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君からの誘い
ひっさし振りに短編です。 ちょっと長いのはお疲れー・・・・ ということで。
オリキャラばかりが続きましたので、久し振りに二人っきりのお話にしております。 陛下メインですが、少し壊れたかな? 壊れた陛下がお厭な方は回れ右して下さい。 って、そんな話ばかりですが。


では、どうぞ













「・・・・陛下、お願いがあるのですが宜しいでしょうか?」
「なあに、夕鈴」

いつものように、侍女を下がらせた妃の部屋でお茶を飲んでいると、夕鈴が急に僕にお願いをして来た。 珍しいこともあるものだと、その表情にドキドキする。
真剣な顔でじっと見てくるから、僕は思わず笑みが強張り、よく見ると眉根が寄ってくるから難しい話なのかと緊張する。 まさか下町に戻るとか、借金完済したとか、僕の演技に文句とか?

「こんなことを私が言うのは、本来してはいけないと重々承知です。 でも目を瞑って見ないフリするのも、もう我慢の限界なんです。 あの・・・・・内緒のお願い、聞いてくれますか?」
「え・・・、と。 夕鈴、僕ドキドキするんだけど」

小首を傾げる仕草が僕を魅了する。 やっぱり君は後宮の悪女なのかな。
僕が胸を押さえて君を見下ろしていると、小気味いいほど夕鈴はきっぱりと返してきた。

「いえ、陛下がドキドキする必要はないのですが、言っても怒りませんか?」
「え、僕が怒るようなことなの?  もしかして家に帰るから絶対に来るな、とか?」

その言葉に僕が大仰にがっかりと肩を下げると、大きく目を瞠った夕鈴は苦笑しながら違いますよと答えてくれた。 思わず安堵の笑みを浮かべると、真剣な顔で僕に近寄って来て、周囲に人影がないかを確かめ、耳元に声を潜めて囁きを落とす。











「陛下に私の腰を掴んでいて欲しいのです」








はい、喜んでーっ!! 
・・・・って、何かの罠かな? 
君の肩や腰には普段から触れているけど、それは狼陛下の時に抱き上げたり、仲良し夫婦の演技の一環で・・・・・・。 小犬の僕なら、君から求めてくれるというのか? 
思わず君を抱き締めたくなったけど、下手なことをすると胡乱な視線に苦しみ続ける地獄の日々が襲い来るのは目に見えている。 そう思った僕は急ぎ手を握り締め、膝の上に固定した。

「陛下、聞いて下さってますか? 短時間でいいのですが、駄目でしょうか」
「・・・・それって、今?」
「ええ、出来ましたら。 昼間は出来ませんので今がいいのですが。 今でしたら丁度人払いもされていますし。 駄目、でしょうか? もし駄目でしたら・・・・・」
「大丈夫だよっ! 僕が駄目って言ったら他の人に頼むでしょう? それだったら僕がする」

勢いよく君に言い放つと、夕鈴はきょとんとした顔を見せ、そして笑ってくれた。 

「いいえ、諦めるしかないかなって思ってました。 頼めるのは陛下だけですもの」

どうしよう、ぎゅうって抱き締めたくなった。 
小犬の僕がこの状況で手を出したら怖がるだろうか。 小犬はそんな事しないはずです!って訝しむだろうか。 君に嫌われるのだけは困るから、笑顔のままで僕は固まるしかない。
胸の鼓動が激しくて、君に聞かれやしないかと心配になるほどだ。 君から紡ぎ出される何気ない言葉に、僕は今まで何度驚いたことだろう。 

僕の味方になると言ってくれた。
勝手に心配すると言ってくれた。
僕を傷付けるなと怒鳴ってくれた。
僕の我が侭に付き合ってご飯を作ってくれたし、実家にも泊めてくれた。
僕の敵を減らせるならと囮になるのも厭わない。
いつでも怒ったり心配してくれたり。 
時々面白い、見たこともない顔を見せてくれる。

いつか実を結ぶためにと努力することを止めようとしない。 頑固で意地っ張り、迷惑を掛けたくないと僕に頼ろうとせず、自分が陛下を支えられるくらいに強くなりたいと願い、バイトを甘やかすなと怒り、そして無自覚に僕を翻弄する。

「・・・・・君の願いなら、どんなことも叶えると約束しよう」
「あ、狼陛下は要らないですから。 では用意して来ますので少々お待ち下さい」
「・・・・・え?」

夕餉も湯浴みも済み、夜着を着ていた夕鈴は寝所へと足を運び、入り口の帳を下ろした。
衣擦れの音が静かな室内に微かに聞こえ、必要がないと言われたドキドキに襲われる。 
夕鈴に限ってというか、絶対に有り得ないことだと承知しているはずの自分自身が今にも崩れそうで、強く目を瞑った。 そうでもしないと、足が勝手に動き出しそうだと。 
困る、困る、困るというか、・・・・・自制がきかなくなりそうで、怖い。

「お待たせしました。 では、陛下。 そこからお立ち下さい」
「・・・・長椅子から? それに夕鈴、その姿?」

何故妃の私室で掃除婦の姿? 立ち入り禁止区域だけでの姿を、何故、今、ここで?

