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多事多難  13
買い物に行ったら久し振りに前の職場の元同僚に会いました。 やっぱり仕事環境は変化無いようで、文句が出て来る出て来る。店先で爆笑しましたよ。今月また飲みに行こうとなり、その時に愚痴を零すと言っていた。わーい、飲み会だ。 



では、どうぞ














「・・・・あの、姉さん。 父さんが帰って来たけど、姉さんに何か話しがあるそうだよ」
「ええ? 珍しいわね、私が居る時は近寄らないのかと思っていたのに・・・・・。 まさか、新たな借金をして来たとかいうんじゃないわよね!?」

そう呟くなり夕鈴は外の井戸へと走り出した。 青慎はそれを力ない笑顔で見送るしかない。 
ああ、いつもの姉だと。 そして悠長に手洗いをしている所へ鬼の形相で走り寄って来た娘に、岩圭は悲鳴を上げそうになった。 

「父さん、ちょっと・・・・・ 来て頂戴」

普段から何事においても厳しい娘からの冷たい声に、形相に、父としての威厳など皆無に等しい。 蛇に見込まれた蛙のようなもの。 完全に昼の行燈扱い。 台所に呼び出された父は久し振りに会う娘に笑顔を見せるも、一瞥され肩を竦ませるしかない。

「父さん、言いたい事があるなら早く言って頂戴っ!」
「夕鈴久し振りだな。 ま、まずは父さんにお帰りなさいはないのかな?」

仁王立ちする娘に取り敢えず言ってみるが、怒気を孕んだ冷たい双眸を前に項垂れてしまう。
娘からの冷たい視線が居た溜まれず、嘆息した後夕鈴に向き直った。

「あ、あのな、夕鈴。 杜博を覚えているか? 今王都に仕事で来ているそうだが」
「・・・・・昨日も今日も会っているわよ。 それがどうしたの? どうして知っているの?」

途端に訝しげな表情を呈する娘の顔を窺いながら、父は唾を飲み込んだ。 そうか知っているのか・・・・ と口中で呟きを飲み込み、小さく頷くその顔は少し涙目だ。 その顔に姉弟は眉を顰めて顔を見合わせた。

「帰り道に杜博が現れてな。 いや、最初は久し振り過ぎて判らなかったんだが、名と話を聞いて思い出したんだ。 その杜博が言うにはお前との結婚を望んでいると、だから父親である私に承諾して欲しいと言って来たんだよ」
「・・・・・・・はぁあ?」

久し振りに会う父親から聞かされる話の内容が頭に伝わらない。 
杜博は結婚話は戯言と、冗談だと私に言わなかったか? 父さんに会いに行った? 
誰が何を望んでいるって? 父親の承諾が欲しい? 一体何の承諾だと言うのだ?

「姉さん。 会ったばかりだと言ってたけど、早朝来たのはやっぱりそういう話の流れが?」
「い、いや、違うわよ、青慎。 あれは戯言だと、几鍔の前でもはっきり言ったもの!」
「杜博は夕鈴と相思相愛だと言っていたぞ。 今日も町を二人で散策したと」
「い、いや、違うわよ、父さん。 明玉の飯店でも戯言だと話は済んでいるのよ!?」

一体杜博はどうしてそういう話を父に持ち掛けたんだと怒りと共に困惑する。 全く意味が判らない。 頭の中は暴風雨が吹き荒れ、パニックで暴れ出しそうだ。

「で、父さんは杜博さんになんて答えたの?」  青慎が父に尋ねる声も遠くに聞こえる。

「・・・・なんか食事を御馳走になってな。 ・・・・・そして、酒なんかも勧められて」

あ、眩暈と共に何か厭な予感がする。 
背筋にぞわりと寒気が奔る。 実家に帰って来てから、こんな寒気に何度襲われたことか。 
何度も寒気に襲われ続けて鳥肌が肌に定着しそう。 それでも先を聞かなければならないだろうことは判る。 どんな言葉が耳に届くのだろうと腕を擦りながら父を睨み付けた。

「なんか・・・・ 杜博に夕鈴を嫁にやると承諾したような・・・・・ 気がするんだが」

なんか・・・・ じゃないだろうっ! 気がするってどういう事!?
青慎にも聞こえるほどの何かが切れた音と共に、夕鈴は父親の胸倉を掴んでいた。 

「父さんっ! 私は王宮で仕事中でしょ! 仕事を放棄して、親が勝手に決めた結婚なんて絶対に反対ですからね! 青慎だってまだ学問所通いがあるし、父さんだけの収入じゃやっていけないでしょう! 第一、杜博とは会ったばかりなのに、どうしてそんな話になるのぉ!!!」
「ご、ごめんっ! なんか話の流れと酒に呑まれて・・・・・。 それに相思相愛だと彼に言われて、夕鈴も嫁に行くのかと悲しくて酒が進ん・・・・・ ぐぇっ」
「姉さん、父さんが死んじゃうよ! 落ち着いて、姉さん!」
「どうしてそんなことを勝手にぃ! 絶対無理だからね、結婚なんて未だ無理っ!」

