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此れから  4
天気が良くなりましたね~。犬の散歩も楽ですわ~。ちっとも痩せませんが(爆)
花粉は落ち着いたのかしら? 目の痒みも無くなっていることにふと気付きました。


では、どうぞ















問われた言葉に顔を上げると、バスルームからの灯りに浮かぶ黎翔の横顔が見える。 
悲しげに顔を顰めた、今にも泣きそうな顔が見え、ユーリは胸が苦しくなった。 
傍にいて欲しいと請われ、求められているのは自分だけだと充分に教えて貰った筈だ。 その過程がどうであれ、自分自身も彼を求めて結婚を承諾し、そしてここに居るというのに。 二人で幸せになろうと、相手を幸せにしたいと思って結婚したというのに、彼の態度に過敏に反応して勝手にいじけた自分が情けなく感じて、ユーリは泣きたくなって来た。 
彼に・・・・ 黎翔にこんな悲しい顔をさせるつもりはなかったのに。

「会長・・・・ううん、黎翔。 まずはごめんなさいって謝らせて。 謝らなくていいって言わないで、黙って頷いて欲しい。 心配掛けたのは私だし、ここまで怒らせたのも私だってわかる。 扉を壊しのは驚いたけど・・・・・ ちょっとだけ、怒られて嬉しい」
「嬉しいなら毎日怒ろうか? ・・・・ 君に怒鳴ることはしたくないけど、君が望むなら」

そうじゃない!とユーリはベッドカバーの中でもがく。 黎翔は困った表情を浮かべて見下ろすと、ユーリが眉根を寄せて本当に申し訳なさそうな顔をしているから足の拘束を外すことにした。 
跨いで押さえつけていた君の身体から退き、バスローブの紐を弄ぶと 「・・・・もう暴力は振るいません」 と真っ赤な顔で宣誓をするユーリ。
その言葉を聞き、黎翔はゆっくりと紐を解いてベッドカバーを外し、ユーリの頭をそっと撫でた。 恥ずかしそうな顔で、それでも溜息を吐きながらバスルームの扉を見たユーリは、黎翔にもう一度 「ごめんなさい」 と呟き、頭を撫でる手に手を重ねる。 ぐしゃぐしゃになったベッドの上から這い出た二人は縁に腰掛け、互いの身体に寄り添いながら暫らくは黙って手を握り合った。 

「扉を壊すほど怒ったのは私が心配だったからでしょう? それが嬉しいって言いたいの。 そんなに怒ってくれるのは黎翔だけだもの。 ・・・・・原因がなんであれ、ね」
「ユーリを愛しているから怒ったんだ。 人の話しを聞こうとしないから」
「うん、聞こうとしなかった。 聞きたくなかった・・・・。 少し一人になりたかった」

項垂れたユーリは手をぎゅっと握り、瞳を閉じて甘えるように頬を黎翔の胸に摺り寄せた。   

「・・・・・何か聞こえた訳じゃないの」

沈黙の後、ユーリが零した呟きに黎翔は小さく頷いた。

「じゃあ何故あそこにユーリの足が向いたんだろう」
「・・・・何かの気配を感じて、気付くと芝を眺めていて・・・・」
「気配?」
「でも・・・・ ここではない気がして歩いていたら・・・・ 聞こえた・・・・ 誰の? わから、ない。 だけど・・・・ ここだって解かった。 ここだって、ここだったんだって・・・・」
「ユーリ?」

途中からユーリの声が単調になり、身体からは力が抜け視線が彷徨い出したのがわかり、黎翔は訝しみながら肩を掴んだ。 正面から彼女の顔を見ると空ろな表情をしていて、急に立ち上がろうとするから慌ててユーリを抱き締める。 小声で意味の判らないことを呟きながら窓に視線を向け、尚も立ち上がろうとする彼女に対し、黎翔は眉間に皺を寄せて押さえ込もうとした。

「ここだって解かって、空が・・・・ 雨の音? 土の匂いと・・・・ 私は・・・・・」
「ユーリ・・・・ッ!!」

強く抱き締めると途端に全身から力を抜き、ユーリは私に凭れ掛かって来た。

「れ・・・ しょう、さ・・・・」

首を傾け自分を見上げる瞳は光を失っているようにも見えて、黎翔の背がざわめいた。 
大きく見開かれた君の瞳は誰を見ているのか。 
今、君が見ているのは自分以外の誰なんだと、黎翔の胸中に恐ろしいほどの不安が奔った。 

「ユーリ、駄目だ! 君が見るのは私だけだ! 消えないと言ったばかりじゃないか! ・・・・行くなっ。 頼むから、傍に居てくれ・・・・・」
「・・・・・黎翔様。 ・・・・それは彼女に伝えて下さい」

