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多事多難  1
バイト夕鈴の話しになります。 痛いことは無いと思うのですが・・・・・・。 やっぱり痛いかな? この先はまだ内緒ですが、先に謝っておきます。 ごめんなさい。
途中からオリジナルキャラも登場しますので、御了承の上お読み頂けると嬉しいです。


では、どうぞ















或る日、いつものように侍女を伴い夕鈴は書庫へと向かった。 
書架の整理と書簡の片付けの手伝いをするためだ。 新しい懸案が纏まり、いくつもの草案が書かれた書簡や過去の事例が記された竹簡、決済済みの書類などが卓に山と詰まれ、忙しそうに動く官吏たちの代わりに少しでもお手伝い出来たら嬉しいと自ら進んで行っている仕事。
お妃仕事ではないが、黙って政務室に腰掛けていても陛下がいないのでは意味が無い。
後宮にまで侵入してくる刺客対策で政務室へ足を運ぶようになったが、今は仲良し夫婦の延長でもある仕事なのだから陛下がいない時に意味も無く笑顔を浮かべていても仕方がない。
上司である李順から許可を貰っているから、時折ひょいと顔を出し、書簡が溜まっているようなら片付ける。 政務室に行く前や帰りに立ち寄り行っていることで、それを官吏も暗黙の了解と、妃が居ても気にせずに動き続けるようになっていた。

未だに文句を言う剛毅な官吏はただ一人。

「・・・・・また厭きもせずに後宮から出張る妃妾とは。 貴女はご自身の立場を良く考えた方がいいのではないか。 妃ならば陛下の為にも後宮に籠もって然るべきであろう」
「補佐官として御自身の御仕事に邁進されるべきところを、他にも目を向けるなど、随分余裕が御座いますこと。 柳方淵殿」
「貴女に気遣われる術はない。 自分の為すべきことなど承知している。 それよりも御自身を鑑みるべきだと進言している。 『余計な』 ことなどせずに後宮に戻れ!」
「まああ、御心配頂きありがとう御座います。 でもそのような 『余計な』 御気遣いは御遠慮させて頂きますわ!」

夕鈴が団扇で口元を隠しながら凄みを利かせた笑みを送ると、憎々しげに睨ね付ける方淵。
薄っすらと花曇の空模様で少し肌寒かったはずの書庫が、二人の火花散るいがみ合いで一気に温度上昇し、その場にいた官吏らは背に額にじわりと汗を滲ませる。 
先に夕鈴が周囲の視線に気付き曖昧な笑顔を浮かべて書架へ向きを変え整理を再開し始め、方淵も歯噛みしながら視線を逸らして必要な書簡を探し始めた。 
忙しい時期であり出入りの激しい書庫で、いつまでもいがみ合っていることは出来ない。


しばらく片付けをしていると、人の流れが落ち着いて来たのに気付く。
卓上に竹簡を広げて真剣に内容を読み耽っている方淵がいたので、邪魔にならないように小さく息を吐き次の書簡を書架へ仕舞う。 静かに手を伸ばして書簡を取り、内容ごとに書架に移動している内に、卓上の書簡がひとつふたつと零れ落ちそうになるのが視界の端に見えた。

「・・・・・あっ」

巻物なら兎も角、竹簡が落ちて割れては大変と急ぎ手を伸ばした夕鈴だが、裾を踏み身体が大きく傾ぎ、違う意味で大変だと慌てた。 自分と竹簡と瞬時悩んだが、脳裏に李順が浮かび、迷っている暇は無いと竹簡に手を伸ばす。

「莫迦かっ!!」

夕鈴は竹簡に手を伸ばしながら、この後床に叩き付けられる自分を覚悟した。 
・・・・・が包み込むように肩が支えられたと思ったら身体が反転していて、何故か天井が見えて夕鈴はぽかんと呆け、そして覚悟していた痛みが無いことに気付く。

「あ、れ・・・? 痛くない・・・・」

ふと胸に抱え込んだ竹簡が無事なことに気付き、夕鈴が心から安堵の息を吐くと、背後から怒気を孕んだ低い声が聞こえて来た。

「ど・・・・ どけ・・・・。 は、やく・・・・」
「・・・・え?」

慌てて起き上がって振り向くと、床に倒れ込みそうになっている方淵が見えた。 
それも私の身体を庇いながら片手で床への激突を阻止してくれたのだと判り、転がるように方淵の上から飛び降り真っ青になりアワアワしていると、彼の小さな舌打ちと共に目の端に卓に縋った方淵の片手が震えているのが見えた。
私を庇いながら卓に手を伸ばし、自分の身体が完全に床に倒れるのを阻止したようだが、筋でも違えたのか卓に縋ったままの手は未だ小刻みに震え続けている。

