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転がる石には苔生えぬ  2
あちこちで運動会や定期テストが開始さえ忙しくなっております。 そんな中、じわりとunder更新します。 こちらは不定期です。 あと、オリジナルキャラの一覧表希望があり、少々お時間欲しいです。 此方の話しが終わってから作成させて貰います。 ご了承下さい。

では、どうぞ














掃除と称して今日も夕鈴は立ち入り禁止区域で書簡を広げ、青慎からの手紙を元に身体を解す揉み方を勉強していた。 手を温めたり、手布を使ったり、強過ぎない力加減を老師を実験台に繰り返し、少しは満足な結果を得られ始める。

「おお、そこそこ。 良いぞぉ・・・・・・ うんうん」
「老師、またぎっくり腰にならないように無理せず、冷やさずですよ?」
「うんうん。 おお、そこっ! いいぞ」

卓に横たわった老師は涎を垂らさんばかりに心地よさに陶酔し、夕鈴の手解きに身を任せている。 賞賛の声を聞き、夕鈴も満足げに揉み続けていたが、さすがに疲れて来た。

「老師、続きはまた改めてとして、少しは掃除もしなきゃバイト代が減らされます」
「おお、そうか。 うん、またお願いするとしよう。 陛下にして差し上げる時は、薄い衣で励まれた方が良いぞ。 汗も掻くだろうし、その方がセクシーじゃ」
「さあ、掃除開始っ!」

話を聞けー! という老師は放置して、夕鈴は額の汗を拭って掃除道具を持ち上げた。
確かに揉む方は汗ばむくらいに熱くなる。 これはたぶん私側に変な力が入っているからだろう。 近所の小父さん方を施術していた整体の医師は平気な顔をしていた。 慣れない内は自分が肩凝りになってしまいそうだと、夕鈴は自分の肩を揉み解しながらハタキを動かし始める。

それに老師は体が小さいし、御高齢ということもあって力加減が難しい。 それで余計な力が入って疲れるんだろうなとも思えた。 体の大きな武官の誰かを揉ませて貰えたら力加減も判るかしらと、神妙な顔で考えながら雑巾を絞っていると、背後から声を掛けられた。

「お妃。 浩大が少し王宮側の調べに入るそうだが、お前はまだ掃除に時間が掛かるのか」
「あら、桐さん。 ええ、実は掃除はこれから・・・・・・・・・。 そうだっ!」

夕鈴は振り返って見た桐の体躯に目が釘付けになった。









「お・・・・ きさき、さま・・・・。 いっ、いいで、す・・・・」

その夜、いつものように夕鈴の部屋に行くと侍女らしき女性の声が聞こえて来た。 
眉根を寄せて警備兵を見ると、目が合った兵も口元を歪ませて小さく肩を竦める。 ちょっと変な気持ちにさせる声に、足が止まってしまう。 今日、夕鈴の部屋に行くことは伝えてあるが、このまま中に足を進めていいのだろうか。

「そ、そこ・・・ はぁああ・・・・・。 いっ、いいですわ」
「ここは如何ですか? 少し、こうすると・・・・・」
「うっ、痛い・・・・ ですが、やはり気持ちがいい、です」
「ここをぐっと、すると?」
「ああっ! いっ、いいです!!」

妙齢の女性の艶めかしい声に警護兵が微妙な顔をしている。 そんな声を聞かされて寝ずの番として警護する方は居た堪れないだろう。 一体、夕鈴はナニをしているんだ。 
部屋入り口の侍女が驚いた顔で僕に拱手して中へと促がす。 
思った通りの光景に目を細めると、驚いた顔で急ぎ立ち上がる侍女が強張った顔で拱手した。

「あ、陛下。 お仕事お疲れ様です」
「・・・・・我が妃は侍女を労わっていたのか? 優しいことだ」

夕鈴はその言葉に素直に照れていたが、侍女は冷めた視線を受け、少し怯えたように茶を用意し始める。 直ぐに下がらせると、夕鈴は茶杯を両手で握り締め始めた。

「? 寒いの?」
「いえ、手を温めているんです。 陛下、今日は肩を少し解したら次に腰も揉みますね。 皆に褒められて、少しは上達したかなと思うんです。 この間は肩、痛みませんでしたか?」

頬を染める夕鈴に戸惑いながら、肩を竦ませる。 痛みなんか感じなかったなと思い返した。
それよりも裾から見えそうで見えない白い足の方が気になって、鏡台から慌てて視線を逸らした自分が思い出される。 陛下が小さく頷くと、 「ではっ!」 と気合の入った夕鈴の声が聞こえ、肩に温かい手が乗せられた。

「うん、硬っいですね。 凝ってますよ、陛下」
「手、痛くない? 僕は温かくて気持ちいいけど、さっき侍女のもしていたでしょ? 疲れない? 掃除も始めたと聞いているよ。 頬の傷は大丈夫?」

