スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
多事多難  8
花粉は終わったのに、目がおかしいし鼻水が出る。 黄砂の影響なのかな? 風があると余計にひどくなる。 流行に敏感だったのね、私(笑)


では、どうぞ













「へーかっ! お仕事いっぱいでご苦労様です!」

極めて明るい声で陛下の私室に参上した隠密は、途端苛立ちも顕わな陛下の顔に遭遇し、予想通りだと爆笑しそうになる。 けれどそこは有能な彼、表情を落として哂いを堪えた。

「桐に会ったようだな。 こっちは狸と幽鬼に押さえ込まれて全く動けん。 李順も恐ろしい程に張り付いている。 連日この調子では胃に穴が開きそうだ。 ・・・・・・で、彼女の様子は?」

投げられた酒壜を受け取り、ようやく笑顔を出せる。 蓋を開けてまずは一口、二口。
味に舌鼓を打つ暇もなく、早く話せと昏い視線が投げ掛けられた。 ああ、怖ぇ。
仕事だけで動けないんじゃないだろう。 今まで、あんたが勝手に下町に行き過ぎたから、警戒レベルが嘗て無いほどに上昇しているだけじゃないか。 言うなれば自業自得。 
でもそんなことを口にしたと同時に首が飛びそう。 ああ、怖ぇし、受ける。

「お妃ちゃんは桐が来る少し前に無事に自宅へ戻ったっす。 今頃はぐっすり夢の中だろうね、いろいろお疲れみたいだからさ。 何だっけ、下町の悪女・・・・ だっけ?」
「・・・・・結婚式後の集まりで、何故下町の悪女の話になるのか」
「新しい男が出現したからっすよ。 女友達が大騒ぎっ! 几家の跡取りも焦るだろうぜ」

書類の山に埋もれていた陛下の肩がピクリッと動く。 それを肴にもう一口咽喉の奥へと流し込む。 上げられた顔は片眉が険しく持ち上がり、引き攣った頬が先を促がしていた。

「久し振りに会った幼馴染が来て、お妃ちゃんと几家の跡取りとの喧嘩に介入。 酒の場とはいえ、みんなの前でプロポーズ。 周りからやいのやいのと持ち上げられた上、几家跡取りからの辛辣な罵倒にぶち切れて 『では喜んでお受け致しますわっ! 結婚しましょう!』 って」
「・・・・っ! 夕鈴がプロポーズされた? 受けたっ!?」

時間帯が頭から抜けたんだろうな。 驚愕の面持ちで立ち上がった陛下からは想像以上に大きな声が出て、オレの方が驚いちゃった。 問い掛けに頷くと、持っていた筆が折れる音がする。

「まぁ、あれだ。 酒の場での戯言だよ。 それにさ~、お妃ちゃんに後で確認したら、受けた自分をすっかり忘れている様子だったよ。 少しだけ酒の匂いがしてたからな」
「夕鈴が酒を飲んで、そのせいで自分の言ったことを忘れて・・・・・・・・? 誰だ、飲ませたのは。 彼女は自らは酒を飲まぬはずだ。 離宮で懲りて酷く怒っていたからな」

それはあんたに怒っていたんだろうと・・・・・ 突っ込みたいが、有能な隠密は口を開かず黙って頷くに止める。 ただ気になる点は確かにある。

「帰宅したお妃ちゃんから確かに酒の匂いはしたんだけどさ、酔っている様子は殆どない。 自分で何を言ったか抜け落ちている癖に、口調も足元もしっかりしていた。 桐が来てくれたことで動けるようになったから、ちょいと数点確かめてもいいか?」

懐から菓子を出し、陛下に放り投げる。 訝しむ視線に 「お妃ちゃんちの菓子」 と告げると、また片眉が持ち上がる。 まあ、聞きたいことはそれではないことは判っている。

