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思案の外  15
ラストです。 オリジナルキャラの賀祥さんが、後半になるにつれ壊れていってます。 一緒に陛下も壊れていき、このラストで崩壊してます。 それでもいいよと懐の大きい方、ご覧下さい。


では、どうぞ。














「でも暫らくは王宮に居られるのでしょうから、離れている間はお寂しいですね」

団扇で口元を覆いながら、夕鈴は残念そうに言った。 折角賀祥が女性恐怖症を克服して触れ合えるようになったとしても、仕事が多岐に渡り忙しい国境警備隊の副隊長だ。  短い逢瀬になってしまったのは悪事を企んでいた貴族を連行するためで、そしてそれが彼の主たる仕事なのだから仕方がない。
しかし賀祥は夕鈴の言葉に、彼女の憂いを払拭するような笑顔を浮かべて顔を上げた。

「実は、お妃様にお約束しましたように、今回彼女を連れて来ております。 宜しければ是非会って頂きたいと思うのですが。 この後、お時間を頂戴しても宜しいでしょうか?」
「ええっ! 連れて来ているのですか!? 陛下、わたし、会ってもいいですか!」

賀祥ばかり見て話しているなと思う僕の悋気など知りもしない夕鈴は、茶器を放り投げそうなほどに興奮して振り返った。 もちろん賀祥の言葉に驚いているのは、夕鈴だけではない。 仕事の一環で王宮に足を運んだはずの賀祥が、件の彼女を連れて来るとは思いもしなかった。 それもそれを悪いとも思わず、照れた顔でいることにも驚かされる。 

「是非、陛下にも会って欲しいと存じます」
「・・・・では、会おう。 それにしても賀祥が王宮にまで連れ来るとは思わなかったぞ。 かなり惚れ込んでいるとは警備隊長より聞き及んでいたがな」
「長いこと惚れ続け、やっと彼女を自分のものにすることが出来ましたので、今は何処へ行くにも一緒で御座います」

大きな体躯をした男が頬を染めた顔なんか見たくもないが、賀祥の言葉に夕鈴が感動に打ち震えながら僕の袖を握り締めているのが可愛いので我慢することにした。 

そう言えば最近、無意識に僕の手や袖を握ることが多い。 もちろん夕鈴からの触れ合いは大歓迎だから下手に問わずに握り返すことにしている。 
夢見が悪いと体調が崩れた頃からのような気がするが、それで夕鈴が安心するならいくらでも握っていて欲しい。 君が泣きながら繰り返した台詞を忘れられるなら、一晩中でも握ってあげたい。 傍にいてと願うなら、いつまでも傍にいるから。
 




賀祥の案内で足を運んだのは大門近くの外厩舎。 大門傍に立つ門番が出入りに厳しい王宮内に関係者以外をよく入れたものだと訝しむのと同時に、それを知るはずの賀祥が関係者以外を王宮に連れ込んだこと、そしてそんな場所にひとり残して来たのかと首を傾げると、満面の笑みを浮かべた賀祥がいそいそと一頭の馬の許へと案内して振り向いた。

「私の大事な彼女をご紹介させて頂きます。 名を炎華と言います」

引き締まった馬体を震わせ、賀祥の手に誘われるように前に進み出てきた 『彼女』 は濡れた黒曜石のような瞳を夕鈴らに向けると、その長い睫をゆっくりと瞬かせる。 焦げ茶の鬣を靡かせながら、まるで御辞儀をするように首を下げ、そのまま賀祥へと摺り寄せた。

「お妃様のお陰で彼女に触れることが出来、共に王宮へ来ることが出来ました」

嬉しさの余りか泣きそうな笑みを浮かべて炎華を撫でる賀祥に、陛下も夕鈴も言葉を失くした。 

「・・・・・き、綺麗な、う・・・・ 彼女さんですね」

夕鈴の強張った声が聞こえ、僕は肩を震わせた。 それに気付いた君が慌てて僕の袖を引き睨み上げて来たので、手を攫いながら笑みを零す。

「本当に綺麗だな、賀祥。 彼女がお前の恋しい彼女か」
「はい・・・・。 初めて会った日から長い間、触れたくて、触れられずにおりました。 お妃様に御指導頂けなければ、きっと彼女に触れることは出来ずに見つめるだけで終わった事でしょう」