僕が戸惑っていると、退いた長椅子の上に背凭れのない椅子を置き、夕鈴はその上にいきなり足を乗せた。 驚いて手を出すと 「ではしっかりと掴んで下さいね」 と振り返った。 
訳が判らない僕を置き去りに、夕鈴はそのまま椅子の上に立ち上がると、持っていた雑巾で天井近くを勢いよく拭き出す。 細かい埃が舞い降りてきて目も開けていられないが、椅子の上で君の身体が左右に動くから落ちないように腰を押さえつけるしかない。

「すいませんが、少しずれます」
「う、うん」

長椅子に下りると椅子をずらし、また登って雑巾を動かす。 その間夕鈴が落ちないように僕はしっかりと君の腰を掴んでいた。 幾度も掴んで引き寄せたこともある慣れた感触のはずが、落ちてくる埃を避けながら目を開けると、忙しく手を動かすたびに揺れる腰と丸みを帯びたお尻が見え、どうしていいのかと眩暈がしてきた。 こんな風に君に触れたのは初めてだと、くらくらししてしまう。 伝わって来るはずのない熱を感じ、一人動揺する自分が恥ずかしくなった。

椅子から降りて場所を移動し、窓枠に攀じ登る際には腰だけではなく、お尻も支えた。 
夢中で天井近くの埃を雑巾で拭い続ける夕鈴は躊躇することなく僕に体重を預け続け、一度床に足をつけると、上を向き確認作業に移る。 大体満足したのか、笑みを浮かべて僕に向き直ると、手を握り歩き出した。 驚きに呆けたまま連れられて来たのは、君の寝所。

「陛下。 すいませんが、こちらで少しだけ待っていて頂けますか?」


はい、喜んでーっ! 
・・・・って、待てというなら待ちます。 だけど、寝所で待つって・・・・ 何を?
少し落ち着いたはずのドキドキが再び僕を襲い、見なきゃいいのに寝台が視界に入る。

一度場を離れた夕鈴が持って来たのは濡れた手巾が数枚。 顔や手を拭いて欲しいと言い、そして、また君は場を離れて行った。 
隣の居間部分でバタバタと音がしているから、落ちた埃を片付けているのだと予想はつく。 
水音に、掃除をする気で手桶も用意していたのかと、今更ながら驚いた。 
暫くして夕鈴が寝所に顔を出し 「此方へどうぞ」 と僕を誘う。 卓の上には茶杯と焼き菓子が用意されていて、椅子に座ると、着替えてきますと夕鈴は寝所へと消えて行った。 

直ぐに着替え終えた夕鈴は纏めていた髪を解き、満足そうに微笑んでいるから、つられて僕も笑みを浮かべてしまう。 見ると焼き菓子は夕鈴お手製のものと判った。

「もしかして手桶とか菓子とか、僕に手伝わせる気で用意していた?」
「もし駄目と言われたら諦めましたけど、本当に我慢の限界だったんです。 でも侍女さんに伝えることも出来ませんでしょう? 掃除を担当されている方に叱責がいくのは厭ですもの。 かといって、天井付近ですから一人で掃除をするのは、やはり危ないですし」

満足げに上を見上げる夕鈴は、遣り遂げた感で頬を紅潮させている。

「普段から私の妃衣装の用意や化粧、部屋の誂えなど、侍女さんがお忙しそうにされているのを目にしていたので、気にしないように見ない振りをしていたんですけど、天候が良い時に窓を開けると、揺れている埃がどうしても目に入って。 でもそんなこと口にする妃もいないんじゃないかって思うし、自分が掃除好きだから目にしただけですし」
「うん、気がつく奥さんがいてくれて嬉しい」
「掃除が行き届いていないと、管理の方に叱責が行くことはないですよね? 内緒にしていてくれますよね? それに、掃除に陛下を使ったなんて李順さんに知れたら、即クビになりますもの。 だから、陛下内緒にして下さいね?」
「内緒にするよ。 ・・・・・・・・・・時々、本当に悪女になるよね、夕鈴って」

僕は口の中に夕鈴お手製の菓子を放り込みながら、後半の台詞は聞こえないように小さく呟いた。 嬉しそうにお礼を言う夕鈴は、もう一度天井を見上げ、目を輝かせている。 

「掃除婦の衣装はそのために持って来たの?」
「ちょっとホツレがあったので繕うためにです。 夜着を汚す訳にはいきませんしね、丁度良かったです。 あ、陛下。 ・・・・動かないで下さいね」

