スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
転がる石には苔生えぬ  7
元気に陛下のためと働き続ける夕鈴って、可愛いいですけど、いつになったら互いの気持ちに気付くんだと、「志〇ー、うしろ、見てー!」状態で焦れています。(笑) お陰さまでラストです! 

では、どうぞ















夜に陛下が部屋に渡って来て、お茶の用意を済ませた侍女がいつものように退がって行く。
それを確認してから、夕鈴は陛下に問い掛けた。

「あの刺客さん方はどうなるのですか?」
「・・・・うん、殺害を指示した大臣らとは違う刑となるだろうけど、それは獄吏らに任せるよ。 妃の拉致や監禁、暴行もあるし、警備兵も動き傷を負っている。 何度も王宮や後宮にまで忍び込んだ経緯もあるから軽い刑にはならないだろうことは確かだ」
「そう、ですか・・・・」

茶杯を持つ手に陛下の手が伸びて来て、そっと縄痕を確認する。 それを見て夕鈴が眉間に皺を寄せると、陛下が不思議そうな顔を見せた。 憮然としたまま、夕鈴は昼間の出来事を話すことにした。

「・・・・桐さんに消毒だってお酒を掛けられたんですよ。 侍女に化けた刺客に噛まれたことを聞いて、心の中でちょっと笑っただけで・・・・。 すごっく沁みました」
「ああ、思い切り噛まれたらしいな。 だけど噛まれたまま刺客の女を暫く見下ろし続けていたそうで、その内、女の方が桐の表情に怯えて泣き叫んだと刑吏から聞いた」

あの冷酷で残忍そうな表情で見下ろされたら怖くもなるだろうな・・・・・。 思わず乾いた笑いを漏らすと、陛下の指が傷痕を静かになぞり出した。 もう三日も経ち、痛みは殆どないが縄が擦った箇所は未だ処置が必要で、やっと包帯が取れたところだ。

「また傷を作って、ごめんなさい・・・・」
「打撲の痕もあると聞いた。 投げ飛ばされたんだって?」
「目隠しされて、部屋にもう一人いるって判らないで動こうとして」
「もう囮はしなくていいよ。 今回も李順が僕に内緒で動いた結果だ。 上手く刺客を捕縛出来たはいいが、君が怪我をするようなことは二度と無いように気を付けるから」

静かに傷痕をなぞる手の動きは、労わるようで優しかった。 陛下の敵が捕まり、それは喜ばしいことなのだけど、いつまでも裏切る人がいるという事実が夕鈴を悲しくさせる。 二度とないと言われても、バイトで王宮にいる間は幾度でもその役を引き受けたいと思う自分がいて、だけど口にしたら陛下がまた怒るだろうなと小さく頷くに留めた。

李順さんから危険手当も貰い、囮としてのバイトに文句はない。 文句があるのは、いつまで経っても減らない刺客や不正官僚達にだ。 陛下のストレスだって減る訳がないだろうと手首に視線を落として、思い出した。 そのストレス解消のために自分がやってきたことを!


「陛下! 沢山の政務に刺客の取調べ、毎日ご苦労様です。 お疲れでしょう! ですので肩と腰を揉ませて頂きますね! やっと揉み解して差し上げることが出来ます!」

夕鈴はガッツポーズで 『徹底的に癒すぞ!』 と気合を入れる。 
陛下を寝台へと誘い、手首の柔軟をしながら 「さあ、どうぞうつ伏せになって下さいませっ!」 とやる気充分の笑みを浮かべた。

「いや、あー・・・・・。 えっと、大丈夫だよ、夕鈴」
「いいえっ! お疲れの陛下に出来ることを一生懸命考えたのです! 皆から好評でしたし、是非お試しあれっ!」
「いや、僕腰痛くないし、本当に大丈夫だから。 夕鈴も傷があるし・・・・・」

まあまあ、そう言わずと寝台に転がるようキラキラした瞳で訴えていると、困った顔を見せる陛下が言いにくそうに問い掛けて来た。

「あのね、僕が横になるでしょ? ・・・・背中から腰を揉むんだよね?」
「はい! 頑張らせて頂きます!」
「・・・・・僕に跨るの?」
「その方が均等に力が入り、且つ、陛下が身体を向きを変えずに済みますから!」
「夕鈴が、僕の腰に跨るの?」
「え? あ、もしかして・・・・・ 不敬にあたりますでしょうか?」

練習台の皆は卓にうつ伏せて貰ったり、卓上で揉み解させて貰い、実際に跨いだことはない。
しかし、問われた言葉に、確かに国王陛下に跨るなんて不敬以外の何ものでもないだろうと蒼褪めてしまう。 庶民が国王に何をするんだって話だ!

