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多事多難  14
連休お疲れ様です。 さあ、お休みの後はお仕事ですよー。 長い話になりましたが、お付き合い下さって本当にありがとう御座います。 コメントもいつも癒しになっております。 


では、どうぞ













ぱあっと笑顔で裏庭から姿を見せたのは、やはり紛うこと無き陛下の尊き御姿。
嵐はいつになったら落ち着くのだろう。 夕鈴は大きな眩暈に襲われ、勝手口に縋り付く。

「ゆーりんっ! ずいぶんと早く帰って来たんだね。 もう買い物終えたんだ。 追い駆けようと思っていたのに少し遅かったかな。 あ、何か手伝うことある?」
「・・・・・陛下は何も手伝わなくていいので大人しくしていて下さい」

李順さん、伝言を聞いたのでしたら、早く陛下を迎えに来て下さい!! もう嵐は嫌です。

籠を持って家に入る際、桐さんが陛下に何か報告しているのが見えた。 昨夜頼んだ王宮への言伝の一件だろうか。 お仕事いっぱいが待ち受けている王宮に帰れと言うのも可哀想だけど、あとで追い込まれるのも陛下だ。 高官だって今頃は奔走させられているだろうと思うと、やはり早めにお戻り頂くのが正しいと思える。

籠の中身を片付けて昼飯を何にしようか考えていると、陛下が家に入って来た。 被りを外して私に近寄ると、突然抱きしめてくるから叫びそうに・・・・ いや、叫んでしまった。

「なぁっ! 何をぉ?」
「・・・・・李順が何を言っても、王宮に戻す。 幼馴染からの求婚が執拗なんだって? 夕鈴のお父さんも懐柔されたそうじゃないか。 身の危険を感じるから、ね? 戻ろう?」
「陛下、落ち着いてっ!? もう、大丈夫ですから。 杜博には先程もう会わないと伝えました。 私だって怒ってるんですからっ! 勝手に父さんまで巻き込んで何をしたいのか判りません」

陛下の胸をぎゅうぎゅう押しながら抗いを続け、胸の内で怒りの罵倒を零す。
だけど勝手に王宮に戻るのは話が違うだろう。 後宮に忍び込んだ間諜が原因で実家に待機しているのだし、李順さんから許可が下りない内は、勝手に戻ることは無理だと思う。 
以前、紅珠の家から陛下が勝手に私を連れ戻った時は恐ろしいほどに怒られた。 全身が氷水に浸けられたかのように背筋が凍り付き、震え続けるしかなかったのを思い出す。

「後宮に忍び込んだ間諜の件があるから戻れないはずですよね? 私は大丈夫です。 杜博には二度と金輪際、絶対に会いませんからっ! 第一借金返済のバイトがありますし、結婚を繰り返されて本当に、本当に私は怒ってるんです!」
「そうだよね! ゆーりんは僕の唯一のお嫁さんだものね。 結婚なんか出来ないよね」
「・・・・・・・・・・」

お嫁さんて・・・・ 何を言っているのよ、私はバイト妃でしょうよ。
結婚なんか出来ないって、そんな恐ろしいフラグを立てないでよ。
 
それに後宮に妃を沢山侍ることの出来る立場の人が何を言っているのやら。 それも高貴で雅で教養があって、容姿も整っている蝶のような、華のような、匂いたつような妖艶な妃が、可憐な妃がこの先二十人でも三十人でも百人でも。
あ、泣きたくなって来た。 頭の中がぐるぐる回り出してくる。

「・・・・・・お茶、淹れます。 昼飯も簡単なもので良ければ召し上がって下さい」
「うんっ! ありがとう夕鈴。 ・・・・ねえ、僕も杜博って顔みたいな~。 仕事って何をしているのかな。 どこに行けば会えるかな?」
「・・・・・会ってどうするんですか? 私はもう会わないって言いました。 仕事は・・・・ 何をしているのか判りません。 そう云えばさっき几鍔が何処かに連れて行ったけど」

昼食を食べ終えると、陛下は眼鏡を装着して何処かに出掛けようとする。 
首を傾げると、頬を撫でられ 「顔色悪いから少し寝ていた方がいいね」 と心配されてしまった。 下町に足を運んだついでに克右に会い、報告を聞いて来るのだと言う。 何処までもお仕事なのねと、眉根を寄せると大丈夫だと笑ってくれた。
正直、ぐらぐらし始めた視界に少し不安が募り、一通りやり終えた家事とまだ帰る予定ではない青慎を思い、今の内にと素直に寝台へと足を向ける。 窓から入る春の風が心地良い。
本当に・・・・・ 疲れた。 
これなら立ち入り禁止区域で掃除婦をしていた方が楽かも知れない。 何だろう、きっと心が酷く疲れているのね。 老師の顔が懐かしいだなんて、きっと重症に違いない。 
それでも夢には出てこないで下さいと願いながら夕鈴は瞼を閉じた。







