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此れから  3
急に冷たい雨となりましたね。体調崩れないように暖かく過ごそうとコタツに潜り込み、思い切り爆睡しました。貴重な日曜日がぁ~! でも娘が餡かけ丼を作ってくれたのでラッキー!



では、どうぞ













廊下から響くように聞こえて来た黎翔の笑い声にただ恥ずかしくなり、ユーリが膝を抱えて身を竦ませていると、扉を叩く音がした。 返事をすると、桂香さんがワゴンと共に部屋に訪れる。 

「食事をこちらで召し上がると伺いましたので、用意をさせて頂きます」

テーブルに夕食をセッティングし始めた桂香さんに近付き、私は深く頭を下げた。

「桂香さんにも、他の方々にも心配掛けて・・・・ ごめんなさい」 
「いいえ! 気付かずにいた私どもが悪いのですから、ユーリ様が頭を下げることは御座いません。 お部屋でお休みになっているものだと思い込み、確認もしませんでした」

いやいや、大人が一人、何処に居ようと普通確認などはしないだろう。 
ただ旅行から帰ったばかりで、これからは奥さんとして過ごす邸の皆に黙って姿を消し、会長が帰宅する時間に出迎えもせずに外で居眠りしていた自分が悪いだけだ。 
桂香さんが 「旦那様がとても御心配されておりました」 と伝えて来たので、私は深く頷いた。

「・・・・それは伝わって来た。 これからは充分気を付けます」

でも何故あの場所に足が向いたのか、未だにわからない。 会長のあの動揺で確信したが、夕鈴さんがあの芝で姿を消したなんて本当に知らなかった。 
ぼんやりと視線を動かし窓を眺めていると、既視感に包まれるような不思議な感じがする。
黎翔にはこれ以上聞けない。 
聞いちゃいけない気がするし、聞いて彼が夕鈴さんを思い出してしまうのが辛いと、厭だと心が訴えている。 情けないほど卑屈な考えに自嘲するような薄笑いが浮かびそうになるほどだ。 

カーテンを閉めていると黎翔が戻って来て、早速食事を開始した。 桂香さんが給仕をしながら私の荷物の少なさに驚いたと話し、黎翔が苦笑を浮かべる。

「明日は私も休みだから、買い物に行こうか」
「・・・・買い物って、何を?」

クローゼットにはウェディングドレスを採寸した時のサイズを元にしたのだろうか、一体何時着るんですかと訊ねたくなるようなドレスが何着もぶら下がっており、更に誰が購入したんですかと問い質したくなるようなセクシーな下着やナイティなどが引き出しいっぱいに詰まっていた。 

「ユーリと一緒に出掛けたいだけ。 もちろん君の好みも知りたいからね」
「そういえば、一緒にお出掛けって公園以外、余りなかったかも・・・・」

考えると楽しくなって黎翔を見ると、彼も笑顔を浮かべているから、私は大きく頷いた。 
下手をすると何でも買い与えようとするから注意が必要だけど、一緒に出掛ける機会は滅多にないだけに嬉しくなる。 いつもプレゼントして貰うばかりだから、彼の気になるものをリサーチして、今度給料が入ったら彼にサプライズプレゼントするのはどうだろう。
ユーリは食後のコーヒーを飲みながら自分の考えに没頭し始めていた。
 
お腹を鳴らして真っ赤な顔で怒り出した後から、いつも通りの様子を見せるようになったユーリに深く安堵しながら、未だ指先が痛いほどに震えそうになる。 
私がどれだけの恐怖に襲われたのか、君は気付くことはないだろう。 
夕鈴とは違う人間だと判っているはずだった。 
だから消えることは無いと、居なくなることなど無いと判っていたつもりだった。 
容姿が似ているだけで私の気を惹き、そして君らしい表情で、行動で、言葉で私を虜にした。 笑みで、怒りで、泣き顔で私を束縛した君を、束縛出来ないほどにいつの間にか深く愛しく思い始め、やっとここまで辿り着いたのだ。 婚姻だけで安心など出来ないとは判っていても、それは第一歩だと自分を安堵させた。 
翻弄されるのも、させるのも楽しいと何度君を怒らせただろう。 
生命力溢れる君の怒り顔が見たいと思う気持ちは、現実世界の君を実感したいと思ってのことなのだろう。 実感していないと危機感を感じるほどに心配になる自分がいる。

