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雨垂  2
under更新、完結してます。 今回は出来るだけ早々に・・・・ と思っていたのに、やはりあちらは滞りがちになってしまう。 拍手数がダントツで、嬉しいです。(爆)
こちらも今更ですが、桐を始めオリジナルキャラが登場します。 バイト夕鈴が頑張る話しです。 


では、どうぞ














浩大が言っていたように、こういう悪条件の時こそ忍び込む輩がいるのだろうか。 
急ぎ窓から離れて寝所の奥へ向かい、衣装が置かれている行李の奥へ身体を潜り込ませる。 息を詰め、行李の蓋を開けて衣装を取り出し、頭を隠すように乗せ蓋も乗せた。

見間違いであればいいと思いながら、身体は震えてしまう。 まさか本当にこんな悪天候の時に後宮に忍び込む刺客がいるとは思いもしなかった。 だけど確かに証拠を残さずに逃げ遂せるには悪天候の時こそ、条件がいいのだろうか。

外の激しい雨風の音が部屋にも響く中、それでも重いぎしりと床が鳴る音が聞こえてくる。 
寝所以外は灯りを燈したままだ。 そんな状況で部屋に妃が居ないのは逆に不自然だろうか。 
でも、もう動けない。 今自分に出来ることは息を潜めて、動かずに、祈ることだけだ。


ギシリ・・・・・


水の滴る音と共に、静かな足取りで入ってくる足音。 不用意に浩大を陛下の許へ行かせた自分が悪いのか、侵入してくる輩が悪いのか。 もちろん侵入者が悪いに決まっている。 
窓から稲光が見えたが首を竦ませている夕鈴は確認することもせずに、ただ息を詰めて祈るだけしか出来ない。 腹の底に響くような雷鳴に身が竦みそうになり、身体が動かないよう、声を出さないよう必死だった。 もし行李を除けられたら、もう逃げ場は無い。 
今更他の部屋に逃げ込めば良かったなんて思っても遅い。
そしてとうとう寝所の帳が静かに動く気配がした。 どうしよう。 ・・・・・・陛下!


「夕鈴・・・・・、もう寝てる?」


聞こえて来た声に安堵し、一気に汗が噴出した。 全身からは力が抜け、壁に凭れ掛かる。
しかし返答の声を出す前に頭に被せていた行李の蓋が乱暴に取り払われ、暗闇に慣れた目の前には稲光に映し出される大刀の切っ先が突き出されていた。 刀だと認識したと同時に、抜けたはずの緊張が瞬時に全身を駆け巡り、心臓が鷲掴みされたかのような恐怖に陥る。

「え? 夕鈴!? どうしたの、こんなところに隠れて!」
「・・・・・・ぃか」

大刀が消えると同時に、小犬の声と雰囲気に変わった陛下が私を抱き上げる。 目の前に迫った切っ先の恐怖に心臓が激しく鼓動を打ち、震えが止まらない私を居間の長椅子へと座らせると茶杯に水を用意し、差し出して来た。
震える手で受け取るも上手く口に運べず、陛下に静かに背を撫でられながら茶杯を口へと運ばれ一口飲み込んで、夕鈴は少しずつ落ち着きを取り戻す。

「あんなところに隠れるなんて、何かあったか? 誰かが侵入して来て逃げたのか?」
「・・・・・い、いいえ。 わからない、です」

怖かった。 最初は庭園に見えた人影と聞こえて来た足音が怖かった。 
そして陛下の声に安堵した後、突然目の前に突き付けられた鉄の鈍い輝きと、稲光と共に垣間見えた冷酷な表情。 それは狼陛下の迷い無き太刀筋と覚悟。 
あの瞬間、何かが断ち斬られたような気分さえ味わった。 
だけど陛下が抜刀したのは不審者に対して、だ。 
それでも・・・・ 自分に向けてではないと納得してさえ恐怖は拭えない。 もう考えちゃいけないと強く目を瞑り、夕鈴は落ち着くために、もう一口水を飲み込む。 

「・・・・・庭を見ていて、丁度雷が光った時、人影が見えたような気がしたんです。 陛下に伝言をお願いするのに浩大が離れていたから、もしかしたらって思って・・・・・ 隠れてました」
「伝言の件は浩大から聞いた。 でもこんな日に君のところに来ないなんて考えられないよ。 ・・・・・人影か、怖かっただろう? ・・・・でも雷より怖い目に遭ったから、それどころじゃないか」

少し落ち着いてきたと卓に茶杯を置き、陛下に視線を移す。 陛下が着ている外套はやはり濡れていて、雨の中、それでもバイトの許に来てくれたのかと涙が滲みそうになる。 
陛下と目が合って、優しげに首を傾けられた夕鈴は今度はさっきとは違う動悸がして来て、急ぎ手巾を用意するため立ち上がろうとして失敗した。 一歩足を進ませただけで、かくんっと力が抜け膝から床に倒れ込んでしまう。 

