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多事多難  16
スパコミに行けなかった娘の元へ、頼んでいた「ブツ」が届いて、早速読み耽り、ニヨニヨしてます。 まあ、そんな娘を見て、「ああ、親子だな」と・・・・・。 うん、その世界も私大好物だし。 


では、どうぞ















突然浩大の声で 「避けろっ!」 と鋭い声が響き渡った。 

桐さんが私の身体を持ち上げ移動した瞬間、今までいた場所の近くで大きな爆発音が響く。 
石飛礫や木っ端、土塊が周囲に飛び散り、桐さんの身体からはみ出していた足に当たり痛みが走る。 比較的大きな木の陰に降ろされた時、夜目にもはっきりと桐さんの額から赤いものが流れ落ちるのが見えた。

「き、桐さんっ! 血が出てる! もしかして背中にも何か当たっているんじゃ・・・・」
「目に入らなければ問題ない。 骨には異常がないようだから気にするな、警護対象はお前だ。 お前が無事なら問題はないのだが・・・・、足に当たったようだな」

私は急いで懐から手布を出して血が出ている場所に押し当てた。 触れた時、たぶん痛みが走っただろうに桐さんの表情は変わらず、自分の手布を広げ器用に折り畳み包帯代わりにして私の足に巻き付ける。 そして右腕をぐるりと回し大丈夫だろうという顔を見せ、もう一度私を抱きかかえようとした。 私はそれを押し留め、木の陰から少し顔を出して浩大を窺う。 
闇の中、未だ剣戟は聞こえて来るから、浩大も無事なのだろうくらいは判る。
でも、本当に大丈夫なんだろうか。

「いいか、お前は動くな。 相手が爆薬を持っている以上、早めの捕縛が必要だ」
「判りました、動きません。 邪魔にならないように陰に隠れています! だっ、だから」

無理はしないで! 早く杜博を捕縛して。 そして・・・・ お願いです、殺さないで!

移動した先の木を抱きかかえ、夕鈴は桐を強く強く見上げた。 
月の光も届かない雑木林の中、桐さんの表情が見えないけど、そのまま暫く無言で立ち竦む様子は私の意志を汲んでくれたという事なのか。 そしてそのまま返事もなく場を離れて行く桐を見送り、震えそうになる唇を強く噛んで目を瞑る。

また爆音が聞こえて来た。 

杜博、もう止めてっ! 久し振りだと、懐かしいなと、几鍔を含めた男友達や式を挙げた友達と一緒になって酒を酌み交わして、あんなに楽しんでいたじゃないか。  
それを捨ててまで、あんた、何の仕事をしているのよっ! 
私を売り飛ばして如何するっていうのよ。 そんなの微々たる金額を得るだけでしょう? 
どうして! どうして?


その時、目を瞑っていても判るほどの眩しさが周囲に広がる。 同時に耳を劈くような爆音。
何が起きたのか解らず、でも約束通りに木にしがみ付いたまま歯を噛み締めていた。

「あー、ここだったのか。 夕鈴ちゃん、見ーつけた!」
「・・・・っ!」

脇の下に回った杜博の手が私を後ろへと引き寄せ、そのまま背後からきつく抱き締められる。 
耳朶に何か言葉を落とされたが、一瞬のことで聞き逃してしまった。

「はい、止めーっ! 俺の手の内には夕鈴ちゃんがいるよ。 ・・・・諦めない?」
「と、杜博。 そ・・・、なにお金が必要なの? どうしても仕事辞められないの? こんなこと続けていても、いいこと、ないよ? 杜博、お願いだから止めよう?」

私の脇から伸びた手が首を捉え、小刀らしきものが左胸を下から狙っているのが視界の端に映った。 土を踏む音が聞こえ、浩大と桐が目の前に立ち並ぶ。 
一見無表情にも見える二人だが、抑えた怒りが口の端に浮かんでいるのが判った。 
いつもの飄々とした表情は無く、冷たい夜気に冴え渡るような双眸で杜博を見ている。

「それ以上傷付けたら、あんた、死を懇願したくなるほどの経験をすることになるよ?」
「あー、死ぬのも痛いのも厭だな」
「では、即時に手を解き放つことだな。 一族郎党根絶やしにされるぞ」
「それは別にいいけど」
「杜博っ! 本当に手を離した方がいいっ! このままじゃ・・・・ぁっ!」

首を捉えた杜博の手に力が入る。 絞められた状態で足先が地に着くギリギリまで持ち上げられ、苦しいともがく。 闇より深い闇が瞼の裏で爆ぜそうになり、息を必死に吸い込む。 

