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Please forgive me.  1
リクが多かったので 「もしもシリーズ」 正妃となった夕鈴と陛下の・・・・ まあ、翻弄されるのはどちらかな、という話。 冒頭真っ暗。 ごめんなさい。 暗いので短めの話になる予定です。
あ、under 更新してます。 R指定ですので、ご了承の上御覧下さい。

では、どうぞ















「後宮に妃をお勧めすることは出来ないのだろうか」

ふと耳に入った言葉に足が竦んだ。 

人通りの少ない回廊で、その奥にある書庫へ向かっていた途中、一室から密やかに漏れ聞こえて来た声に顔が強張ってしまった。 侍女が緊張した面持ちで、夕鈴の前に勇み出ようとしたのが判り、そっと押し留める。 口元に指を立て、静かに場を離れることにしたが、鼓動が跳ね自分でも酷く動揺しているのが判っていた。

「お后様、黙っていることは御座いませんわ!」
「陛下は唯一と明言為さっておいでですのに、未だあのようなことを口するとは不敬以外の何ものでも御座いません。 陛下に直接御伝えすることも御考えになっては如何でしょうか」

眉間に皺を寄せた侍女の憤りに、夕鈴はゆるく首を横に振った。

「・・・・・いいえ、気にすることがないと思って無視することにしたまで。 後宮に関しては陛下のお決めになることに依存はありません。 陛下が如何されるか、お任せ致します」
「陛下は誰も召しかかえる気など御座いませんわ。 お后様だけに御心を傾けていらっしゃることは、周知の通りですもの。 何ゆえあのような戯言を口にするのか、腹立たしく思います」

その戯言を何度耳にしたことだろう。 
もちろん侍女も女官も、他の大臣や官吏たちも何故かなど承知のはずだ。 

_______ 後宮に新たな妃を。

そう謂われても仕方がないだろう。
いつまで経っても懐妊の兆しのない后がひとりでは、臣下が心配を口にするのも仕方がない。 
自分の心を曲げてでも、陛下に進言しなければならない日も近いのではないだろうかと夕鈴は思っていた。 きっと酷く苦しむことになると判っているが、それを耐えてでも口にしなくてはならない。 それは后としてだけではなく、一国民として願うことだ。

でも本心は違う。 苦しむと判っていて、どうしてそんなこと口に出せようか。 今まで生きて来た界を捨ててまで選んだ愛しい人が、他の女性を抱くなど想像するのも辛い。 

あの腕が、あの唇が、自分以外の他の女性に触れるのだ。 彼のためにも、国のためにも、他の女性を抱いて欲しいと口にするなどしたくない。 言えない、言いたくない。 

だけど耳に届く言葉は日に日に増していき、夕鈴は悩んだ末、老師の許へ足を運んだ。 

「老師は後宮管理人ですよね。 ・・・・・ですから、老師からお勧めして欲しいんです」
「無理じゃろうて。 何度宴を開こうとも、画策しようとも、全て一刀両断してきた陛下だぞ。 それに時が来たら問題など解決するじゃろうよ。 お前さんは何も心配することはない」
「・・・・・老師にしては奇怪しなことを言いますね。 あれだけ跡継ぎを見たいと言い続けていたではないですか。 何か裏でもあるみたいな、その含みのある言い方・・・・・」
「何もないぞ。 うん、わしからは何も言うことは無い。 そんなに心配なら陛下ご自身に伺うといい。 考え込むよりも、陛下に直接伺うのが一番じゃ」

老師からきっぱりとそれ以上は言わないという雰囲気で断られ、夕鈴はそれ以上お願いすることを断念した。 それよりも老師から聞かされた言葉に違和感が残り、胸の奥に今まで考えもしなかった闇が広がりだしてしまう。

もしかして老師が跡継ぎに関して何も言わないのは、既に存在するからなのかしら。 
いつまでも懐妊しない私を見限り、他の女性が存在するのかも知れない。 
『唯一』 と繰り返し口にして来たから、その女性を表に出せないだけで、本当はその人との間に跡継ぎが既にいるのだとしたら・・・・・・・・・。

いやいや、老師も言っていたじゃない。 陛下に直接伺うのが一番だって。 こんなことで愚痴愚痴悩むよりきっぱりと聞いた方がすっきりするわよ。 夫である陛下を疑うなんて、やっちゃいけないことでしょうに。 疑うくらいならズバッと聞いてすっきりした方が良いに決まっている。

・・・・・・・・・・・なんて訊く?