想像の許容範囲を飛び越えた 『彼女』 に正直驚きを隠せない夕鈴だったが、炎華を見つめる賀祥の視線が熱く、そしてとても柔らかいものだと判り、思わず胸がほんのりと温かい気持ちになり、気付けば陛下の差し出した手布で目を覆われていた。

「我が妃は直ぐに涙ぐむな。 君のそんな顔は誰にも見せたくはないというのに」
「ご、ごめんな・・・ あ、申し訳御座いません。 賀祥様の気持ちが・・・・ 通じて良かったなと思っていたら、つい。 本当に、本当に良かったですね、賀祥様」
「ありがとう御座います。 お妃様、宜しければ彼女にお触れになりませんか?」

驚いた顔で陛下に振り向くと 「大丈夫だよ」 と頷いてくれたので、夕鈴は恐る恐る炎華に近付いた。 目元を赤く染めた賀祥が手を伸ばすと炎華は鼻面を摺り寄せ、黒曜石のような瞳で夕鈴を見つめて来る。 大きな体躯の賀祥の横にいてさえ、大きく見える馬体。 
しかし穏やかなその瞳を見つめながら夕鈴が手を伸ばすと、甘えるように首を寄せてくれた。 艶やかな毛触りと温かさを感じて、初めて会ったばかりの自分にも触らせてくれて嬉しいと笑みを零すと、炎華が夕鈴に頭を下げ頷いたように見える。 

「陛下・・・・っ! わ、わたし、炎華さんに触らせて貰えました!」
「良かったな、夕鈴。 賀祥が惚れ込むのもわかる」
「ありがとう御座います、陛下。 そう言って頂けて大変嬉しく思います。 ・・・・・私が炎華に触れられるようになってまだ数日だというのに、お妃様には自ら触れさせようとするとは驚きました。 きっとお妃様の御心の優しさが彼女にも伝わるのでしょう」
「そう言って貰えると嬉しいです。 ・・・・とても温かいのですね」

こんなにも綺麗で大きな馬に触る機会など滅多になかった夕鈴は、幾度も撫でた。 その度に炎華が嬉しそうに首を揺するのを見て、心から嬉しくなる。

「人嫌いの気がある彼女はもとより誰からの調教も難しく、放牧されている彼女を一目見た時から、その孤高ゆえの美しさに惚れ込み、しかし長い間手も出せずにおりました。 本当に・・・・ お妃様のお陰で彼女に触れることが出来、そして自分の傍に添わせることが出来ました。 どんなに感謝しても伝え足りません。 ありがとう御座います」
「賀祥様のお気持ちが炎華さんにも伝わったのでしょう。 良かったですわ」

艶やかな毛並みは普段、どれだけ賀祥が慈しんで手入れをしているかがわかる。 
下町にいた頃は農耕馬や荷物を運ぶ馬しか目にしていなかったが、王宮で妃バイトを始めてからは見るからに高貴な人が御使いになる高級そうな馬を見る機会が増えた。 馬車にしても禁軍所有の軍馬にしても、大きく逞しい馬ばかりなのだ。
だが、賀祥の連れて来た炎華はそれとも少し違う気がする。
軍馬らしい体格の良さはそのままに、とても優雅で綺麗だと感じた。 黒曜石のような艶やかな瞳を見るだけで、魅入ってしまい、賀祥の気持ちが少しだけ解かるような気がする。 
ただ、自分が賀祥に一生懸命していた、女性に慣れるためのお試しが結果馬のためだったのかと、正直意気消沈してしまうのは赦して欲しいと思う夕鈴だった。



賀祥が愛しいと繰り返していた相手が馬だったとは、陛下も知らないことだった。 
やはり重度の女性恐怖症なのかと、雌馬にさえ触れられなかった事実に、驚きを通り越して呆れてしまう。 そんな考えを顔には出さずに賀祥に目をやると、いつの間にか夕鈴に鐙や鞍の説明を真摯な表情で始めており、途端、妙な違和感を感じた。 気配を感じて振り返ると、一度離れていたはずの浩大が、捕縛した奴らの調べを始めると密やかに告げて来る。 