「お妃ちゃんの実家滞在が延びたんだろう。 その間に確かめたいことが出来た」
「・・・・・詳細を順序立てて報告しろ。 お前の話では苛立つばかりだ」
「了解っす。 だけど陛下は忙しんだろう? 中央殿に閉じ込められているって聞いているぜ。 正直オレまで李順さんに怒られるのは困るからさ、もう少し纏まってからの報告でも」

うん、予想していた。 小刀が飛んで来るのは予想の想定内。 だけど二段構えとは、今日の陛下は一味違う。 諸手を挙げて降参しちゃおう。 これで狼の脱走は決まりだな。

「懐かしの幼馴染君が集まりに参加、名は杜博。 お妃ちゃんに結婚しようと申し込み、その後酔ったお妃ちゃんから 『是』 の返答を貰って几家の跡取りに絡まれていたな。 幼馴染っていうのは本当で、結構いい男。 王都に暫く居るらしいけど、所在まではまだ把握出来ない。 諸々気になるからさ、調べる時間が欲しい。 桐がお妃ちゃんに就くなら、オレ動けるし」

こっちの様子は? と浩大が尋ねると、眉を顰めた狼は苦々しげに 「逃げ足の速い鼬の件は知っているだろう」 と嘆息を零す。 忙しい時を狙う輩が多いから王宮部分は正規の警護の他、闇部からの警戒も怠らない。 その間隙を縫って侵入し、目的不明のまま二度も逃げられているという。 目的を果たしたのか、果たせぬから二度も侵入したのか。

「後宮の仕掛けに触れた痕跡が残っている。 急ぎ夕鈴が立ち寄りそうな場所、品に関して調べさせているが、不在時に侵入したことも解せぬ。 妃に用があったのか、王宮に用があるのか」
「どっちもか、な? どちらの情報も売る相手はたくさん居るだろうしな」

狼からの舌打ちは部屋に響き渡る。 だけどその気持ちはオレだって同じ。 
全く、人の留守に舐めた真似をしてくれたもんだ。 今はお妃ちゃんの警護が主たる仕事とはいえ、自分の警護領域に面倒ごとが増えるのは勘弁だ。

「重要な懸案は中央殿から出さぬよう警備を厳重にしている。 妃狙いが目的とも取れるが、一概には言えないな。 大臣らの動きにも注視するよう李順に伝えよう」
「まあ、確証はまだないし、だたちょっと気になる程度だけど、二度も足を運び脱出成功か。 兎も角、先に最も気になる方を片付けさせてくれ」
「では、桐をそのまま夕鈴に就かせる。 ・・・・・・夜か、な」

最後の言葉にオレは爆笑しそうになったけど、問題は山済みだ。 
お妃ちゃんの周囲に現れた人物の調査と、桐への報告。 そして、さっさとウロ付く鼬にもお帰り頂かなきゃ、このままじゃ狼の怒気に中てられて死人が出ちまうだろう。 
お妃ちゃんには見せられない、見せたくない悲惨な状況は避けたいからな。 

さて、そうと決まれば・・・・・・。

「へーかぁ。 まずは腹拵えさせて頂戴!」









  *****  **** ***** ****** ***** ******









翌日早朝からまさかの人物が顔を出した。 庭先で野菜を持ったまま、ぽかんと口を開いた私に近付き 「やっぱり夕鈴ちゃんは可愛いな。 働き者で、いい嫁になると思うんだ」 と言いながら背を押して家の中に押し入ろうとする。

「ちょっ・・・・、杜博。 どっ、どうしたのよ、朝っぱらから!?」
「うん? あれ、覚えてない? 昨日の夜、夕鈴ちゃん俺の嫁になることに賛同してくれたんだよ。 だから小父さんに挨拶をと思ってね。 まだこの時間だったら居るよね?」
「・・・・・。 なぁあああっ!? うっ、嘘よ! そんなの! 直ぐに断らないでって言うから返事はしなかったけど、賛同なんて絶対にしてない! た、確かに記憶が飛んでる部分があるけど、でも結婚なんて出来ないからっ!」

