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多事多難  12
バイト娘(家の娘)を放置して、昨夜娘が嫌いなこってりラーメンを食べに行く。 
ああ、至福のひととき。
ラーメンって時々、無性に食べたくなる。それもこってり系が。そういうのって無いですか? 


では、どうぞ
















勝手に拝借した部屋に入ると桐が待機していた。 口元がへの字で何か言いたげだが、たぶんそれは口にしてはいけないと判っているようだ。 判っているなら言わないがいい。
誰に何を言われても今は王宮に戻るつもりはない。

「何かあったか? 浩大からの連絡は」
「・・・・・まずはご夫婦間正常化、おめでとう御座います。 これで王宮にお戻りになっても仕事が捗ることでしょう。 浩大からの報告より先に、陛下が迎えに行く直前まで、杜博なる幼馴染が傍に居りましたことを報告致します。 お妃の買い物に付き合っていたようですが、周囲への視線が多少気になります。 まあ、嬉しそうに浮かれていたと謂えば、それまでですが」

桐からの報告に陛下は眉を顰めて冷酷な表情を見せる。 同時に室内の空気が凍りついた。 息苦しくなるほどの冷たく重苦しい雰囲気に桐の口元がまた変な形で強張るのを見逃さない。
夕鈴との穏やかな時間を過ごし、緩んでいた頬が桐からの爆弾発言で引き攣ったかのように強張りを見せる。 陛下が胡乱な視線を流すと、小さく溜め息を落として頷き返された。

「買い物にお付き合い、久し振りに会った幼馴染なら有り得ることでしょう」
「・・・・・偶然か?」
「たぶん偶然でしょう。 お妃がどのような道順で町に行くなど前もって・・・・・。 ああ、早朝来た時に女友達の店に行くことは承知のはず。 となれば」
「早朝にここに来た? 早朝から幼馴染が何しに来たんだ!?」

桐は肩を竦めて 「静かになさった方がいいのでは?」 と訊いてくる。 しかし憤りは治まる訳もない。 先を促がすと、「昨夜の戯言を撤回に来たようです」 と返って来た。

「仕事に行く前に謝罪に来たと言ってましたよ。 その後几家の跡取りも来て、結婚話は戯言と纏まり、幼馴染とは時間がある時に付き合うと話してました」
「・・・・付き合う? 何処に? 奴の仕事とは? 浩大からの報告は?」
   
詳細不明、浩大からも報告が届けられていないと伝えると、陛下は黙り込んでしまった。 
ああ、面白い主だ。 
早くどうにかなればいいのにと思いながら、この面倒な揉め事が続くのも実は楽しいなと思う自分が居る。 この国の国王だ。 庶民の一人や二人、どうとでも出来る立場だろうが、あのお妃相手に手を拱いて焦れている。 かと思えば相手が泣くほど脅えるほどに、躊躇なく手を出す狼の一面も見せる。 この先も傍観者として傍に居れたら退屈はしないだろう。

肩を震わせ出した桐を睨ねつけるも、視線を逸らされるだけ。 面倒になり手を振り払い桐を下がらせる。 溜め息と共に寝台に横になれば、窓から白い雲がゆったりと流れる空が見えた。
 
バイト期間が終われば、彼女はあっさりとこの下町に帰ってしまう。 
僕がいくら懇願したとしても、最後には下町に戻ることを選ぶだろう。
今はただ借金返済のためにバイトに勤しんでいる夕鈴だ。 借金が完済したら脱兎の如く、僕の前から姿を消すことになるだろう。 いつまでも味方で居ますと告げて。 
こんなにも君だけを翻弄していることも、君の傍に居たいが為に下町に足を運ぶことも、君の言動に動揺して間違いを犯してしまうことさえも、君は 『国王陛下のイヤガラセ』 だと憤るだけ。 
本心を上手く隠して接しているから、それは仕方がないだろうが君に嫌われるのだけは辛い。
イヤガラセじゃないと、困らせるつもりはないのだと、そのままの君の傍に居たいのだと伝えてもきっと届かない。 現実は真面目な君の涙に、笑みに、怒り顔に陥落するだけだ。

「ああ、面倒だ・・・・・・・」

もっと面倒なのが新たに現れた幼馴染。 怪しいところがあると浩大が動いているが、未だ報告がない。 王都で仕事をしていると聞いたが、どんな内容なのか報告がない間は動きようがない。 だが、それに夕鈴が関わるとなると話は別だ。
彼女の無垢な心が傷つくのは赦せない。 結婚の話が冗談だとしても、彼女を翻弄していいのは私だけだ。 それさえも頑固な兎の前では諸刃の剣だというのに、他の者が彼女を惑わすことは御しがたいほどに憤りを感じる。

