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多事多難  6
やっと下町が動き出します。 やっとオリジナルキャラが出て来ます。 ちょいと長くなりそうな嫌な予感がして乾いた笑いが零れそう。 辛抱強くお付き合い頂けたら、すごっく嬉しいです。


では、どうぞ















新郎新婦と賑やかな集団を引き連れて移動した先は、几家が管轄する某宿の大広間。 
おばば様と一緒に支店回りをした時に来たことがある宿の広間を貸し切って、そこに見知った顔が揃い、そして見たくない顔も並ぶ。 下町仲間が多いのだから顔の広い奴がいるのは仕方がない。 それは承知で参加しているのだから今更文句も無い。 
だけど何故、几鍔の隣に座らされるんだと明玉に目で訴えると思わぬ答えが返って来た。

「あら、妙齢の男女が集まれば交互に座って楽しむのは、基本でしょ?」
「・・・・・はぁ?」
「そうよ夕鈴。 こういう集まりは上手く活用しないとね?」
「・・・・・はぁ?」
「普段は家の仕事とか、バイトとかで出会いがないから、好い男がいたら唾付けなきゃね!」
「・・・・・はぁ?」
「酒に弱いとか、食べ方が汚いとか、会話が上手いとか、男の本質を知る機会よ!」
「・・・・・はぁ?」
「ああ、あんたは例の役人と、最近来た荷運びの護衛をしている体躯のいいあの人、そして大店の跡取り息子がいるから選び放題よね。 三角関係から四角関係かぁ~。 で、誰が本命?」
「・・・・・はあああ!?」
「・・・・・だから、コイツをネタに賭けるなよ・・・・・」

隣で深い嘆息を零す金貸しは放置して、夕鈴はただ呆然と女友達たちの顔を凝視する。 
何がどうしてそういう流れになっているのだと、そこまで必死に意気込む相手たちなのかと、女友達の様子に困惑してしまうが、それぞれの目の前に杯が置かれ、新郎新婦を上座に乾杯の音頭が取られると、みんなが一斉に杯を持ち上げ幾度目かの歓声を上げた。

「本当におめでとう! また独身仲間が減るわね~!」
「恋愛結婚みたいなものだものね、羨ましいわ」
「今夜は馴れ初めとか、結婚を決めたきっかけとか教えてよね~」

女性陣が騒いで新婦に話を振れば頬を染められ、それを見て新郎が目を細めて笑みを浮かべる。 そんな二人に周囲が更に騒ぎ、下町仲間の久し振りの集まりは一層賑やかさを増した。 

夕鈴はお茶を飲みながら久し振りに会う友人らとお喋りを楽しみ、頬を染めて嬉しそうな友人の新婦を見つめ、そして小さく嘆息した。 
どうしても脳裏に浮かんでしまうのは陛下のこと。 
憤って陛下を睨み付け、酷い八つ当たりをした自分。 あのまま傍にいることも出来ず、逃げ出すように実家に戻り、でもそれが正解だとぼんやりしながらお茶を口に運ぶ。

明日の昼過ぎにはまた借金返済のためにバイトに戻る。
どれだけ皮肉めいた噂が流れていようと、恥知らずな中傷文が回されていようと、私は私自身の矜持を捨てる訳にはいかない。 途中で借金を放り出すことも、バイトを逃げ出すことも出来ない。 だから、どんなに陛下が狼のままでもプロ妃の演技を続けるだけだ。 掃除婦として働くことだけを求められるなら、それでもいい。 
今は借金返済することと、陛下の邪魔をしないように気を付けることだけ。

だけど、どうしても零れてしまう溜め息は見ない振りをして欲しい。

「なんか疲れ果てているな。 友人を祝おうという顔じゃないぞ」
「・・・・・人の顔なんか放っておいて。 金貸しに見られたら減る」

几鍔の言葉に辛らつな返しをして、卓に並ぶ食事を口に運ぶ。 確かに疲れ果てているわよ。 
逃げ出すように離れた王宮に、明日はどんな顔で戻ればいいのか考えても答えが出ないことをぐるぐる廻らせているのだから疲労も溜まる。

「夕鈴ちゃん。 そんな顔で食べていたら美味しくないだろう。 酒、飲まない?」
「え?  ・・・・・お酒は、飲ま、ない・・・・・です」

几鍔と反対側に座っていた男性が、突然自分に声を掛けてきた。 
下町にこんな人居たかしらと戸惑いながら隣に腰掛ける男性を覗うと、柔らかな笑みを浮かべて私を見つめていくる。 柔らかそうな黒髪と温和な表情。 皆と変わらない衣装を着ているが、醸し出す雰囲気が普通の下町の住人とは違う気がする。 眉根を寄せて、この男性は誰だと首を傾げると、隣の几鍔が男性に杯を差し出して自分に注げと促がしながら私に教えてくれた。