明るい笑い声が背後から聞こえてくる。 少し息を切って、手に力を入れながら一生懸命に揉み解そうとしているのが判り、止めることは難しいと思えた。 

「掃除は、ちょっとさぼってました。 老師を揉んで勉強していたので、李順さんには、内緒に、して下さいね。 いろいろな人を揉まないと、やっぱり、わからないので」

うんうん、言いながら手を動かす夕鈴に身を任せる。 背後を任せるなんて本来しないのだけど、夕鈴には気が抜けてしまう。 彼女なら大丈夫だと思える。 傷つけられることはあっても、他を傷つけようなんて思わないのだろう。 
・・・・・・もしも彼女が刺客なら、僕は何度殺されていることだろうか。
そんな考えに苦笑が浮かぶ。

「力、弱いですか? くすぐったいですか?」

僕の苦笑をそう受けたのかと、更に笑ってしまう。 心中を知れば愕然とするだろうし、信用されていないのかと憤るかも知れない。 真っ赤な顔で怒って部屋を飛び出すかも知れない。 
君からのキックは精神的に来るから、振り返って笑みを送る。

「ううん、気持ちがいいよ。 でも本当に疲れないか?」
「・・・・・少し手が痛いです。 ちょっと幾人も試し過ぎたかしら?」

肩から離れた熱が寂しいと君に向き直ると、手首を振って困った顔を向けられた。 
本当に真面目で一生懸命な君は見ていて心が休まる。 一日の終わりに君を見て話をするだけで、僕自身は穏やかになれるのだが夕鈴は如何なんだろうか。 バイトとして、夜部屋に渡って来るのを待つ妃を演じているだけなのか。

「ごめんなさい、腰は明日以降にして下さい。 ちゃんと出来る自信がなくなって来ました」
「うん、肩はとても気持ちが良かったよ。 ありがとう、夕鈴」

褒めると、大きな瞳で嬉しそうに頬を染めて僕を見てくる。 その顔がいい。 その笑顔に今日も癒される。 でも、頬に小さな布が貼り付けられているのが見えて、僕の顔が少し曇る。 
君は余り気にしていないようだから、不用意に危険に立ち向かうのは駄目だと教えるべきか。

「ねえ、頬の傷を見せて貰えるかな。 万が一傷が残ったら大変だろう?」
「残らないと侍医様に言われましたよ。 掠っただけですし。 ・・・・どうですか?」

布を取り外した夕鈴の頬には小指の長さくらいに紅い筋が斜めに走っていた。 その傷を目にして思わず眉を顰めると、慌てたように痛くないと君が伝えてくる。 その頬の傷から目尻にかけてなぞってみた。 痛くないと君は言うが、しかし小刀がもし目を掠っていたら・・・・・・・・・。

「あ、あの陛下? ちょ・・・・ 狼陛下になっているような気がしますが・・・?」
「危機管理の出来ない兎に少し教育を施さねばならないかと思案しているところだ。 あの場合は如何するべきか、熟考が必要だろう。 浩大が陽動され場を離れていたなら、刺客の言うとおり政務室に足を運ぶべきだっただろうし、第一に刺客の腕を掴む必要はないのではないか?」
「あ・・・。 で、でも政務室は文官ばかりですし」
「夕鈴・・・・・・・・」

腕を引き、僕の膝上に君を閉じ込める。 強張った体から狼の気配に怯えているのが伝わって来るが、それでも納得出来ないという表情に笑い出しそうになった。 本当に君は頑固だ。

「我が妃が傷つけられたとなると、警護をしている者を厳しく叱責せねばならない」
「だっ! でも、確かに兵の姿は近くには居りましたが、それでも離れていたので・・・・。 あ、あの場で捕まえることが出来たのですから、結果問題無しということで、そんなお咎めなど!」
「それが王宮警備を任されている者の責だ。 何のための警護だ、となる」
「わ、たし、浩大がいるものだと思って・・・・。 それに警護兵の居る方へ近付こうとはしていたんです。 逃げられたら困るし、侍女さんが来たら大変だと」
「しかし、君は実際怪我をした。 あってはならないことだよね、妃の居る後宮で。 刺客と知らず雇い入れた者も、容易に離れた侍女も、何処を見て警護していたつもりなのか、兵らも。 私の妃に傷を負わせたのだ、この宮に居る人間、全てに咎を負わせるべきと思うのだが」

膝上の夕鈴から息を呑む声が聞こえて来る。 そう、君を守るために後宮ではあらゆる警護体制を敷いている。 陛下以外、立ち入りを禁じられた場所での暗殺や刺客、女同士の醜い権力争い、毒や針、呪詛など過去様々な思惑が犇めいていた場所だ。 
表面だけは華々しく、その実、水面下は汚濁のような汚猥に澱んでいる。

「・・・・・だから、君自身が傷つかぬよう充分気をつけねばならないのを承知してくれ」

夕鈴の首がゆるりと彷徨うように揺れている。 怖がらせ過ぎたかな? 刺客が送り込んだ間諜に惑わされ浩大が四阿から離れたことも原因なのは承知している。 その仲間が未だ捕縛出来ていない内は怖がらせてでも夕鈴自身に気をつけて貰わねばならない。
それなのに、君は僕の予想を遥かに飛び越えようとするから困ってしまう。