あああああっ! こんな爆弾投下がされるとは想像もしてなかった。 杜博って何を考えているのよ! 明日、絶対に突き詰めてやる。 
いくら許嫁が厭だからって私まで巻き込まないで欲しい。
 
部屋に戻っても夕鈴の怒りは治まらないままだった。 
腹が立って頭に血が上って、苛立ちはそのまま手仕事に支障をきたす。
指に針を刺してしまい、それも父さんのせいだと今は寝息を立てている部屋の方向を睨み付ける。 兎に角、明日だ。 明日杜博に会ってしっかりと話し合いをしよう。 どうして父まで巻き込んでそんなことを言ったのか。 






まんじりともせずに夜を明かし、一連の家事を終えた夕鈴は玄関先で仁王立ちしていた。
父親が強張った顔で仕事に向かうため家を出ようとして娘からの冷たい一瞥を受ける。 背を丸めて小さく 「親が決めた相手と結婚するのが・・・・」 と呟いたが、ギリッと厭な音が夕鈴から聞こえたのを耳にして、それ以上は何も語らずに足早に町へと消えて行く。

「あの・・・・ 莫迦親父っ」
「あらら~、朝から機嫌悪そうだね。 夕鈴ちゃん」

何故か背後から聞こえて来た杜博の声に目を瞠りながら振り返った。 穏やかな笑みを浮かべた杜博に瞬時何を言えばいいのか忘れそうになるが、父の言葉を思い出して目に力を入れる。

「杜博、結婚は戯言と言ったじゃない! 結婚は出来ないとも伝えたわ! それなのに父さんまで担ぎ出して何をしてんのよ! 父さんとの口約束なんて無しだからね! 酒を飲ませて承諾させようなんて有り得ないわよ! 絶対に無理だから!」
「う~ん、でも俺ね、夕鈴ちゃんがいいなって。 あんなおっかない許嫁はマジ勘弁なんだよね。 親にも夕鈴ちゃんとの婚姻を伝えて来たし、だから結婚しよう?」
「・・・・私は自分のしなくてはならない事を放棄してまで結婚しようとは思わない。 申し込んで貰ったのは嬉しいけど、何度も言うように結婚は出来ません」

一体そこまで嫌がるなんて、どんな許嫁なんだと興味すら持ってしまう。 柔和な笑みを浮かべながら近付いて来た杜博は持っていた籠を持ち上げると 「残念」 と呟き、とても残念そうには見えない顔で歩き出した。
それでもその言葉を受け取った夕鈴は、安堵の息を漏らして杜博を追い掛ける。

「その台詞は、杜博も納得したと取るわよ。 結婚の話は無しだからね!」
「それより今日は買い物がてら飯でも食べようよ。 ちょっと行きたい場所もあるしね」
「・・・・行きたい場所? 私にわかる場所ならいいんだけど」

陛下との約束通り、付き合えるのは午前中だけと杜博に伝えていると、そこに几鍔が姿を見せた。 杜博と一緒の私の姿を見ると眇めた視線を見せ 「お前は・・・・・」 と呆れたような顔をして頭をガシガシと掻き毟る。

「結局は杜博に翻弄されてんじゃねーかよ!」
「午前中だけ懐かしい場所を案内するだけよ。 几鍔にとやかく言われる筋合いは無いし」
「そうそう。 夕鈴ちゃんに結婚を承諾して貰う貴重な時間を邪魔しないでね、几鍔」

ぎょっと驚いた顔で杜博を見れば、きょとんとした顔で 「諦めないよ」 と言われてしまう。
駄目だ。 暖簾に腕押し。 糠に釘。 石に灸。 沼に杭・・・・・・。

「もう、駄目だ。 駄目、疲れた。 もう、イヤ。 ・・・・杜博、話が通じない相手とはとてもじゃないけど付き合えない。 悪いけど一人でじっくり下町見物して頂戴。 結婚はしないって何度言っても判ってくれないなら・・・・・ もう、顔も見たくない」
「え、夕鈴ちゃん。 約束は?」
「申し訳ありませんが破らせて貰います。 もう家にも来ないで下さい!」
「なっ、また家に行ったのか、杜博っ!」

