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思案の外  14
ようやく終わりが見えて来ました。(本当か?) なにせ次の妄想が漏れ出ておりますので、押せ押せ状態です。 


では、どうぞ 
















泣きながら眠りに就いたからだろう、翌日は夕鈴の目元の腫れに侍女が余りにも驚いたので、午前中は寝所から出ずに過ごし、目元を冷やし続けることになった。 
泣いたことは覚えているが、何故あんなにも泣けたのか自分でもわからない。 
温かい何かに包まれて、自分では解せなかった何かを解いて貰えたような気持ちもする。
思い切り泣いて、一緒に何かが流れ落ちたのだろうか。 

夕鈴を悩ませていた頭痛はすっかり消えたようで、寝起きは良かった。 
夢を見た記憶も無く、その代わり何故あんなにも夢に囚われていたのだろうかと不思議にさえ思えた。 幻覚作用のある香油で、もしも自分が錯乱していたら、後宮いや王宮にどんな混乱を齎しのただろうか。 齎す前に李順さんからの雷で、正気に戻りそうな気もするが。

午後になり、侍女さんがようやく目元の腫れも引いたと確認し、化粧で上手く隠してくれたので、久し振りに妃バイトを頑張ろうと気合を入れ、久し振りに政務室に向かう途中、久し振りに方淵に出会い睨まれ、久し振りに笑顔を浮かべて火花を散らすことになった。

「・・・・体調が悪いままでいれば、後宮より出てくることも無かったろうに」
「お陰様でご心配頂かずとも、もう体調は万全ですわ」
「心配などしてはいない。 万全の体調で陛下のために後宮に籠もっているべきだろう」
「そのようなお気遣いを方淵殿から頂かずとも結構で御座いますわ」
「・・・・全く、口の減らないことだ!」
「まあ、口が減ったら困りますわね!」

青筋を立てて妃スマイルを送ると、方淵から青白い静電気が奔った。 
もちろん、そんなものは団扇で弾き飛ばす。 
視界の端に、回廊近くで黙って微笑んでいる水月さんが持っていた書簡を近くの官吏に渡して場を去ろうとしているのが見え、慌てて声を掛けると肩を竦ませながら小さく嘆息を漏らした。 
「やはり貴様は帰ろうとしていたのか! また池の鯉か!」 と方淵の怒りが水月さんに向いたところで、わたしはさっさと踵を返して書庫へ移動することにした。 

「書庫で少し片付けをします」

侍女に伝えて書庫に入ると、官吏姿の桐さんが拱手しながら報告があると近付いて来た。 
賀祥さんが近く王城へ顔を出すというのだ。 西方に戻ってまだ二日。 
実家に帰ったと思ったら直ぐに逆戻りになる。 忙しいことだろうとは思うが 『その後』 の話が賀祥さんから聞けるかも知れないと、わたしは喜んだ。

「では想い人と一緒に来るってことなの? 本当に? 兄様の件はどうなったの?」
「そこまでは判りません。 来るということしか聞いておりませんからね」
「賀祥様のお好きな方・・・・。 わ、緊張しちゃいますね! あの後、触れることが出来るようになったのでしょうか? 一緒に来ることになったら、わたし会えますか? ああ、きっと綺麗な方なのでしょうね。 御結婚されるのかな? 桐さん、他には何か知っている情報はないの?」
「ないですね。 まあ、来たら判るでしょうし」
「・・・・・・・いつもながら素っ気無い返答、ありがとう御座います」

いっぱい質問したのに、桐さんから返ってくる情報はいつも端的で少ない。
でも嬉しい! 賀祥さんが来るというのは本当なので、その後の進展が聞けるかも知れないと、それまでは我慢だと、わたしは握り拳を掲げる。 
他人事とはいえ、恋路が上手くいく話を聞けるのはやっぱり嬉しい。 
自分が多少なりとも関わっているから余計だろう。 浮き足立ちながら書庫の片付けを行い、侍女さんと庭園で花を摘み、胸を高まらせたまま軽い足取りで後宮へと戻る。





夜に部屋へと渡って来た陛下に、早速賀祥さんが来るんですね!などと、話を振ると・・・・・・・・・ 何故か、途端に苦虫を噛んだような顔を見せられた。 

「陛下から依頼を受けて、わたしが御協力させて頂いたことですよね?」
「・・・・・そうだが」
「賀祥様がお好きな方と一緒に来るのかと尋ねただけですよね?」
「うん・・・・・」
「御存じないなら、そう言えば良いだけではないですか。 何でそんな顰め面でわたしを見るんですか? バイト妃だから今度は会っちゃ駄目なんですか?」
「そうじゃなくて・・・・・」

