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焼きもち大作戦?  4
当初の計画より長くなるのはいつものこと(笑) のんびりお付き合い頂けたら嬉しいです。 香雪が可愛くなってきたので、つい長く・・・。(笑) 夕鈴を動かすのも楽しいしね。



では、どうぞ









「李順殿、御願いが御座います」
「あれ、夕鈴?」

政務室の扉から姿を現した夕鈴に陛下は笑顔で驚いた。 遙智国使節団が来訪中はこちらには顔を出さないと言っていたのに。 李順が 「先刻まで一緒だったでしょ」 と陛下の笑顔にブツブツ小声で言いながら夕鈴に何事ですかと尋ねる。 夕鈴は陛下に目を合わせることなく李順に話し掛けた。

「遙智国使節団団長 曽填功殿と御逢いしたいのです。 手筈を整えて下さい」
「なっ・・・、お妃様、それは・・・」

政務室には他にも補佐官や高官がおり、おまけに夕鈴の言葉に思わず立ち上がる陛下がいる。 李順は目の前の、姿勢正しく前を見据えた妃然とした夕鈴に困惑しながら場を変えるよう促した。
しかし夕鈴は静かに、「否」 は聞かないという態度で繰り返す。

「曽填功殿とどうしても話したいことが御座います。 場所だけでも教えて下さい」
「そんなことは・・・出来ません。 お妃様が御逢い出来るものではありません」

李順の強い言葉に少し俯いたが、諦めた訳ではない。 陛下が冷やかな表情で周囲を見ると、その場にいた官吏らは慌てて顔を背けた。 人目が無くなったのを確認し、陛下は俯いた妃の頬に触れる。 俯いた顔を上げた夕鈴は陛下に同じことを訊ねてみた。

「陛下、私の御願いを聞き届けては下さいませんか?」

陛下は無言で夕鈴の腰を取り、有無を言わせずに政務室隣の小部屋へ移動させた。

「夕鈴、・・・どういうことだ? 彼を知っているのか?」
「陛下、皇女のため詳しく話すことは出来ませんが、どうしても彼に会いたいのです。 御願いです。 短い時間で構いません。 どうか、御願いします!」

いつもの夕鈴とは違い、絶対に諦めないという態度に黎翔は片眉をあげる。 遙智国皇女と離宮で何やら話し合っていたこと、使節団来訪中にも拘らずおやつを作り四阿に陛下を誘ったこと、これだけで皇女との間で 『何か』 があったと想像出来る。

「もしかして、おやつを作ったのも彼女のため?」
「え、う、それは、あの・・・・。 ごめんなさい。 詳しくは言えませんが・・・・」

急に動揺する夕鈴を見て、黎翔はがっかりした。 彼女らしいといえばそうだが、夕鈴からお茶に誘われるなんて滅多に無いと浮かれていた自分がちょっと悲しくなる。

「僕まで担ぎ出して、一体何をしようとしていたのかな?」
「陛下・・・・。 後できちんと説明します。 御願いです。 曽填功殿に逢わせて下さい」

黎翔の袖を掴み、顔を近付けて懇願する夕鈴に溜息を吐きながら、仕方がないと頷いた。
嫌だけど・・・、僕以外の男性に 『会いたい』 と願われるのは嫌だけど、それは遙智国の皇女のためとわかっている。 夕鈴が自分のために会いたい訳じゃない。 嫌だけど、今の夕鈴の迫力には逆らえない。

「その代わり、浩大をつける。 あとで夕鈴からも僕へちゃんと説明してね」
「は、はい。 有難う御座います、陛下」

李順が 「そんな事を許可するなんて!」 と白目をむいて睨んでいたが、夕鈴は見ない振りをした。




官女に促されて、填功は後宮の一室にやって来た。 案内された場所は、がらんとした何もない部屋だ。 彼はここが立ち入り禁止区域とは知らないが、後宮だろうと推測した。 王宮より長い回廊を渡った先にあり、男の姿が皆無だ。 
「少々お待ち下さい」 と言われ椅子に腰掛ける。
すぐに姿を現した狼陛下唯一の妃である夕鈴に、急ぎ立ち上がり拱手一礼した。

