スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
此れから  1

「パラレル」 作品 「泡沫人の羽衣」 に出てくるオリジナルキャラのユーリが主人公の話です。 現代版の  【黎翔 X ユーリ】 です。 結婚式、新婚旅行を終え、一緒に住むことになったユーリの話しです。 その後が気になると言ってくれた方、ありがとうです! 
パラレル作品、ユーリはこれでお終いの予定です。


では、どうぞ。













・・・・・その視線に慣れるまでは、正直居た堪れなかった。

覚悟していたこととはいえ初めて訪れた時、黎翔の邸に勤めている人たちの視線はさりげないまでも、やはり興味はあっただろう。 影から何度も盗み見られているのが判るだけに、緊張が奔った。 皆が知っている夕鈴さんにとても似ているのだから仕方がないよね。
初めて黎翔に誘われ、邸に来た時はその大きさに驚き、大きな扉を開かれた先にいたメイドさん達の視線に笑顔が瞬時強張ったのを今でも覚えている。 声を上げそうになる人もいて、それを嗜める人が視線を逸らしながらも何度も窺うように私に視線を向けていた。

判っていたことだと気にしていないフリをして笑顔で挨拶をすると、少し戸惑い気味な柔和な笑顔が返って来て、夕鈴さんがどれだけ皆に慕われて過ごしていたのかが判った。
きっと、そんな私の機微に気付いたのだろう。 黎翔はこの邸に私を連れてくる時、限られた人だけが対応するように指示したのか、桂香さんと李順さんが主に姿を見せるようになった。 
だけど普段は仕事漬けで忙しい会長職の彼に強く求められ、二人きりになると大抵ベッドに直行し翌日まで翻弄され続け、他のメイドを見る機会も殆ど無く、それはそれで恥ずかしいと文句を伝えた。 まるで抱かれに来ているようで、嫌だと。
彼が寛げる場所は限られていると承知していたが、出来れば毎回閉じ込められる羽目になるのは恥ずかしいと、邸では食事をしたり会話だけを楽しむことをメインとして貰った。 
まあ・・・・ 大半は意見が通らないことの方が多かったが・・・・・・。


「奥様、お荷物はこれで御終いとのことです。 新婚旅行からお戻りになって直ぐの引越し作業、お疲れになりましたら直ぐに仰って下さいませ、奥様」
「ありがとう御座います、桂香さん。 ・・・・・あの、奥様は止めて頂けませんか? 出来ましたら、ユーリと呼んで貰えると本当に嬉しいの。 奥様の呼び方をされるたびに私の胃がきゅっとなって、おかしくなりそうです。 お願い出来ませんか?」
「でも御結婚されまして、旦那様の奥様にお成りになりましたのに」

桂香さんはすごくいい人で、李順さん同様、私の不安に何でも答えてくれるスーパーメイドさんだ。 夕鈴さんの面倒を邸にいた間ずっと見ていたという人で、彼女がどんな風に邸に姿を見せ、どんな風に消えて行ったのかを教えてくれた。
漠然とした話ししか聞いていなかった私に、その話は衝撃的で、最初は本当に信じられなかったが、黎翔も同じことを言っていたと思い出す。

『夕鈴は或る日突然 私の邸に姿を見せた異邦人だ。 信じては貰えないかも知れないが、私の邸敷地に突然現れて、数ヶ月で消えていった。 彼女は異世界の・・・・ 自分の想い人がいる国へと帰って行った。 根拠はないが、たぶん過去の人間なんだろう』

すでに邸内に彼女の痕跡は無く、メイドさん達の視線にその想い出を知るばかりだ。

「まだ・・・・ 私自身、会長の妻という自覚がありません。 自分の仕事も続けたいと我が侭を言わせて貰ってますし、邸に関しても何一つ口出し出来る立場でもありません。 ゆっくり時間を掛けて 『奥さん』 という立場に慣れたいと思っておりますが・・・・・。 それでもいいでしょうか。 自分の仕事場に近いという理由で、以前の家に泊まることも多いですし」

結婚したらこの邸の奥方として全ての管理を行い、メイドたちの動きを把握しなくてはいけないのだろう。 それはどんなに大変な仕事になるのか、未だ理解も出来ない上、仕事を続けて良いと言ってくれた彼に甘えることにしている自分だ。

「お客さん気分で何時までも居て良い訳ではないのは承知しています。 でも仕事を続けたいという気持ちを押し殺すのも出来ません。 ですから、皆さんに甘えることにはなりますが」
「では、ユーリ様と呼ばせて頂きます。 お二人の今後のことは承知しておりますので、頭を下げるなど、なさらないで下さいませ」

