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雨垂  1
降水量が少なくて連日TVでは雨が~と言っております。 ダムの渇水が映し出され、ふと気付くと植木鉢がカラカラに。 慌てて水をあげました。 雨は嫌いじゃないけど、沢山だと困るし、降らなきゃそれも困る。 晴耕雨読がいいのですが、そうもいかない学生と就労者。 とほほです。


では、どうぞ














温かい日和に誘われて、大きな池に浮かぶ小島へと通じる橋を渡り、その小島にある小さな亭へと足を運ぶ。 ここから見る風景は周りが水面に囲まれ、その水面に映る景色と共に一風違った広がりを見せ、夕鈴は密かに気に入っていた。
橋から落ちたことのある妃に対し紅珠がかなり気を遣うので、彼女を誘うことが出来ず、今回も一人で足を運んだ。 小さな亭なので椅子もなく、だけどのんびり出来るお気に入りの場所。 小島には低木に小さな紅い花が咲き、築山があるだけの場所だ。 何もない場所ゆえに、護衛である浩大も付き従うことの出来ない。 
申し訳ないと思うが夕鈴が一人で息を吐くことの出来る場所でもあった。

「侍女さんがお茶を用意するまでは羽目を外せるぅ・・・・・」

思い切り伸びをして、欠伸もしちゃう。 首を回すとコキコキといい音がした。
 
多少慣れては来たつもりだが、お妃演技はやはり気疲れがする。 
ただの庶民が貴族子女の真似事をしている上、狼陛下唯一の妃を演じているのだ。 精神的疲労はやはり大きい。 美味しい食事にフカフカの絹の布団で寝ていても、慣れるものではないし慣れるのも怖い。 立ち入り禁止区域の掃除をしている時は多少緊張は解れるが、老師が要らぬお節介を振り撒き散らし、浩大と一緒に菓子屑を零すので疲労は続く。

一人きりの島を満喫しつつ、夕鈴は青空を楽しみながら懐かしい歌を口遊む。 子供の頃から聞き慣れた、下町では誰もが知る歌を何の気なしに楽しんでいると、四阿に侍女の姿が見えた。

つかの間の休息を終えた夕鈴はゆっくりと橋を渡り、侍女が用意したお茶を楽しむために畔の四阿へと足を向ける。 今度は陛下を誘うのも楽しいかも知れない。 
その時に・・・・・ ふと思いついた案に胸の内で手を叩き、早速実行することに決めた。


後宮から近い場所でもあり、天気が良い時は出来るだけ足を運び、用意したものを所定の場所に置く。 時々様子を見に行き、少しずつ思惑が上手くいっていることに満足していた。
天気がいい日が続けば、早々に陛下をお呼びすることが出来るかもしれないと笑みを零す。







「お妃ちゃん、池の亭で毎日何してるの? 借金返済の願掛けか?」
「祠もないのに、小島で願掛けして如何するのよ。 ・・・・・実はね、菓子屑をばら撒いているの。 鳥が来るかなって。 そしたら最近来るようになったのよ。 毎日撒いているから少しずつ来る鳥の種類も増えたようで、嬉しいのよねー!」
「取って喰うのか?」

掃除中だったので、持っていた雑巾を投げるが、有能な隠密を自称する奴は難なく避けやがる。
舌打ちをすると、横から側頭部をぐりぐりと拳骨で弄られた。 

「き、桐さん、痛い。 痛い、桐さん!」
「お妃、伝えておくが必ず侍女と一緒に行くようにしろ。 あの場所で狙われたら到着するまでに時間が掛かる。 警護するにも少々不備だ。 わかったか」
「う・・・・・。 わかりました。 でも逆に誰かがいたら直ぐに判るし、菓子屑をばら撒いたら直ぐに離れているわ。 鳥が怯えるだろうからと・・・・・・・痛い、痛いっ!」

今度は頭頂部をぐりぐりされた。 容赦の無い強さで涙が出る。 仮にも私、妃ですけど!

