け・・・・」
「・・・・浩大」
「い~やいや、陛下。 この部屋、これ以上汚したら李順さんに怒られねぇ? 場所、移そうよ。 気ぃ失っているとはいえさ、お妃ちゃんの前で甚振るのはやっぱ、勘弁」
「・・・・では夕鈴を医局へ連れて行く。 一刻も早く、そいつの口を割らせろ」

浩大の明るい返答を聞きながら、陛下は踵を返し部屋を出た。 背後から悲痛な声が聞こえたが、それも扉が閉まると同時に掻き消え、そして_________



 





・・・・・またなのか。 また、わたしはここに来たのか。
真っ黒な闇が徐々に灰色に変わり行く。 
そして、いつものように白い霧が足元に広がり、わたしの胸が苦しいほどに痛くなる。 何度も繰り返される真白い世界での、不毛な触れ合いに疲れ果てたと涙が溢れてきた。 

それでも腕は霧を掻き、求める熱を探して伸ばされるのだ。
何故、求めることを止めないのだろう。
いつも最後には離れていく熱に、わたしは何を求めているのだろうか。
あの台詞にわたしは答えを出すことが出来るのだろうか。 そして、その答えは届くのか。

「今だけ、なんて厭、です・・・・・」

霧を掻き続けながら、わたしは初めて声に出した。 溢れた涙が頬を伝い霧の中に解けていく。
いつもと違い、いくら霧を掻いてもいつものあの手は現れず、必死に声を絞り出す。

「今だけは、厭です! そんな願いは厭! 今だけは・・・・・ 厭ですっ!」

不思議なほどわたしの声は通らない。 必死に張り上げているはずの声は、身の裡にさえ跳ね返りもせずに、ただ霧散して消えていく。 胸が痛くて涙が零れて声が震えるけど、それでも霧を掻き続けて、わたしは伝えようとした。

「今だけは厭なんです・・・・。 ずっと貴方の」

視界がぼやけて、もう如何したいいのか判らないと目を覆った。 苦しくて、切なくて、手も足も重くて動けない。 身体に纏わりつく霧が一層重く感じて首を振った。

その時、何かに腕を捕られ引っ張られた感触に目を瞠ると、そこは一転して真っ黒な世界。
足元も、いや自分の足も手も何処にあるのかも判らない。 
ただ何かに引っ張られている感触だけははっきり判り、何処かに連れて行かれるように感じた。 どんどん移動しているようだが、真っ暗な世界は変わることなく広がり、それなのに腕を引かれる感触に、今まで感じていた不安感が消失しているのに気付く。 
顔を上げると闇ばかりだったはずの視界の中に自分の腕が見えた。 その腕を掴んでいる手が見え、胸の奥から熱が生まれるような不思議な感じに戸惑う自分がいる。 
どうしよう、どうしようか。 
胸がとても熱い。 
わたしは捕まれていない腕を、その手に伸ばして・・・・・・・・・・。








目を開けると、そこは自分の寝台の上だった。 
何故かひどく胸が苦しくて、腕を持ち上げようとするが動かない。 頭を動かすと沢山の上掛けが掛けられているのが判り、腕どころじゃなく全身が動かせない状態だった。

「お、重いぃ・・・・・。 な、何で?」
「お妃様、お目が覚めましたか! あ、重いでしょうか、直ぐに掛け布をお外しします」
「起きられますか? ・・・・どうぞ、上着を。 今お茶をお淹れ致しますわ」

酷くぼんやりして、自分の置かれた現状が理解出来ずにいたが、お茶が目の前に差し出される頃には高官のことを思い出し、賀祥さん絡みで何かがあったのだと判った。 
侍女に経緯を尋ねると、陛下がわたしをここまで運び、風邪のために倒れたから看病するように頼んだと教えてくれた。 

「お妃様は熱のためか強い寒気を訴えられ上掛けを御用意させて頂きましたが、漸くお顔の色も良くなり、私どもも安堵致しましたわ」
「お妃様の御目が覚めましたこと、急ぎ陛下へお伝えして参ります」  
「あっ、待って下さい!」