「なあ、動かない方がいいよ? ・・・・・それに夕鈴を狼陛下の許に返す気はないからな」
「・・・っ!? な・・・っ」

耳に聞こえて来た杜博の言葉に背筋が強張り、首を絞める腕に爪を立てる。 
今、杜博は間違いなく狼陛下と言った。 
では、私が掃除婦のバイトをしているだけじゃないと知っているというの? 
しかしそれを深く考えることが出来ない。 首よりも今は頭が痛い、苦しい、息が詰まる。 
闇の中に紅い火花が散り出した。 私の爪が杜博の皮を、肉を抉るが、一向に力は緩まない。
耳の奥からドクンドクンと心臓の太い音と、頭の奥から鋭い厭な音が響き出し、四肢の感覚が朧気になってくる。 必至に吸い込んでいる空気も私を楽にすることはなく、吸い込めているのかも判らなくなって来た頃、急に首の束縛が緩んだ。

「・・・っ! がっ、はぁあっ! ・・・・ぃ」
「ああ、夕鈴ちゃん。 暫く喋らないがいい。 咽喉を痛めているからね」

勢いよく噎せ込む。 空気を吸い込むたび、咽喉に焼け火箸を押し当てられたような痛みが奔り、目の前が真っ赤に染まる。 激しく噎せ込み身体が揺れ動くのに、杜博からの束縛は緩むことなく、そして二人の隠密を前に揺らぐこともなかった。
涙も涎も垂れ流しの状態で、ただ必死に息を吸い込み続ける。 真っ赤に染まった目の前と胸が張り裂けんばかりの哀しさに、嗚咽に似た自分の喘ぐような呼吸音が耳に届く。

「・・・・・狼陛下の妃と知って動いたか?」

静まり返った闇の中、荒い自分の呼吸音を掻き消すような怒気を孕んだ声が突き抜ける。
目も開けられない私の耳にいつもの浩大とは違う声が届く。 ああ、怒るとこんな声を出せるのかと、こんな時だというのに判ったことが何故か嬉しかった。 

「んー、最初は妃の正体なんて知らなかったんだよね。 後宮に忍び込んでも妃は居ないしさ。 丁度宿下がりをするって情報が入って後をつけたら、やたら厳重な警護に邪魔されて時間掛かるし、やっと判明したら久し振りに会った幼馴染って。 まさか夕鈴ちゃんが狼陛下唯一の妃で、噂の 『後宮の悪女』 だなんて想像も出来ないだろう? ・・・・・庶民だぜ、この娘」

首に回っていた杜博の手が頤に掛かり、首を反らせる。 咽喉が熱くて声が出ない。 反らされた咽喉が呼吸を止める。 その咽喉へ温かいものが押し当てられ、次いで痛みが奔った。 その痛みに身体が強張ると、何かになぞられるような感触が伝わって来たが、咽喉の痛みが強くて認識することが出来ない。
 
「お前の雇い主が王宮に従事する大臣だろうことは判っている」
「庶民に手を出すって、狼陛下の頭の中を見てみたいよ。 それも俺の幼馴染にだ。 もう返す気はないな。 依頼をした奴が割れているなら、それでもいいや」
「・・・・・返す気はないと?」

桐さんの呆れたような冷たい一言。 でも瞋恚に燃えるような双眸が杜博を睨ね付けている。 
痛みのため生理的に滲む涙で視界が不明瞭だけど、二人の隠密が焦れているような手の動きをしながら、こちらを窺っているのが判る。 だけど手先まで痺れが走り、足を動かそうにもギリギリの状態で地に着いているだけで自ら逃げることも出来ない。 今の私はただ枷となり、彼らを拘束する邪魔な存在になっているだけだ。   

「王宮で狼陛下の玩具にされるくらいなら、俺が助け出すのも有りだよね。 狼陛下に翻弄され続け、いつか下賤な妃と闇に葬られるくらいなら、俺の嫁になった方がいいよ」
「それを我らの王が赦すとでも? あの方の執着心は・・・・・ すごいぞ?」

桐の言葉を鼻で哂い、杜博は夕鈴の耳朶を舌でなぞった。 二人の隠密を前に、頤から外した手を再び夕鈴の首に掛け、またゆっくりと締め上げる。 

「・・・・・ぐぅ」
「お妃ちゃんっ!」
「人の嫁をそう呼ぶなよ。 ねえ、夕鈴ちゃん。 俺、本当は優しいよ?」

甘く感情の籠もらない声が耳朶に吹き掛けられる。 さっきより強くはないけど、それでも息が詰まって苦しい。 杜博は何がしたいの? 大臣に依頼を受けて私を殺したいの? それとも陛下に他の妃献上するために私が邪魔? もしかして陛下を狙っているの? それとも一庶民が陛下の妃など有り得ないと、ただ甚振るだけが目的なの? 