「あ、あ・・・・ 方淵殿。 て、て、て、手がどうかされましたか・・・・・」
「貴女に心配される謂われはない! ・・・・・・何でもないから気にするな。 それより粗忽な真似などするくらいなら、やはり後宮に引きこもるべきだ!」

卓から手が離れた瞬間赤いものが見えた夕鈴は方淵の言葉など意に介さず、手を伸ばしてそれを広げた。 掴んだ卓の端がささくれ立っていたのか、木の小片が手の平に深く刺さり、酷く血が滲んでいるのが判り、夕鈴は眉間に皺を寄せて方淵を見上げた。 一瞬、驚いた表情を浮かべた方淵だが直ぐに素っ気無く手を払い立ち上がると 「大丈夫だ」 と強く言い放った。

「だ・・・・ 大丈夫じゃないっ! 早く木っ端を取らなきゃ駄目!」
「なっ! 大丈夫だと言っただろう!」
「早く取らなきゃ、余計に深く入り込むでしょう! いいから動かず見せなさいっ!」

手を強く引っ張り真剣な表情を見せる妃の勢いに呑まれて、方淵は動けなくなった。 
広げた手の平から木の小片を取り除く妃は眉間に皺を寄せた真剣な表情で、血に驚くことも怯えることも無く手を動かしている。 気付けば涙目になっているのが判り、方淵は文句を言おうと口を開き、そして何も言えなくなった。

大きな木欠片を取り除いた夕鈴は顔を近付けて傷口を確かめ、 「痛いですか」 と尋ねた。 
方淵が眉間に皺を寄せたまま無言で立ち上がり、袖口に手を隠して書庫を出て行こうとするから追い縋るように立ち上がると、入口に数人の官吏が驚いた顔で自分達を見ているのが判った。 
妃がいつまでも床に座り込んでいる訳にはいかないと立ち上がり急ぎ裾の埃を払っている間に、方淵も入口にいた官吏らも姿を消し、夕鈴はがっかりと項垂れてしまう。

「またどんな噂を流されてしまうかしら・・・・・」

自分が粗忽なばかりに噂が流れたり、中傷されるのは仕方が無いが、それが上司である李順の耳に届いた時、恐ろしいほどの叱責が襲い掛かる。 それも自分の粗忽さが原因で、今回は方淵にまで迷惑が掛かるかも知れないと思うと、李順の冷たい笑みが思い出され、泣きたくなるほど怖いと夕鈴は小さく震えた。





しかし自分の粗忽さが原因で、とんでもない事態になるとは思いもしなかった。 李順から呼び出しを受けた執務室で差し出された紙に視線を落とし、夕鈴は一気に蒼褪める。

「な、な・・・・、何ですか、これは・・・・・?」
「それを伺いたいのは此方の方です。 夕鈴殿の本来の仕事は何でしょうか」
「・・・・臨時花嫁で、陛下の縁談避け。 囮、兼掃除婦です・・・・・・」

上司からの大仰な嘆息が耳に響くも、夕鈴は肩を竦めて震えるしか出来なかった。 まさか、そんな中傷文が政務室に飛び回るなんて、一体如何してと蒼褪めるしか出来ない。 


『 陛下唯一の花は王の為に滅私奉公している者を陥れようとしている。 
 花の多情なる行いは王宮に禍を蔓延させるだろう 』


「内容に心当たりはありますか? 先日書庫で柳方淵殿と一悶着あったとは聞いてますが」
「・・・・・・こけそうになった私を助けてくれて、手に怪我をしたのです。 手の怪我を確認させて貰っているところを見ていた官吏の方がいましたが、あっという間にいなくなって・・・・・。 もしかしたら誤解をされてしまったのでしょうか?」

そんな粗忽なことを、と呟いた李順さんに睨み付けられ、息が止まるかと思った。 
でもそれしか心当たりが無い。 書庫で方淵に助けられた翌日にばら撒かれた中傷文だけに、きっとあの時見ていた官吏か、その話しを聞いた者たちがしたことだろう。

