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雨垂  7
碌に基本も立ち上げずに見切り発車したせいか、中途半端に長くなりそうです。 一応纏めてから載せた「多事多難」でさえ「19」の長さなんですから、見切り発車だと如何なんでしょうかね? (って誰に聞いているのでしょうか) でも、どうにか纏まりそうな予感がするような・・・・・気がするような・・・・・・・・。


では、どうぞ













「お妃、外に皆いるから、衣装のままで寝にくいだろうが早く寝ておけ」
「・・・・うん、そうする。 桐さん、怪我だけはしないでね」
「浩大もいるし大丈夫だ。 安眠妨害にならないようにはするから早く寝ろ」
「おやすみなさい・・・・・」

窓外から雨音に混じって、いつの間に戻って来たのか桐さんの声が聞こえた。
念の為に灯りを一つだけ燈して、寝台に潜り込む。 

そうだ、ぐちゃぐちゃ考えている場合じゃない。 明日も政務室に行くんだからちゃんと寝なきゃ。 雨の音が激しくなって、風も出て来たようだ。 
陛下も仕事早く終わるといいな。 刺客が来て余計な仕事が増えて、また敵が見つかって。
その内、休まる暇がない陛下を本当の意味で癒す存在が・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ああ、また振り出しに戻る!!
もう考えずに寝なきゃ、万が一の時本当に足手纏いになっちゃう!

寝台から起き上がり自分の想像を頭から振り払う。 少し水を飲もうと卓上の茶杯を持ち上げたところで、人の気配がしたような気がした。 桐さんが外にいるはずと思いながら手が、足が、身体が強張り、目だけで周囲を見回す。 寝所内では逃げる場所など入り口の他は窓しかない。 ここは後宮だ。 
陛下が渡る以外、普通なら女ばかりが集う女の園。 逃走経路など必要はないのだろう。
自分の心臓の音だけが部屋に響き渡っているようで、指先が痺れてしまいそう。 手にした茶杯が細かに揺れていて、水を入れる前で良かったと思った。 きっと手の震えで飲むどころじゃないだろう。 ゆっくり息を整えて、静かに卓に杯を置く。
こんな時に不用意に寝所入り口に近付いてはならない。 いきなり刺されたら事だ。
でも、このままじっとしていても、心臓が持たなくなりそう。 ど、ど、ど、どうしようか。
寝所を見回し、鏡台の上の簪を手にする。 
耳元にガンガンと音が響いて煩い。 きっと酷く緊張しているからだ。 
駄目だ。 こんな時に緊張していても上手く動ける訳がない。  

そう思って静かに深く深呼吸をして、閉じた目をゆっくりと開ける。 
寝所入り口に静かに足を進ませながら、胸に寄せた簪を握り直す。 下手なことをして囮が皆の足枷になってはいけない。 だからそっと確認だけして、その後に窓から桐さんを呼ぼう。 呼吸を整え、大声を出せるようにと自分自身を落ち着ける努力をする。

衝立からそっと向こうの部屋の音を聞く。 暫くすると小さくギシリと音が。
近くからの音ではないと判り、寝所の帳に手を掛けて、そっと窺うと、そこには見知った衣装の男性が長椅子に座っているのが見えた。

「・・・・・・・・へぇかぁ・・・・・」
「あれ、夕鈴。 起きていたの?」

目の前が薄暗くなり、途端に足から力が抜ける。

「夕鈴どうしたの、大丈夫?」

どうしたのって、こっちが聞きたい台詞ですよ、陛下。 
なんでそんなに軽い声? 
バクバクと心臓の音が耳鳴りのように頭に響き、床にへたり込んだ私の肩に触れる陛下の手の感触さえ不確かに感じる。 完全に腰が抜けた状態で、うるりと涙が溢れて来た。 
顔を上げると小犬顔の陛下が本当に驚いた顔で、肩を擦りながら 「ごめんね」 と呟き、私が持っていた簪をそっと手から取り外す。 強張った自分の手を見ると、酷く緊張していたからだろう、簪の跡が手の平にしっかりとついていた。

「そんなに怖がらせるつもりじゃなかったんだけど・・・・・。 まあ、驚くか」
「遅い時間ですのに、陛下・・・・・・」
「うん、こんな時間まで李順に捕まっていてね。 警備兵や浩大らがいるとは思ったけど、心配だから夕鈴の部屋で仮眠しようと思って。 寝ていると思ったから起こさないように静かにしていたつもりだったんだけど、逆に怖がらせちゃったね」

