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転がる石には苔生えぬ  5
本の整理をして、片付けて、奥から古い本を出して・・・・・・・・・たっぷり読み耽りました。
バイトから娘が帰って来て、慌ててご飯の用意。読み直すと「捨てられない」となり、またも整理は頓挫。売った本を買い直したことも過去、何度もあり、この悪癖は直りそうもありません。


では、どうぞ














薬草を焚いたと言っていたけど、浩大や桐、警護兵は無事なの? 
そう思うだけで心臓は壊れそうなほど跳ね、指先が痺れたように感覚が薄れていく。 言われた通りに指定場所に来たが、薬草を焚いていたことなど、李順さんや浩大たちは想定外だったかも知れない。 大丈夫なのだろうか、薬草ってどんな作用を齎すものなのだろうか。 もしかしたら容易過ぎたのかも知れない。
今更だが周囲からの音が無いことに唇を噛み、睨み付けそうになる自分を抑えて黒衣の男を見上げる。 後ろ手に縛り上げた夕鈴の腕を掴み、男は移動を始めた。 口を訊くなと言われた今、黙って従うしかないだろうが、ここから離れてしまうと、この場所にいるはずだと思っている他の人たちは妃の行方を探すことになるかも知れない。 どうしよう。 如何したらいいんだろう。

「あ・・・・・」

怖さの余り足から力が抜けた振りをして夕鈴はその場に崩れた。 しかし背後で腕を掴まれているため、膝がつくことなく前へと押し出される。 時間稼ぎも出来ないのかと、せめて大きく頭を振り下げ、飾っていた花を落とした。 
上手く落とせたが、変な動きではなかっただろうかと震えてしまう。 その震えを恐怖と受け取った刺客は、気にするでもなく夕鈴を引き立て前へ進むよう背を押して歩くよう指示を出してくる。 これ以上何か抗うのは難しい雰囲気に、夕鈴は素直に従うことにした。






「・・・・・ここで大人しくしていろ」

男はそう言って夕鈴を押し込めた場所から離れて行った。
王宮の奥は夕鈴も知らない、普段は高官しか立ち入ることの出来ない場所が多い。 さらに複雑な構造をしており、後宮は更にその奥だ。 途中から目隠しをされていた夕鈴はここが何処だ変わらない上、後ろに縛られた腕を更に動けないように縄を打たれ、足首、膝までも縄で縛られた。 最後に猿轡だ。
ここまで雁字搦めにされては動きようが無い。 大人しくするしかないだろうと、心の中で男に突っ込むも、届く訳が無い。 縛られた腕が痺れ始め、痛みも感じなくなってきた。 必死に指を動かすと、床の感触がわかる。
何処かの建物の一室に閉じ込められたのか。
隠密か刺客である男のことだ、人に知られずにここまで私を連れて来ただろう。 
そうなると、発見されるのはいつになることやら。 掃除で頑張った後だけに、急にお腹が空いてくる自分にがっかりしてしまう。 でも空腹に意識が向かっている間は、怖いことを想像しなくていいかもと思う自分もいて、乾いた笑いが零れそうだ。

大丈夫。 浩大も桐もいる。 それに陛下がいる。
侍女に扮した刺客を捕らえた後、依頼した者はすぐに捕縛されたと聞いた。 だから今回現れた男は仲間を助けに来ただけの筈。 陛下の敵が新たに見つかる訳じゃないけど、ここまで容易に入り込んだことを赦す訳にはいかないだろう。

今自分が出来ることは、自分が傷付かないように大人しく、囚われの妃を演じていれば良いだけ。 下手に動いて傷付けば、助けようと尽力を尽くしている人に迷惑が掛かる。 大人しく、動かず、足手纏いにならないように・・・・・・・・。

そう思うのだが、じれったいことこの上ない。 こういう遣り方は大嫌いな夕鈴だ。
大人しくしていろと言われて出来るものではない。 きつく縄を打たれてはいるが、転がればどうにか外には行けそうだと、まずは転がってみた。 目隠しのため扉がどちら方向にあるのか判らないが、取り合えず動けば何処かに体はぶつかる筈だ。 
しかし、一人きりだと思っていた夕鈴の耳元に声が聞こえて来た。

「大人しく、と言われただろう?」
「・・・・っ!」

二の腕から胸に回っていた縄を持ち上げられ、浮遊感に身が竦んだ瞬間、そのまま放り投げられた。 強かに床に打ち付けられ、猿轡の合間からくぐもった呻きが漏れる。 
縄が軋み、打ちつけられた身体が痛い。
それよりも、他に誰かが居たなんて思いもしなかっただけに恐怖が全身を貫いた。