「夕鈴! 大丈夫かい? どうしたの? もしかして何か変なもの口にした? ・・・・それにどうして侍女が居ないのか。 もしかして悪天候だからと下がらせたのか?」
「あー・・・・、それはそうですけど、怒らないで下さいね。 もう就寝しようと思って侍女さんを下がらせました。 変な味のものは口にしていません。 今はちょっと力が抜けただけで・・・・・」
「僕が・・・・・ 怖がらせたから、だよね?」

床に崩れた夕鈴を長椅子に座らせ、未だ少し蒼褪めたままの君の肩をそっと撫でた。 すぐに大丈夫だと言う夕鈴は、項垂れそうな僕に笑顔を見せてくれる。


浩大から伝言を受けたが、勿論こんな天候時に夕鈴の許に行かないという選択肢はない。 
大臣らが早々に退宮したこともあり、李順も暴風雨に備えて王宮内の物品移動の指示に忙しく、今日の政務も早々に切り上げ、終わりを告げていた。 
そろそろ夕鈴の許へと思っていた時に浩大が現れ、やはり君が言いそうなことを伝言され、それならいっそ脅かしてみようかと静かに部屋に足を踏み入れることにした。
衝立から顔を出すと誰の姿も見えず、いつもより多い灯りが燈る中、部屋の中は静まり返っていることに不信感を走らせる。 佩いている物へ静かに手を掛け、床に目を落とす。 窓近くに水滴が落ちているが近くに雑巾が置かれ拭いた跡があるため、それは浩大が部屋に入った時のものだろうと推測された。 他に濡れた様子は見えず、窓が開いてる様子もないため、そのまま静かに寝所へと移動して行く。

寝所内は灯りもなく、窓布が途中まで降ろされているが誰かが侵入した気配はない。 稲光に映し出された寝台は誰かが寝ているものではなく、天蓋も取り払われている。 では、夕鈴は何処へ? まさか悪天候の中、外へ行くはずもないだろうと君の名を呟いてみた。
途端、壁際で何かが動く気配があり、抜刀してそれを薙ぎ払うと背後からの稲光に君の大きく見開いた瞳が見える。 行李の陰に身を竦めている君に驚き、急ぎ抱き上げた。 その瞬間、君の身体が強く震えたのが伝わり、胸が痛む。

「本当に、ごめんね。 ・・・・・危ない奴が潜んでいるのだと思って。 いきなり刀を向けられたら、それは驚くよね」
「い、いいえ。 すぐに声を出せば良かったんです。 それに浩大を不用意に陛下の許へ行かせた私が悪いです。 浩大は危ないからって言っていたのに。 ごめんなさい」
「・・・・・もう、僕のこと、怖くない?」

掠れた声に夕鈴が顔を上げると、思い切り耳と尻尾を下げた小犬が、肩まで下げてきゅうきゅうと啼いている。  思わず胸がきゅんっと締め付けられ、ふるふると首を振った。

「悪いのは私です。 それに陛下は心配して来てくれたのでしょう? もう怖くないです。 ただ驚いただけです。 ごめんなさい、助けに来てくれたのに怖がって」

夕鈴はそう言うと少し蒼褪めていた顔がぱっと変わり、頬を染めて手を握り締め僕を見上げて来た。 大刀を差し向けたことを申し訳なく思いながら、君の表情が変わったことに安堵する。

「人影を見たと言っていたね。 すぐにでも警護兵を増員するよう指示しよう。 嵐に紛れて入り込んだ輩だとすると危険も増すだろうし、ここまで入り込んだというなら君が狙いかも知れない。 今日はこの部屋で寝るのは止めた方がいいだろうな」
「そう・・・・ ですか。 では直ぐに移動しますね」

抜けた腰も元に戻った夕鈴はお茶の用意もそこそこに、急ぎ上着を羽織り直して寝所へと向かおうとする。 首を傾げて追い掛けると、夕鈴は寝所の掛け布を畳み、大判の布で丁寧に包み込んだ。 さらにそれを首から背に背負うと、枕を持ち、頭から大判の布を被る。

「・・・・・夕鈴。 その姿は何? 何処に行くの?」
「へ? いえ、ここでは危ないと言うから移動しようと思って。 立ち入り禁止区域のどこかで一晩過ごそうかなって。 あ、駄目でしたか?」

まるで下町の行商人のような姿で、寝所から移動しようとする妃を如何しようかと悩む。

「君が移動するのは僕の部屋に決まっているだろう。 忍び込んだ輩の人数も行動も知れないのだから、危険だ。 そんな時に君一人で寝かせる訳にはいかない」
「それでは、陛下も危険になるじゃないですか。 それにゆっくりお休みになれません。 ご政務で日々忙しいのですから、それこそ早くお休み下さい。 折角浩大に渡らないよう伝えて貰ったのに、雨の中足を運ばれて・・・・・ あああ、濡れたままじゃないですか! 風邪ひかないで下さいね。 手巾も渡さず、ごめんなさい!」