「承知は出来かねます・・・・・。 ど、努力はしますけど、私は囮のバイトでもあります。 傷つくのは厭ですから努力はしますけど、陛下の敵を減らすためでしたら同じように動くと思います」

本当に困った兎だ。 涙目で睨みように見上げられては他の方法を検討するしかないか。 
君を膝から下ろし、立ち上がって頬を攫む。 途端、強張った君に薄く貼り付けた笑みを見せ、じっと瞳を見つめた。 君も負けじと見つめ返すけど涙目になっているのが僕の嗜虐心を誘う。

「君が傷つくのを私が赦すと思うか」
「陛下が傷つくより、ずっとましです」
「私が傷つく・・・・・。 そんなに弱い狼に見えるというのか、君には」
「そ、そうではありませんっ! 陛下の敵を減らしたいと望むのは過ぎたることなのでしょうか! そのための尽力を無駄と言われるのは・・・・・・ 辛い、です」
「・・・・・・辛い、か」

意固地な君に嘆息が零れる。 これ以上言っても無駄なようだ。 一刻も早く刺客の仲間を捕縛し、警戒態勢の見直しと二度と同じことが起きぬよう警備に注意勧告をせねばなるまい。 この兎は勝手に跳ね回り過ぎるし、それを止めておくのは難しい。
夕鈴の頬から手を離し、僕は部屋を辞した。

静まり返った部屋で夕鈴は肩から力を抜き、労わることの出来なかった自分に項垂れてしまう。 
結局は陛下のストレスを増しただけなのか。 素直に陛下の言うことに頷き、自分の気持ちは兎も角、妃として、そうすべきだったのだろうか。


陛下が退室した後、夕鈴は深く反省した。 ストレス解消どころか、ストレスを増してどうする。 これでは折角肩凝り解消法を見つけても、何の役にも立たぬどころか、返って足手纏いだ。 のんびりして貰おうと画策した温泉離宮だって、場所が変わっただけで仕事は押し掛けて来るし、どうも自分の考えはまともなものが無い。

『臨時花嫁の代わりは幾らでもいます』  ふと、李順さんの言葉が頭を駆け巡る。

「・・・・・でも」

刺客が新たに来ても同じように対応してしまうかも知れない自分。 ただの囮として大人しくしているべきだったのかも知れないが、でも、やっぱり 『でも』 だと思ってしまう。 
これではいけない。 
プロ妃として頑張ると、目指すと決めたのだ。 ナヨとした妃がいいなら、それを目指そう。 
今から楽や詩歌、踊りは無理だけど、陛下が望む大人しげな妃を演ずるくらいなら出来そうな気がする。 いや、せねばなるまい!


夕鈴は新たに気合を入れ直し、明日は老師の許で歴代妃に関する書物を漁ろうと考えた。

泣きそうな顔のまま。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 20:22:22 | トラックバック(0) | コメント(10)
コメント
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2013-05-28 火 21:11:12 | | [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントありがとう御座います。 暴走夕鈴で御座います。 何事にも一生懸命な夕鈴って書いていて楽しいです。 あ、桐さんのマッサージですか? されるのは大好きですけど、するのは疲れますよね。 専ら私はマッサージチェアでうんうん動かされています。
2013-05-28 火 22:04:19 | URL | あお [編集]
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2013-05-28 火 22:52:39 | | [編集]
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2013-05-29 水 01:00:58 | | [編集]
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2013-05-29 水 02:16:40 | | [編集]
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2013-05-29 水 07:56:40 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。 題字はほんとーに毎回悩みます。 内容が決まる方が先なので、後から内容に添った題を必死に考えます。 皆様、桐の肩揉みに騒いでますが、老師は誰も触れてない。 老師も男だよーーーーー!(笑) 皆様の命・・・・ 怖い、怖い。
2013-05-29 水 20:06:52 | URL | あお [編集]
Re: おかしな方向へ…
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 妃演技中の夕鈴っておしとやかですよね。 頑張っております。 方淵に遭うとおしとやかの文字がどこかに飛んで行ってしまいますが、(爆)頑張っております。 そしてやはり桐ですね。 ありがとう御座います。次にも登場させて頂きます。
2013-05-29 水 20:25:57 | URL | あお [編集]
Re: またしても!
春風様、コメントありがとう御座います。 夕鈴のマッサージに喘ぐ陛下ですか? おおお、ごっくんです。 命の危険もナイスです。 桐大ピンチっすね。 思わずニヤニヤする私が居ました。 蒼褪める桐さん希望と。 ふむふむ・・・・。 春風様、「S」ですね?
2013-05-29 水 20:53:28 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ちゃこ様、コメントありがとう御座います。 その前に老師を揉んでますよ~。 焼きもち陛下より、皆様桐の命を心配されていて、思わず爆笑が続いております。 本当にありがとう御座います。
2013-05-29 水 20:54:46 | URL | あお [編集]
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