「で、では、それでは長椅子にうつ伏せになって頂きまして・・・・・」
「うん、面倒だからいいよ。 肩揉みだけで充分気持ちがいいから」
「・・・・・面倒」
「背中や腰は凝ってないから本当にいいよ。 でも肩揉みをしてくれたら嬉しいな」
「そ、そうですか・・・・・? でも少しでも遣ってみませ」

眉根を寄せる陛下に気付き、夕鈴は言葉を切った。 本当に腰を揉まれるのは厭みたいだ。 
そこまで無理強いするのは逆にストレスが溜まってしまうか? もしかしたら腰がくすぐったいからイヤなのかも知れない。 人によって弱い場所もあるだろう。 
今は・・・・ それで納得するしかない。

「で、ではやってみようかな~って思ったら教えて下さいね。 いつも私を抱き上げて、腰が痛くならないのかなって心配だったので」
「いつも君のことは片手で抱き上げているじゃないか。 心配要らないよ」
「膝上にも乗るので、足も痛くないかなって」
「大丈夫だよ。 心配ありがとうね」
「はい。 ・・・・・老師や侍女さん、浩大や桐さんで練習を繰り返したので、上達したんですよ。 辛い時はいつでも申し付けて下さいね。 遠慮は無用ですからね!」 

残念だと思う気持ちはつい言葉の端に出てしまう。 うう、未練たらたらだ。 
みんなの協力の下、自分が出来る癒しに向かって努力していただけに、正直項垂れそうになる。 
でも気持ちを入れ替えて、一生懸命肩を揉もう! 袖をまくって陛下の肩に手巾を広げ、さあ、揉むぞと気合を入れると、その手巾が取り払われてしまった。

「え? それがあった方が手の滑りが良くて揉み易いのですが・・・・?」

もしかして、それが無い方が手の温もりが直接伝わっていいのかしらと手巾の行方を目で追っていると、手が掴まれた。 掴まれた手は陛下に引き寄せられ、いつの間にか膝上に座らせられている自分がいる。

「あれ? 陛下、あの? 肩を揉みますから、これでは」

振り向くと目を細め、柔らかな微笑を浮かべて私を見つめる陛下の御顔。 
だけど、その目は笑っていないとわかると急に動悸が激しくなり、振り返った体勢のまま私は身動きが取れなくなった。 自分が息をしているのかさえ判らないほどになる。
一体、急に・・・・・?? 何でー!?

「夕鈴、いっぱい練習したんだね。 ・・・・そうだね、ここで侍女の肩や腰を揉んでいるのは知っているよ。 その後、手が疲れてしまったと言っていたね」
「え、ええ・・・・・。 でも、随分慣れて来たんですよ。 ですから練習の成果を陛下に」
「練習の成果、か。 ・・・・ふぅん」

蒼褪めた顔で陛下から目が離せずにいると、微笑みの影に狼の舌舐めずりが垣間見えた気がした。 こういう時の悪い予感というのは大抵外れてはくれないもので、頭の中で逃げ道を探すのだが、見つかる訳もない。

「いっぱい練習した夕鈴こそ、労わるべきだよね。 今日は僕が揉んであげるよ」
「いえ・・・。 まだ打撲で肩などに痛みが残っているので、私は結構ですわ・・・・」
「じゃあ、湿布の交換してあげようか。 僕、慣れているよ」

背後から囁くように伝えると、陛下は夕鈴の肩を撫でた後、そのまま襟足に指を忍ばせる。 
一体何をするんだと夕鈴が目を瞠ると、襟足から入り込んだ指が肩へと移動する。 肌蹴そうになる襟を急ぎ掴み寄せると、耳元で狼の低い声が落ちてきた。

