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多事多難  17
天気が落ち着いてきたけど、風が強いですね。 目が痒くなるので目薬が手放せません。 自転車で爆走すると目が痛い。 爆走しなきゃいいじゃんと突っ込まれて閉口してしまう。くすん。

では、どうぞ















私の必死な動きも、気持ちも、全て無視するかのように杜博は陛下を見据えて滔滔と語り続ける。 目の前の陛下に対してウンザリするような表情を浮かべ口端を上げて語る杜博。 
温和だった彼は既に姿を消し、冷たい怒りを浮かべた存在と化していた。

「妃の出自が大臣に知れたら、臣下を謀ったと陛下の威信も権威も地に堕ちるだろうな」

杜博から語られた言葉の内容を耳して、夕鈴は驚愕に震える。
それは駄目っ! 私が原因で陛下を陥れるなんてあってはいけない!
夕鈴は咽喉の痛みも忘れて声を張り上げた。

「杜博っ! ぞれは駄目っ! い゛、い゛げな・・・っ!」
「夕鈴、喋るなっ! ・・・・大丈夫だから。 それ以上は咽喉が、声が出なくなる」

陛下からの声が耳に届くが、自分の咽喉より声より、守りたい大事なものがある。  
夕鈴は首を横に振って涙を散らした。 すぐに頤に杜博の手が掛かり、上に強く持ち上げられ顔が歪む。 眦に零れる涙を拭うように彼の舌が這うのを感じたが、掴まれた頤が痛くて抗うことが出来ない。 せめてこれくらいはと強く睨み付けると、杜博が苦笑を漏らした。

「それ以上我が妃を貶めるのは止めて貰おうか、杜博。 ・・・・・間諜や暗殺を生業とする家業をしているそうだな。 王宮に忍び込んだその腕前は流石だと伝えよう。 だが、お前の家族も仲間も既に捕縛済みだ。 国境、港にも兵を配してある、逃げ場はない」

陛下からの言葉に杜博の身体が強張ったのを感じた。 それは事実だと夕鈴に知らしめるに充分であり、過去下町で自分たちが穏やかに過ごしていた間、杜博の親がこの国で何をしていたのか、現在杜博がどんな仕事をしているのかを伝えてくる。
すごく小さな、聞き漏らしそうなほどの声で、そうか と呟いたのが聞こえた。 
その呟きで、さっき彼から紡がれた吐露が本当だったんだと、懐かしい友達との語らいも本心から楽しんでいたんだと判ってしまう。 それでも彼は彼なりの矜持の許、この仕事を推し進めようとしていたんだ。 まさか妃が私だとは思わなかったんだろう。 判った時点で本当ならば動いていた筈だ。 その機会は沢山あった。

「それらの者の捕縛に時間が掛かり遅くなった。 ・・・・・直ぐに我が妃を解放し、大人しく縛につくことを勧めよう。 妃の前で凄惨な展開は見せたくないからな」
「へ、いか・・・・・・・・」

狼の声色が身体を震えさせる。 凄惨な場面が脳裏に浮かび、それだけは見たくないと首を振った。 それでも恐る恐る陛下の顔を見ると少し寂しげに私を見つめているのが判り、途端に胸が苦しくなる。 こんな時にもバイト妃を心配する優しい陛下が目の前にいると、迷惑を掛けているのだと涙が溢れ続けた。 でも、陛下が目の前にいるというだけでこんなにも安堵出来る。 もう絶対に大丈夫だと信じられるから、私は深く息を吐いて力を抜いた。 
でも、身体を束縛し続ける杜博は何も言わずに力を込めてくるだけだ。 
どうしたらいいのだろう。 
後から後から涙が零れ、頤を掴んでいる杜博の手を濡らしながら滴り落ちた。

「と、はく。 陛下の言うとおりにして・・・・・」
「・・・・夕鈴ちゃん、信じちゃ駄目だよ。 下っ端妃はいつ気紛れに捨てられてもおかしくない立場なんだよ? それくらいなら俺が攫うから、一緒に行こう?」

耳元に囁くような杜博の冷たい声。 でも何だろう、何かが違って聞こえた。 
今までの声色と違って嘆願するような切なさが乗っているように感じる。 急に変わった杜博の声に驚きながら、それでも私は陛下を見つめ続けていた。 ふと気付くと浩大の姿が消えている。 闇の中移動したのだろうか。 杜博を殺さないでくれるだろうか。 有能な隠密だけど、陛下のためだけに動くその有能さは時に残酷な結果を残す。 
誰も傷つかないで欲しいと願うのは間違いなのだろうか。