「曽殿、こちらまで御足労願いました。 お忙しい政務の中、ありがとう御座います」
「いえ・・・。 お妃様に於かれましては御尊顔拝謁し、恐悦至極に御座います」

椅子を勧めて互いに腰掛ける。 
填功は目の前の女性が、狼陛下といわれる彼の唯一の妃と知り、目を疑った。 幼い容貌で飾り気もなく、どちらかと言えば質素な装い。 官女の方が華やかな顔立ちだ。 もしや華やかな容貌の香雪は陛下のお好みではないのか? そんなことが填功の頭を一瞬過ぎる。

「伺いことことがあります。 あなた様は、香雪様のことをどう思われていますか?」
「え? ・・・・は? 姫様ですか?」

いきなり目の前の女性から、香雪のことを指摘され聞き返す。

「昨日香雪様に呼び出されて会っていますよね。 その時、何を話されました?」
「あのっ、お、お待ち下さい。 何故その様な事をご存知で・・・いや、姫様のことを何故知っているのですか? あ、お妃様、もしや姫様のことで御懸念が生じられて?」

ごくんと喉を鳴らした填功は慌てて話し始める。

「姫様は、香雪様は正妃としても、一女性としても素晴らしい方です。 お妃様と共に陛下の 御心に添い、決して後宮においてお妃様の立場や御心を曇らせるようなことは・・・・・」
「そんなことは聞いていません!」

大きな声に驚きを隠せず、填功は妃をみる。 どうやら苛立っているように見える妃の表情に背筋を正した。 通常の女の嫉妬・・・、とは違うような雰囲気がある。

「填功殿、あなた自身が、香雪様のことをどう想っているのかと聞いているのです。 正妃としての資質が素晴らしいとか、そんなの今はどうでもいいんです!」
「どう・・・・、とは・・・・」
「香雪様のこと、好きですか?」

妃が卓に身を乗り出し填功に迫るように問い詰める。 
その体勢にも、台詞にも動揺し、妃の鬼気迫る視線を逸らすことが出来ない。

「す、好きです。 遙智国で最も美しく教養もあり、臣下一同敬愛しておりま・・・・・」
「そうではなく、あなたの、填功殿の気持ちです! 臣下とか護衛とかではなく、貴方自身の本当の気持ちが聞きたいのです! 香雪様のこと、愛していますか? それとも全く気持ちはないのですか? ただの侍従としての気持ちだけですか!」

填功は大きく目を見開いたまま、黙り込んでしまった。 夕鈴は息を荒げたまま填功の答えを待ち続ける。

「・・・・・・・・・」
「填功殿・・・・、香雪様は昨日あなたに会った後、泣き崩れていました。 お慰みも通じないほどに 悲しみの涙を零され続けました。 貴方に気持ちが通じていないと、解ってもらえないと。 香雪様のお気持ち・・・・、あなたには解かりませんか?」

眉間に皺を寄せて苦悶の表情が垣間見えた。
しかしそこに気持ちを寄せる訳にはいかないとばかりに唇を噛む填功を前に、夕鈴は手を震わせて頭を垂れた。

「貴方に全くその気がないのならば、それをはっきり香雪様にお伝えして下さい。 『縁談』 のための 『皇女』 としてしか見られないと伝えて下さい。 彼女は貴方だけを見つめて来たのです。 惑わす態度は彼女を辛くします。 解かってもらえますか・・・・。 填功殿」
「私は・・・・姫様の臣下であり、侍従です。 私の立場は、それ以上でもそれ以下でもありません。 私が持つべき気持ちは、姫様への敬愛のみで御座います」

夕鈴が顔を上げて填功の顔を見ると、視線を反らされて曖昧な言葉が返ってきた。 卓上の夕鈴の手が震える。 握り締められた拳はゆっくりと上がり、勢い良く卓に叩き付けられた!

バンッ!!