「動くな」

端的に発せられた言葉は冷たく、夕鈴は後ろ手に回った拳を握り締め、首を持ち上げる。 声のした方向に顔を向け、他に人は居ないか確かめようとした。 途端その頭を床に押し付けられ、こめかみに痛みが奔る。

「ぐっ!」
「狼陛下唯一の妃は無謀なのか・・・・。 同じことは二度と言わぬ」

腰から頭へ突き抜ける痛みと恐怖。 目隠しの下で目を強く瞑り、皆を信じるのだと、だから大丈夫だと思い込むしかない。 ただ自分が囚われていることで陛下の足手纏いにならないか。 それだけが心配だった。





それからどのくらい時が経過したのだろう。 もう一人の男が動いた気配は無い。 心臓だけが煩いくらいに耳に響いていたが、それも時間の経過と供に落ち着いて来た。 指定された場所では何があったのだろうか。 本当に皆は無事なのだろうか。 
陛下は・・・・・・ 呆れていないだろうか。
今回は指示された通りに動いた。 大人しく指示に従い、だけど捕らえられてしまった。
それも刺客の動向を探るために必要なのだろう。 その為なら多少痛くても耐えられる。 だけど陛下からまた冷たく見据えられ、無言のまま離れて行かれることが辛い。
ストレスを増している原因になるのが怖い。 そう思うだけで鼻の奥がつんっと熱くなり、悔しいけど泣きたくなった。 こんな男の前で泣くのは厭だけど、漏れ出てしまう嗚咽を抑えることも出来ずに身を丸くしてしゃっくり上げる。 

「・・・・・仲間を助け出したら」

突然聞こえて来た声に驚き、びくりと身体を震わせる。 すると小さな咳払いが聞こえ、躊躇うような沈黙の後、深い溜め息が落とされた。

「当たり前に思うかもしれないが、・・・・金が欲しかっただけだ。 あんたをこれ以上傷つけるつもりは無いから、動かずにいろ。 取引が上手くいけば、そのまま解放する」

さっきは乱暴にして悪かったと囁きにも似た声も聞こえ、夕鈴は身体から力が抜けていく。
最初に聞いた声より静かな声色に、夕鈴は床に伏したまま頷いた。 取引とは仲間を取り戻すということだろう。 その為に妃が囮として必要だったということか。
判っている。 同情しちゃいけない。 
だけど、彼らに依頼をした人間こそが悪であって、本当は誰もこんな仕事したくは無いはずだ。
そう思うのは甘いのだろうか。 簡単に信じてしまうことはいけないことなのだろうか。
猿轡のせいで唇が噛み締めない。
その後、彼は黙り込んでしまい部屋には沈黙が落ちるだけとなった。 
しかし黒衣の男性が部屋を離れてから随分時間が経っているような気がする。 もしも彼が捕らえられていれば、次に捕縛されるのはこの部屋にいる彼となる。 下手な口出しはしてはならないと判っていても、彼らには抗わずに捕縛され、そして改心して欲しいと願ってしまう。




小さな物音がした。 と、同時に夕鈴の体が引き寄せられ、立つように指示される。
膝も足首も縛られているため、立てと言われても上手くいかない。 それでも胸に巻かれた縄を強く引っ張られ、男の体に寄り掛かるように立たされる。

「あー、お妃ちゃんをそのまま離してくんない?」

いつもの飄々とした浩大の声が聞こえて来た。 夕鈴を引き寄せていた男の身体に緊張が走り、首に腕が回され力が入る。 だが少しでも会話したせいだろうか、男に対し最初に覚えた恐怖はなく、ただ大人しくされるがままでいることにした。

「・・・・お前は誰だ? あいつをどうした? この場所を・・・・ もし、あいつから聞いたというなら、妃に傷を負わせても良いという話になったのか?」
「んん~、そうじゃなくてさ。 狼陛下がかなり激怒しているから早々にお妃ちゃんを放した方がいいよって、忠告だよ。 傷は駄目だよん、ちょっとでも傷つけたら大変だからさ」
「それであいつらは如何なった。 解放して欲しければ、こちら側の意見も尊重して貰いたいものだがな。 一方的な話は聞かぬぞ、この・・・・・・ 狼の犬めっ」
「犬じゃなくて、道具、なんだけどね。 ・・・・犬かぁ。 ごめん、可笑しい・・・・・」

浩大が本当に哂っているのが伝わって来て、それどころじゃないだろうと夕鈴は項垂れそうになる。 狼陛下は演技で、小犬が陛下の本当の姿なのだから笑いたくなるのも少しだけ解るけど、時と場所、そしてこの雰囲気をわかって欲しいと切に願う。

