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雨垂  3
日曜日、大好きな声優さんの話を聞きに行って来た娘。 神と崇めるその方の話を激しいゼスチャーで、どんな講演会だったのか唾を飛ばしながら、どの程度の距離で話しが聞けたのか手振り身振りで、どんな内容だったのか泣きながら、止めどなく話し続けた。 ・・・・・一緒に行けば良かったぁ。 羨ましい。


では、どうぞ















連れて来たはいいが、思うようにならない兎。 
長椅子か床で寝ると言い出すだろうと予測出来るからこそ、困ったものだ。
政務が長引くから寝台に寝ていて欲しいという理由も片付いた卓上では無理があるか? 山と重なった書類でもあれば言い訳にも易いだろうが、まあ綺麗に片付いている訳ではないから言い訳はどうにでもなる。 夕鈴が長椅子でぐっすり眠った頃に寝台に移すのが妥当だろう。
頭の中で纏まった計画に取り合えず満足していると、隣室に居たはずの夕鈴が寝所へと顔を出した。 初めて見る僕の寝所に目を大きくさせ、そして僕の背後の長椅子を見ると安心したように微笑んだ。 女官に聞こえないように小声で話そうと、僕に近付き小声で囁きを落とすから思わず抱き締めそうになる。 ここで騒がれたら大変と、僕は急ぎ手を握り締めた。

「陛下は寝台をお使い下さいね。 私はこの長椅子で充分です」
「言うと思った・・・・・。 あー、僕こそ長椅子で慣れているから大丈夫だよ。 もう少し見ておきたい書類もあるし、先に寝台で夕鈴はゆっくり休んで欲しいな」
「それなら尚のことです。 お仕事された後に長椅子なんてトンでもありません。 私はここで休ませて頂きますからね。 大きな長椅子ですし、私には充分な広さです」

想像通りの君の台詞に苦笑が漏れる。 まあ長椅子で寝た君を寝台に移動させるのだから早々に横になってもらうのがいいだろう。 考えが纏まった僕は長椅子を君に譲り、寝所を離れることにした。 女官を下がらせ、形ばかりは仕事をしようと卓に向かうと、寝所からはパタパタと兎が寝床の用意を始める音が聞こえて来た。
兎はどのくらいで眠りに就くのだろうか。 雷にも動じない君に、離宮で一緒に寝たことがあるのだから、最初から一緒に寝ようと誘いの言葉を告げたいが、流石にそれには駄目だろう。
あの時は果実酒で酔っていたのと、他に移動する場所が無く、寒かったのだから仕方が無い。

兎が寝静まるまで急ぎではない書類に目を通していると遅い時間だというのに、李順が入って来た。 恭しく拱手しながら眼鏡を白く輝かせて卓に足早に近付いて来る。
思い切り厭な予感しかしない。

「陛下、お妃様が急遽こちらにお泊りになると伺いましたが・・・・・・」

ああ、全くもって面倒だ。 何故妃が王の部屋にいるだけで殺気立つのだろうか。 
いや、判ってはいる。 彼女はバイトだから間違っても手を出すなというのだろう。 
あの真面目な兎に手を出すように見えるのだろうか。 もし出したらどうだというのだ。 
出したら・・・・・怒って泣いて、そのまま王宮を去ることは想像に易いじゃないか。
 
奴の冷たい視線に嘆息を吐くと、李順が苛立ちを押さえずに大仰な嘆息を吐き返す。

「陛下・・・・・・」
「浩大から聞いて来ているのなら判るだろう。 後宮に何者かが侵入した。 不測の事態に対応するため、安全のために此方に連れて来た。 ・・・・・それだけだ」
「それは聞いておりますが、そのまま浩大が警護を継続するだけで充分ではないですか?」
「相手の人数と意図が判らないだろう。 多人数で襲われたら浩大一人では防ぎきれない場合がある。 ここなら警護兵も多いし、私もいる。 お前が心配するような懸念は必要ない」
「それでは夕鈴殿の部屋内にも警護兵を配し、安全を期しましょう。 ですから彼女を部屋に戻すべきです。 ご心配でしたら寝所に浩大を一晩控えさせるのはどうでしょうかね」
「何故、我が妃の寝所に私以外の男を置くんだ」
「彼女はバイトです!」