「それ以上我が妃を惑わせないで欲しい。 本来、触れることも赦されぬものを」
「陛下・・・・・・」
「他の男に触れさせている妃も、あとで覚悟が必要だがな・・・・・」
「へい・・・・・・」

・・・・・・あれ? 
高商店店主の後を追っておばば様と捕まった時、似たような台詞を耳にしたような気が。 
助けに来てくれた人が怖いと思うなんて罰当たりだと思うんですけど、あの時も、今も、本当に怖いんですけど。 目を瞠って陛下を見ると、やはり如何見ても怒っているようにしか見えなくて。 何で・・・ としか思えない。 ついさっきの小犬のような寂しげな視線はどこに行きました? 
もしかして、やっぱりこれはあとでシバかれるのか?

「そんなこと言う奴の顔なんか見ないでよ、夕鈴ちゃん」

杜博の手が私の顔に掛かり、視界を奪う。 首筋にチリッと熱いものが奔り、小刀が触れていると判った。 ジンジンするような痛みが後から追いかけて来て、斬られているのだと感じる。 
でも何故だろう。 もう怖くは無かった。 
怖いよりも杜博に対して、苦しいとか哀しいと思う感情が溢れて涙が止まらない。

「夕鈴ちゃん。 狼陛下に泣かされるくらいなら俺がどんなことをしてもこの場から連れ出すよ。 だから泣かないで俺を見て?」
「・・・・違う。 今私を泣かせているのは、杜博だよ」
「ゆう・・・・・・」

頭上で息を呑む気配がした。 それすらも演技なのだとしたら、国一番の役者だろう。 きっとそうじゃない。 幼馴染の言葉に、杜博の何かが揺れてくれたのだと信じたい。

「こんな杜博は見たくない。 陛下が私を泣かせているんじゃない。 杜博が泣かせているんだよ。 咽喉よりも何よりも、今は杜博の言葉が痛い・・・・・・」

唾を飲み込みながら咽喉の痛みを耐えて言葉を紡ぐ、杜博に届くようにと。
目を覆っている手が一瞬揺れたように感じたのは間違いじゃない。 きっと届いていると信じて私は息を吸い込んだ。

「下町の皆はまだ杜博のことを知らない。 だから縛について罪を償って?」
「それは無理だよ、夕鈴ちゃん。 狼陛下の恐ろしさは充分に知っている。 それに嫁を諦める訳にはいかないからな。 ね、俺を選んで? もう傷つけないから・・・・・」
「嫁は無理だ、彼女は我が妃なのだからな。 出自など誰に知られても問題は無い。 その前にお前の口が物を言えるかどうかまでは知らぬがな」

何やら恐ろしい言葉を耳にして、夕鈴は口を開けてしまう。 頭上からも前方からも乾いた笑いが聞こえて来て身が竦む。 目から離れた杜博の手がそっと頬を撫で、耳朶に押し付けるように唇を添わせて苦笑交じりで囁いた。

「俺の口だけじゃなく、夕鈴ちゃんの口だっていつか塞ぐだろうよ。 ねえ・・・・ 俺のものにならないなら、一緒に死のうか? 君を抱けなかったのが残念だけど、ここで一緒に死ねるのなら、それでもいいかなって思うよ。 ねえ、いい?」

小刀が強く押し付けられた感触と共に、頬から離れた手が肩をなぞり落ち、乳房を握り締めた。

「ぎぃ・・・・っ!」
「夕鈴に触るなっ! お前と共に死ぬなぞさせぬ!」

その瞬間、刀のことも陛下のことも真っ白に吹き飛んだ。 
眼下には男の大きな手が私の乳房をぎゅううっと握り締めている図が見え、余りのことに頭の中は真っ白になりながら、同時に何かが真っ赤な溶岩流のように噴き出して来た。
人の乳房を握り締める杜博の腕を掴み、引き剥がそうとしながら身を屈める。 それをさせまいとする杜博が腕に力を入れた時、私は後方へ向かって頭を勢いよく反り返らせた。 
鈍い音と痛みが後頭部に奔り、目の前に火花が散るがそれに構わず私は叫んだ。

「何をするのよ゛っ!」
「・・・っぐ! ゆうりんちゃ」

怒声を放った瞬間、首と咽喉に激しい痛みが貫くが、そのまま勢いよく掴んだ杜博の腕に噛み付いた。 頭上から野太い叫び声が聞こえて来たが、力を抜くことなく頤に力を入れる。 口中に厭な感触が溢れて来たが、それでも必死に力を込めて噛み続けた。