「飛耳長目な人がいると思い、暫らくは後宮より出ずに掃除でもしていて下さい」
「・・・・・はい。 あの李順さん・・・・、柳方淵殿はこのことを御存知なのですか?」

眼鏡を持ち上げた上司は嘆息を漏らしながら首を横に振った。 
その仕草に夕鈴がほっとする間も無く、「判りません」 と返答が来て、ガッカリとしてしまう。 
もし彼の耳に、目に届いていたらどれだけの迷惑を掛けてしまうのか。 
父親である柳大臣だって、内容の中の人物が自分の息子と知れば、いい気持ちはしないだろう。 それどころか、柳大臣がこれを知れば、下っ端妃をどう思うか・・・・。
ジワリと浮かんだ涙が今にも零れそうになる。

「こういった中傷文は良くあることですが、それでも書庫でのことを知る人間がいるというならば、貴女は大人しく掃除をして、お妃教育本を隅から隅まで読み直ししていて下さい」
「はい・・・・。 申し訳御座いませんでした・・・・・」

悪気は無かったのだが粗忽な私が、書庫という狭い場所で不用意に一官吏に近付いたことは妃バイトをしている上で、失敗だったと反省するしかない。 
誰がこんな中傷文をばら撒いたんだと憤っても、今更なことも判る。 
今はただただ、深く反省するしかない。





夜に妃の部屋へ訪れた陛下は夕鈴が意気消沈している訳を知っている筈だった。 
落ち込む妃を励ますために訪れたのだろうと侍女達は思い、退室の合図を待っていたのだが、その合図はなかなか訪れず、冷ややかにも見える陛下の視線は妃に突き刺さるように注がれ、対して妃は強張った微笑を浮かべているのが見て判る。

「陛下、お茶をどうぞ・・・・。 夜になるとまだ肌寒いですわね・・・・」
「ああ、そうだな。 心底冷える・・・・」
「そこまで冷えますか? では上着を御用意致しましょうか」
「いや、冷えるのは身の裡だ。 上着は必要ないだろう、我が妃が温めてくれればいい」

いつもの甘い台詞に違和感を感じて顔を上げると、薄く口角を上げて 『妃』 を見つめる陛下がいて、夕鈴は微笑むことも出来ずに卓に視線を落として俯いた。 いつもなら直ぐに侍女を下がらせて、「中傷文なんか気にしないでね」 と小犬陛下で言ってくれるだろうに、今日に限って何故なんだろうと不安に襲われる。
 
まさか本当に私が官吏を、方淵を陥れようとしていると思っているのだろうか。
もしかしたら、早速柳大臣から何か苦言があったのだろうか。
陛下唯一の妃を上手く演じられないことに呆れたのだろうか。


悪い考えが頭に浮かび、夕鈴は蒼白のまま卓上の茶器を見つめ続けた。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:21:01 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-04-24 水 01:18:34 | | [編集]
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2013-04-24 水 03:25:53 | | [編集]
ひさしぶりに方淵が絡んできて私的には、とても嬉しいです・

陛下のいつもと違う様子にハラハラしますが、夕鈴まさか、私クビですかぁ!と涙目で叫ばないですよね…さてどうなることやら
次の展開が楽しみです
2013-04-24 水 06:42:44 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。方淵との掛け合いのような言い合いっていつも楽しくて好きですね~。ドキドキして下さってありがとうです。のんびり、長く書かせて貰います。御付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-04-24 水 06:46:18 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメありがとう御座います。いつも来て下さっているようで恐縮です!!妄想がだだ漏れです。今回は痛い思いをさせないように・・・・・・・なるといいな(笑)臨時花嫁だと李順さんが絡むのですが、やっぱり優しい李順さんが書けない・・・。くぅうううっ! オリジナルキャラも出て来ますのでよろしくお願いします。
2013-04-24 水 06:51:34 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。そうなんですよ、方淵殿、久し振りです。あら、水月さんは?? 何処に行ったのでしょうか?陛下は狼のままで次に行きます。冷たい陛下もいいですが、夕鈴相手に冷たい陛下は困っちゃいますね。って、困った陛下を書いてますが(爆)ともぞう様の突っ込みに「ドキ」と焦っております。
2013-04-24 水 06:59:44 | URL | あお [編集]
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2013-04-24 水 20:01:23 | | [編集]
Re: 陛下の真意!?
ダブルS様、コメありがとう御座います。方淵はツンですよね~。 ちょっとデレが見たい気がする。 真っ赤な顔で照れている方淵って・・・・。 同じことを李順さんでも想像すると・・・・・。 妄想が難しいです。 む、難しい・・・・。 本誌が甘い分、こっちの陛下は超きびしー!! どうしましょう!
2013-04-24 水 22:43:49 | URL | あお [編集]
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