眉間に皺を寄せる陛下に李順はいつもの台詞を叩き付けた。 ああ、全くもって面倒だ。
毎回、毎回、毎回っ! ただのバイトにここまで執着し、あまつさえ部屋に泊まらせようとする。 一国の国王がバイト小娘に拘り過ぎだと何度忠告しただろう。 例え後宮に侵入者が遭ったとしても、それは警護兵や警備に廻っている隠密などの仕事範疇であり、陛下が小娘を気に掛けるのは遣り過ぎだ。 今後同じことが起きた場合、同様な対応が取れる訳ではない。

「後宮に忍び込んだ輩が捕獲出来、安全の確認取れるまでは一人には出来ないし、妃を他の男どもに守らせるなど、そんな噂が流れては狼陛下の名が廃るだろう」
「しかし・・・・・・」
「夫である私の許に、妻がいる。 それだけだ。 それを周知させるのも彼女の仕事だろう」
「彼女はですね・・・・・」
「女官も警護兵も我が妃がこの部屋に入ったのを目にしている。 今更この悪天候の中、妃を追い出すなど仲良し演技をするなら出来はせぬよな。 ・・・・判ったら、お前も早々に休め」

僕は心の中でガッツポーズを取った。 こうなったら絶対に、意地でも夕鈴と一緒に寝てやる。 
長椅子でぐっすり眠った夕鈴を寝台に移動させ、腰に手を回し腕枕して朝を迎えよう。
半ば自棄になってきたが、勿論一緒に寝るだけだ。 
それ以上手を出せば、逆に夕鈴の視線が恐ろしい。 怒って頬を膨らました夕鈴も可愛いが、酒に酔っている訳でもない夕鈴に手を出せば、『信頼』 も 『味方』 も立ち消え、嫌悪感たっぷりの涙目で睨まれ 『女ったらし』 だけが残るのは確実。 それだけは心底、怖い。

「・・・・ふぅ。 陛下のお考えは判りました。 では、私もご一緒致しましょう」
「・・・・・・な?」

言うが早いか李順は寝所へと向かって行く。 慌てて追い掛けると、強張った顔の夕鈴が長椅子に腰掛けていて、僕を確認すると静かに立ち上がった。

「あの、やはり御迷惑でしょうから今からでも部屋に戻って・・・・」
「夕鈴殿、話は聞こえておりましたね。 女官や陛下部屋周囲を警護する兵が貴女を見ております。 今からご自身の部屋へ戻ると確かに面倒な噂となりますでしょう。 悪天候のため心配の余り、妃を部屋へ連れて来た。 それは仲良し夫婦を演じる上では必要でしょう。 しかし貴女はバイトです。 万が一がないよう、私も同室させて貰うこととします」

決定事項だと一気に説明され、夕鈴は口を挟む余地がない。 大判の布を幾枚か手にして、背凭れのある椅子にどっかりと腰掛けた李順は表情を変えずに言い切った。

「では、夕鈴殿。 ごゆっくりお休み下さい」

常夜灯が仄かに寝所を照らす部屋に未婚の男女が三人。 もちろん 『ごゆっくり』 なんて寝られる訳がない。 それでも長椅子に横になり、することがないので目を瞑った。
暫くして陛下が細く長い息を漏らし、寝台に移動する音の後、衣擦れの音に続き掛け布を捲る音がして、その後それはそれは、大きな溜め息が聞こえて来た。

外は未だ雨風が激しく吹き荒れているというのに、寝所内は静かな、それでいて緊張感のある息遣いだけが満ちている・・・・・・・・・。







まんじりともせず夜が明け、女官が来る前に李順は早々に退室した。 
李順は着替えや食事のため退室したのだが、夕鈴はそのまま陛下と共に朝食を食べることになる。 上着を羽織っているが夜着のため、女官の視線が妙に恥ずかしい。 まさか側近を交えて、三人で一部屋にいたなんて思いもしないだろう。 ふつーに妃が陛下の許で一晩を過ごしたと思っているのだろうなと考えると、寝不足の頭が沸騰しそうで今すぐにでも逃げ出したくなる。 それなのに陛下はいつも通り、落ち着いた様子で食事を摂りながら狼陛下で笑みを浮かべるから、夕鈴は妃らしく演技をしなきゃならないのだ。