強く抱き締めた胸の内から柔らかな声が響いた。 聞き覚えのある、その口調に体が強張る。

「黎翔様・・・・。 出逢えたのですね、貴方様だけの方に・・・・・・」
「そ・・・・・ 夕鈴・・・・?」

腕から力を抜きユーリの肩を掴み顔を覗くと、泣きそうな顔で私を見上げる彼女が居た。 
ユーリの顔はそのままに、そこにいたのは柔らかな笑みを浮かべた彼女だった。 微笑んでいるのに泣きそうな、最後に見た時の夕鈴の表情に黎翔も苦笑しながら頷きを返す。

「君の・・・・・ 君の言うとおり、出逢えたよ。 愛しい私だけのユーリに」
「・・・・・・・・・」

静かな笑みを浮かべる君は何か言いたげな視線なのに、とても満足そうに見え、私は不思議な感慨を覚えながらじっと見つめた。 その深い榛色の瞳からは慈愛にも似た感情が溢れ、もう言葉は要らないのだとわかる。 もう一度小さく頷くと彼女は口角を上げて、静かに目を閉じた。 

瞼が閉じられると、ゆっくりとユーリの首が傾き私の胸に凭れ掛かった。 ユーリに意識がないのが判ると同時に、彼女はもう帰ったのだと、二度と現れないのだと理解出来た。 
脱力して身を任せるユーリを抱き締め直し、胸に強く押し付ける。 
隙間がなくなるほど抱き締めても足りないと、もっとユーリを実感したいと力を込めても切ないほどに満足出来ない焦燥感を耐える。
 
ユーリが夕鈴に対して胸に押し込めていた感情が少しだけ解かり、そして更に愛おしくなる。
あの一瞬の視線で自分がどれだけの恐怖を味わったのか。 君の視線の先に自分ではない自分が居ると理解した瞬間、全身から全ての血の気が下がる気がした。
今は居もしない相手に対して不安を募らせるなど莫迦なことを考えるなとユーリを嗜めていたが、ここに来て自分がその気持ちを味わうなど思いもしなかった。 ユーリの空ろな視線の先にいる、自分に似た 『黎翔』 に改めて苛立ちを覚え、そして今、やっと理解出来たのだ。 
しかし、もう二度と同じことは起こらない。 
ユーリに不安を覚えさせる真似はしないし、ユーリに不安を覚えることもない。 
君は確かにここに居て、それを実感出来ると確信出来たから。
あとはその確信を実感させて欲しいと、抱き締める胸の中の確かな熱に口づけた。




「・・・・ん。 え・・・・、あれ・・・・・ 私、寝ちゃった?」

ほんの短い時間のはずだった。 
それなのにユーリの声が胸の内から聞こえた時、ずいぶん長い時間君を抱き締め続けていたように思えるほど、腕や指先が痺れていることに気付く。

「・・・・うん、少し寝ていたね。 精神的に疲れがあるのかも知れないね」
「そんな筈は無いと思うのだけど・・・・? 何処まで話しましたか、私」

もうそれはいいと頬を摺り寄せると、首を傾げながらもユーリはわかったと身体に手を回す。

「ユーリ、さっき一人で考えたいって言ったけど、私はそれを認めたくない。 君の傍にいたいし、私の傍にいて欲しい。 だから一人にはしたくない」
「・・・・・あのね。 会ちょ・・・ 黎翔が思うより私、貴方が好きなんだって気付いたの。 だから醜い自分を見せたくないって考えるんだなって。 どんな私でも良いと言ってくれても、やっぱり焼きもちを妬く自分は見せたくなかった。 ・・・・・でも、傍にいて欲しいって・・・・ そう言って貰いたいだけなのかも知れない。 結局は黎翔に甘えているんだって気付いた・・・・」

俯いたユーリから零れるその言葉は、私をただ嬉しくさせる。 
互いに同じ想いだと、どう伝えたら判ってもらえるのだろうか。 未だに心の底から私を信じることに戸惑いを見せる君に、どうやったらこの気持ちを判って貰えるのだろう。
ユーリだけが欲しいと。 誰の代わりでもない、君自身を求めているのだと。
離せない、離したくないと強く願う心の内をどう伝えたら判って貰えるのだろうか。

こんなにも判って欲しいと希う私に、ユーリは自分は焼きもちを妬いていると、甘えているんだと卑下して悲しげな顔を見せる。 それは本心からもっと束縛して欲しいと望んでいるようで、泣きそうになるほどに私を喜ばせるなど解かりはしないのだろう。