「・・・・・我が妃を傷付けるとは、死を願うより他無き道を選びたいようだな」

不意にぞくりと背筋に寒気が走り、空気が凍るのではないと思うほど酷く冷ややかな声の主が闇の中から現れた。 唐突に姿を見せた陛下は黒の外套を払い、腰に佩いている太刀へ手を掛けたまま、貫くような赤い双眸を見せている。

「・・・・・徐大臣は先ほど縛につき、裏の証拠も全て挙がった。 お前がそれ以上動くのならば、対処は自ずと決まるだろう。 ・・・・・私の妃を放せ」

表情を落として杜博を見据える陛下から紡がれる言葉が場に低く響く。 肌に突き刺さるような冷たい口調に、捕らわれた夕鈴は背筋に寒気と恐ろしい予感に襲われてしまう。

このままでは杜博は_________。

必至に首を動かし杜博を見上げると、感情の籠もらない笑みを浮かべた彼が自分を見下ろした。 夕鈴が泣きそうな顔で唇を戦慄かせると、首に掛けていた杜博の手がゆっくりと離れ、頬を撫でる。 目が細まり、何か言いたげな杜博の表情に、追慕の感情が垣間見られたように感じた瞬間、身体の束縛が強まった。

「・・・・妃といっても本当は庶民出身。 出自は不明となっているが、ばれたら如何するつもりなんだ。 物珍しいだけで後宮に連れ込み、寵愛が薄れたら首を刎ねるか? 徐大臣が捕縛されても、妃の出自を知りたがっている奴は大勢いるぞ?」
「っ! とっ・・・ げっ、・・・ひぅ・・・・・ っ」

慌てて杜博の話を止めようとして、咽喉の痛みに激しく咳き込む。 咳き込むほどに痛みが奔り、じっとりと汗ばんだ身体からは力が抜けてしまう。 
それでも必至に杜博の腕を掴み、駄目だと首を振る。

そんなことを口にしたら、もう後が無い!









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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:16:16 | トラックバック(0) | コメント(10)
コメント
登場!
陛下いよいよ登場しましたね・恐ろしい空気を的って…杜博どうなるんだろう…死をも許さぬ生き地獄?いや、かりにも夕鈴の幼馴染み、それを考慮しても未来はないかな((((;゜Д゜)))夕鈴が妃であることまで知ってたし・・

気になるのは夕鈴が聞き取れなかった杜博の言葉・何ていったのかしら?
あぁ続きが待ち遠しい・
2013-05-09 木 06:58:51 | URL | ともぞう [編集]
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2013-05-09 木 07:00:41 | | [編集]
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2013-05-09 木 10:58:10 | | [編集]
Re: 登場!
ともぞう様、コメントありがとう御座います。やっと陛下が出て、いや出せました。 これでも急いだのですが、必死です。(笑) 隠密コンビも動かしたいし、杜博の独白も書きたいし、でも陛下に出て貰わなきゃ話しが進まない。手が遅くてジレジレしながら楽しんでいます。
2013-05-09 木 14:18:48 | URL | あお [編集]
Re: 痛い、悲しい…
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 人の人生何があるかわかりません。自分の子供には「新聞に載るようなことはするな」と何度も言っておりますが、マジに知り合いとかが出たらそれはもう、びっくりするでしょう。怖い、怖い。やっと陛下が出て来たので、話しが上手く進むといいなと遠い目で何かを眺めております。(笑) ああ、首、舐めてます。
2013-05-09 木 14:20:55 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。変態万歳です。ばっちおっけー!で御座います。このような話で涎を垂れてくれて感謝感激雨よだれで御座います。(爆) 引き続き宜しくお付き合いして頂けたら嬉しいです。
2013-05-09 木 14:23:15 | URL | あお [編集]
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2013-05-09 木 18:06:00 | | [編集]
Re: タイトルなし
カノン様、コメントありがとう御座います。 バイト編だと毎回痛い思いをさせてしまっております。すいません。 そろそろ甘い展開にしたいのですが、もう暫くお付き合い下さいませ。
2013-05-09 木 20:05:54 | URL | あお [編集]
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2013-05-09 木 22:46:15 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。この時間になると、必死に焦りながら見直し作業に入っております。夕飯終えたら直ぐにパソコン起動して、ドラマを見ながらのんびり打ち込んでいるのですが、夜中に近付くにつれ、本と、必死です(笑) 少しも笑いが無くって、残念なので次に小さな笑いを入れてみようかなと思ってます。ソグワナイカナ? まあ、ご勘弁を。
2013-05-09 木 23:48:56 | URL | あお [編集]
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