食事を終えて君を抱き締め繰り返しキスしていると、首筋まで赤く染めたユーリが見える。 
キスに弱い君に深い口づけをすると、いつものように最初は軽く抗い、そしてゆっくりと身を任せ、そして陥落していった。 
きっとこのまま抱けば酷くしてしまうだろうと思いながら、膝から崩れそうな君を掻き抱き、奥の寝室へと移動する。 恐怖に苛まれるこの気持ちが落ち着くまで君を貪り続け、きっと明日は出掛けることなど出来なくなりそうだ。 

「好きだよ・・・・。 ユーリ」 

強く実感したいと思う気持ちを抑えて、そっとベッドへ腰掛ける。 リネンの波へ沈みゆく君を見つめながら顔を近付けキスを繰り返す。 甘い吐息に溺れながらユーリの背に腕を回し優しく抱き締めると、君は黙って私の背を撫で返してくれる。 暫らく肩から背へと何度も優しく撫でていた君は、私の耳元に小さく呟きを零した。

「・・・・・震えるほど、怖いの?」

君の呟きを耳にして、何を言われたのか判らずに私は顔を上げた。 ユーリは笑みを浮かべながら眉根を寄せていて、その表情に胸が締め付けられるような気持ちを味わう。

「私が何を怖がっていると? ユーリ、君は何を考えている?」
「震えているから、怖がっているのかなって。 会長の気持ちの奥に今も夕鈴がいるのは知っているし解っている。 ただ彼女を失った時、貴方がどれだけ恐怖したんだろうと考えると・・・・悲しいのとは違う、な。 思い知らされたって感じがしたの」
「私の気持ちの奥にいるのはユーリだ。 求めるのも君だけだというのに、何を解っていると言うんだ。 比べることなんか出来ない。 ユーリ、君は・・・・・」

肘をついて身体を起こしたユーリは私の頬に手を伸ばし、何度も頷いた。 わかっていると、大丈夫だよと微笑みながら頬を撫で、そして首に腕を絡ませる。 

「ごめんなさい、私も会長のこと大好きよ。 一緒になれてとても嬉しい。 好きでいてくれてすごく嬉しい。 でもごめんなさい、今日はひとりで寝かせて? 貴方に見せたくない自分が表面に出そうで、今は一人で居たい。 強く抱いて欲しいと思う気持ちもあるんだけど、汚い気持ちが溢れそうだから・・・・・・」
「ユーリ、お願いだ。 どんな気持ちも伝えて欲しいと」
「・・・・・明日、一緒に出掛けましょう。 今夜中に何を買おうか部屋を見回して考えるわ」

離れていく熱に手が伸びるが、あっという間に君はベッドから離れてバスルームへと消えて行った。 視線を合わせずに背を向けたユーリに愕然としてしまう。
君が言うように自分は震えていたのかと両手を広げるが、よく判らない。 ただ離れた熱を求めて、ユーリが閉ざしたバスルームの扉に近付き、抑えた声で開けて欲しいと乞う。

「このまま君と明日まで逢えないままでは眠れない。 君が望むなら何もしない。 傍にいて欲しいだけだ。 頼むからドアを開けて顔を見せてくれ、ユーリ」
「・・・・・今は酷い顔をしているから」
「ユーリ! どんな顔でも、それは私がさせているんだろう? 頼むから開けてくれ」
「ごめんなさい、今は厭。 でも明日は普通に戻っているから」
「その前に顔を見せてくれ、頼むから!」
「・・・・・」

返事が途切れて水音が聞こえ出した瞬間、私は扉の向こうのユーリに怒鳴っていた。

「ドアから離れろっ!」

思い切り扉を蹴ると、中からユーリの驚きの怒声が返ってくる。

「なっ! 莫迦なことはしないで!」
「莫迦なことをさせているのはユーリだ! いいから退いていろ!」

数回の蹴りで扉は壊れ、困惑したユーリが私の顔を見るなり怒りを露わに睨み付けて来た。

「何をするのよ! 夜遅くにこんなことして、莫迦じゃないの!?」
「煩い! 開けてくれと言った時に開けないユーリが悪い!」
「今は厭って言ったでしょう! も・・・・ どうしてよ。 一人で考える時間もくれないの?」
「一人で何を考える? 私から離れることか?」