旦那様からもそのように承っておりますと微笑まれ、余計に肩身が狭い気がしてしまう。

「ユーリ様の部屋は、旦那様の部屋の隣になります。 届けられた衣装などは片付けておりますが、他のお品はユーリ様自身がわかり易いように、お好きな場所に置かれた方が良いだろうと、まだ荷解きもしておりません。 お手伝いさせて頂きますね」
「ありがとう御座います。 まあ、私物は余りないのですけどね」
「本当に、驚くほど少なくて・・・・・・・」

私物といっても、仕事の都合上遅くなる時は元の自宅に泊まることになるので、服や本など最低限しかこちらには移動していない。 大掃除がてら不必要なものは処分もしたし、ベッドやドレッサー、チェストなどは邸にあると聞けば必要はない。
身一つで嫁いだようなもので、恥ずかしくなるほど荷物がない。
少ない荷物で嫁いだ私のために新しく作られたのは、黎翔の私室隣の部屋を潰して作った居間と台所。 その部屋から私の私室となる寝室、バスルームへと続く。 その私室部分の広さは今まで住んでいた家と同じくらいだと判り、思わず眩暈を覚えた。

「三時頃にお茶をご用意させて頂きます。 それまではゆっくりお過ごし下さいませ」
「本当にありがとう。 あっという間に終わったから、少し邸周囲を散策させて貰うわ」
「天気も良いですしね。 南側には自慢の庭がありますので、ぜひご覧頂きたいですわ」

桂香さんが御辞儀をして退室したので、小さく溜息を吐く。
黎翔は仕事で夜には戻ると聞いているが相変わらず急がしそうで、旅行後のんびり明日まで休みの私は少し申し訳なく感じてしまう。 窓を開けて大きなベランダに出ると、一面芝生が広がっているのが見えた。 青い空の下、何処までも緑の芝生が広がり、その先に一層濃い緑の森が見え、その間を一本の舗装された道が続いている。
・・・・・・本当に広い。
誘われるように部屋から出て階下へ降りる。 階段上から玄関ホールを見ると、真白い床が艶やかに輝いていて、幾度か見たことのある風景だというのに、どうしてか急に胸が詰まるような感覚に囚われた。 首を傾げながら降り、玄関ドアを開けると眩しい陽の光りが降り注いでくる。

「いい天気・・・・・・!」

庭へ向かって歩いていると途中で会った庭師さんに 「どちらへ?」 と訊ねられたので、私が 「散策しながら探検です!」 と答えると、是非庭園の花壇も楽しんで欲しいと笑ってくれる。 
ちょっとした迷路があると聞き、ユーリは早速案内して貰うことにした。


芝のある広大な敷地は東側で、南側は庭園になっているのですと説明を受けながら周囲を見て、いつも屋敷内で過ごすことばかりだったなと思わず頬を染めてしまう。 
そして案内された庭には見事な薔薇のアーチが出迎えてくれて、感嘆の声を上げた。 これが自慢の巨大迷路ですと、樹木で出来た迷路を教えられ、早速挑戦してみる。 

入り口から数メートル進んだだけで、その高さに出口がどちらだか判らなくなり右往左往していると、三階からメイドさんたちが 「ユーリ様、そのまま右へ!」 「次は左へ曲がって下さい!」 と声を掛けてくれた。 ようやく迷路から出てメイドさんたちに 「助かりました!」 と手を振ると、明るい声で笑い返してくれて、ユーリは嬉しくなった。
正式に黎翔と婚約をしてからは邸に足を運ぶ回数を増やし、邸にいる皆と話す時間を設けて今ではすっかり親しくなり、気兼ねなく過ごせる時間が増えている。 
桂香さんが早速申し伝えてくれたのか、皆から奥様と呼ばれずに済んだことも嬉しかった。

その後、季節の花々が咲き乱れ、眩しい陽の光を受けて輝きながら水飛沫を上げている噴水を見て楽しみ、庭師に庭の作りや迷路の話を聞かせて貰った。

「近い将来、旦那様とお子様達の笑い声が庭に広がることを楽しみにしております」
「そうですね。 私には兄弟姉妹がいないし、両親も他界しておりますので、賑やかになるのは嬉しいです。 近い将来、そんな光景が見られるのを私自身も楽しみにしてます」

目を細めて花々が咲き乱れる広い庭を見つめながら答えると、私の生い立ちを知らなかったのだろう、庭師が申し訳なさそうに深く頭を下げた。 

「それには皆様の協力が必要ですので、いろいろ御指導お願い致します。 まずは観葉植物を育てたいので教えて下さいますか? 実は枯らす方が得意なので・・・・・」
「では温室でも作りましょう。 以前よりバナナやマンゴーなどを植えてみたいと思っておりましたので、旦那様に御進言させて貰います。 マンゴーはお好きですか?」
「そ、そこまで大げさな・・・・・・!? マンゴーは好きですけど」