歯切れの悪い返答が続き、眉間に皺が寄る。 お茶を淹れながら陛下からの返答を待っていると、深い溜息が聞こえ、もしかして逆に何か問題が起きたのかと不安になった。 
顔を上げた陛下がわたしの不安げな表情に気付き、手を差し出して隣に腰掛けるよう指示をする。 隣に腰掛け、差し出された手を無意識にぎゅっと握り返すと、陛下から強張った動きが伝わって来たが、わたしはそれどころじゃ無いと言葉を待ち続けた。

「・・・・・うん、夕鈴の心配は必要ないよ。 賀家の問題は王家が干渉すべきではないけど、多少の情報は来ている。 賀祥が来たら詳細も聞けるだろうけど、判っていることは今までの兄嫁達が家から出て行ったということだ。 円満解決したのかまでは知らないけどね」
「出て行った・・・・。 一度嫁した方が実家に戻るのは、並大抵なことではないはずですが」
「うん、そこは賀家の力で如何にかしたのだろうね。 兄の手が付いていないことは確からしいし、白紙に戻すことは賀家の力で如何にか出来るだろう。 噂にならないよう、早々に次の嫁ぎ先を用意したりとかしたのかもね」
「・・・・・。 そ、そうですか」

真っ赤な顔になった夕鈴が僕の手を握りながら、恥ずかしそうに視線を泳がせている。
珍しいこともあるものだけど、君から折角手を握って貰っているのに、下手なことを言って手を離されては悲しいと僕は黙って握られていた。 
今、君が赤くなったのは 『お手つき』 の件だろう。
老師から説明を受け、兄嫁たちが何を求めて賀祥の褥に夜な夜な忍び込んだのかを漸く理解したらしく、後で夕鈴から 『昼間からされる話ではありませんでしたよね!』 と真っ赤な顔で文句を言われた。 僕が夜に妃である君の部屋に渡っているのを、忘れているようだ。 
このままお茶友ポジションに固定してしまうのは困るな・・・・ と真剣に悩んでしまう。 
何か理由を付けて、本当に添い寝しちゃおうかな。

兄嫁の件が落ち着いたということは聞いているが、子供を跡取りとして据えることに賛同したのかまでは報告が来ていない。 押収した証拠品と捕縛した貴族を連行して王宮に来る時にでも聞いてみるか。  

賀家の 『その後』 を一番知りたいのは夕鈴だ。 いい方向に話が進んでいると知れば喜ぶだろうが、今回は仕事のための登城。 話す時間を取るのは難しいだろうな。

一番の問題は、夕鈴がこんなにも奴のことに関心を寄せているということだ。 
深い意味がないのは承知していても、やっぱり面白くはない。 僕のそんな気持ちに気付かないだろうということも、不機嫌になる一端だと夕鈴は判っていない。 
仕事の一環で来るのだから会うことは出来ないと伝えれば、夕鈴は我慢するだろう。
我慢して、大丈夫ですと、わかってますと眉尻を下げて微笑む顔が目に浮かぶ。

「二日後には顔を出す予定だよ。 賀祥は副隊長として、今回の密輸に関しての証拠や捕縛した貴族らを連れて来るんだ。 大抵の証拠はもう王宮に届けられていたんだけど、大きな品等の押収に時間が掛かり、小隊で来るとは聞いている」
「あ、仕事のために来られるのですね・・・・・・」

仕事で王宮へ足を運ぶとなれば、ただのバイトは立ち入ることは出来ない。 
それでも、もしも時間があり賀祥さんに会える機会があるなら、無理やりの結婚を強いられずに済んだお祝いだけはしてみたいなと夕鈴は考えた。 そして自分が王宮で妃バイトをしている内に、賀祥さんの彼女に会わせて貰えたらいいなと。 
 
「・・・・お忙しいでしょうから、今回は御会い出来ませんよね」

悲しげに微笑む夕鈴を見て、僕は眉間に皺を寄せてしまう。 
本当は会わせたくない。 会わせたくはないが・・・・・。 君は本当に・・・・・・・。

「勿論・・・・ 会う機会を設けるよ。 夕鈴だって、いろいろ聞きたいこともあるだろう?」

その言葉に大きく目を見開き満面の笑みを浮かべる君を見て、僕は複雑な心境になった。







「賀祥様、遠路お疲れ様で御座います!」
「再びお妃様の御尊顔を拝せて、私も嬉しく思います。 ・・・・私の見合い相手貴族より、多大な迷惑を掛けられたと伺っておりますが、その後の体調は如何で御座いましょうか」 