「夕鈴ちゃーん。 おーい、夕鈴ちゃーん!」

ドンドンッと部屋の窓を叩かれ、夕鈴は自分を呼ぶ声に目を擦りながら起き上がる。 声がする窓に目を向けると、二度と会わないと強く言い放った相手が温和な笑みを浮かべて窓枠を叩いていた。 眉間に思い切り皺を寄せて部屋から出ると、勝手口と玄関の鍵を確認し、更に棒を立掛け、家の中には絶対に入れないぞと無視を決め込み台所で夕飯の支度を始める。

「おーい、入れてくれよ、夕鈴ちゃーん。 ごめんって。 お願いがあって来たんだよ。 もう王都を離れなきゃならないから、最後のお願いなんだ。 幼馴染の最後のお願いっ!」

今度は台所側の窓から杜博の声が響き始める。 山の中の一軒家ではないので、段々周囲への配慮が気になり出し、そして聞こえてくる内容に口端がひくりと動いてしまう。 
見てはいけないと判っているのに、そろりと顔が動いてしまう自分が嫌だ。 相手にしてはいけないと背を向けていたのに、その言葉に首が動くなんて、自分の甘い性格を恨んでしまいたくなる。 そして、その動きに気付いたのか、杜博は更に悲痛な声で懇願を繰り返して来た。

「お願い、夕鈴ちゃん。 最後でいいから、ちょっとでいいから、顔を見て話を聞いてくれると嬉しいんだけど。 夕鈴ちゃーんっ! お願いー! 謝るからーっ」

ああ、非道な人間になりきれない自分が憎い。 
目を瞑り大きな溜め息を吐くと、夕鈴は仕方がないと扉に立掛けていた棒を外した。 嬉しそうに家の中に入ろうとする杜博を手で制し、睨み上げる。

「話はそこで聞く。 さっき怒っていたんだけど、伝わらなかったのかな?」
「伝わってるよ。 でも俺も必死! 本当に許嫁が嫌なんだ。 だから結婚する 『振り』 でいいからお願い出来ないかな。 一刻でいいんだ、一刻だけ・・・・。 俺が決めて連れて来た相手という 『振り』 をして欲しいんだ。 ね、お願いだよ」

両手を組んで必死な懇願の様子に、今までの杜博とは違う気迫を感じて、夕鈴は眉を顰めて凝視した。 あまりにも必死な彼の様子にどうしたらいいのか判らなくなってしまう。 何も言えずに杜博をじっと見上げ続けていると、強く手を引かれ握られた。

「許嫁の家業を継ぐのも嫌だし、彼女自身も生理的に駄目。 お願いだよ、夕鈴ちゃん。 一刻だけでいい。 あとで別れたとか上手く言い訳する。 もう迷惑掛けない!」
「・・・・・一刻だけ? いつ?」
「ありがとうっ! 直ぐだよ、今直ぐっ! 茶屋に親が来てるからそこで少し演技してくれたらいいよ。 本当に助かる。 ああ、抱きしめていい? すごっく嬉しい!」
「いいって言ってないっ! ・・・・やっぱり駄目っ! 杜博とは金輪際、絶対に会わないって決めたんだもの。 何度言っても懲りないで、しつこくって、父さんまで担ぎ上げて・・・・」
「夕鈴ちゃんっ! 本当にごめんなさい、でもお願いっ!」

陛下との約束を思い出して首を振って断ると、杜博はいきなり土下座して来た。 
色鮮やかな刺繍が施されたお洒落な袍が汚れるのも構わずに勝手口近くの地面に額突くように平伏し、夕鈴に悲鳴を上げさせる。

「ちょ・・・っ! 止めてよ、お願い止めてぇ! 大の男がそんなことくらいで頭を下げるもんじゃないわよ! 顔を上げなさいよーっ! ほら、汚れるでしょー!」
「そんなことくらいで俺は必死なんだ。 夕鈴ちゃんが 『是』 と言ってくれるまでは!」
「杜博っ! 止めてよ、本当に止めて! ~~~~~~っ!! あー、もう、判ったわよ!」

必死に腕を引っ張り上げて杜博を立たせると、額や頬を土だらけにして嬉しそうに笑ういい大人がいた。 見るとうっすらと涙を滲ませていて、夕鈴は仕方が無いなと笑うしかない。 
昔、柿の木から落ちた時に助けられた御礼だと思って、少しだけ相手をしよう。