にっこり笑った庭師の笑顔はウォルターの父に何処となく似ていて、ユーリは苦笑するしかなかった。 噴水をしばらく眺めていると桂香さんが庭までお茶を運んでくれ、近くに置かれた椅子に腰掛けた途端、噴水上部から水が吹き出て驚き、顔が綻んでしまう。
庭師さんは仕事があると戻って行き、私は早速温かいお茶を楽しむことにした。

「ユーリ様、旦那様が出来るだけ早くに戻ると、先程お電話がありました」
「・・・・大丈夫なのかしらね。 仕事を持ち帰ることになるのでしょう? 李順さんも仕事の都合上、殆ど邸にお住まい状態と聞いてます。 お互いに休む暇もないわね~」
「ユーリ様がいらっしゃれば、旦那様は自主的にお休みを取られることになるでしょう。 では、少し早めに夕食となりますので御了承下さいませ」


こんなに幸せでいいのかな。 不思議な気がして、夢ではないかと目を閉じた。
本当は全て夢で、会長に会うことも無く、自分は仕事に打ち込んでいて・・・・・・・。
でも無事に式を済ませ、旅行に行き、引越し作業も終わっている。 全ての初めてを自分に与えてくれた愛しい人と、これから共に生活をするなんて、正直まだ実感が湧かないでいる。 桂香さんがトレーを持ち下がって行った後も、私は一人庭の椅子に座り、まどろみを楽しんだ。

本当に夢みたいだ・・・・・・。



ふと何かの気配を感じた。
目を開けて、周囲を見ると噴水の水が綺麗に上がり、日の光に輝いて見える。

・・・・ここじゃない。
立ち上がった時にテーブルに何処かぶつけたのか、小さく茶器が揺れる音がした。 足を進ませ邸を回り、東側の芝生の広がりを目にすると、遠くの森が揺れているのが目に映った。 風が少し出てきたのだろうか。 初夏近いこの時期、風は緑の息を濃くしてユーリに届けられ、胸いっぱい吸うと頭の芯がぐらりと動いたような気がした。 それは眩暈にも似た高揚感。

・・・・ここから近い。
草いきれのする芝を誘われるかのように歩く。 ところどころに低木を寄せ集めたような小さな茂みがあり、若々しい緑が萌えているが、ユーリはそれを目にすることなく足を運ばせた。

・・・・もう少し。
同じような茂みは幾つも点在しているというのに、目的の場所でもあるかのように足が進み、ある場所の茂みに近づくと自然に足が止まった。 そのまま周囲に目を移すと、森へと続く舗装道路と何処までも青い空が見える。 疎らな雲が流れゆく様に胸が締め付けられ、もしかして自分は泣きたいのかなと思えた。

「ここ・・・・・」

小さく呟いたのは自分なのだろうか。 
そのまま暫く立ち竦んでいたようで、目に映る風景が澄み切った青からゆっくりと淡い桃色へ、そして赤紫へと転じていくのを感じる。 小さく息を吐きながらゆっくりと腰を下ろし、そのまま寝転がると深く安堵出来る自分が不思議で、同時にそれを待ち望んでいたかのようにも思えた。 


目に映る風景は藍と茜色が混在する夕刻へと変わり、目を閉じると濃い草の匂いに包まれる。







→ 次へ



スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 00:01:01 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
その場所ってやっぱりあの場所?黎翔さんが青くなりそうですよね…

続きを待ちます・ドキドキ・
2013-04-20 土 05:39:17 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。そうそう、その場所って、黎翔が青くなりそうな場所です。ニヨニヨしながら楽しく書かせて頂いております。御付き合い頂けて嬉しいです。あまり長くせずに上手くまとまるといいなと・・・・ 今は思っております(笑)
2013-04-20 土 12:44:10 | URL | あお [編集]
その後話!
一生に一度の忘れられない式の後話!

幸せと不安感の中での午後の一時、
何やら呼ばれたような感覚のユーリさんですが(^_^;)
ドキドキします\(>_<)/

黎翔さん、早く帰って来て~!!
2013-04-20 土 23:42:02 | URL | ダブルS [編集]
Re: その後話!
ダブルS様、コメありがとう御座います。反発あるかとちょっとドキドキで始めちゃいました。夕鈴出てこないのに皆様優しくて、嬉しい私。 御付き合い下さると超嬉しくって、小躍りしちゃいます。よろしくお願い致します。
2013-04-21 日 00:54:19 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。