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多事多難  2
本誌見てない方、ごめんなさい。でも言いたい。今月号、良かったー!!!!!
なんかフラグ立ってた!!萌えた。萌えました。ご馳走様でした。
そして時間ある時に、過去作品をちょいちょい見直し作業中。 結構誤字があったり、句読点が変だったり、恥ずかしさと共にちょこちょこ直し作業をしてますので、こちらが滞るかも知れません。 でも遊びに来てくれたら嬉しいです。


では、どうぞ














「・・・・怪文書が王宮に回っていることで、陛下に御迷惑をお掛けしてますよね」

自分の与り知らぬこととはいえ、怪文書の一端は自分自身が原因だろうと夕鈴は唾を飲み込んで陛下に訊ねた。 薄く口角を上げた陛下は黙ったまま私を見つめるだけで、その場の雰囲気に居た堪れなくなる。 もしも陛下が怪文書で機嫌を悪くしたというなら、謝るべきなのだろうか。
顔を上げて口を開こうとした時、陛下が手を上げて侍女らを下がらせたのが判った。
狼陛下が妃の部屋でいつまでも機嫌悪く過ごしていることを心配そうに見ていた侍女は戸惑いの表情を浮かべたまま退室して行き、静かな部屋が更に静まり返る。

「・・・・・夕鈴」

静まり返った部屋に響く低い声に全身が竦み、咄嗟に返事が出来ない。 
夕鈴が強張った顔を陛下に向けると、静かな笑みを浮かべているが目だけは笑っていないことに気付き、全身に冷水を浴びたように震えてしまう。

「君が頑張っているのは知っているよ。 何事にも一生懸命に取り組んでいるのも、ね」

一見穏やかな声色が耳に届く。 だけどそれは狼陛下の低い声色のままで、演技が必要なくなった場所で、何故そんな演技を続けるのだろうと夕鈴は震え続けた。

「書庫で柳方淵の手を握り、何をしていたのか。 教えてくれるだろうか」
「・・・・す、裾を踏んで転びそうになった私を庇った方淵殿が卓で手を怪我したんです。 木の小片が刺さり血が出たので、それを取って居ただけで・・・・ に、握っていた訳ではありません」

粗忽な自分を露呈するようで情けなくなるが事実は事実だ。 
そのせいで方淵にまで迷惑が掛かってしまうとは思いも寄らぬことだし、そのことで陛下の機嫌がこんなにも悪いのかと項垂れてしまう。 
陛下の機嫌が悪ければ官吏らの士気も下がるだろうし、良かれと思ってしていた書庫整理も暫らくは禁止されている。 後宮立ち入り禁止で掃除をし、夜に陛下が渡ってくる時だけ妃演技をする。 後宮から出ないようにして過ごすことは構わないのだが、妃演技場所が限定される上、これでは縁談避けの意味がないように思える。

「中傷文の内容に関しては自分の失態も一因と判っています。 方淵殿にも迷惑を掛けることになり、バイトもちゃんと出来ずに本当に申し訳御座いません・・・・・・」

今は謝ることしか出来ないと椅子から立ち上がった夕鈴は陛下に頭を下げた。 重苦しい沈黙が流れ、どれだけ陛下が怒っているのだろうと震えるしか出来ない。 小さな嘆息が聞こえ、身を竦ませると陛下の手が肩に触れた。

「暫らくの間は立ち入り禁止区域の掃除をしていると聞いた。 浩大を就かせているが外には出ないようにして欲しい。 ・・・・・怪文書も噂も気にしなくてもいいからね」
「本当に・・・・・・・ 申し訳御座いません」

最後はいつもの優しげな声色だったが、夕鈴は頭を上げられずに強く目を瞑っているしか出来なかった。 バイトもまともに出来ず、醜聞を撒き散らす原因を作り、掃除しか出来ない自分が不甲斐無い。


  
多情なる行いと中傷文に書かれていたが、方淵の傷が心配で顔を近付けただけだ。
不埒な行いをした訳でも、ましてや誘惑をした訳でもない。 
方淵相手にそんな雰囲気になろう筈も無い。 
だけど・・・・・ 陛下唯一の妃という立場であるはずの私が陛下以外に近付くということは、普通はありえないことだろう。
黙々と床掃除をしながら、気付けば同じ場所ばかりを拭いていることに気付き、床にへたり込みそうな自分を叱咤して雑巾を洗い直した。 洗いながらまた溜め息が零れる。

「まあ、お妃ちゃんは気にせずにいろよ。 暫らくしたら前みたいなイチャイチャも出来るだろうしさ。 今は陛下もいろいろ忙しい時期だしな」
「そうじゃのぅ、確かに忙しい時期じゃ。 陛下も大変じゃろうて」
「・・・・・そんな忙しい時期に煩わしい中傷文なんかを撒き散らす原因を作ったのね、私」

