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多事多難  3
ちょいと暗い話の流れです。 ぐちゃぐちゃしてますが、落ち込む夕鈴を書くのは結構楽しくて、つい陛下も巻き添えにしちゃいました。 


では、どうぞ














それでも寝所で一人になると、溜息が幾つも零れ、打開策は無いかと考えてしまう。
それこそ余計なことだとは判っているけど、何も考えずに掃除だけをして給料を貰っているのも性分に合わないのだ。 

「・・・・・謝罪の手紙を書いて浩大に届けて貰おうかな・・・・・」

普段、無為に過ごすことに慣れていない夕鈴は零れる溜息と共に立ち上がり、筆を用意した。 しかし筆を持ったはいいが、大量の書簡に囲まれている陛下に余分な疲れを持ち込むだけかと諦めることにした。 陛下を煩わせないように・・・・。 李順に言われた言葉が突き刺さる。
今、自分が出来ることは大人しく後宮に閉じ篭っていること。 言われたとおりに掃除をして、妃教育の本を読むこと。
わかっているのだが、掃除だけしていていいのだろうかと思う気持ちは、押さえ込んでも湧き出てしまう。 申し訳ないから何か出来ないかなと考え、迷惑になるから大人しく掃除だけしていようと考え直し・・・・・。

悩んでいる内に頭が痛くなり、夕鈴は早々に寝台に横になった。 明日も立ち入り禁止区域で掃除をして、余計なことが出来ないくらいに身体を動かそうと目を閉じる。




翌日妃衣装で後宮立ち入り禁止区域に向かっている時、久々に李順に遭遇した。 
思わず駆け寄り、夕鈴は気になっていた怪文書のその後を恐る恐る訊ねる。

「李順さんっ、中傷文ってその後どうなりましたか? 噂とかってまだ流れていますよね? 柳方淵殿に変わりはないですよね? 手の怪我は酷くなってませんよね? あの、あの、あの・・・・・ 陛下は・・・・ お変わりないのでしょうか・・・・・」

聞きたい事がいっぱいの夕鈴は涙目で李順に詰め寄ったが、いつもの冷たい視線と大仰な嘆息を返され、身を竦ませて窺うように顔を見上げた。 

「中傷文に関しては以前同様放っておけば立ち消えましょう。 噂を気にしている暇などない現状ですので、柳方淵もいつも通りに働いてますよ。 包帯などしている様子はないので、たいした怪我ではなかったのでしょう」
「そ、そうですか。 良かったです・・・・・」

心配事がひとつ消えて、安堵の溜め息が零れた。 相変わらず忙しいと聞き、陛下の体調が気になると尋ねようとした時、先に李順の口が開いた。

「陛下も日々大変忙しく、宰相殿の許へ連日詰めておられますので貴女はここで掃除婦として過ごしていて下さい。 繰り返し伝えますが、大変忙しい時期です。 くれぐれも余計な真似を為さらず、掃除と妃教育本での勉強をしていて下さい。 いいですね?」
「はっ、はいっ!!」
「余計なことを仕出かして、陛下を煩わせないようお願いしますよ」
「は、・・・・はい」
「ここと、自室以外はウロウロしないことです! 他には足を向けておりませんよね?」
「・・・・はい。 庭園にも行っておりません・・・・・ ので、侍女さんが心配してます。 陛下のお渡りがないのは御政務で忙しい時期と承知しているようですが、妃が散策もしてないので例の噂通りなのかと・・・・・ 聞かれたことがありまして・・・・・」

心臓がバクバクする。 忙しい時期だけにそんな瑣末な噂で陛下に余計な心労は掛けさせたくない。 だけど、その噂を払拭するためだけでもいいから、陛下の顔が見たいと思う正直な気持ちを誤魔化せずに、おずおずと李順に尋ねてみる。
陛下と妃の不仲説。
官吏が噂していることは、警備兵はもちろん宦官、雑務をこなしている者まで、王宮に従事している全ての人間が知ることとなり、掃除婦で水替えのたびに夕鈴の耳にも届くこととなった。 
浩大らが話していたように、李順が自分を閉じ込めて噂の蔓延を阻止しようとするのも判る。 
柳大臣との話し合いで疲労している陛下に、これ以上迷惑を掛けたくないと思うから、それは納得していた。 だけど臨時花嫁として王宮に雇われた自分がこのまま掃除ばかりをしていていいのかと悩むのも正直なところだ。