「連日訪れるともなれば、何かの仕掛けをされていても不思議ではない。 一応調べてはいるが、不用意な真似はするな。 念の為、陛下にも自分の行動を伝えておけ」
「・・・・・・はい」

そこまで説明されると、私は言われた言葉に納得するしかなく、陛下に最近は小島に足を運ぶことが多いと説明をした上で、翌日からは侍女と足を運ぶことにした。

桐に謂われた通り確かに見通しがいい分、付き従うことが出来ない警護の人は気が気じゃないのかと思いながら橋を渡り、いつものように菓子屑を亭近くにばら撒く。 直ぐにやってくる鳥に侍女が微笑み、傍に人が居ることに慣れてきた鳥たちに満足した。
これでいつでも陛下を誘って楽しませることが出来ると。
政務が立て込んでいて、中央殿にて宰相と供に地獄の耐久レースに参加していると李順さんが言っていた。 それが一段落したら散歩も出来るようになるだろう。 驚く顔が楽しみだと夕鈴は自分の思惑に満足していた。






翌日、朝から強風と共に重く黒い曇天が広がり、外へ出るのは無理な空模様となった。 
遠雷が聞こえるたびに侍女は怯え、あちこちの窓が急ぎ閉鎖され、雨戸や大きな立板まで用意され、嵐の到来に備え始める。 回廊の大きな燈籠外しに皆忙しく、飾られていた壷の移動、厩舎での世話もあり、早々に自宅邸へ戻る高官の姿も見られ、王宮全体が姦しかった。

「お妃様、本日はお早めに湯殿をお使い頂けますでしょうか」
「判りました。 回廊も暗くなりますしね、急ぎます」

そこまでして入らなくてもいいとは言えず、湯番のことを考えると急ぎ入浴した方がいいのだろうと足を急がせる。 回廊には葉や小枝が舞い落ち、強い突風に侍女が悲鳴を上げる。 申し訳ないと思いながら急ぎ脱衣場に入った時、大粒の雨が降り出し、雷が光った。

「きゃああああっ! 落ちますわ、雷が落ちますー!」
「大丈夫で御座いますか、お妃様っ!」
「ええ、私は大丈夫ですから、皆様はどうぞ落ち着いて下さいませ」

泣き叫ぶ侍女の声を聞き、夕鈴は急いで身体を洗い、急いで湯船に浸かり、急いであがった。 
脱衣所で怯え身を竦ませる侍女らを気遣いながら急いで着替え、足早に部屋に戻る。 その間にも幾度か雷鳴が響き、泣き叫ぶ侍女に声を掛けながら自分で湯上りの白湯を飲んだ。 
その怯えようは可哀想になるほどで、ここからの帰りは如何するのだろうと悩んでしまう。 
回廊にいる警護兵に声を掛け、侍女を部屋まで送るよう伝えると、彼女らは涙顔で問うて来た。

「お、お妃様はお一人で大丈夫で御座いますか・・・・・」
「ええ、大丈夫。 もう直ぐ陛下も来られますので御安心下さいませ。 それより夜になるともっと酷くなりそうですわ。 今の内に部屋へお戻りになった方がいいですから」
「しかし、陛下はまだお越しではありませんし・・・・・」
「直ぐに来て下さいますわ。 来ましたら皆様は下がることになるでしょうから、僅かの違いです。 雨風が強まる前に部屋へ戻った方が賢明です」

今は雷鳴より稲光より、実家の屋根の方が気に掛かる。 青慎は一人で大丈夫かしら。
物干し竿を家に入れたかしら。 水甕の中は充分かしら。 雨戸は閉めたかしら。
こんな時くらい、あの父親は家に帰っているかしら。 もし帰っていないことが後で判ったら、どうなるか承知でしょうね。 ・・・・・うん、大丈夫。 あの子はしっかりしているから。 

