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転がる石には苔生えぬ  3
狂犬病接種のため病院に行ったのですが、ひどく混んでいて暫し待つことに。
いろいろな犬種と猫たちに囲まれ、同じ飼い主ということもあり、話に花が咲く。 そんな中、病院嫌いな犬がいて、飼い主に必死に帰ろうと、ここは厭だと訴えてました。 大型犬なのですが、鼻を鳴らしてドアを掻き、ぐるぐる回り、まさに必死です。 威嚇こそしないまでも、その必死さに手出しが出来ないほど。 飼い主が何度も「煩くてすいません」と言い、その恐怖が伝わった他の犬が鳴き出した。 ごめんなさい、確かに煩いけど面白かったです。

では、どうぞ  














「こ・・・・、こんなにあるんですか?」
「そうじゃのぅ。 その年々によって歴代国王陛下のお好みは変わるが、寵愛があった妃の容姿や特技、部屋への渡り回数、御子の数、陛下からの下賜品、臣下からの献上品等等。 うむ、最近だけだとこれくらいじゃないかの」
「いや、これくらいって・・・・。 壁一面の棚一つ丸々じゃないですか・・・・・」

先代、先々代国王から寵愛を受けて後宮に侍っていた妃たち。 
その中でも特に寵愛を賜った妃を調べたいと老師に願い出ると、壁一面の棚一つと、その横の壁半分に埋まった書物を示された。 夕鈴はそれらを前に目の前が真っ暗になりそうになりながら、それでも左端上段から目を通すことにする。
その上段、一つ区切りの棚だけでも軽く五、六人。 妃の出自から親戚関係、王宮での地位、兄弟姉妹関係、侍女の経歴などまで事細かに記された書簡の山を前に、正直涙が出そうになる。
読み進めるだけでも、世界観の違いに吐き気がしてきて、途中何度も回廊で深呼吸をしなくてはいけなくなったほどだ。 豪華絢爛な女の園。 国王陛下の為だけに設えられた雅な後宮。 
世継ぎを生し、権力を求め、女としての矜持を誇る場所。 
陛下の心を癒す場所であり、寛ぎを提供する場所。

だが、老師が言うように裏では寵愛を勝ち取るために熾烈な争いが絶えない場所であり、血で血を洗う闘争の歴史であり、陛下を奪い合う女の戦いが繰り広げられた来たという。
そんな中で、戦いに勝ち残り、登り詰めたとしても他からの嫉みや妬みにより命を脅かされ、時に落とすこともあった史実。 妄執の呟きを紡ぎ、恨みを残し息絶えた者も居ただろう。
妃だけではなく、子や親族、侍女なども巻き込まれると聞き、怖さと同時に悲しくも感じた。 

自分が思い描く結婚生活とは掛け離れた世界。 
出来ることなら、皆仲良く、国王陛下の心を癒すことだけを念頭に、諍いも競うことも無く、春の宴の時のようにただ陛下の為にと協力出来たらいいのに。 まあ、先代陛下は政務を放って堕落した生活をしていたそうだから、ストレス解消も必要なかったでしょうけどね。

・・・・・・・・・そこまではバイトが心配することではないか。
きっと李順さんの眼鏡に適う妃たちは、陛下をちゃんと癒してくれるだろう。


短く息を吐き、夕鈴は卓に広げた書簡に目を落とす。 
もう名前からして綺麗だなと笑ってしまう。 貴族子女として生まれたからには女の頂点である妃、または正妃を狙うために、日々教育や稽古事を受けてきたのだろう。 
親の願いと期待を受け、容姿を磨き陛下の傍に侍るようにと・・・・・・・・・・。

だあああああああーっ! だから、そこはバイトが考える範疇じゃない。 
技よ!! 妃が陛下を癒した技を盗むのよ。 楽とか歌とか踊り以外に、何か、こう、私でも出来そうな余り難しい技能が必要ない、でも癒される~、労わる~みたいな技っ!!