急ぎ寝所から出て行こうとする侍女を止めて、窓の外を見た。 夕刻近くの空が見え、この時刻ではまだまだ忙しい頃だとわかる。

「側近の李順殿にお伝えするだけにして下さい。 御政務の邪魔はしたくありません」
「お妃様・・・・。 判りました、ではそのように」

静かに出て行った侍女にほっとして、夕鈴は寝台から足を下ろした。 熱があり寒気がしたと言われた通り、足元からぞっとするような寒気が這い上がって来て、もそもそと上掛けの中に足を戻す。 確かに頭がぼうっとする。 体調不良の原因は風邪のためだったのかと判り、誰にも移っていませんようにと願う。

「・・・・・・あれ? 何かあったような気がする・・・・」

ぼうっとしたまま一生懸命考えていると、高官に何かを嗅がされたことを思い出した。 
思わず起き上がろうとして、鈍い頭重感に動きが止まる。 
・・・・あの後どうなったのだろうか。 浩大が押し込まれた部屋に来てくれたのはぼんやりと覚えている。 その後のことは覚えていないから、また気を失ってしまったのだろうか。 賀祥さんのこととか聞かれたような気がするが、わたしは何を言ったのだろう。 
覚えていない自分自身が怖くて、一気に血の気が引いていく。
囮としてちゃんと役に立てたのかな。 それとも何かおかしなことを喋っちゃった?

「ど・・・・、どうなった・・・・ のかな?」
「ふぅ・・・・。 何が?」
「きゃああああああっ!!!」

突然耳元に息を吹き掛けられて驚いた。 余りにも驚いて涙目で寝台の奥へと移動しながら、何が起きたか周囲を見ると、寝台に腰掛けた陛下がきょとんとした顔でわたしを見ている。 
ゆっくりと両手を挙げ、 「ごめん、驚かしちゃったね」 と悪びれもせずに首を傾げた。
そのふざけた様子に怒りが込み上げて来て、夕鈴は壁に貼り付きながら陛下を睨み付ける。

「な、な、ななな何をされるんですかぁ!?」
「夕鈴の目が覚めたって、侍女から聞いたから来たんだよ。 それより僕じゃなくて李順にだけ伝えようとするなんて、どうして? 酷いよ、夕鈴」
「そ、それは陛下は御政務で忙しいだろうと思ってで・・・・・。 それに風邪みたいですから、移ったら大変ですよ。 は、離れて下さい。 暫くはこちらに顔を出しちゃ駄目です!」

上掛けで口元を覆いながら必死に訴えているというのに、何故か陛下が寝台に足を乗せて、じりじりとにじり寄って来た。 おまけに嬉しそうな顔に見えるのはどうして?

「熱が出たのは風邪のためだけど、それより奴の持っていた薬のせいで夕鈴具合が悪いんだよ。 今、吐き気や頭痛、眩暈は残っていない? 他に症状は出ていない?」
「奴・・・・って、高官のこと? あの人、何かわたしに聞いていたけど、部屋に押し込まれてから記憶が朦朧としていて覚えていないんですよね・・・・。 何か聞き出せたら良かったのに」

ああ、役立たずな自分。 がっかり項垂れると、頭を撫でてくれる陛下の優しさに涙が滲む。 
その優しい慰めに夕鈴が顔を上げると・・・・・・・・・・。

「なぁんで、狼陛下ぁ!?」

冷たい笑みを浮かべた狼は強引に腕を引き寄せると、上掛けごと自分の膝の上にわたしを乗せて強く抱き締めてきた。 心臓が嘗てないほど跳ね、意味が判らないと慄いていると、額に手が触れる感触がする。

「熱は下がったようだね。 寒気がしていたそうだけど、まだ寒い?」

今は異様に熱いです・・・・・とは言えず、ただ首を横に振った。

「記憶がないのか。 奴に何を言われたのか、されたのか・・・・ 覚えていない?」
「は、はい。 覚えていません・・・・。 ごめんなさいぃ・・・・」

役に立たない囮に呆れたのだろうか。 声がいつもより数段低いような気がするんですが。

「謝らなくていいよ。 今回、夕鈴のお陰で奴を捕らえることが出来たんだから」
「が、賀祥様に何か関係していたんですか? それを聞かれたのはぼんやりと覚えているのですが、何をどう答えたのかは覚えていないんです」