静かに立ち上がった夕鈴は僕の頭に手を伸ばし、優しげに髪を撫でた。 たぶん頭に乗っていた埃を取るためだろうと直ぐにわかったけど、その手の動きに鼓動が跳ねるのを止めようがない。 今度は目の前に胸が近付いていて、何の厄日かと再び眩暈に襲われる。

「陛下も湯浴みが済んでいらしたのでしょうに、埃を被らせてしまい、申し訳ありません」
「ううん、大丈夫だよ。 眼福・・・・ いや、夕鈴の手際の良さと綺麗好きに改めて惚れ直したところだし。 本当に僕の奥さんは働き者だよね」
「いえいえ、お妃が掃除だなんて有り得ないでしょう。 余計な真似をしてすいません」

少し照れた様子で頬を染める夕鈴は、照れ隠しなのか一気にお茶を飲み干した。 
だけど思ったよりもお茶は熱かったのだろう。 咽込みを抑えながら真っ赤になった夕鈴は誤魔化すように涙目で僕に笑い掛けてくるから、急ぎ唇を噛み締めて笑みを返す。 

駄目だ・・・・・・・。 これ以上ここにいるのは危険だ。 口元が緩みそうになり、手が不埒な動きをしそうになる。 最近の夕鈴は無自覚に誘う自分を解っていない。

「内緒にするって約束するからね。 ・・・・・じゃあ、僕は戻るよ」
「はい、おやすみなさい、陛下。 本当にありがとう御座いました。 私もすっきりと眠れます」

僕はすっきりと眠れるだろうか。 胸の奥にもやもやとする不確かな感情を押さえ込んで笑みを浮かべる。 これから夕鈴は繕い物でもするのかな。 本当に働き者だ。 
僕にだけお願いして来た夕鈴の甘えを抱え込み、僕も仕事を再開することにしよう。


もちろん、夕鈴が懸念する掃除担当への叱責などする訳がない。 貴重な体験をさせてもらったのだから、逆に手当てを増やしてもいい。 うん、そうしようかな。




自室へと戻りながら陛下は、ふと自身の手に視線を落とした。 

「・・・・・お尻、触っちゃった・・・・・けど、何も言われなかった。 気付いてないのか、それとも僕のこと男だと意識していないの・・・・ かな?」


自分の考えにちょっとだけ夜風が冷たく感じた陛下だった。








FIN


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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 01:08:01 | トラックバック(0) | コメント(10)
コメント
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2013-05-18 土 01:23:22 | | [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントありがとう御座います。・・・・青い若さに震えるほど受けましたー!真夜中に爆笑しそうで、唇噛んじゃいましたよ。 痛い、痛い。 本当にすいません、こんな陛下を書いてしまって。 楽しかったんです。 すごっく。 真面目な陛下も用意しますので、またお付き合い下さいませ。
2013-05-18 土 01:27:57 | URL | あお [編集]
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2013-05-18 土 07:48:00 | | [編集]
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2013-05-18 土 08:14:55 | | [編集]
Re: はい、喜んでーっ!
makimacura様、コメントありがとう御座います。壊れすぎていてすいません(汗) 何も考えてないというか、間の前のことだけでいっぱいになってしまった夕鈴は「立っている者は親でも使え」状態。使われて嬉しい陛下???
2013-05-18 土 20:34:02 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。ここの陛下の心情は・・・・・・・おかしい、素直に書いていると陛下が壊れていくんです。困った。 こんな陛下に気持ちが温かくなるビスカス様、それは病気です(爆)栄養補給になっちゃうなんて駄目ですよー!(笑)でも、ありがとう御座います!
2013-05-18 土 20:38:50 | URL | あお [編集]
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2013-05-19 日 03:19:54 | | [編集]
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2013-05-19 日 09:41:01 | | [編集]
Re: 健全な男性!!
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 すごく久し振りの短編にコメントが沢山で嬉しいです。掃除に夢中な夕鈴のとぼけたところを書きたかったのですが、壊れた陛下メインになってしまいました。いや、楽しかったのですけどねー。 逃げる兎も面白そうです。ニヨニヨ。
2013-05-19 日 12:25:03 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ちゃこ様、コメントありがとう御座います。ちゃこ様の妄想、頂きたくなりました。おお、そう来たかと、思わずもやもやしてしまうのは、李順いじりを余りしていないからかも知れない。怖い反面、やってみたくもあります。・・・・・・どうしましょうか。(笑)
2013-05-19 日 12:26:42 | URL | あお [編集]
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