でも家を離れる前に桐さんにそれとなく伝えようかと考える。 まあ、杜博の大きな声だ。 
丸聞こえだろうことは間違いないだろうけど、あとでまた 『でこピン』 されたら大変。
少し髪を整えて来るから門で待つように伝えて部屋に戻ると、どうやって何処から入ったのか、部屋の中に桐さんが腕を組んで立っていた。 
一瞬、部屋の温度が下がったように感じたけど、コレくらいなら許容範囲。 
狼陛下に比べたら耐えられる。 ・・・・・・・それでも怖いものは怖いけど。

「・・・・・聞こえていたでしょうが、少しだけ出掛けます。 きっと夕飯を食べに陛下が来ると思うので、それまでには戻ります・・・・・ から。 あの・・・・・」
「から・・・・ なんだ?」

ああ、桐さん。 いつにも増して口調が冷たいです。
陛下に内緒には出来ないだろうな。 陛下と約束したのに、約束したのに・・・・・・。

「ああああ~~~っ! もう、如何してこうなるの!? いいわよ、きっとどうせ、私は運勢最悪の女なのよ! 陛下に言うなら言ってもいいです!」 

涙目で桐を見ると、呆れかえった顔をしている。 
その顔を ぎっと睨み付けて夕鈴は部屋を飛び出した。 門で待っていた杜博は袍の土を払いながら、安堵の表情を浮かべて 「本当に助かるよ」 と言って来るから、もうどうとでもしてくれっと自暴自棄になってしまう。


この嵐は一体、いつまで続くのでしょうか。







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長編 | 01:14:14 | トラックバック(0) | コメント(12)
コメント
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2013-05-07 火 01:42:33 | | [編集]
思うつぼ…?
安眠妨害(笑)
まだまだ嵐は続きますね~(^w^)

土下座までして頼み込むほど許嫁が嫌なようで、ついに杜博の両親と会うことに…
振りだけでいいと言ってますが、振りだけで終わるのでしょうか(^_^;)

まぁ、陛下が助け?に来てくれるバズ!!
それまで頑張れ夕鈴\(^o^)/
2013-05-07 火 05:42:27 | URL | ダブルS [編集]
杜博は夕鈴の性格をしっかり把握してますね夕鈴すっかり丸め込まれてますよ・
それにしても許嫁の家業とは?気になるワードが出てきましたね・
夕鈴は杜博の父親まで出てきて、振りだけで逃げられるのかしら?陛下早く助けてあげてねそのあとは…
2013-05-07 火 07:03:56 | URL | ともぞう [編集]
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2013-05-07 火 07:27:04 | | [編集]
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2013-05-07 火 09:30:05 | | [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントありがとう御座います。 はい、お休み後は仕事頑張りましょう。とほほ。 鬼の読者様に助けられ、どんどん夕鈴を翻弄しております。 連日ありがとう御座います。もう少しお付き合い下さいませ。
2013-05-07 火 19:52:22 | URL | あお [編集]
Re: 思うつぼ…?
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 ええ、嵐続いております。 結婚したいと思っている相手の振り。 うん、大変。 あららです。頑張れ夕鈴、コノサイトハヒドイサイトデスヨ。ははははは。 でも引き続きよろしくお願い致します。
2013-05-07 火 19:57:57 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメントありがとう御座います。 夕鈴はきっと子供の頃から単純・・・・ いえ、純真だったのでしょうね。単純・・・・ いえ、分かりやすい良い子だったのでしょう。単純・・・・ いえ、素直な子だから丸め込まれてしまうのでしょう。ねえ、早く助けなきゃ、可哀想ですよ。ほほほ。
2013-05-07 火 19:59:58 | URL | あお [編集]
Re: 陛下に蹴られちゃう……?
makimacura様、コメントありがとう御座います。振り返ってみたら、そうですね。あ、明玉がいた。翻弄の影にやはり女の影があり?明玉、本当に夕鈴の友達だよね?(笑)狼に蹴られて杜博退場ですか。噛み殺される方が先かも? どの道、怖いですね。あああ。
2013-05-07 火 20:05:29 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。 夜中更新ですいません。休み明けなので、マジ眠いです、今の時間。打ち直しが多数あって笑えるほどです。(自爆) 桐さん、夕鈴落としてますか? でも夕鈴は気付かないのでしょうね。(ほほほほほ)
2013-05-07 火 20:09:50 | URL | あお [編集]
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2013-05-07 火 20:36:29 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。おばあ様、元気に復活おめでとう御座います。99歳ですか。素晴らしいです。あと、そっかーと判ったこと。ビスカスさんの名前の由来。うんうん。納得。 いつもながら凄い嬉しい褒めっぷりにデレデレしちゃいます。 桐さん好きがいっぱいいて下さって感謝感激です。 陛下に「GO!」いいですね。ニヨニヨしちゃいます。
2013-05-07 火 21:13:09 | URL | あお [編集]
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