「夕鈴殿、流れている噂のことは承知していますが、今は無理です。 時間が取れるようになれば、噂払拭のために陛下と散策でもお茶でもして貰いますが、今は掃除に集中して下さい」
「・・・・・・はい。 掃除してます・・・・・」

上司にはっきり告げられると、雇われている身としては頷くしか出来ない。 
陛下も部屋に訪れず、侍女に気遣いをされ、妃教育と称して実は立ち入り禁止区域の掃除をする日々。 掃除することは嫌いじゃないし自分に合っていると思うけど、陛下の役に立てずに此処にいる自分が厭になる。 李順と別れた後、肩を落としながら着替えて掃除を始めるが、集中しようと思うほどに溜め息が零れてしまい、零れるたびに自分を叱咤することを繰り返していた。

「このままでいいのかなんて、考えても仕方ないのに! 掃除に集中したいのにっ!」

何度も落ち込みそうになる自分が厭になると、夕鈴は立ち上がって深呼吸をした。 目の前の仕事に集中しようとするたびに 『不仲説』 がちらついて、機嫌の悪い狼陛下が浮かんでしまう。 

気にしなくていいからねと言ってくれたあの日から陛下の顔も見ていない。 
落ち込む原因のひとつに陛下不足もあるとわかり、それを求める自分にも落ち込んでしまう。 
バイトの間だけの関係だと何度も自分に言い聞かせながら、際限なく膨らみ続ける陛下への気持ちが抑えきれなくなりそうで、それを思うと怖くなる。
この気持ちを隠せないようでは、掃除婦の方がお似合いか・・・・・?

「忙しいのも季節が安定するまでのことだろ? その頃には噂も消えてるだろうし、いつも通りの仕事に戻れるよ。 まあ、オレは今のままだと楽で助かるけどね~」

床磨きの途中で顔を上げると、いつの間にか窓枠でのんびりと笑顔を浮かべる浩大がいて、勝手に人の愚痴を聞き、勝手に答えて来る。   

「掃除しているだけなのにバイト妃のお給料貰うって、この現状が申し訳ないのよ。 でも今は上司である李順さんの言う通りにするしかないし」
「掃除して給料貰うって、当ったり前だろ? 一応は妃としても部屋で過ごしてるんだしさ」

気楽そうに話す浩大を ぎっと睨み付けて夕鈴は口を尖らせた。 
私が気にしていることには、それもあったから。 
臨時花嫁として役に立てないで居る自分が、妃として遇されて食事をし、風呂に入り、侍女に傅かれていることも落ち込みの一因。 このままでは本当に給料泥棒と言われる日が来るのではないかと悩み、だからこそ何が出来ることはないかと考え、そして余計なことはしないように考え直し、掃除だけをしようと自分を戒める悶々とした日々が続いている。 
掃除が厭な訳じゃない。 掃除だってバイトの内だとわかっている。
 
・・・・・・・だけど、やっぱり本来の仕事をしたい。 


「この仕事を続けたい訳じゃないの! 私はちゃんと、きさ・・・・」
「____ それは君の願いなのか? 夕鈴」

突然背後から聞こえて来た声に、心臓が竦み上がる。 
何故後宮立ち入り禁止区域で、忙しいはずの陛下の声が聞こえて来るのだろう。 
怖いけど、竦み上がるほど怖いけど、恐る恐る顔を向けると部屋の戸口に凭れ掛かり腕を組んだ陛下がいて、私は息を吸い込んだ。 久し振りに目にする逢いたかったはずの陛下は狼陛下で、何を答えたらいいのか頭の中が真っ白になってしまう。

「以前も中傷文が回ったことがあっただろう。 その時はそんなこと言わなかったのに、今回の中傷文にはバイトを放棄してでも逃げ出したいと思うんだ」
「ち、違います! バイトを放棄しようとは思っている訳じゃなくて、ただ掃除しか出来ない自分が不甲斐無いと、申し訳ないと思って・・・・」

陛下からの突き刺さるような視線に私の声が震えてしまう。 

「怪文書に関しては気にしないようにと伝えたはずだよ」
「そ、それはそうですが・・・・。 忙しい陛下を煩わせる原因を作った自分が情けなくて、愚痴を零していただけです。 申し訳御座いません・・・・・」
「煩わしいとは思わないけど、君が愚痴を言いたくなるのは僕にも原因があるのかな」
「いっ、いいえ! そうじゃないです! ごめんなさい。 ・・・・ちゃんと掃除して大人しくしてます。 もう陛下に御迷惑を掛けないようにします!」
「僕は迷惑なんて思っていないのに」