期待はしていない、望むだけだ。 その望みを夢にするか、現実にするかは自分次第なのか、彼女次第なのか。 手を伸ばせた届くのか、伸ばしても儚い夢なのか。 
自分は望むだけだ。 儚い夢としないように、自身の望みを貫くだけだ。 そのために邪魔な輩は出来るだけ早々にご退場願おう。 

「逃がしたくないと言ったよね。 ・・・・・・夕鈴」
 
赤い火が灯る双眸を今はゆっくりと閉じて、暫しの安寧へ身を沈める。 やっぱり君の傍は心地がいい。 下町の一軒家。 警護体制も万全に取れない場所だというのに、こんなにも簡単に眠りに落ちる。 これからも望むくらいはさせてくれ。 望みもないままでは・・・・・・・・・。




「陛下? あの、夕刻近いです。 門が閉まっちゃいますよ?」
「ん・・・・・ ちょっと来て、夕鈴」

とろりと甘い声色で誘われる。 少し眠気混じりの陛下の声には逆らえず、部屋に足を踏み入れ寝台に近付くと腕を引かれ、体の上に倒れ込んでしまった。 驚いて離れようとするが、背に回った手は絡みつくように力を入れ、どうしたんだと夕鈴は目を瞠った。

「杜博ってどんな奴? 僕とは買い物に行かなかったのに何で奴と一緒に買い物したの?」
「・・・・・今度は桐さんですか? 幼馴染に偶然会って話をしながら歩いただけです。 しばらくこの町にいるので、懐かしいところを案内する約束をしたんです。 それより門が閉まっちゃいますよ、陛下。 急いで戻らなきゃ」
「戻らない。 今日は夕鈴のところでご飯を食べる。 明日は僕も同行する。 泊めてくれるなら尚いいんだけどな。 朝から夕鈴と一緒に居られる」

そう言った途端、胸を強く押された。 柔らかな熱が離れていくのを残念に思いながら身体を起こすと、やっぱり真っ赤な顔で眉根を寄せている夕鈴がいて、想像通りの表情に苦笑してしまう。

「・・・・冗談、ですよね? 陛下はお仕事いっぱいですよ。 官吏の皆様や大臣様、宰相や李順さんだって陛下の御指示をお待ちですよ? 私のご飯なんて」
「だって後宮では滅多に作ってくれないし、奥さんが他の男と出掛けるなんて厭だな」

あ、顔色が変わった。 目付きが眇められて、大仰な溜め息を吐かれてしまう。
君の口から零れるだろう台詞はいつものアレだろう。 だけど、そこは譲れない。

「どうしても駄目って言うなら宿を探しに行くよ。 でもご飯は食べさせてくれる?」
「だから・・・・・ 私はバ」
「で、杜博ってどんな奴? どこに出掛けるの? いつ?」

陛下から畳み掛けるように質問され、厭は言わせない雰囲気が醸し出されている。 
なんで小犬の顔で狼の気配? 下町に戻ったバイト娘の素行がそこまで知りたいものなのだろうか。 そんなに私は変なことをしそうに見えるのだろうか。 ここでは何をしていても中傷文など回りはしない。 せいぜい下町の娯楽にされるだけだ。
ここに来て王宮に戻らないと言い出すとは、一体何があったというんだ。

「・・・・はあ。 杜博は七年前に章安区から引越して行った幼馴染です。 子供の頃は一緒に遊んでいたけれど。 そうですね、どんなと言われると・・・・。 あんなに軽薄だったのかな? 最後の記憶が十歳だからかな。 親しくはしていたと思いますが」
「それでなんで求婚されるの?」
「ですから、それは几鍔の野次に乗っただけで、冗談だと」
「でも付き合うって、どうして? 何処に出掛ける?」

今度は黙ったまま呆れたような顔をされ、しばらく沈黙が続いた後、背を向けられてしまう。
「ご飯・・・・ 作ります」  
呟くように落とされた言葉に追い縋るように立ち上がり君の腕を掴むと、今度は睨まれた。 悲しげな小犬で君の顔を覗くと、今度は動揺しているようで彷徨う視線と染まり出した頬が目に映る。