疲れた。 どっと疲れが出る。 夕べ碌に寝れなかったせいもあってか、眩暈までしてくる。
籠を取り返し踵を返すと、杜博が腕を取るから睨み上げた。 しばらく黙って睨み合いが続いたが、長く息を吐いた杜博が腕から手を離して 「うん、ごめんね」 と眉尻を下げる。
几鍔が杜博の肩を掴み 「ちょっと付き合え」 と何処かへ連れ去ろうとしているから、今が逃げるには丁度いいだろうと足早に市へと向かうことにした。

「夕鈴ちゃん、またね~」

全く反省の色が見えない声は聞こえなかったことにして。




急いで買い物を終えて家に帰ると、桐さんが庭先で首を傾げて出迎えてくれた。 その表情はどう見ても怒っているように見え、もう・・・・ どうとでもしてくれとさえ思う。 
何なんだろう、ここ最近の運の悪さは。 バイト終了が近い予兆なのか。 
それとも新たに借金でも作るとでもいう前触れか。
いままで碌に妃演技も出来ない癖に綺麗な衣装着て、美味しいもの食べていた分のツケが回って来たとか? でもちゃんと妃らしく頑張ろうと努力はして来たつもりだ。

「・・・・・桐さんが怒っている意味が判らないです」
「お前の頭の中身は糠か泥か? 俺は昨夜何て言ったか、もう忘れたと言うのか」

眉根を寄せて桐さんを凝視すると、眉間の間を勢いよく 『でこピン』 された。 
隠密家業を生業としている人からの 『でこピン』 だ。 本当にのた打ち回るほどに痛い。 
「加減はした」 と言うが、穴が開いたのではなかろうかというほどの痛さに、私は涙目で地団太を踏みまくって叫んだ。

「脳味噌が揺れるっ! 酷いですよ、何をしたって言うんですか!」
「お前は弟以外は家に入れないと言っただろう。 王宮から戻って来たら中年が一人増えていた。 詐称をしたのだから罰は当たり前だろう」
「・・・・・・・桐さん、あれは私の父です。 普段、私が里帰りしている間は小言が厭で逃げ回っているのですが、偶々帰って来ただけです。 仕方ないでしょう? だって家族なんだから」
「・・・・・知っている」

じゃあ何で 『でこピン』 をしたんだ!? ああ、もう疲れた。 今の打撃で疲労が倍増だ。
このまま部屋に飛び込んで、寝台で深く眠りに就きたい。 王宮でバイト再開と言われるまで、深く深く眠ってしまいたい。 誰にも会いたくない。 ただ、ただ寝かせて欲しい!


それなのに畳み掛けるように次の嵐がやって来る。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:43:43 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-05-06 月 02:19:44 | | [編集]
夕鈴今のうちに寝ておいた方がいいかも(*≧m≦*)体力温存・嵐に耐えうる精神力はあると思うけど、立て続けだとねファイトp(^^)q夕鈴

それにしても几鍔もうここまできたら、お前に横取りされるくらいなら俺が嫁に貰う・くらい言っちゃえばいいのに・

次の嵐は何かな・
2013-05-06 月 05:38:14 | URL | ともぞう [編集]
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2013-05-06 月 07:19:00 | | [編集]
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2013-05-06 月 10:51:20 | | [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントありがとう御座います。桐さんを動かすのは本当に楽しいです。嵐に翻弄される夕鈴を書くのはもっと楽しいです。夕鈴大好きですけどね。えへ。また深夜更新になると思います。どうぞ、お付き合い下さいませ。(^^)
2013-05-06 月 22:50:30 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメントありがとう御座います。そうそう、疲労困憊で倒れる前に、寝かせてあげようね。可哀想だよね、夕鈴。ここまで追い詰めたことは過去無かったかも知れない(笑) 本当にごめんね、夕鈴。でもこの後が本番です。ほほほほほ。 その几鍔の台詞、本当は使う予定でしたが、いっぱいになったのでまた次の妄想にでも使いたいです。
2013-05-06 月 22:56:35 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。毎日夕鈴を翻弄する話を妄想するのが楽しくて仕方が無い(酷いでしょ?) お付き合い頂き感謝してます。コメントに癒されております。
2013-05-06 月 22:57:40 | URL | あお [編集]
Re: あれ、ナンカ怖い?
ダブルS様、コメントありがとう御座います。やはり父娘。 でも父さん、お酒強いのかな?闘鶏するけど、実はお酒駄目だったりして。妄想なので、そこはご勘弁を。(結構ドキドキです)笑顔で話を自分本位に持っていく杜博。夕鈴翻弄されています。さあ、どうしましょうか。(笑)
2013-05-06 月 23:00:45 | URL | あお [編集]
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