「後で君付きの侍女に衣装を届けさせよう。 天候は回復したが、嵐の被害報告が各地から集まると思う。 忙しくなるだろうから今日は部屋か老師の許で過ごすように」
「・・・・はい。 お忙しいとは思いますが、頑張って下さいませ」

狼陛下の微笑を朝からまともに受け、どうしたって頬が染まってしまう。 すっと動いた陛下の手が私の髪を捉え、指先が頬を撫でた。 朝から妖艶な演技を受けてしまい、笑顔のまま音を立てて固まった私は寝不足もあり、くらりと眩暈に襲われる。

「晴天となったが足元には気を付けて戻るように。 落ちている小枝や小石に足を取られぬようにな。 侍女が迎えに来るまではゆるりと休んでいるように」
「・・・・はい、ありがとう御座います」

それでも如何にか妃の微笑を浮かべたまま、遣りきった夕鈴はその後やって来た侍女に着付けされ、やっと部屋へ戻ることが出来た。 鏡越しの侍女らの盛大な笑みを見ないようにして髪を整えて貰いながら、ふと窓を見て昨夜の人影は見間違えではなかったのだろうかと不安が襲う。 


立ち入り禁止区域に行けば浩大や桐から話が聞けるかもしれない。 掃除をしながら聞けるものなら聞いてみようと思い、ふと気付く。 嵐の中、浩大たち隠密たちは自分の言った怪しい人物の影を探し続けたのだろうか。 寒い時期ではないものの、雨風の中一晩いたら体調も崩しやすいだろう。 
夕鈴はちょっと考えてから、花茶や菓子を多めに用意して貰い、老師の許で妃教育をして来ると足を運ぶことにした。 何か温かい差し入れをと思っても、忙しいと言っていた陛下や李順に厨房貸切りを申し出る訳にはいかない。 厨房に関わる人たちだって昨日の嵐で掃除や発注に忙しいだろう。
今度改めて温かい肉饅頭でも作ってあげようと、老師の部屋へ足を急がせた。

「老師、昨日はゆっくり休めましたか?」

後宮管理人の部屋に行く途中の回廊は、飛ばされて来た葉や小枝などの他、訳の判らない塵などもあり、かなり汚れが目立つ。 掃除のし甲斐があるわと思いながら老師の部屋を覗くと、腰を押さえてうんうん呻っている姿が目に入った。

「老師っ! 如何したんですか? ・・・・ぎっくり腰? 下手に動かすと痛いですよね」
「さ・・・・ 触るでない・・・・。 うぐぐ・・・・・」

どうしようと周囲を見回し、窓から浩大を呼んでみる。 忙しい時に申し訳ないと思うが、幾ら小さい高齢の老師といえど、一人で医局まで運ぶ自信はない。

「お妃ちゃん、オレ眠い・・・・って、じぃちゃん、また腰か?」
「そうみたいなの。 悪いけど医局へ運ぶのを手伝って欲しいんだけど」
「・・・・・隠密のオレとお妃ちゃんがじぃちゃんを運ぶってのは奇怪しいだろう。 あんたから離れるのは不安だけど、じぃちゃんをこのままにはして置けないしな・・・・」

うんうんと呻る老師は顔色も悪く、腰を押さえたまま悶絶している。 上着を掛け冷やさないようにするのが精一杯の夕鈴は、浩大を見て首を振った。

「私は直ぐに掃除婦の姿になるから、一緒に医局へ・・・・・」
「いや、着替えを待つよりオレが侍医を呼びに行く方が早い。 お妃ちゃんは動かない方がいいや。 桐は町の様子を見に行っていて居ないいから、じぃちゃんの傍から離れずに居ろよ。 念の為、警護兵もこちらに向かわせるけどね」

妃衣装のままなら警護兵が来ても問題ない。 直ぐに戻ると言った浩大からいつもにはない緊張が伝わり、夕鈴は昨夜の人影がまだ見つかっていないということと関連して、何かがあったのではないかと蒼褪めた。
部屋から浩大が出て行くと、老師が呻きながら 「悪いのぅ・・・・」 と涙声をあげる。
季節の変わり目であり、高齢でもある老師だ。 仕方がないことだろう。