浩大の慰めも老師の説明も、今の夕鈴には何の役には立たなかった。 
王都から地方への街道周辺の視察報告、大雪被害があった村への物資配給、自然災害箇所の補修工事、新たな地方税導入など季節の変わり目には多種多様な案件が溢れるように湧き出ている政務室は蜂の巣を突いたように大変忙しいのは見ていて解かる。
そしてそんな時、臨時花嫁は何の役にも立たないというのも承知している。
縁談避けのバイト妃は、妃推奨する暇もない程に忙しい時期にはただ邪魔になるばかりだ。
その上、余計な醜聞まで広めようとは、自分が情けなくて自己嫌悪に落ち込むばかり。
仕事に関しては給料泥棒と言われないように、真摯に対応していた筈なのに、結果こんな風に陛下の邪魔をしている自分が居た堪れない。

「・・・って悩んでないで、掃除しか出来ないなら、完璧にこなしてみせるわ!」

夕鈴が背を正して握り拳を掲げると、背後で浩大がのんびりした声を漏らす。

「まあ気負わなくていいんじゃね? 今の忙しい時期が過ぎれば陛下とも元のように仲良し夫婦も出来るだろうし、そしたら噂だって消えるだろーし、怪文書のことだって忘れ去られるさ。 柳の坊ちゃんだってたいした怪我じゃなくて良かったじゃん」
「・・・・・痛そうだったけどね。 本当に申し訳ないと思ってる。 助けてくれたのにお礼も言えず、怪我させたのに謝ることも出来ないし・・・・・」

折角やる気になったのに、自分の言葉に項垂れてしまう。 ああ、余計に落ち込みそうだ。 
今回のことは陛下もすごっく怒っていたようだし、ちゃんとバイト出来ない自分に苛立ちさえ感じてしまう。 掃除だけで借金返済は出来るのかしら? 夜には陛下が来るだろうけど、昨日のように不機嫌なままだと侍女さんも心配するだろうし、不仲説まで流れたらバイト妃の意味が無い。

それならば今晩陛下が来たら、昨夜のことは侍女さんの頭の中から払拭出来るくらいの、完璧なプロ妃を演じよう! 恥ずかしがらずに仲良し夫婦を演じるのが私の使命なんだ!

新たな目標が出来た夕鈴は落ち込んでいる場合じゃないと、掃除に邁進することにした。

「お妃ちゃんって何を考えているか、すぐ顔に出るよな~。 面白れぇ・・・・」
「それが陛下に伝わらぬとは情けない・・・・。 早くお世継ぎの顔が見たいというのに」
「いやいや、それはあっちにも都合があんだろ? いつまで続くかわかんないけどねぇ」

二人の呟きは耳には届かず、床の汚れと真剣に対峙しながら夕鈴は使命感に燃えていた。





しかし、忙しい時期だということもあり陛下は王宮の奥で執務に忙殺されているのか、後宮へのお渡りは暫らくの間は無理との伝言が届いた。 
それは以前から時折あったことではあったが、中傷文がばら撒かれた後であったこともあり、いつもと違って冷ややかな狼陛下が妃の部屋に渡った直後。
そして夕鈴の悪い懸念どおり、不仲説が実しやかに流れることになってしまった。
李順から政務室への立ち入りを禁じられているため、不安が募るが足を向けることも出来ず、掃除婦姿で水替えのために回廊を歩く時に耳にする噂で身を竦ませる日々が続く。

「陛下、今日も機嫌が悪いな・・・・。 悉く懸案を却下されて胃が痛いよ」
「怒声が飛んでいるものなぁ。 柳大臣との話し合いも難航しているようだし」
「柳大臣といえば、あの中傷文に書かれていた相手って・・・・・」
「書庫や政務室でよく睨み合っていたが・・・・。 いや、まさか」
「でも最近お妃様の姿もないし、あの書の通り何かあったとしか思えないが」

聞こえて来た言葉の内容に夕鈴は回廊端で拱手したまま震えていた。 
その後、水替えをどうやってしたのかも判らないまま、どうにか部屋に戻ると浩大と老師が菓子を食べながら小声で話しているのが耳に届く。

「中傷文などいつものことと放置すると思ったのに眼鏡小僧め、今回に限って煩いのぅ」
「仕方ないじゃん。 今は柳大臣と揉めたくないだろうし、実際政務がどっさりで陛下のイライラも最高潮! そんなところに怪文書だろ? 李順さんもお妃ちゃんを閉じ込めたくなるって!」