「ちがーう!! 何度言ったらわかるのよ!! 敬愛なんて今は聞いてないし、香雪には必要ない! 彼女が欲しいのは、あんたなのよ!」

叩き付けた手はいつの間にか填功の胸倉を掴み、強く揺さぶっていた。 填功の眼下に真っ赤な顔の妃が迫る。 その妃の瞳は濡れて歪み、今にも泣きそうに見えた。

「お妃ちゃん、ストップ、ストップ!」

堪えきれない笑い声と共に、いつの間にか妃を背後から押さえ込む人物が現れた。 息を荒げた妃の背中を擦りながら、填功に笑みを向ける。 妃の態度豹変と突然現われた人物に驚き過ぎて、填功の思考は纏まらない。 取り敢えず息を整えた填功に、三人目の人物が告げる。

「なあ、自分に正直にならないと大事なものを無くしちゃうよ。 まあ正直になるのは難しいだろうけどね。 こういう世界の住人にとってはさ」
「浩大! なんで止めるのよ!」
「あ~、落ち着いて。 お妃ちゃんの立場を思い出してね~、止めた理由はそれだよ~」

のんびりとした台詞だが、妃には届いたようだ。
填功の胸を開放した妃は、真っ赤な顔で 「す、すいません・・・」 と謝罪してきた。

「でも、あの、これだけは聞かせて下さい! 香雪様のことが好き? 恋愛感情で!」

妃の言葉に胸が詰まる。 頭の芯が揺さぶられ、心の裡を暴露しそうになる。

幼少の頃から香雪を見ていた。 一緒に育って来たような環境だった。
しかし、屋敷にいる妹とも、屋敷に使える侍女らとも、町で見かける女性とも違う。
彼女の気位や教養や立ち振る舞いが皇女であることを事ある毎に填功に気付かせる。

それでも誰よりも傍で彼女を見つめていたいと、警護団長の父よりも近くに仕えられるように侍従としての科挙や武挙の資格を取得し、危険から守りたいと身体を鍛え上げた。 そして使節団団長として共にこの国へやって来た。
全て彼女の為に、彼女に知られずに努力した。

だが、国王と各大臣より、皇女の 【縁談】 を取り仕切るように厳命されてしまう。
皇女の幸せを願う父である国王の気持ちも判る。 本当に国王は香雪を愛している。

厳命を受けて苦悩したが、彼女の将来を考え決断する。 幸せを与えられるのは自分ではないと。 身分が最初から違っていたのだ。 雲の上の天上人である彼女と触れ合えた、それだけで満足しよう。 彼女の為に自分が出来ることを行なおう。 
それはこの白陽国国王珀黎翔との婚姻だ。

なのに、此処まで来て香雪の態度が変わっていく。
黙って使節団と共に白陽国へ訪れたのに 【縁談話】 に拒否反応を示し出した。
此処まで堪えて来た私の気持ちは崩れそうになる。 気持ちを崩さないように壁を築くしかない。 早く環境を整えて陛下の正妃へと嫁がせるのだ。 填功は崩れる壁との戦いを始めた。
それなのに
『 愛しているか? 好きか? 』
壁を壊すな! 堰を切って溢れそうなこの想いを留めさせてくれ!


拳を握り口を閉ざした填功を見上げた夕鈴は、その態度をみて漸く気が付いた。 浩大が夕鈴の肩を叩いた。振り返ると浩大の顔が苦笑いしていた。 
その瞬間、夕鈴は自分のしたことの 『酷さ』 に驚愕してしまう。
自分はなんてことを口にしたのだ。 逆の立場で同じことを言われたら・・・・。

「あ、あ・・・・ ご、ごめんなさい。 填功殿、わたし・・・・・・・」

夕鈴は自分が言った台詞に慄き、全身を震えだした。
好きか嫌いか、愛しているか等、どの口が言ったの?
上から人に問い掛け、答えを強要するなんて!!
身分違いや恋の苦しさを知っている筈の自分が、何故こんなことを言ったの?
香雪の恋に、涙に、強く共感してしまった自分を抑えることが出来ずに、八つ当たりみたいに填功に答えを強要した。 自分が 『求める』、陛下に期待する 『答え』 を!!
無意識に夕鈴は震える手を差し出し、填功の握られた拳を包み込んだ。

温かく震える感触に意識を取り戻した填功は蒼褪めた妃の顔を知る。 
何故、そんな顔色になっているのか、自分は妃の問いに答えを出していないのに。 謝られたことも不思議だった。 王宮に住む貴族から 「謝罪」 の言葉をかけられる事なんて滅多に無いことだ。 上の立場の人間は、他の人間を自分の手足にしか思っていないのかと思っていた。