私の声に驚いて青慎が衣装を整えながら台所へと飛んで来た。 そして見知らぬ男性に戸惑う青慎に近付くと、杜博はにこやかに笑みを浮かべて手を取り振り回す。 

「青慎君? 大きくなったなぁ! 久し振りだね、杜博だよ。 よく背負って散歩したんだけど、覚えてない? 俺ね、君の義兄になるんだよ。 宜しくね」
「・・・・・杜博、さん? あ、なんとなく・・・・。 確か僕が五つか六つくらいの時に引越しをしたと覚えていますけど、お戻りになったんですか。 え? 義兄・・・・?」

流石私の弟、記憶力が素晴らしい。 と、弟を褒めている場合じゃない!

「杜博、嫁の話は無しっ! あんな戯言、鵜呑みにしないでっ!」
「あらら、俺は本気だよ。 みんなの前で夕鈴ちゃんも受けてくれたじゃないか。 覚えてないの? それは超悲しいな~、男の本気を酒のせいにして逃げるなんてさぁ」

青慎の手を離した杜博は、今度は私に迫るように近付き首を傾げて悲しげな顔を見せる。 
でも、そんな顔を見せられても、自分がまさかそんなことを言うはずがない!

「う・・・・ 嘘よ。 私が受けた? 結婚の申し込みを受けたぁー?」
「姉さん、結婚相手を連れて来たの? 杜博さんと結婚するの? 李翔さんは・・・・?」
「酒の場での戯言として、杜博も忘れて~~~~~っ!!!!」
「姉さん、父さん探し出して来る? いきなり過ぎて、ど、どうしたらいいんだろう!?」
「父さんよりも明玉を探して! ああ、何がなんだか・・・・。 忘れてっ、みんなっ!」
「姉さん、父さんと明玉さん両方探し出すの?」

突然の訪問と台詞の内容に驚愕する姉弟は、台所内でウロウロしながら混乱状態となり、ただ喚き続けた。 杜博は近くの椅子に腰掛け、嬉しそうに呟きを漏らす。

「元気で可愛い夕鈴ちゃんを嫁に出来るなんて、俺、集まりに参加して良かったな~」
「ねっ、ねえっ! 悪いけど、本当に覚えてないの! 結婚なんか出来ないっ! 無理っ!」

夕鈴が蒼白になって向き直ると、杜博はすごく驚いた顔で 「何で無理?」 と首を傾げる。
その言葉に夕鈴は目を瞠り一瞬言葉を無くすが、直ぐに正気を取り戻して必死に懇願した。

「ちょっと・・・・ いろいろあってバイト中なの。 まだ終わりが見えなくて、だから結婚よりも仕事が優先で・・・・。 お酒のせいにして悪いけど本当に無理・・・・・。 ごめんなさい」

涙目で夕鈴は深く頭を下げた。 青慎も何があったのか朧気に理解して、場の雰囲気に慌ててお茶の用意をしながら 「お酒飲んじゃったんだ・・・・」 と姉の落ち込みに拍車を掛ける。 
普段酒飲みで賭け事好きな父を罵倒する姉が、酒に呑まれて記憶が無い状態。 
おまけに結婚を申し込まれて返答したことすら覚えてないとか、残念過ぎると夕鈴は項垂れた。

「夕鈴ちゃん、バイト中なんだ。 ・・・・・ふぅん」

杜博の少し落ちた声色に、二度と酒なんか・・・・ と思っていると、下げた頭を優しく撫でる手に気付く。 そろりと顔を上げると、温和な顔で自分を見る杜博が居て、解ってくれたんだと安堵の笑みを浮かべると、頭から滑り降りた手が頤を撫でながら持ち上げた。