くるりと体勢が変わり、膝の上に横抱き状態になったわたしは涙目で陛下を見上げた。

「賀祥の見合い相手の貴族。 それが実は国境沿いで密輸に関わっていたと判り、調べていたんだ。 あ、賀祥の親は関与していなかったから安心してね。 それで突然賀祥が王都に向かって移動を始めたから、王宮に密輸に関しての密告があるのではないかと、数回に渡って密偵が送り込まれていたんだよ。 今まで言えなくてごめんね、夕鈴」
「はあ・・・・。 それで囮として賀祥様の部屋に行かされたんですね、わたし」
「・・・・・・・李順には注意をしておいたからね」
 
そこは 「いいえ」 と首を振る。 プロ妃として、囮として役に立てたなら本望だ。
ただ、そこからの話には驚かされた。

陛下が視察で王宮から離れていた間、貴族と懇意にしていた大臣が勝手に数人の官吏や侍女を王宮入りしていたそうで、それを訝しんだ李順さんが詳細を調べていたが、その前から在籍していた侍女と官吏が疑惑の貴族に買収され、水面下で動いていたと判った。 
新たに王宮入りしていた官吏と侍女は囮と判り、買収された輩を調べるため時間を要したと陛下は目を細める。 そして、その内の一人である侍女が妃の部屋に毎夜見回り時に幻覚作用のある香炉を置き、王宮内を混乱させようとしていたと白状した。

「幻覚作用のある・・・・・ 香炉? わたしが王宮を混乱させるってこと?」
「違うよ。 狼陛下唯一の妃の部屋に仕込んで置けば、二人して幻覚に悩まされて、上手くいけば密輸に関することを有耶無耶に出来る予定だったらしいんだよね。 でも・・・・ ほら、僕は夕鈴の部屋に泊まること、ないでしょう?」
「・・・・あったら困りますよね。 バイトですし・・・・・」

おまけに陛下が来るのは政務が忙しく遅い時間のことが多く、更に浩大が居間に忍び込み、お茶などの成分に毒などの混入がないか毎夜調べていたため、換気も良く、思った以上の効果が無かったそうだ。
夕鈴が就寝中の寝所には入り込めなかった為、気付くのが遅れたと言われたが、そこは仕方がないだろう。 嫁入り前の乙女の寝姿など、誰にも見られたくはない。
でも、あの頭痛は酷かったと思わず額に手をやると、陛下が頭を撫でながら抱き締めてくるから・・・・・ 文句は飲み込んだ。 頭痛や突然の眠気、意識が途切れるなどの症状もその香炉のせいで、気付いた浩大が侍女を泳がせながら、夕鈴の寝所の窓を毎夜少し開けていたため、酷い症状が出ることは無かったが、代わりに風邪をひいたという訳だった。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 16:12:12 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
原因が判明して良かったです・これで夕鈴の体調は徐々に快復にむかいますね・
密輸の方も夕鈴が囮になって捕まえることが出来たから、解決したも同然・あとは後処理かな?

となると残るは…どうなるのかしら
2013-04-14 日 20:53:54 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
そうなんです、ともぞう様! コメありがとう御座います。 やっとラストスパートです。毎度長くなる話に御付き合い下さり、感謝申し上げます。あとは事後処理が待ってますが、そこはちゃちゃっと・・・・の、予定です。今回はおまけにしないで、最後までちゃんとまとめる予定です。次の妄想が漏れ出てますので。(笑)
2013-04-14 日 21:51:54 | URL | あお [編集]
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2013-04-14 日 23:13:53 | | [編集]
Re: 皆の優しさ\(^o^)/
ダブルS様、コメありがとう御座います。 治るまで陛下の立ち入り禁止。うん、無理だと思います。我慢できないから。下町にも気軽に行っちゃうしね、この陛下(爆) あとはまとめ作業が待っております。 もう少し御付き合い下さいませ。
2013-04-14 日 23:28:26 | URL | あお [編集]
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2013-04-15 月 00:36:08 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。 そうですよね、陛下のお泊りもなきゃ、怪しまれて当然。たまには泊まってしまえと妄想するのは仕方がない(笑) 鬼の李順さんから、そういう指令(?)が下らないかしらね~。陛下も若いんだから、たまには暴走して欲しいものです。
2013-04-15 月 00:48:51 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-04-15 月 00:48:51 | | [編集]
Re: 全て解決!?
makimacura様、コメありがとう御座います。夕鈴、囮頑張っています。というか、囮になっています。李順さんからいっぱい危険手当を貰えるといいのですが。値段交渉って・・・・・ 出来るのかしら?
2013-04-15 月 20:06:16 | URL | あお [編集]
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