「・・・・・杜博とは買い物がてら一緒に町を歩くだけです。 でも下町の悪女は困るので、明日の買い物の時だけにします。 あとは大人しく家にいますから」
「うん、そうして欲しいな。 ・・・・・ごめんね、ゆーりん」

苦虫を噛んだような顔で頷かれたが、これ以上君を他の男に近付けるのはどうも分が悪い。




夕飯を食べた陛下は微笑みながら 「また明日!」 と去って行く。 本当に王宮に戻らないのだろうか。 李順さんが眼鏡を白く輝かせて壮絶なほどに恐ろしく嗤う姿が脳裏に浮かぶ。 
もう、どうしたらいいんだろうと肩を落としたが、このまま落としている場合じゃない。

「桐さん? ・・・・・いますよね?」
「いますよ、何ですか?」

屋根の上に居たのか、すとんと背後に降り立たれ思わず叫びそうになる。 飄々とした顔に浮かぶ意地悪そうな笑みが心底悔しい。 

「大変申し訳ないのですが、陛下が下町にお泊りになることを李順さんに伝えて下さい。 お仕事がいっぱいで忙しい時だというのに、言うことを聞いてくれないんです。 伝えるだけでいいです。 心配はしてないでしょうけど・・・・・ 怒ってはいると思うから」

恐ろしいほどの寒気に襲われる。 これ以上李順さんから睨まれるような事態を招かないで欲しい。 どうしたって私は巻き込まれてしまうのだから。 王宮に戻った時、自業自得とはいえ、大量の仕事に忙殺される陛下は見たくない。 部屋へ来る時間も無いほどになり・・・・・・。
陛下と会える時間が減ってしまう。
考えが自己中心的になっていたようで、いつの間にか私は涙目で俯いていた。 頭上から大きな溜め息が聞こえ、顔を上げると桐さんがじっと私を見下ろしている。

「家から一歩も出ないこと。 もし一歩でも出たと後で判ったら・・・・・」
「青慎が帰って来ますので出掛けません」
「家の中に誰も入れないこと。 もし誰かが一歩でも入ったと判ったら・・・・・」
「青慎以外、誰も家の中に入れません!」

それならと薄く哂った桐さんは李順さんへの伝言を携えて出て行った。 
だから、ここは下町なんだって。 誰も下町の一庶民の、それもボロ家になんか忍び込まないって。 そもそも盗るものが何も無いんだから。 
それとも私か? 私の素行がそんなにも気になるのか? そこまで信用無いのか?

「おかしいわ。 実家でリフレッシュの筈が・・・・・ いつもより疲労が溜まっている」

兎に角、青慎のために夕飯を用意しよう。 さあ、気分を切り替えて動かなきゃ。

 

その晩遅く、更に嵐の種を持ち込む人物が現れるなど、この時の夕鈴は未だ知る由も無い。












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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 16:42:12 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-05-05 日 17:09:11 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。早いコメントに驚きました。でも嬉しいです。ええ、嵐です。題名通りに夕鈴を、他を巻き込んでおります。長い話になってしまいましたが、お付き合い下さいませ。
2013-05-05 日 17:16:11 | URL | あお [編集]
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2013-05-05 日 17:34:42 | | [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントありがとう御座います。ストーカー大歓迎です。嬉しいです。(え?)いつもと違う時間帯ですが、お休みモードですので、今回限り。また夜中の更新に戻ると思います。あまり動きが無くてすいません。書きたいこと目白押しで、あらら話しが進んでないわと、今盛大に焦っております。(爆) もう暫くお付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-05-05 日 17:48:50 | URL | あお [編集]
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2013-05-05 日 18:57:04 | | [編集]
Re: 桐さんに同意!!
ダブルS様、コメントありがとう御座います。題名通りにどんどん多難が待ち受けている夕鈴ですが、その一端を陛下が担っているとは、本人思ってもいないのでしょうね。 夕鈴寝込んだら、責任持って看病して貰いたいです。
2013-05-05 日 20:32:21 | URL | あお [編集]
爆弾の次は嵐・どこまでも攻めますね夕鈴はこの嵐に耐えられるのかしら?どんな嵐がくるのか楽しみです
2013-05-05 日 20:48:53 | URL | ともぞう [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメントありがとう御座います。 嵐が直撃する模様ですが、夕鈴の強靭な腰も折られるのでしょうか。 気象予報士のともぞうさーん。 この後の進路をお願いします。(笑) 
2013-05-05 日 21:35:06 | URL | あお [編集]
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