「お前は覚えてないか? こいつは杜博だ。 十くらいの時に他の町に引っ越したけど、それまではよく遊んでいただろう。 確かどちらかの肩にお前が付けた傷が残っているはずだぞ」
「え・・・・、杜博? 十くらいまで・・・・・ 肩口に・・・・・ 私が付けた傷っ!?」

目を瞠って彼に向き直ると、「よく覚えているな」 と苦笑して几鍔の杯に酒を注ぐ。

「あれは夕鈴ちゃんが六つか七つくらいの時かな? 柿を取ろうとして木に登ったはいいが、腕いっぱいに柿を持った夕鈴ちゃんが降りられなくなっているのに遭遇したんだ。 どう助けようかと悩んでいたら、夕鈴ちゃんは意を決して飛び降りちゃって。 その時、慌てて受け止めたんだけど積まれていた薪の山に肩をちょっと、ね」
「・・・・・・・あ」

思い出した、・・・・思い出してしまった! 几鍔の家の裏庭の木に登り、青慎のためにと柿を取ったはいいが、袋を持たずに登り、手が使えなくなり降りられなくなり困っていた自分。
助けられ謝った覚えはある。 だけど年上の幼馴染から 「僕も大丈夫」 と言われ、その言葉に安堵して・・・・・ すっかり忘れていた記憶。 
思い出すと同時に恥ずかしくなり、そして傷が気になった。 そろそろと彼の肩に視線を向けると 「今は傷痕も無いから、気にしないで」 と小皿に取り分けたおかずを差し出される。 遠い昔の暴挙を呪い、久し振りに会った命の恩人に深く謝罪をすると苦笑されてしまった。

「変わらないな。 気が強いのに、感情は駄々漏れで、すぐに涙目になる」
「・・・・成長が無いだろ? だから嫁き遅れるんだ、コイツ」
「几鍔、それは余計っ! 李恵の祝い事の席で、何で私の余計な情報を久し振りに会った杜博にばらしちゃうのよ! そんなこと言ったら、此処にいるみんながそうでしょ!」

真っ赤な顔のまま几鍔を睨み付けると、呆れたような視線で見返される。 
あんただって相手がいない上、おばば様に勝手に相手を探されている癖に人のことを言う資格なんか無いだろう! 奥歯を噛み締めながら睨み付けていると、明玉が含み笑いを浮かべながら背後から声を掛けて来た。

「そうよね~。 夕鈴には新しいお相手も出来たしね!」
「明玉、それはあんたが流した噂でしょう? 忙しい克右さんまで絡ませて申し訳ない!」
「じゃあ本命はあのお役人さんかぁ! やっぱりね~、あんたが下町に来ると必ず姿を見るもんね! 王宮で見初められたって、そんなラブロマンス、本にでもされちゃうんじゃないのぉ?」

もう・・・・・・ 既になってます。 
役人の設定ではないけれど、紅珠により陛下と出自不明の妃である私との出会いを妄想・・・・ いや想像した話を巻物にしたため、纏め上げている。 嘘か本当か、貴族子女の間で流行っているとも聞いたことがあるのよね。 ああ、・・・・・怖い。
明玉の戯けた話に杜博が驚いた顔をあげて 「夕鈴ちゃんって、そんなにモテモテ?」 と訊いている。 違います。 カラカワレテイルダケデス。

深~く溜め息を吐いて眇めた視線を明玉に向けると、悪びれもせずケラケラと哂いながら人の杯へと勝手に酒を注ぐ。 「お祝いだから一杯くらいは付き合いなよ」 と言われ、どうしようかと瞑目していると隣から手が伸びて杯を横取りされた。
几鍔がぐっと杯を空け 「青慎が心配するから、コイツには飲ませるな」 と思い切り馬鹿にした目で見下ろされる。 自分が飲みたいだけだろうと几鍔を無視することにして、杜博に尋ねた。

「で、杜博はこっちに来たのはどうして? 偶然?」
「時々仕事で来ることがあるんだよ。 新郎とは昔から時々手紙の遣り取りをしていたんだ。 結婚するって聞いてさ、仕事の合間に顔を出したんだ。 良かったよ、夕鈴ちゃんにも会えたしね」
「すぐに思い出せなくってごめんね。 確か几鍔と同じ年だったよね」