急に慌て出した夕鈴は被っていた大判の布を外して僕の髪を拭こうとした。 その手を掴み取り、背負った掛け布を外すと目を瞠って僕を見上げてくる。 脱いだ外套で君を包み込み抱き上げると、想像通りに君が叫び出した。 

「ぬぁ!? 陛下、なっ、何をするんですか!」
「言うこと聞かないお嫁さんを捕獲した。 僕の心配より、自分の心配をした方がいい」
「ですから移動をしようと・・・・っ! この外套濡れてるっ! 陛下、濡れちゃう!」
「もう、黙って」

外套の上から大判の布を巻き付け夕鈴が逃げられないようにしてから、回廊へ出た。 
いまだ激しい暴風雨が王都全体を包み込み、稲光や雷鳴が轟く。 
腕の中で夕鈴が暴れるけど、雷に驚いている訳じゃないのはわかる。 雷鳴が響く中、君が腕の中で 「陛下が濡れちゃうっ!」 と叫んでいるのが聞こえるが、君を濡らす訳にはいかない。 
全く、僕の心配もわからないなんて、この兎は。





足早に部屋に入り、女官に湯桶と手布を用意させる。 開放された夕鈴は申し訳なさそうに女官に勧められた席に座ったあと、眉間に皺を寄せて僕を見上げて来た。

「着替えてくるから、妃はそのまま待つがいい」
「・・・・・はい。 陛下もしっかりと拭いて急ぎお着替え下さいませ」

女官の前で、狼陛下だ。 君は逃げる訳にもいかずに大人しく妃らしく待つしかない。 
夕鈴の視線がそろりと卓へと向かうが、今日は大方片付いている。 陛下の仕事の邪魔はしたくありませんという逃げ道もない。 小さく笑みを浮かべて寝所で着替えていると浩大が窓から姿を見せ、眇めた視線を落とす。

「嵐の中、兎を捕獲ですか~? とうとう、その気になったのか?」
「・・・・部屋近くの庭園に人影があったそうだ。 雷光の中見えたと言う。 兎は寝所の隅で怯えていたから連れてきた。 至急他の隠密にも連絡しろ。 後宮まで忍び込む輩だ、慎重にな」
「・・・・ふぅん、嵐に紛れてか。 やっぱり、な。 ま、そういうことなら了解っす! 李順さんにも伝えておくか? お妃ちゃんがへーかの部屋で今夜食べられちゃうかもよって!」
「自分の胴体を床から眺めたければ、そう伝えるがいい・・・・・」

怒気を孕んだ声色に対し、明るい笑みを残して浩大が消える。 
全く・・・・・ 夕鈴相手にそんなことが出来るかっ! 今回は怪しい輩が侵入したというから連れて来ただけだ。 良からぬ考えよりも、ただ心配が先立った。
それに夕鈴から胡乱な視線で数日間に亘り見つめ続けられると思うだけで恐ろしくなる。

もう不用意に手なんか出さない、出せない。 
もし、少しでも手を出したら・・・・・ 今度こそ逃げられてしまう。

しかし、さて、今夜はどうやって過ごそうか。 

視線の先には寝台があるが、もちろん夕鈴が簡単に寝台に横たわることなど想像も出来ない。 
今の内に長椅子を叩き壊すか、水で濡らしてしまおうか。 でもそれなら床で寝ると言い出しかねないなと苦笑が零れてしまう。 本当に思うようにならない兎に翻弄される。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 21:42:02 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-06-10 月 22:33:44 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。あっちもどうにか片付き、ほっとしております。内容を忘れてしまいがちになるので、急ぎ仕上げようとするのですが、両方手掛けているとつい、あちらを後回しにしてしまいます。こっちもどう転ぶか、いつもの見切り発車ですので(爆)宜しくお付き合い頂けるものに仕上がるか不安です。(って、まだ初っ端やん) 宜しくお願いします。
2013-06-11 火 00:12:11 | URL | あお [編集]
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2013-06-11 火 07:51:07 | | [編集]
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2013-06-11 火 14:45:25 | | [編集]
Re: お言葉に甘えて…
makimacura様、コメントありがとう御座います。 今は少なくなった行商人の姿、御想像出来ましたでしょうか。(笑) 人影は次回登場する予定です。 underもごらん頂けて幸いです。そうです、瑠霞姫のところです。隣国蒼玉国ですし、苦手な叔母様。迎えに行くのも難儀で御座いましょう。その上、友好国で御座います。ほほほほほ。いい逃げ場が出来て良かったです、夕鈴。
2013-06-11 火 22:41:51 | URL | あお [編集]
Re: 色気ない会話(笑)
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 陛下の部屋での泊まりって今まで無かったですよね、本誌・コミックでは。あったら御免なさい。 一緒に寝れたらいいのにね~。 って陛下って淡白だな~と思う今日この頃。(爆) underもごらん頂き、余りの違いに笑えてしまいますよね。書く方は楽しいのですが(笑)
2013-06-11 火 22:44:07 | URL | あお [編集]
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