_________ そんなの、ない。 ・・・・無理だ。

長年磨き上げた技など、それぞれの努力と、権力とコネと、己自身の美しさの賜物だ。
そんな簡単に盗めるようなものが有る訳が無い。 貴族として生まれた彼女たちは多額のお金を掛け、時間を掛けてこの国の頂点である国王陛下に寵愛を賜りたいと努力し続けてきたのだ。 その彼女たちの歴史から簡単に何かを学ぼうなど、おこがましいのだと漸く気付いた。 
紅珠だって幼い頃から楽などを学び、後宮に入る為にと教養を身に付けていたじゃないか。 

そうなると、自分が陛下のために出来ることは限られてくる。 下町では飯店で働いていたので接客に自信はあるが、そんな接客スキルで陛下を癒せる訳が無い。 笑わせる自信ならあるが、何か違う方向に走り出しそうだ。 もちろん色気演技の方は自慢じゃないが、自信はない。 これは断言出来る。
・・・・・・過去を振り返り、少し泣きそうになる自分がいた。
いやいや、泣いている場合じゃない。

では、どんな女性なら? 
たとえば春の宴の時の舞姫のような色気や妖艶な仕草を持つ女性か? 
またはナヨとした物腰柔らかい女性か? 
楚々としたたおやかな仕草で、教養が滲み出ているような・・・・・。
ああ、女官や侍女はどうだろう? みんな、綺麗でお淑やかな貴族子女ばかりだ。 
自分とは真逆の女性像に、果たして出来るのだろうかと不安にはなるが、今は目を瞑る。

プロ妃として出来ることは何でもやってみようと、夕鈴は新たに目標を掲げた。






「今日も実験台にするのか?」
「あ、揉ませて下さい、勉強させて貰います。 お世話になっておりますから、お礼も兼ねて」

妃衣装に着替え終えたところで、警護の為に戻って来たのだろう桐が扉に凭れ掛かりながら聞いて来た。 老師では揉み解すにも限界があり、ふつーの成人男性を揉んでみたいと、お願いしたのは昨日だ。 まさか陛下唯一の妃が、政務室や書庫で臣下である官吏や、ましてや武人を揉む訳にはいかないだろう。

「では、どうぞ座って下さいな」
「昨日、陛下の身体は揉んだのか?」
「うん、肩を揉んだよ。 その前に侍女さんも揉んだの。 そしたらいい加減手が疲れて来ちゃって、肩を揉むだけで勘弁して貰った。 デスクワークが多いから、やっぱり凝っていたのよね。 今度はもう少し長く揉んであげたいな」

手拭いを肩に広げ、肩から肩甲骨、首を揉む。 でも桐さんも浩大も筋肉が柔らかくてしなやかで、凝っている感じはしない。 力加減が判らず、逆に悩みそうだ。 
普段からよく解しておかないと、いざという時に動けないからと柔軟な体躯を保持しているそうで、だから身軽に屋根の上に登れたりするんだと、今更ながらに感心する。 桐さんの体を揉みながら知ることは、自分の手の動きと男性の筋肉の付き方、痛みのある箇所の確認などだ。 

「ここは痛くない? 強さ加減は問題なし? 黙ってないで、ちゃんと教えてよね」
「痛くない。 それより陛下の腰は揉んだのか?」
「・・・・だから手が疲れちゃったって言ったでしょう。 今度機会があったら揉ませて貰う」

怒ったように部屋を出て行った陛下が今度妃の部屋に渡るのは何時になるのだろう。 
ちゃんと出来ない自分が悔しいが、ここで立ち止まる訳にはいかない。 
プロ妃として、あとは何が出来るのかな。

「桐さん、男の人って何をして貰ったら嬉しいのかな」
「閨以外でか?」
「ええ、それ以外で! わ、私はバイトですからね? それは無理に決まってる!」
「まあ、それはお前には向いてないだろうが、酒と女以外だったら賭け事とか、楽、歌、踊りか。 しかし陛下に直接尋ねた方がいいのではないか? 下手なことをしでかして後で落ち込むより、望むことを叶えた方がいいだろう」
「・・・・・隠れて調べるより、そっちの方がいいか」
「何もしなくても良いと言われそうだな」