「今、無理に動かないで下さいね。 直ぐに侍医様が来ますから」

嵐が過ぎ外は晴天となっているが、腰を冷やしては駄目だろうと夕鈴は上着の他、何か掛けるものは無いかと周囲を見回した。 卓の上には書簡や書類があり、棚の他、何か器具らしきものがあるだけの部屋。 老師から離れるなと言われている夕鈴は動くことが出来ずに、だけど痛みを訴える老師の何処に触れていいのか判らずオロオロしていた。 

物音がして警護兵が来たのかと振り向くと、そこには外の陽光を背に場にそぐわぬ黒衣の人物が立っていた。 夕鈴は老師を背後に動くことが出来ずに息を飲む。 静かに足を滑らせるように近付く人物に、頭の中は真っ白になり声も出ない。

「どうした・・・・? まさか・・・・・」
「ええ。 間が悪いことに、そのまさか、です・・・・・」

背を丸め蹲っていた老師がいきなり顔を上げ、途端悲痛な声を出す。 そっと肩を押さえ、夕鈴は首を横に振って動かないよう声を掛けるが、老師は床を叩き 「逃げられんか?」 と呻きながら尋ねてきた。
無理、というのは直ぐに判る。 逃げても呆気なく捕まるだろうことは間違いない。 浩大が居ない今、無茶をするのは無謀だと承知している。 それなら時間を稼ぐだけだ。

「えっと、刺客・・・・ ですか? それとも他の目的、なのかしら?」
「・・・・・狼陛下唯一を消して、後釜を狙いたい御方からの依頼だと言えば理解出来るか?」
「やっぱり、そうですよね。 でも、よくここまで入り込めましたね。 驚きました」

そこは心底感心した。 昨夜のことを陛下に報告し、いつも以上に警護体制が強化されているはずだ。 その中を掻い潜って来たとしたら、その腕前は確かなのだろう。 

「見て判るとおり、私の背後には高齢の老師が痛みで困っています。 それにここは後宮。 新しく後宮入りする妃を推奨するその方も、ここが血で穢れることは望んではいない事でしょう。 場所を移動するのはどうでしょうか」
「・・・・・・・・肝が据わっているな」
「ありがとう御座います。 では叶えて頂けますか?」

黒衣の人物は頤に手を当て、黙してしまった。 駄目だといわれて刃を出されたら、一巻の終わりだ。 浩大が戻って来るのが早いか、警護兵が来るのが先か、それともあっさりとやられてしまうのか。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 09:28:25 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-06-12 水 10:53:32 | | [編集]
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2013-06-12 水 13:48:11 | | [編集]
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2013-06-12 水 20:26:35 | | [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントありがとう御座います。 ラストの夕鈴かっこいいですか? ありがとう御座います。わーい! そんなに長くなる予定ではないのですが・・・・・ 段々自信が無くなって来ましたー(爆) お付き合い頂けたら嬉しいです(^^;)
2013-06-12 水 21:26:21 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。 寝所に李順さん。仲良く三人で一晩過ごしました~! どんな夢を見れたかな?李順さん。 自分で書いている内に夕鈴の可哀想さに「多事多難」を思い出す。そこまで立て続けになるかな~? うう~ん・・・・。
2013-06-12 水 21:30:11 | URL | あお [編集]
Re: 信用ない陛下…
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 李順さんは流石優秀です。きっとここまでやってくれると信じております。 いや、もうさせてますけどね。(笑) 明るい時間帯の刺客さん。老師が邪魔になって、さあ、どうしましょうか。
2013-06-12 水 21:32:04 | URL | あお [編集]
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2013-06-12 水 22:19:24 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。 どうしても陛下と同室就寝させたくなかったんです、私が!(笑) いやいや、最初はたまにはいい思いを・・・・  と思ったのですが、underの陛下のむちゃぶりに、こっちはいいか~となりまして(爆) さて刺客さんですが、やっぱり刺客だったら黒衣かなと思ったのですが、昼間設定なのをすっかり忘れてました。← 自分突っ込み! 鬼の男たち、私も見てみたいです!
2013-06-12 水 23:01:37 | URL | あお [編集]
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