いつまでも懐妊しない后をどう思っていますか?
後宮に他の妃を召されるおつもりはありますか?
跡継ぎ問題に関して、どうお考えですか?

聞ける? ・・・・・・・・いや、それを口にする自信がない。 
妃推挙のことだって自分じゃ言えないから老師にお願いしに行ったのに、そこまで深く掘り下げて聞くことなんか出来ない。 したくないし、聞きたくない。
でも懐妊しないと困るのも事実だ。 陛下の血筋が絶えてしまうのは私だって望んでいない。 
后として、これは国のためだと割り切るべきなのだろう。 頭では解っていることが、心では割り切れない。 どうしよう。 既に跡継ぎがいると言われるのも、新たに妃が来るのも・・・・。 

ああ。

ぐちゃぐちゃ考えている自分が一番嫌い。 如何したって私は顔に出てしまうし、そんな感情を持て余したまま侍女や女官の前で平気な振りは出来ない。
 
何度抱かれても未だに懐妊の兆しは一向に見られず、月のものが来るたびに項垂れてしまう。
政務室に行くと、大臣らから不躾な視線を腹部に向けられ、嫌悪感を感じることが幾度もあった。 だけどいつまでも孕まない私に対し、あからさまに妃推挙を持ちかける者はいない。 
それは陛下が 『后はひとりでいい』 と公言したからだ。 だからこそ密かに裏で画策しているのだろう。 跡継ぎを生んでくれそうな妃を、大臣らの思惑通りに動く旨味のある従順な妃を。
だからこそ、一刻も早く陛下に話しを持ち掛けなければならないのだ。 

「・・・・・考えても仕方がないのよね。 考えたって答えは判っているのに」

足はどんどん立ち入り禁止区域の奥へと進む。 
歴代の陛下が召した妃は時に百人を優に越すこともあったという。 妃に仕える侍女に手を出すこともあり、一度のお渡りだけで捨てられたも同然の妃も居れば、寵愛を勝ち取り、その地位を確固たるものとして一族を繁栄に導いた妃も居たという。 女同士で寵愛を競い、醜い諍いもあったという。 想像もしたくない後宮の女の争い。
老師に初めて聞いた時は自分には無縁の世界で、関わることなど無いと思っていた。

だけど自分が正妃となり、そして状況が変わった。

役に立たない自分では駄目なのだ。 陛下の為にならないなら、次の策を講じるのも后としての役割だろう。 自分の心を裏切ってでも、大臣たちの思惑に乗らなければならない。
寵愛を一身に受けながら未だ目出度い話しがないとは嘆かわしいことだと、最近は聞こえるように囁きを落とされることも珍しくない。 侍女や女官がそのたびに申し訳なさそうに気遣いを見せるのも、却って気に掛かってしまう。
陛下の権威を示す為その身一つでは大変でしょうとか、磐石な国造りのために何をしているのだなど、后としての必然性まで問われ、正直悩みは尽きない。 

「問題はどう陛下に伝えるべきか、よね。 老師が駄目なら李順さんに言うしかないのかな」
 
微かな独り言は宙に掻き消え、夕鈴は嘆息を零した。 
本来あるべき後宮の姿へと戻す。 それがこんなに辛いと、覚悟することに吐き気さえ催す自分が情けなくなる。 自分という個人を考えず、国のためになすべきことを考える立場にいるというのに。

「・・・・・・・・・・・」

心の澱を流すかのように頬を伝う涙を拭い、夕鈴は深呼吸をした。








「夕鈴。 近々、少し離宮にでも行って休養を取ろうか? 温泉に入ってのんびり過ごすのもいいかもね。 それとも何か食べたいものある? 欲しいものがあるなら言ってね」

二人きりになった部屋で優しげに陛下が尋ねてくる。 急に如何したんだと夕鈴が目を瞠ると、頭を撫でながら 「少し疲れているように見えるよ」 と微笑んでくれた。 

欲しいものは手に入らない。 
いくらそれを望んでも手には入らない。 自分では駄目なのだと理解した時から覚悟はしていたはずだ。 なのに、そんなにも優しげな声に、労わる手に、未だ縋ろうとする自分が酷く醜いものに思えてしまう。 一つ咳払いをした夕鈴は少し強気の視線で陛下を見つめる。