目の前の妃の白い手が填功の手を包み込んだまま。
妃を支えるような人物も笑顔で立ち竦む。
涙を流し始めた妃に填功は手の力を抜き、息を吐く。

「お妃様、謝罪は結構です。 自身の気持ちはどうあっても、この縁談は成功させねばならない。 その為に白陽国に赴いたのですから。 しかし、妃の謂わんとしていることと、お気持ちは判ります。 その気持ちだけ・・・頂きます」

静かな声色に妃は顔を上げる。 頬に涙を煌かせながら填功を見つめる。
この国の陛下がこの妃を寵愛するのが、判るような気がした。 他人を気遣い、その気持ちを自分のことのように思える優しさ。 王宮というこの恐ろしい世界で、彼女のような稀有な存在を陛下はどの様に愛しんでいるのか判る・・・・ 気がした。
他国の男と場を設け、話し合う機会を用意するなんて有り得ないことだ。
それを許す陛下と、許されている妃。 改めて外見以上に心が 『綺麗』 な女性なのだと思った。 填功の、妃に対する最初の印象が変化していた。



「何故、手を握っているのかを問い質したいのだが・・・・」

背後から聞きなれた声がした。驚いた夕鈴が振り返るとやはり陛下。 それも狼陛下が入り口に体を預け、昏い笑顔で部屋を眺めている。 浩大が 「お早いことで・・・・」 と明るく哂う。
陛下がじろりと睨むと、 「じゃあ、オレはこの辺で・・・・」 と浩大は姿を消した。

部屋に進み、夕鈴を填功から離すように抱き上げて頬に流れる涙を拭う。 夕鈴は抗いもせずに陛下に抱かれた。 陛下が填功に向かって険しい顔で問い掛けた。

「何故、我が妃は涙を流しているのか。 曽填功殿」
「・・・・私の心に御気持ちを乱されてしまわれたようです。 それでも私の気持ちは変わらないと申し上げておりました。 お妃様のお気持ちだけを受け取らせて頂きます」
「ちが・・・。 陛下、わたし・・・・。 酷いことを填功殿に・・・・・」

拭われた涙がまた流れてきた夕鈴は、抱かれながら被りを振る。 その体を強く抱き寄せる陛下の姿を填功は無言で見つめていた。 王宮には珍しく、妃は一人。
そして陛下はその一人の妃を心から信頼しており、愛しんでいる。
この二人の間に香雪を送り込もうと、填功は画策しなければならないのかと思案する。
その填功の思考に気が付いたかのように、陛下が冷たく言い放つ。

「遙智国がどの様に画策しようとも、我が妃は唯一人。 縁談は断ると何度伝えたら貴国は分かるのだろうか・・・・・。 使節団長」

昏い表情で冷たい言葉が紡ぎ出され、その言葉に填功はその場に膝を着く。

「陛下・・・・ 私は填功殿の気持ちを聞かせて頂きました。 そして香雪様の御気持ちも存じております。 話し合いの場を設けて、縁談の件もう一度御考慮下さい」

胸に抱いた妃から聞こえた台詞に、眉根を寄せる陛下。 彼女の考えは判る。
その優しい考えはわかるが、理解する事は出来ない。

「それは出来ない。 夕鈴、妃は君一人だ」

夕鈴を抱えたまま、立入り禁止区域を離れる。
僕の腕の中で 「陛下!!」 と暴れる君を抱き締めて。



膝を着き頭を垂れていた填功は妃の涙を思い出し、それが香雪の涙に変わっていた。
・・・・・泣き崩れていたと言っていた。 あの香雪が?
信じられないと思ったが、幼少の頃はよく泣いていたと思い返す。 思うようにならないと癇癪を起こして填功を困らせていた。 しかし何時からか彼女の感情は表に出なくなっていた。 その彼女が私を好きだと、気持ちを判ってもらえないと泣き崩れていたと?

ゆっくりと体を起こし、填功は場を離れて香雪の元へ急いだ。









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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:30:00 | トラックバック(0) | コメント(2)
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2015-12-30 水 15:18:08 | | [編集]
Re: タイトルなし
れん様、コメントをありがとう御座います。好きって言ってもらえて、嬉ししい!来年もどうぞ宜しくお願い致します。
2015-12-31 木 20:22:59 | URL | あお [編集]
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