壁に凭れていたユーリが床へしゃがみ込み、フルフルと首を振った。 覆い被さるように君を包み込み、強く懇願を繰り返すしか出来ない。

「顔を・・・・ 見せて、ユーリ。 離れないで、傍にいてくれ。 頼むから・・・・」
「離れるなんて言ってない。 今は顔を見せたくないって言っただけ。 一人にして欲しいって頼んだだけじゃないの。 ・・・・どうしてこんな乱暴なことを」

俯いているユーリの顎に手を掛けると、肘で打ち払われた。 身体を丸めた身体に触れると、君から小さな震えが伝わってくる。 君の願い通りに離れるべきか瞬時考えが浮かんだが、時間が経てば経つほどに澱のような蟠りが残るだけだろう。 頑固な君が殻を作る前に話しをする方がいいに決まっている。
膝裏に手を入れ抱き上げようとすると、低い位置で足払いが跳んで来た。 予想はしていたので逃げられたが、その後の手刀には驚いた。 暴れようとする両手を乱暴に掴み取り、急ぎベッドに放り投げてベッドカバーでユーリの身体を包み込む。 時に君の手足はしなやかな鞭のように動き、下手をするとこっちが怪我をしそうになる。
古武道の道場に通うのを反対して正解だ。 これ以上君が強くなっては敵わなくなる。

「はっ・・・・なしてよ! 出して! ど、何処から紐を取り出したのよ!」
「バスローブの紐だよ。 こうでもしないと話し合いも出来ないだろう?」

ベッドカバーで覆った身体に紐を巻き、その上に跨ると、ユーリはようやく諦めを見せた。 
怒った顔で見上げてくるから睨み返すと、途端に涙目になる。 
きつく縛り過ぎたかと跨いでいた足を退かそうとした時、ユーリが暴れ始めたからベルトを外して足を括りつけることにした。 
この兎は逃げるのが早いから手に負えない。

「まず先に言わせて貰う。 君が懸念するようにあの場所は夕鈴が消えた場所だ。 何故君があの場所で寝ていたのかは判らないが、私の問いに不確かな返答をされたら不安になるのは仕方がないだろう」
「・・・・私は消えたりしないもの」
「だが、何故あの場所に足が向いたのか覚えがないのだろう? それだけで充分だ。 不安になる私の気持ちを判ってくれ。 君を失いたくはない!」
「消えたりしないって言ってる! そ、んな風に心配されるのは嬉しいけど、だけどお願い。 今晩だけは一人にして。 こんな気持ちのまま傍に居たくない!」
「絶対に駄目だ。 ユーリの不安が消えるまで傍から離れないからな。 君を逃がさないと言っただろう! 君にどれだけ参っているか教えた筈だ。 教え足りないというなら、直ぐにでも島に監禁して理解出来るまで身体に教え込むぞ!」
「・・・・って、そ、そんなの厭よ!」

真っ赤な顔を見せるユーリに嗜虐心が擡げそうになるが、今は言葉での説得を先にする。

「では一人で考えるのは無しだ。 ・・・・ユーリ、君の姿が見えないと知った時、どれほど心配したか解かるか? あの場所に足が向いたのは・・・・ 何か聞こえたのか?」






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

パラレル | 01:43:03 | トラックバック(0) | コメント(4)
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2013-04-22 月 09:40:43 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。不安で揺れるのも互いが気になるからで、不確かなものが間にあるかでしょうな。 その不確かなものの存在を認め、互いを認め合うのが次になります。今回は短いので、御付き合いよろしくです。
2013-04-22 月 20:31:05 | URL | あお [編集]
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2013-04-22 月 22:27:32 | | [編集]
Re: 本気喧嘩!!
ダブルS様、コメありがとう御座います。本気の蹴りでは大体5回くらいで扉は壊れます。女性でも本気を出せば、ね。鍵が壊れた時に蹴った時がありますが、反動もすごかった。(笑) まあ、黎翔さんは現代版で結婚後なので、どういう流れになるかは・・・・・・・ 御想像通りになるでしょう。ほほほほほ。
2013-04-22 月 23:21:26 | URL | あお [編集]
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