「バイトがあるから結婚を断るのであって、俺が嫌いな訳じゃないんだね!」
「・・・・はぃ?」
「俺のこと、嫌いか?」
「い、いや。 嫌い、じゃない・・・・。 と言うか昨日久し振りに再開したばかりで」
「そうか。 じゃあ、親睦を深めて合意の結婚が出来るよう、今日は二人で出掛けよう!」
「・・・・はぃ?」

呆けた私の手から野菜を取り上げて手際良く朝食の準備を始めた杜博は 「お洒落しておいでよ」 と微笑みながら、否を言わせない雰囲気を醸し出した。 
額に手をやり、突然の流れに戸惑う私を青慎が部屋へと誘導し、声を潜めて問い掛けてくる。

「姉さん・・・・。 えっと、結婚するの?」
「ちょ・・・・ 本当に私が受けた、まさか。 それはない。 でも・・・・ 記憶がぁ・・・・。 青慎、少し一人になって考えたいの。 でも結婚なんかしないわよ、しませんから!」
「姉さんが幸せになるなら僕は賛成だよ。 でも前にも言ったように、結婚には家やお金の話も絡んでくるから、曖昧なままにしていては相手にも失礼だと」
「青慎、本当に違うのっ! あとで明玉に詳しく聞くから、今は一人にして、お願い!」

部屋で一人になって必死に思い出そうとのた打ち回るも、そう簡単に記憶は戻らない。
寝台に腰掛けるとどっと疲れが出てきた。 朝の短い時間に怒涛の出来事。
コレで疲れるなという方が無理だ。 深い溜め息が零れて、涙も滲んでくる。 ふと何かが聞こえた気がして窓に視線を向けると、外には何故か桐さんの姿。 でも一瞬で消えてしまった。

「え? ええ? ・・・・・あ、手紙?」

窓枠に差し込まれた紙を広げると、後宮で問題が起きたから実家に暫く留まるようにとの指示が書かれている。 何度も目で追うが書かれた文章は端的で、本当にそうなのかと不安になってしまう。 勢いで後宮を飛び出した私だ。 李順さんからあんなバイトは不必要だと思われて首にされたのだとしても、おかしくはない。

それに・・・・・・・・・・ 陛下が下町に姿を見せない。

いつも、どんなに駄目だと言われていても外套と眼鏡の変装で姿を見せるのに、今回は全く姿を見せない。 考えないようにしていたけど、慣れてしまった日常が繰り返されないことが、こんなにも苦しい。

もう要らないって直接伝えて貰えずに、さよならも言えずに、このままお別れになるのかな。



滲んでいた涙が、いつの間にか手の甲に落ちて・・・・・・ 滲みながら滴り落ちた。







→ 次へ

スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:20:08 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-05-01 水 01:33:48 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-05-01 水 20:03:43 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。怪しいですか?幼馴染さん。良い男って浩大が言ってますよ?夜中のコメント、ありがとう御座います。超嬉しいです。ちょいとこの後、お休みになるので滞るかもしれません。ご了承下さいませ。
2013-05-01 水 20:07:31 | URL | あお [編集]
Re: 記憶にございません!?
ダブルS様、コメントありがとう御座います。几鍔との絡みを書くのが楽しいのです。ほほほ。陛下の脱走がいつになるか。李順さんは、宰相は止めることが出来るのか。どうしましょう・・・・・・・。(笑)脱走を願うダブルS様が好きです。
2013-05-01 水 20:09:25 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-05-01 水 22:44:51 | | [編集]
Re: この先が気になります!
落井様、初めまして。 そしてコメントありがとう御座います。最初の頃の作品は誤字も多いですし、読みにくい作品ばかりでしょうに、なんて懐の大きく、お優しいお方で御座いましょうか!!すごく嬉しいです。 「あ、コレ変だわ」 と思うものがありましたら、教えて下さい。本当に(汗) 琉鴇皇子の要素満載の幼馴染さん。えへへ。柔和でごり押しが強いと、みんな皇子になっちゃうかも。(爆)引き続きお付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-05-01 水 23:04:10 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。