「ユーリ、君を実感したくなった。 ・・・・・いい?」
「いいって? ・・・・え? ちょ・・・・ 実感? ・・・・え、ドア壊れ・・・・・」

大きな瞳でバスルームと私を交互に見るユーリは、何を言われたのか直ぐには理解出来ていない様子だ。 頬を撫でながら啄ばむようなキスを落とすと、眉を寄せて困ったような顔を見せていたユーリが漸く意味を理解して、真っ赤な顔で睨み上げてきた。

「わっ、私が望むなら何もしないって・・・・ 言ったよね!?」
「焼きもちを妬くユーリに欲情しちゃったんだ。 甘えたいのは私も同じだよ・・・・・」

覆い被さるように口づけて、あとは・・・・・・・・・・・・・・・。





翌朝は扉を叩いても、声を掛けても、コールしても、二人が部屋から出てくることはなかった。 もちろん邸に従事する者は一通り声を掛けた後は、いつものことと部屋に近付くことは無い。

「・・・・・嘘吐き」
「可愛いユーリが悪いよね。 次の休みには絶対に出掛けるから、今日はもう少し溺れさせて。 もう少しだけでいいから、ね?」
「もう黎翔の言うことは信用しない。  もっ・・・ 触らないっ! や、あ・・・・・・」
「確信を実感するには一生掛かるかな? ああ、孕ませるっていうのも束縛にはいいかも」
「やぁ・・・・ そこ、いやっ! やぁ・・・・ あ、んん・・・・・・」


まさか仕事を再開したユーリがその後邸に戻ろうとせず、一週間近くも逢えなくなるとは、この時の黎翔は知る由もない。




FIN




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パラレル | 00:04:04 | トラックバック(0) | コメント(12)
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2013-04-23 火 00:28:29 | | [編集]
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2013-04-23 火 00:39:09 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、早速のコメありがとう御座います。仕事の都合上、邸への往復は無理だなと勝手に残した家ですが、家出用にされちゃうとは黎翔さんも可哀想です。翻弄され続けて下さいとほくそ笑む私です。 また次もお付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-04-23 火 00:50:59 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
慎様、早速のコメありがとう御座います。 現代版といってもオリキャラになりますが、苦情が無かったのでほっとしております。次はバイト夕鈴の話に戻ります。夫婦設定はunderで頑張って貰いましょう!(何を?:笑) 慎様も体調には充分お気をつけてお過ごし下さいませ。
2013-04-23 火 00:52:56 | URL | あお [編集]
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2013-04-23 火 01:37:17 | | [編集]
二人の不安が取り払われた様で良かったです・
夕鈴の意識が表れた時は夕鈴は夢を見ている状態だったのかしら?夕鈴も黎翔さんが唯一の人に出会えたことを理解してるといいのですが…
2013-04-23 火 06:01:53 | URL | ともぞう [編集]
Re: ステキ過ぎます!
ねこすけ様、初めまして。そしてコメありがとう御座います。あまりにも嬉しいコメントに几鍔出して続けちゃおうかなと悶えております。そう?そう?また書いてもいい?ドキドキ。パラレルだからお好みもあると思うので、余り長くてもな~って思っていたけど、こんな風に嬉しいコメントを貰うと妄想が湧いてきて止めようがないのに(笑)では、その内に・・・・。 また引き続き御付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-04-23 火 07:04:41 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。大丈夫です、夕鈴は理解してます。安心しております。ただその時の夕鈴がバイトのままか、ちゃんと陛下と心が通じ合えたかは「?」としましょう。明るい未来の中、夕鈴が心配の余りちょいと遊びに来たと思って下さい。(笑)御付き合いありがとう御座いました。
2013-04-23 火 07:06:52 | URL | あお [編集]
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2013-04-23 火 14:40:32 | | [編集]
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2013-04-23 火 21:53:36 | | [編集]
Re: 世話焼きオバチャン登場(笑)
ダブルS様、コメありがとう御座います。きっと二人が気になって『世話焼きオバチャン』としてでてきたんでしょうね。(笑) そうそう、こちらの黎翔さんも「おあずけ」「待て」は無理ですね。本能のまま突き進んでおります。お買い物、行けるといいですねぇ・・・・・。
2013-04-24 水 00:24:01 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ねこすけ様、コメありがとう御座います。几鍔兄貴を出すのは楽しいですよね。あの人、本誌でも結構クールですから、もっと、こう、攻めてくれっ!!て突っ込みを入れたくなるんですよね。几鍔と方淵が焼きもち妬かすには一番動かしやすいです。次に浩大かな?李順さんは・・・・・・・・・。難しいです。でも・・・・。(ニヤリ) 引き続き、よろしくお願い致します。
2013-04-24 水 00:26:32 | URL | あお [編集]
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