後宮奥の更に奥、人気のない四阿に浩大と共に姿を見せた賀祥さんは、わたしと陛下を見ると片膝をつき拱手したまま心配げな顔を見せてくれた。 正面から視線を逸らすことなく見つめてくる賀祥さんに、女性恐怖症が再発していない様子が判り、わたしは嬉しくなった。

「体調は元に戻りました。 賀祥様にまで御心配をお掛けして申し訳なく思います。 そして真っ直ぐに見て貰えて、とても嬉しく思います」
「あ・・・・。 本当です、ね。 お妃様を前にしても、問題ありません・・・・」

途端に賀祥さん自身も驚いた表情をして、隣の陛下に呆然とした視線を移す。 わたしも陛下を見て、依頼された結果に満足しているだろうと窺うと・・・・・ また苦虫を噛んだような顔をしているのが判る。 その顔を無視することにして、わたしはお茶を淹れ、その後の話を聞くことにした。

「あ、あの! ・・・・お兄様と父君との話し合いは上手くいかれたのでしょうか」 
「賀家に関して、誠に御心配ばかりお掛けしてます。 その後、兄上と父の間で話し合いが続き、強い決意を聞いた父が結局は折れた形で、目出度く婚姻を済ませました」
「まあ! では、跡取りの問題も解決ですね!」
「私も現状のまま、陛下のために国境警備隊にて従事することが出来、安堵しております」
「・・・・か、彼女さんとは上手く触れ合うことが・・・・ 出来ましたか?」

僕の隣で嬉しそうに賀祥からの報告を聞いている夕鈴が、その台詞で更に頬を染めた。 
そんな可愛い表情をどうして普段僕に向けてくれないのだろう。 賀祥がちらちら僕に視線を投げ掛けてくるが、どうしても狼の雰囲気を消すことが出来ない。 
薄く上げた口端が引き攣りそうになりながら、小さく頷き、賀祥に先を促した。

「は、お妃様の御尽力を持ちまして、触れることに躊躇いがなくなりました。 今は、ほぼ毎日彼女の許へと通いつめております」
「・・・・・まあ」

潤んだ瞳を賀祥に向ける夕鈴は僕を見ることなく、奴の話に夢中になっている。 生徒の卒業試験合格を喜んでいる教師の気分なのだろうが、隣に居る夫の気持ちを鑑みる気はないだろうか。
まあ、そう伝えても 「わたしはバイトです」 の返答しか来ないことは想定済み。

「賀祥様がお幸せになられて、嬉しいです。 すごっく気になっていたんです」

僕のことも幸せにして欲しいし、気にして欲しい。 
夕鈴に伝えられない文句をブツブツ口中で唱えていたら、賀祥の背後で浩大が薄ら笑いを零すから苛立ちが増し 「後で覚えていろよ」 と睨み付けてやった。 
途端、賀祥が怯えた表情になり、蒼褪めた顔を項垂れた。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:40:14 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
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2013-04-17 水 09:57:25 | | [編集]
絶好調!!
すっかり体調良くなって元気な夕鈴に安心です(*^^*)

反対に陛下の凹みよう(笑)
予想を裏切らず、自分の首絞めちゃいました\(^o^)/

賀祥さんの件が全て片付いたら、陛下に向き合うでしょう!!
というか、陛下が限界っぽいので夕鈴気をつけて~(^w^)
2013-04-17 水 14:28:13 | URL | ダブルS [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。いつものことなのですが、やはり今回も予定以上に長くなりました。次で終わりますので、御付き合い頂けたら嬉しいです。仰る通り、陛下なのに一歩が踏み出せないのが焦れ焦れです。立場的に宰相や側近の方が力ありそうだし~(ここがツボ) 
2013-04-17 水 16:32:52 | URL | あお [編集]
Re: 絶好調!!
ダブルS様、コメありがとう御座います。元気な夕鈴を書くのも、凹んだ陛下を書くのも楽しいですね。ストレス解消には夕鈴を翻弄させるのも楽しい。陛下、兎が逃げる前に罠をしっかり用意して欲しいものです。借金も順当に減っているのですから。李順の台詞にドキドキしちゃう。
2013-04-17 水 16:36:25 | URL | あお [編集]
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