「お妃ちゃんには陛下に代わってオレが見ているから」
「・・・・・・不用意に触れないよう見ていろよ」
「どっちが触れないように? 賀祥はお妃ちゃん限定だけど怯えずに喋れるようになったから心配か? まあ馬に手間取っていた副隊長だから、お妃ちゃん以外に慣れる頃は墓の下かも」

笑えない内容だが、視線の先には恐縮した様子で夕鈴に馬具の説明をしている賀祥が居て、浩大の言うことも有り得ると思えた。 普通、貴族子女に馬具の説明などを嬉々としてする奴などいないだろう。 外見に擦り寄る女も、中身を知れば唯の馬莫迦だと解かるはずだ。 
まあ、擦り寄って来る前に賀祥が逃げ出すだろうが。
 
奴の横で真剣に馬具の説明を聞いている夕鈴の様子に、僕は苦笑した。 
馬具の説明の後、賀祥は白斑や骨格、手入れ方法まで語り出している。 専門的な話を必死に聞く夕鈴の真面目な顔を見て、僕はようやく溜飲を下げた。 
そうだ、今度自分の馬にも触らせてあげることにしよう。 
夕鈴お手製の弁当を持って出掛け、馬場を走ったら楽しんでくれるだろうか。 早駆けなんかしたら、怖がってしがみ付いてくるだろうな。  

「はいはい、楽しい妄想は中断して仕事に行って下さい。 李順さんが待ってますよ」

忠実な、そして厄介な側近の顔が妄想を引き裂いた。 浩大に背を押され、僕は打ちひしがれたような気分を引き摺りながら刑務の場へと足を向けるしかない。 
面倒事ばかりを持ち込む輩に狼陛下の恐怖を叩き込んでやる。 冷酷非情とはどんな意味を持つのか、その身にじっくり時間を掛けて教えてやることとしよう。 
込み上げてくる苛立ちを顔に浮かべて、陛下は王宮へと向かった。


「ああ・・・・。 あれは一度湯浴みしなきゃ、お妃ちゃんの前には戻って来れないだろうな。 今回誰か止める奴がいるのかな。 お妃ちゃんの泣き顔にもキテタみたいだし・・・・・」

振り返ると、賀祥が頬を染めているのは愛しい炎華にだけではない様子が浩大には伝わり、陛下に知られる前にさっさと西方にお帰り願おうかと嘆息を漏らした。
もしも陛下が賀祥の気持ちに気付いたら・・・・・・・・。
ぶるっと背筋に厭なものが奔り、浩大はニヤニヤしながら二人の邪魔をしに近付いて行った。



「あ、浩大。 見て、すごく綺麗な炎華さんに触らせて貰っているの!」

嬉しそうな顔で振り向いた夕鈴の背後には、目尻を下げて妃に微笑みを浮かべる賀祥がいて、浩大は 「下町の悪女はあながち嘘じゃないかも・・・・」 と嘯いた。






FIN



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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:15:15 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
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2013-04-19 金 19:40:41 | | [編集]
Re: 騙された!?Σ(゜Д゜)
ダブルS様、コメありがとう御座います。 途中で「わかりました!」とのコメントがなかったので、逆にしてやったりでした。馬、好きなんですよね。っていっても北海道生まれなのでどしっとした馬ばかりを見てましたね~。競馬場でサラブレットを見て感動したもの~。あれは格好いい! 次もよろしくお願い致します。
2013-04-19 金 20:36:25 | URL | あお [編集]
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2013-04-20 土 23:35:21 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。褒め殺しのコメントに悶えております。夕鈴、宰相を含め、モテモテですものね。焼きもちを妬く陛下を妄想するだけでニヨニヨしてしまいます。真っ黒の陛下、私も大好きなんです。狼の意地っ張りが悶えるほど好き!!! その後の凹みを浩大に愚痴るのも好きです!次の話もよろしくお願い致します。
2013-04-21 日 00:52:13 | URL | あお [編集]
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