私を挟んで几鍔を交え、昔話に花が咲く。 下町育ちでみんな一緒くたに遊んでいたから話は尽きない。 新郎新婦も悪戯盛りの子供時代のいろいろを暴露され、大笑いして騒ぎまくった。 喋り過ぎて咽喉が渇き、涙を拭いながら杯を一気に飲み違和感に気付く。

「ん・・・っ! お、酒だ・・・・」
「お前、酒飲んだのか。 大丈夫か? ・・・・・杯は下げた筈だったんだが」

几鍔が眉を顰めて杯の中身を確認するが、少しくらいなら大丈夫だと杯をひったくる。 几鍔にそこまで心配される謂れはない。 それに甘くて酒っぽさが無かった。 間違って飲んでしまったのは私だから仕方が無いとも思う。

「少しくらいなら大丈夫よ。 もう口にしなきゃ大丈夫」
「自分が弱いと自覚も出来ない奴が何を言っている。 ・・・・もう飲むなよ」

お酒に呑まれてしまう自分が離宮で、翌朝頭痛に襲われ、どんな様を呈していたか思い出す。 もう次は口にしないぞと水を頼んでいると、杜博がきょとんとした顔で尋ねてくる。

「几鍔と付き合っているのかい?」

その言葉に周囲が爆笑し、私と几鍔は同時に 「違うっ!!」 と声を揃えて大声で叫んだ。

「嫁き遅れが哀れだから時々からかっているだけだ。 この間もその話しが出たが、ありえないな。 こんなクソ可愛げのないガキと何かあるなんて想像も出来ねぇ」
「こっちこそ願い下げよ。 何が悲しくて金貸し外道と付き合うだなんて、私は人生を棒に振る気はないわよ。 お先真っ暗だわ!!」
「お前、大概にしろよっ!」
「あんたこそ大概にしてよっ!」

明玉が 「賭けはまだ続行中よ~」 とのんびりした声で周囲に笑い掛け、聞き慣れた喧嘩に周囲からは嘲笑が沸き起こる。 
そんな中、杜博が首を傾げて穏やかな笑みを浮かべて夕鈴の肩を掴んだ。

「付き合っている相手が居ないなら、俺と結婚しようか?」
「・・・・・・・・へ?」


  






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長編 | 00:36:06 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-04-29 月 01:15:54 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。 早いっすね。驚きました。ありがとうで御座います。(^^)やっぱり報告するよね。 どんな風に報告するのかしら。 宴だけで疲れ果ててますので、長くなってもいいと言われると嬉しい。 でも陛下は出て貰いたいですよね。 苦悩が続きます(笑)
2013-04-29 月 01:24:35 | URL | あお [編集]
うわぁ交際申込じゃなく、いきなりプロポーズきましたぁー!・几鍔はそれでもスルーなのかな?浩大も報告命がけですね陛下の反応はいかに!?もたもたしてると横から入ってきた第三者に持ってかれるぞぉ~何にしても面白くなって来ましたね・

くぅ~っ続きが待ち遠しいです・ドキドキ・
2013-04-29 月 07:35:38 | URL | ともぞう [編集]
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2013-04-29 月 14:59:08 | | [編集]
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2013-04-29 月 19:42:28 | | [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメントありがとう御座います。お付き合いからでは夕鈴の休みに合わないので、プロポーズして貰いました! 裏事情というものです。(爆) 几鍔も驚き、友人らは大爆笑。 下町の悪女の名前は更に広がるでしょう。 ちーん!
2013-04-29 月 22:55:46 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ななすけ様、コメントありがとう御座います。 四人目の男。 夕鈴下町の悪女だから。(笑) お酒も浩大も陛下もどう動かしたら楽しいか考えるのがまず楽しい。 題名通りに翻弄される人は誰でしょうか。 結構、李順さんのような気もします。 気苦労の耐えない人ですから。 禿げないように祈っております。
2013-04-29 月 22:58:45 | URL | あお [編集]
Re: ド直球!!
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 さりげない几鍔の優しさは 「金貸し」 と言うだけでスルーされてしまってます。 不憫ですよね、本当に。 陛下が7巻で 「・・・・いい奴だなぁ、君。なんでそれであんなに邪険にされているの?」 と聞きたくなるのも判る気がする。 本当に不憫な子!! 下町の楽しみはこの几鍔をいっぱい動かせることです。 ほほほほほ。
2013-04-29 月 23:01:54 | URL | あお [編集]
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