「浩大や桐の腰も・・・・ 揉んだのか?」
「ひぃあっ! ・・・・桐さんは肩だけで良いって。 浩大はしましたけど・・・・」

耳を押さえながら眉を寄せて陛下の問いに答えるけど、何で狼陛下の演技を始めたのか理解出来ない。 第一、湿布交換するには脱がなきゃ駄目だし、そんなこと出来る訳がない。 
もしかして、隠密の身体を勝手に揉んで、支障が出たら困るというのだろうか。
下手な人が力任せに揉むと、揉み返しで酷い筋肉痛になると聞いたことがある。 たしかその話をしてくれたのは魚屋の小父さんだ。 腕が上がらず辛いと言っていた。

「で、でも二人とも全く凝ってない上、体がとても柔らかいので陛下を揉むための勉強として、揉む強さと押す場所を知るために少しの時間を頂いただけです。 仕事に支障はないよう、確認のためだけに短時間だけです。 私の都合で掃除の後に、少しだけ。 ・・・・・それでも、やっぱり駄目だったのでしょうか?」
「・・・・・少し?」
「少ししかさせて貰えませんでした! あ、練習が足りないから不安ですか? もういっその事、下町で整体の先生に習って来ましょうか? それなら安心して揉ませてくれますか?」
「いや・・・・。 そういう訳じゃ・・・・」
「一度、整体しているところを自分で見るのも勉強になるかも知れないわね・・・・・」

急に真面目な顔で深く思案を始めた兎に、狼の悋気や心配など届きはしない。
夜着姿で僕に跨ごうとする君は自分の姿など想像もしないで、揉み解すことだけを考えているのだろう。 なんて真面目なお嫁さんだ。 いつもいつも君は僕のために一生懸命に働いてくれている。 だけど、君の跨ぐ姿を想像し、僕は激しい動悸に翻弄されているんだよ。

さらに、その練習に浩大や桐を利用した君に、悋気を覚えて狼の声色を使っても、驚き怯えるだけで、終には下町に行くとまで言い出した。 『揉み解し』 を極めるために。 
そんな君に、僕の気持ちを判って欲しいと望むのは無理なのだろうかと項垂れてしまう。 
君の肩に手を置いて深い溜め息を落とすと、きょとんとした顔で夕鈴が僕を見上げて来た。

「陛下?」
「・・・・うん、やっぱり肩だけお願いしようかな」
「はい!」

・・・・・・その笑顔を見て、夕鈴には敵わないと自覚する。 
無自覚に僕を翻弄する君に、いつか僕の気持ちを解って貰うには如何したらいいのかな。
まずは他の男に触れないで欲しいと、どう伝えようかを考えよう。 反論なしで突き詰めて説明するのが大変かな? 僕だけの花嫁だと、ちょっと脅しちゃおうか?
・・・・・・まあ、あいつら二人は脅す前に重々承知していることだろう。
僕が嫌がることを嬉々としてやっているのが判るだけに腹立だしいが、あとで面倒な仕事を押し付けてやろうと企てる。 不正を行っている可能性のある高官全員のあぶり出し、横領や賄賂に足を突っ込んでいる官僚の裏打ち、宴以降企みを目論んでいる大臣の調査、地方知事の現状調査もいいな。 
面倒な仕事は山積みだ。 調査後の書類の山に自分も苦しめられるだろうが、報復のためには仕方がない。 早速、李順に手配を頼むとしよう。

「陛下、気持ち良いですか?」
「うん、気分まで良くなって来たよ。 ありがとう、夕鈴」

少しでも陛下の癒しになるなら! 
その心の裡までは知らず、小犬の笑みに夕鈴は満足していた。






FIN

スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:35:07 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-06-06 木 19:53:43 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-06-06 木 20:50:23 | | [編集]
Re: 一番コワイのは…
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 桐さん殺人視線ですか、紅珠先生の作中の陛下のようですね(笑) 夕鈴、自分の姿を想像出来たら、言わないでしょうね、「跨る」なんて。次の話しにもお付き合い頂けるよう、頑張ります。
2013-06-07 金 07:29:03 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。 そうそう、陛下ってやることやるのに、最後は我慢強いというか、ヘタレというか。(爆) 次はオリジナルキャラの一覧を載せるつもりですが、全部は無理と諦め、今書き出しに必死です。 何でこんなに出したのだ、と自問自答しながら黙々と頑張っております。うぬぬ。次の話しにもお付き合い頂けたら、嬉しいです。 
2013-06-07 金 07:32:15 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。