「大丈夫ですか? 私、実は李順さんから聞いてますよ? 本当は離宮に行っている暇などはありませんよね。 季節も安定してきましたし、他国からの謁見も増えて忙しいのでしょう? 離宮への旅行は、頑張った後に致しましょう。 ですから今は頑張って下さいね」
「・・・・・忙しくなると夕鈴と過ごす時間が減るから厭なんだけどな。 后にそう叱咤されると頑張るしかないか。 そうだ。 少し休みが取れるようなら星離宮に行ってみようか」

そう言われて夕鈴はぱあっと笑みを浮かべた。 必死に登った、あの小山から見た夜空を思い出し、満天の星空が脳裏に浮かび、どうしたって笑みが零れてしまう。 
もし行けるのならば、それを楽しみに星離宮の女官さんから頂いたテキストに目を通しておこうか。 深く理解した上で陛下と一緒に星を見上げるのはどんなに楽しいことだろう。 

「では、楽しみにしていますね!」
「もう少し先になるけど、僕も楽しみにしているよ」

大きく頷いた夕鈴は一気に喋りだした。

「あちらの女官さんたちに会えるのも楽しみです! 周宰相の親戚関係とお聞きしてますから、宰相と今度祭祀に関してのお話しを伺う時間があれば嬉しいですね。 星宿図と司南もお借りして、ここでも少し勉強してみます。 今度は陛下と川とか足を運んでみたいです。 そう謂えば、あの時は・・・・・ 李順さんとご一緒に楽しまれてましたよね?」
「楽しんでないよ。 だって夕鈴、勉強ばかりで急がしそうでさ」
「今度は大丈夫ですから、ご一緒しましょうね!」 

満面の笑みを浮かべた夕鈴を抱き締めて 「もう少し仕事があるから先に寝ていてね」 と耳元に落とす。 真っ赤になった夕鈴はコクコクと頷き、今度は黙り込んでしまった。

やはり痩せた感が衣服の上からも判る。 特に最近何があったとは聞いていないが、夕鈴の食欲が落ちているとは報告が来ている。 
時期的に移動がしやすいため、遠方の貴族が陳情のために足を運んだり、新たな商売を開拓したいと商団が多く詰め掛け承認を取る作業に追われ、更に他国の謁見も多い時期。 
それらの話し合いや宴で後宮に戻ることなく、王宮奥で寝泊りすることが多々あり、更に宰相や大臣らとの折衝で時間ばかりを取られる。 やっと夕鈴に会えたと思えば、少し痩せた様子に驚き、女官長からは塞ぎ込むことが多いと報告を受ける。


何が憂いなのだろうか。 それを君の口から教えてはくれないのだろうか。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 23:45:01 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-05-21 火 01:24:59 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。あらあら、職場でunderですか。ほほほほほ。ありがとう御座います。でも、今回は余りゑろさはなかったのではないかと。青慎メインだったので(え?何時の間に)ふつーの営みになっていたかなと振り返っております。 今回はのっけから暗い話になっておりますが、お付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-05-21 火 01:33:17 | URL | あお [編集]
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2013-05-21 火 11:49:20 | | [編集]
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2013-05-21 火 12:53:57 | | [編集]
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2013-05-21 火 21:33:02 | | [編集]
Re: 計算…?
ダブルS様、コメントありがとう御座います。落ち込み夕鈴書くの、久し振りかも。 最近翻弄されっぱなしだったから。(笑) 暗い話を楽しんで頂けて、嬉しいです。 老師、頑張ります!!
2013-05-21 火 22:54:37 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。「もしも」好きですか。ありがとう御座います。(^^) なんか今回もビスカス様、全開というか惚れちゃいます、このコメント。抱き締めるだけで懐妊させる陛下って、すごい・・・・・。 紅珠先生の巻物にも視線だけで人を殺せるってありましたけど、それと同じですか?素敵です。
2013-05-21 火 23:01:20 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ななすけ様、コメントありがとう御座います。 コメントは心のオアシスなので、とても嬉しいです。腱鞘炎にならない程度に送って頂けると嬉しいです(って、どんだけですか?) 皆様、考えることは一緒で、方向は間違ってません(単純な話で御座います) 食器洗い終えたら、他のもお読み下さいませ。いつもありがとうございます。ホロリ・・・・。
2013-05-21 火 23:04:52 | URL | あお [編集]
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