それは言わないで欲しい。 そう言われそうだから一生懸命調査しているのに。
でも悩むより、聞いて動いた方がいいかも。 陛下に問い掛けても、答えは夕飯を作って欲しいとか、おやつを作って欲しいとか、それくらいになるだろうけど。 
実際調べてみると、自分で出来ることの少なさにがっかりだ。 衣装を作って差し上げるにしても生地からしてモノが違うし、質素倹約を常としている李順さんにはとてもじゃないが相談出来ない。 そんな暇があるなら妃教育の本でも読めと言われるのが落ちだ。

「そう、だね・・・・。 うん、望むことをした方がいいかな」


結局は何の策も講じられなかったなと溜め息を零して、部屋へと戻ることにした。 
途中、回廊屋根から降りた桐が手で行く先を制して、私の足を止める。 息を止めて周囲を見回し、夕鈴は後ろへと少しずつ下がった。 暫くそのままだったが、桐がゆっくりと手を下ろしたのを確認して詰まらせていた息を静かに吐く。

「えっと、・・・・・刺客がまた来たの、かな?」
「前の刺客の仲間だろう。 計画阻止されたと今度はお前が狙われているのかもな。 重々周囲に配慮しろ。 基本はお妃自身が身を守らねば、幾らこっちが身を呈しても意味が無い」
「あ・・・・。 そ、うか」

陛下はそれが言いたかったのか。 皆が一生懸命守ろうとしているものを、私はバイトだからと、囮だから大丈夫だと簡単に傷付こうとしていたし、実際に傷を負った。 
周りを信用していない訳じゃない。 諦めて投げ出している訳じゃない。 
だけど、そう思われる可能性もあるんだ。 だから責や咎という言葉を用いて私に説いたんだ。 
それなのに私は無碍にした。 
陛下の気持ちを軽んじたような答えを伝えてしまったんだ。





陛下の気持ちが理解出来た私は、直ぐに謝りたいと思ったが、そういう時に限って部屋へのお渡りは無かった。 明日、政務室で謝る機会があるかしらと諦めるしかない。
しかし悪いことは続くもので、翌日は強風に見舞われ、今にも雨が降りそうな天候となった。 
窓を閉め、今日はお出掛けなさいませんようにという侍女の言葉もあり、勿論、妃衣装が汚れてしまうという懸念もあるため夕鈴は刺繍をして過ごすことになる。
 
部屋で刺繍針を動かしながら夕鈴は静かに考えていた。

囮としても動くことは厭わない。 陛下の敵が減るために頑張ろうと思う気持ちは捨てられない。 だけど、私が動くことで他の人が余計な心配をしたり、ましてや咎を負うのは望んでいない。 
その為に居る人たちを蔑ろにしている訳ではないが、そう捉えられているとしたら。

長くなってきたバイトだけに自分に甘えもあるのかも知れない。 
出来る、大丈夫と思い込み、自分本位に動くのでは囮としてもバイト妃としても本末転倒だ。

がっくりと項垂れた夕鈴は針先を見ながら、如何したらいいのだろうと息を吐いた。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:10:03 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
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2013-05-30 木 09:38:01 | | [編集]
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2013-05-30 木 11:48:37 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。 暴走夕鈴。一生懸命働く夕鈴が可愛いなと書き出しましたが、陛下との意思疎通が出来ずに、迷走しそうです。 underもご覧頂き、ありがとう御座います。 薬湯はこれからは飲ませない・・・・かな? まだ二人きりで居たいと、まだいちゃつきたいと願う狼ですからねぇ。(笑) いちゃつくと言うか、翻弄しながら貪るというか。ほほほほほ。
2013-05-31 金 00:03:35 | URL | あお [編集]
Re: ちょっと、前進!!
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 タイミングが悪い時って続きますよね。先月悩んでいたバッグ、やっぱり欲しいと買いに行ったのですが、もうやはり無くて、娘に笑われました。くすん。いつも悩んで悩んで、「ああ、あの時買って置けば良かった・・・・」と涙。 私も誰からに腰を揉んで貰いたい。
2013-05-31 金 00:10:08 | URL | あお [編集]
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