「・・・・・莫迦にしているのか」

ほらー、怒らせてしまった!! 後で絶対に浩大を叱ってやる!
でも浩大が来たことで自分の気が楽になっていることに気付いてからは、大人しくするに徹していた。 助けに来てくれた人の邪魔にならないよう、大人しく、動かず。

「お妃ちゃん? 大人しいけど腹でも痛いか?」
「・・・・・・・・・・・」

この状態で動ける訳が無いだろう! 何故助けに来た側にまで弄られなきゃならないのだ。
地団太も踏めず、文句も言えず、睨み付けることも出来ない今、後で覚えておきなさいよと心の中で呪いのように夕鈴は呟いた。

「えっと、お妃を傷つけることなく解放するならば、仲間の刑罰を減じる方向で考慮する可能性も多少はあるかも~っと、陛下より言付け貰って来たんだけど。 あんた、どうする?」
「・・・・つまり、あいつも捕まったということか」

夕鈴の背後で溜め息が漏れる。 薬草を焚いていたと言っていたが、浩大は無事にここに来てくれた。 きっと他の皆も無事で、黒衣の人は捕まったんだ。 
そう思うと、ほっとして膝から力が抜けそうになった。 直ぐにふら付く身体を背後の人に支えられ、慌てて真っ直ぐに立とうとした時、頤を捕らえられ強く上に持ち上げられた。

「傷付けられたくなきゃ、こちら側の謂う通りにして貰おう。 要求が呑めないようなら咽喉を掻っ切ることも厭わない。 まずはあいつの無事を確かめたい。 ここまで連れて来い」
「う~ん、そう来るよね。 ま、伝えて来るか。 今、下手なことするとお妃ちゃんが傷付いちゃうか。 ・・・・でも今度オレが戻って来たら、あんた大変だよん?」

浩大がどんな顔をしたのか解らないけど、私の頤を持ち上げる彼の手に力が入った。
誰も傷付かず、なんて考えはやはり甘いのだろうか。 いつまで経っても減らない陛下の敵に嫌気がさす。 これでは幾ら肩を揉んでもストレス解消出来ないじゃない!! 
腹立ち紛れに足を踏み鳴らそうとして、縛られているのを忘れていた夕鈴はその場に思い切り倒れてしまった。 

「・・・・・今のはこいつが勝手に倒れたんだ。 傷付けた訳じゃない」
「あー・・・・。 了解」

本当に腹が立つっ!!!! 






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 22:25:25 | トラックバック(0) | コメント(12)
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2013-06-02 日 23:27:17 | | [編集]
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2013-06-02 日 23:33:42 | | [編集]
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2013-06-03 月 00:17:09 | | [編集]
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2013-06-03 月 00:20:48 | | [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントありがとう御座います。 どうしても隠密が出てくると、楽しくなってしまうのは何故でしょうか。困りものです。緊迫した雰囲気を壊す夕鈴をどうしても書きたくなる病気です。すいません(笑)
2013-06-03 月 00:22:20 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。 作戦により囮として頑張っている夕鈴ですが、さて陛下はどう動くか、書くのが楽しみです。 どちらも明後日の方向に互いの気持ちが走っている二人も、そろそろ正直になりませんかね。なったところで、問題は姑李順さんでしょうが。 本誌での焦れ焦れも今後楽しみでなりません。
2013-06-03 月 00:24:13 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。へんなところでヘタレに涙が出るほど笑わせて貰いました。ありがとう御座います! underの陛下は好き勝手放題しっぱなし。どっちの話も楽しんで妄想させて貰っています。 こんな話に毎回お付き合い頂き、ほんとーに感謝でいっぱいです。
2013-06-03 月 00:32:40 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
RUKA様、コメントありがとう御座います。ウハウハですか。嬉しいです。ありがとう御座います。突込みがありましたら、いつでも突っ込んで下さいませ。楽しみにしております。
2013-06-03 月 00:33:52 | URL | あお [編集]
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2013-06-03 月 06:43:02 | | [編集]
Re: 成長夕鈴!
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 えっと、これから陛下が壊れます。 ああ、何だろう。なんかね、書いている内に壊れてきたんです。 如何しましょう。(爆) 夕鈴が勝手に転ぶから、話の展開が可笑しくなってきた気がする。ああああああ(もう、一緒に壊れてしまえ、自分)
2013-06-03 月 20:13:09 | URL | あお [編集]
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2013-06-04 火 08:52:15 | | [編集]
Re: みの虫みたいな…
コメントありがとう御座います。 蓑虫状態で縛られると、息まで苦しくなります。 関節の痛みで長時間だと発熱もするそうです。 問題はトイレですよね! 思っただけでトイレに行きたくなります! マジに!
2013-06-04 火 22:33:50 | URL | あお [編集]
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