言葉遣いは小犬だが、醸し出される雰囲気は狼のまま。 浩大と私しか居ない場所で、何故いつまでも狼陛下なんだろう。  

「へーか、ここまで足を運んだのはお妃ちゃんが心配だったんだろ? 怯えさせに来た訳じゃないだろうに・・・・・  って、ごめんなさい」
「・・・・兎も角、夕鈴は気にせずに過ごしていたらいいよ。 忙しくて、暫らくは部屋に足を運べないけど、妃として過ごすことは続けて貰いたいな」
「はい、余計なことはせずに仕事します! 申し訳御座いません!」


涙目で僕を見上げる夕鈴と、ワザとらしく視線を逸らす浩大。 今にも涙を零しそうな君が可哀想になり、真意が伝わらないまま僕は踵を返して場を離れるしかなかった。 

確かに今は忙しい。 
大臣らからの懸案事項は連日話し合いが必要であり、柳から持ち込まれた事案も互いの意見がまとまらず、宰相が持参する書簡が山と詰まれ、夕鈴には聞かせたくない怒声を放つ毎日が続いている。 
夜に時間を作って君の部屋でゆっくりお茶を飲みたいと思うが、それを赦さない側近。
怪文書による不確かな噂が流れているが、対応が出来ない現状のまま、李順の言うとおりに夕鈴を政務室から離すことを了承した。 その後不仲説までが流れ出し、ようやく時間を作って掃除をしている夕鈴の許に足を運べば 『仕事を続けたくない』 の言葉。

書庫の卓下で方淵と抱き合い手を握り合っていたという噂の後に回り始めた怪文書。
まさか夕鈴に限って方淵となんて・・・・ と思い部屋を訪れると、強張った笑みを浮かべる君がいて、明らかに視線を彷徨わせていた。
怪文書の内容を李順から聞いているはずだから、逆に怒って文句を言い出すのだろうと思っていたのに、愕然としてしまった。 じっと見ていると段々蒼白になっていく夕鈴が目の前にいて、戸惑いながら君の口から事実を聞きたいと訊ねると、想像通りの内容に、やっぱり君は悪くないとわかり嬉しくなった。
それなのに何故、そんなにも蒼褪めているのだろうと訝しんでいると、君から方淵を気遣う言葉と、僕への謝罪を聞かされてしまう。 
何故、夕鈴が謝るのか。 謝ることはないだろう。
本当は方淵と何があったのかと問い詰めそうになり、僕は大きく息を吐いた。 
君が謝るのは、書庫でのことで怪文書が回り僕に迷惑を掛けたと思っているからだ。 
臨時花嫁が官吏を陥れようとしているなど莫迦らしい内容を、僕が気にする訳がないのに。 
信用されていないのかと面白くない気分になったが、自分の憤りをぶつける訳にもいかずに君と距離を取っている間に、更に距離が開いたような気がする。

君を追い詰めたい訳じゃないのに、上手く言葉に出来ない。 上手く伝えることが出来ない。
・・・・・・・・・・伝えていいのかも解からない。





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長編 | 09:30:30 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
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2013-04-26 金 09:54:42 | | [編集]
相変わらずじれじれな二人ですね時間が経てばたつ程こじれていまいますよ・
傍観者的にはそれはそれで良いんですが…私は浩大の様に気長に待てるかどうか?
もとに戻るまでに何事もなければいいですが、きっと起こるんでしょうねぇ
2013-04-26 金 12:54:10 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメありがとう御座います。何処まで突き落としましょうか?(笑)結構ドSかも知れませんね、私。もう少し突いてみたいと思うので、よろしく御付き合いお願い致します。えへ。
2013-04-26 金 21:40:30 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメありがとう御座います。結構焦れ焦れです、はい。またこういうのが好きなのかも、私。笑うしかない? 本来の夕鈴は頑張り屋さんだけに、こんな暗い夕鈴は違うと思いながら書いてます。(何故?)次は場面展開がありますので、引き続きご覧頂けたら嬉しいです。
2013-04-26 金 21:47:35 | URL | あお [編集]
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2013-04-27 土 01:09:35 | | [編集]
Re: 新たな誤解!?
ダブルS様、コメありがとう御座います。そうだよねー。陛下不足には夕鈴からのぎゅううですよね。お、それいいかも。陛下からはいつも急に抱き上げられているんだから、珠には夕鈴から抱き締めちゃえばいいんだよね。夕鈴からの攻め攻撃。これはすごいかも知れない! おお!
2013-04-27 土 01:14:44 | URL | あお [編集]
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