そうなんだ。 
陛下の役に立つバイトのはずが、余計な真似をして余計な噂を流しちゃったんだ。 
陛下は国のために誠心誠意毎日夜遅くまで頑張っているのに、柳方淵を誑かした妃がいるって、禍を撒き散らす妃がいるって怪文書がばら撒かれ、重鎮である柳大臣とも揉めていて。 


『貴女はくれぐれも陛下を下らぬことで煩わせないように。 ・・・・・こちらは臨時花嫁の代わりなどいくらでもいるんですからね』


いつか李順さんから言われた言葉が胸に深く突き刺さる。 
方淵の手の平に突き刺さった小片のように、突き刺さった言葉によって血が滲めば、そんな怪文書は全くの嘘だと、噂は理不尽だと喚きながら、文句のひとつも言えたのかも知れない。 
だけどバイト妃という枷と、突き放されたような言葉の刃にじわりと侵食され、目に出来ないその痛みは、ただ心を重くし、不確かな場所で腐食し始めていく。 

もしも小犬陛下に慰めて貰えていたら、大丈夫だよと強く言って貰えたら違ったのだろうか。 
でも、それでは役に立とうとする自分はただ甘えるばかりになるだろう。 
その考え自体が逃げ場が欲しいと願っているようで、夕鈴は慌てて強く首を振った。 
それでも逃げちゃ駄目なんだと判っている。 悩もうが悔やもうがやってしまったことは仕方が無い。 今の自分は目の前の仕事に、掃除に集中して頑張るしかない。 
バイト妃が必要だと言われる内は掃除をして居座り、もし必要ないと言われたら、その時はその時に考えよう。 胸が痛くても苦しくても、今は押さえ込んで見ない振りをするしかない。

そう思うしか無いと、夕鈴は強く目を瞑った。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:02:02 | トラックバック(0) | コメント(12)
コメント
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2013-04-25 木 00:54:36 | | [編集]
夕鈴タイミング悪かった様ですね・思考がなかなか浮上できませんね夕鈴が体調を崩さなければ良いですが、精神面での攻撃は引きずりますからね
このあとどうなるのかし?陛下とのわだかまりがなくなるのか?その前に何か起こってますますこじれていくのか?

ドキドキしながら待ちます
2013-04-25 木 06:12:43 | URL | ともぞう [編集]
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2013-04-25 木 07:43:09 | | [編集]
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2013-04-25 木 09:36:22 | | [編集]
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2013-04-25 木 14:42:33 | | [編集]
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2013-04-25 木 20:32:21 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメありがとう御座います。早いのは最初だけかも(汗) もとがのんびりで脱線しやすいから~。 本誌チェックはされましたか。あちらは甘甘ですね~。ニマニマして読み直しちゃいました。早く押し倒せと突っ込みを入れたい!! こっちはド暗いですので、御了承下さい。トホホ。
2013-04-26 金 09:14:24 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。タイミング悪しっ!んで、この題名になりました。精神攻撃は破壊力大ですね。悶々夕鈴が少し続きますので、暗い話になりますが、御付き合い頂けたら嬉しいです。 もう少しこじれちゃいますけど・・・・。 酷い話を考えますね~、わたし。(笑)
2013-04-26 金 09:16:26 | URL | あお [編集]
Re: 後ろ向き……
makimacura様、コメありがとう御座います。本誌の兎が可愛くて、ニヨニヨですよね。あの若さで我慢できる方が不思議だ。(爆)浩大もフォローで大変です。さすがみんなのお兄ちゃん。こっちは暗い話が続いてますが、もう少し御付き合い下さると嬉しいです。
2013-04-26 金 09:18:34 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。 陛下は疲労でどーん!です(何のこっちゃ) 悪い予感というか、題名からしてどん底ですからね。今回は夕鈴精神打撃がどかん!です(擬音ばかりになっちゃう)
2013-04-26 金 09:20:20 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ななすけ様、コメありがとう御座います。 お久し振りです~!一山越えてはるばるとお越し頂き、感謝感激です。 陛下断ちとは・・・・。 何があったのか解かりませんが、ストレスを溜めないように人生を謳歌しちゃいましょうね~。 怪文書と噂と陛下に翻弄される夕鈴の落ち込みで、画面真っ暗ですが、もう少し落ち込ませようかと思っております。(ひでぇ・・・・) ごめんなさい。
2013-04-26 金 09:23:39 | URL | あお [編集]
Re: あ、甘くない…(笑)
ダブルS様、コメありがとう御座います。どうしても機嫌の悪い陛下が必要でしたので、むりやり冷たい狼になってもらいましたー!夕鈴は悩み過ぎても仕事は頑張るいい子なので、余計に可哀想です。一体誰が悪いのか。(あ、私?)
2013-04-26 金 09:25:25 | URL | あお [編集]
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