侍女さんが後ろ髪を引かれるように何度も振り返りながら、それでも雷鳴を気にして警備兵と共に去るのを見送り、部屋に戻ると夕鈴は灯りを増やした。 侍女さんが無事に戻った今、心配なのはボロな実家。 それと陛下のこと。

強い風と共に降り出した雨は叩きつけるようで、この天候で老木などは折れてしまうことだろう。 そんな中妃の部屋に来そうな陛下が気になり、夕鈴は窓を開けて浩大に声を掛けた。 雨具姿の浩大は直ぐに窓を閉め、困った顔で腰に手を当てた。

「侍女さん返しちゃったのかよ。 こういう日にこそ、忍び込む面倒な輩もいるからさ、オレは見回らなきゃならないのに、お妃ちゃん部屋に一人じゃ離れられないじゃんか~」
「ごめんなさい。 ・・・・そうか、忙しいのか。 陛下にね、今日はこっちに来ないでいいって伝えて貰おうと思ったのよ。 こんな天候の時に足を運んで風邪でもひいたら大変だから。 忙しいなら私が執務室に・・・・・ って怒られるわよね、逆に」
「それは怒られるだろうな~。 いいよ、伝えて来てやるよ」

申し訳ないと思い卓の菓子を浩大に渡すと、苦笑しながら、また窓から出て行った。
遠かった稲光が案外近くで光り、腹の底に響くような雷鳴が聞こえる。 侍女を早めに下がらせて良かったと安堵して、一人分のお茶を淹れた。

嵐が過ぎ去ったら、あの小島に急いで行ってみよう。 亭は壊れていないかな。 飛んで来た枝や葉で、片付けもしなきゃ駄目なほどになっているかしら。 また餌を撒いたら鳥は来てくれるだろうか。 折角、連日来てくれるようになったのに怯えて来なくなったら如何しよう。
陛下と一緒に行って、一緒に見るのを楽しみにしているのに。

つらつらと考えながら溜め息を吐き窓を見ると、また大きな稲光が見えた。 
この嵐が過ぎれば季節が変わり、暑い季節がやって来る。 侍女が夏用の衣装を整える姿を見て、その衣装で借金返済が叶うのではないかと心の中で悔しく思っていることは内緒にしよう。 
借金返済は心から望むことだが、それはバイトが終了し、王宮から自分が去るということ。 
もう少しだけ陛下の傍に居たいと思う自分と、早く逃げなきゃ深みに嵌ってしまうと思う自分が居て、時々自分の気持ちを陛下に告げたくなる焦燥感に襲われてしまう。

今だけ、このバイトをしている間だけは陛下の傍に居られる庶民。
立場と職を逸脱しないよう、いつか来る別れと覚悟をしなきゃならない自分。
次の臨時花嫁にも本性の小犬を見せるのかなんて、私には関係ないことだけど・・・・・・。


「・・・・あれ? 今、光った時・・・・」

窓から見える庭園の茂みに、一瞬の光の下、人影らしきものが見えたような気がした。








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:45:01 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
桐さんのぐりぐりという名の刑…を想像するたびにムフフとなってしまうのは、おかしいでしょうか?(笑)
浩大は陛下に恐れをなして夕鈴には極力触れないようにしてるのか、桐さんは何気にお触りが多いので萌えちゃいます!
2013-06-09 日 01:06:27 | URL | [編集]
Re: タイトルなし
コメントありがとう御座います。 浩大は本誌でも夕鈴へのお触りないですよねー。 なので、桐は妄想キャラなので、ばんばんぐりぐりさせています(いいのかー?) 萌えて頂けてうれしゅう御座います。
2013-06-09 日 01:08:40 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-06-09 日 09:09:21 | | [編集]
Re: 愛のムチ?
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 浩大も桐もしょっぱなから出てますが、陛下が出てない。あらら~。underで頑張りすぎて、さすがに疲労しているのか?(爆) 次からは陛下も出てきますので、お付き合いお願い致します。
2013-06-09 日 11:45:07 | URL | あお [編集]
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