「お妃ちゃん、動くなよーっ!」
「そのまま耐えろっ、お妃!」
「夕鈴、そんなの離せっ!!」

同時に三人から声が掛かるが、振りほどこうとする杜博の腕にしがみ付きながら口を離すことなく夕鈴は噛み続けた。 抗う杜博の肩に桐が投げたクナイが突き刺さり、背後に回っていた浩大が鞭のような暗器でその身体を捕縛した。 
陛下が急ぎ夕鈴の口を杜博の腕から離して強く抱き締める。

「夕鈴、吐き出せっ! 直ぐに、早くっ!」
 
頤が痛い、咽喉が痛い、首が痛い。 だけどそれを凌駕するほど陛下にしがみ付きたい思いでいっぱいだった。 言われた通り、口の中に溢れていた唾液と共に血を吐き出し、陛下の袖にしがみ付く。 身体に回る腕の力が強くて息が苦しいけど、今はそれが欲しかった。

「夕鈴、大丈夫か? 遅くなって悪かった。 浩大と李順から報告が来て、急ぎ王宮で大臣の捕縛と奴が雇った組織を調べ捕縛するのに時間が掛かって・・・・・」

陛下に強くしがみ付きながら、首を振った。 がくがく震える身体から力が抜けそうになるけど、それでもしがみ付く手は陛下の衣装を離そうとせず、指先が痺れるほどに感じる。 
息を吐くと焚き染められた香の香りに包まれ、やっと頭の中が動き出した。 ゆっくりと深呼吸を繰り返し、体の震えが治まるのを待つ。 陛下が包み込むように背を撫で続けてくれたので、落ち着くのも早かった。
そして、そっと陛下の胸を押し夕鈴は後ろを振り返る。

振り返った瞬間、夕鈴は抑え込まれた杜博と視線が重なり、全てを諦めたような彼の瞳の色に胸が痛くなった。 本当に、人生の岐路とは・・・・・・・・・。 






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:31:17 | トラックバック(0) | コメント(10)
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2013-05-10 金 06:55:48 | | [編集]
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2013-05-10 金 10:18:58 | | [編集]
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2013-05-10 金 11:28:44 | | [編集]
夕鈴…ぶちギレるとこそこなんだキレた夕鈴の行動は実にたくましいですね

その行動に対しての三人のそれぞれの投げ掛けた言葉に思わず吹き出しましたよ(^-^;

杜博の今後はどうなるのか?容赦は流石に無理かなぁ…とりあえず、夕鈴早く治療して怪我を治して下さい・治ったころには全て片付いているのかな?
2013-05-10 金 16:00:46 | URL | ともぞう [編集]
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2013-05-10 金 18:55:59 | | [編集]
Re: 好き勝手に!?
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 そうなんです。最初から怪しい怪しいと言われてましたが、漸く本業が出しました。 もう少しでラストにいける。長かったー! そうそう、陛下の前でやっちゃってます。これが如何転ぶか、考えるのが楽しみです。
2013-05-10 金 20:04:13 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。 乳ぎゅううは絶対書きたかった。(← ひどい) ここまで、このためだけに妄想したんです(本当か?) 良かった、やっと書けた。 もう少しでラストになりますので、もう少しお付き合い下さいませ。
2013-05-10 金 20:06:13 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。本当に暑いです。北海道育ちには地獄。 夏がじめじめ。でも今は温暖化のせいで、北海道も暑いんですよ。 盆地ですし、蒸します。これからの時期が辛いっす。 男三人衆の叫び、喜んで頂けて幸いで御座います。 もう少しでラストですので、お付き合い宜しくお願い致します。
2013-05-10 金 20:11:19 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ともぞう様、コメントありがとう御座います。 そうそう、ぶち切れた夕鈴って大好きです。漫画だと怒髪天を衝くって感じですよん。 三人の投げ言葉、お気に召して頂きありがとう御座います。 短いから悩んじゃいました。でも、誰が誰の台詞だか判りやすいでしょ? もう少しお付き合い宜しくお願い致します。
2013-05-10 金 20:14:19 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
お名前無し様、コメントありがとう御座います。 そうそう、両思いなのにじれったいですよね。 またそれがツボというか(笑)もう少しでラストになりますので、お付き合い下さいますようお願い申し上げます。
2013-05-10 金 20:18:48 | URL | あお [編集]
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