説明を聞き、やっと全身から力が抜けてきた。 深い溜め息を吐くと、肩を擦っていた手が背に廻り、あらっと思っている内に膝裏に手が入り、いつものように持ち上げられた。 
腰が抜けていたので抵抗もせずにいたら、寝台に腰掛ける陛下の膝上に居る自分に気付く。
遅い時間に、寝所で、陛下の膝の上で、自分の現状を知った途端に夕鈴は真っ赤になった。

「陛下・・・・・ あの、も、もう大丈夫です。 ほんと、す、こし・・・ 驚いただけで。 陛下もちゃんとお休みして下さい。 雨降ってる中、ここまで来たら風邪ひきますよ」
「僕のことは気にしないで。 それより夕鈴の方が風邪ひいちゃうよ。 薬湯も飲んでいるんだから、ちゃんと布団に入って・・・・ って着替えた方がいいよ? ああ、腕に傷があるから湯に入ってないのか」
「念の為、逃げる時用に着替えた方がいいと、先ほど夜着から着替えたんです」
「・・・・・・・・・・」

喋っている内に落ち着いてきた。 陛下が傍にいるってことだけで安心出来る自分が居て、それだけでもう泣きそうなくらいに嬉しいと感じてしまう。 
バイト期間だけの偽妃なのに、翻弄されてばかりの下っ端妃なのに、基本甘い対応ばかりとる陛下に甘えるのが普通になりそうで怖い。 プロ妃を目指しているはずなのに一人で立てなくなりそうで、先を考えることに怯えそうで、本音が口から零れそうで怖い。 陛下の優しさに慣れたら駄目だと思うほどに嵌っていきそうで怖い。

「陛下、様子を見に来てくれてありがとう御座います。 雨・・・ 降ってますよね。 敷布を被って戻られますか? 外套を着て来てますか? 風も出てきたので早く戻らないと」
「僕戻らないよ。 雨降ってるし、ゆーりんが気になるし」
「・・・・・はぇ?」
「それよりも夜着から着替えたって、何処で、いつ、ひとりで?」

あら、薬湯のせいかしら? なんかくらりと眩暈がした上に聞いちゃいけない言葉が聞こえたような気がするんですが。 もしかして・・・・ 戻らないと言ったのかしら?

「お仕事、は?」
「大方片付けた。 不審者が侵入したと聞き、我が妃が心配になった。 だが今夜は傍にいるから安心して眠るがいい。 ほら、薬湯も飲んでいるのだから掛け布を掛けて」
「・・・・・狼陛下で、なんで一緒に寝台に横になるのか判らないのですが・・・・・」

急に狼陛下の声色が耳元に聞こえ、身体が浮いたと思ったら寝台に寝かせられていた。 その横には陛下のドアップがあって、視線を何処に持っていったらいいのか頭の中は真白だ。 
近距離での狼陛下の声と顔は本当に困る。 
誰も居ない寝所で演技をする必要があるのだろうか・・・・・・・ いや、ありません!

「言っただろう? 不審者が侵入しているから夕鈴が心配だと。 そんな時、妃の傍にいない夫など、仲良し夫婦としてはおかしいだろう。 だから今夜は一緒の寝台で、妻を守りながら身体を休めようと思っている」
「・・・・・・ふ、不審者がここに来るまでに皆がきっと捕まえてくれますよ・・・・・」
「そう思っているが、君は二度も連続して狙われているから心配だ」

そこまで言われると何も言い返せない。 いや、でも寝所に一緒に横になるって・・・・っ! 
想定外の言葉と態度に、ぐらりとする頭の中を整理しながら、壊れる寸前の胸を押さえる。
夕鈴がやっぱり無理だと顔を上げると、そこには小犬がニコニコしながら髪を撫でてきた。 小犬陛下の柔和な顔に 『きゅん』 としそうな自分を叱咤して肘で後ろにずり下がりながら壁へと退がるが、にこやかな笑顔の小犬は距離を詰めてくる。

「いやいやいや・・・っ! 陛下、皆さんが一生懸命不審者を捕まえようとしてるから・・・・・ あ、あの・・・・ 皆様にお任せをして、陛下も早く休んだ方がいいと」
「うん、だから夕鈴も一緒に寝よう? 僕も疲れたし、気になって眠れないから夕鈴の傍がいいんだ。 離宮で一緒に寝たこともあるし、気にしないで」
「~~~~~~~~~~~~で、では、私は長椅子に・・・・っ!」
「駄目だよ。 刀傷を受けて薬湯も飲んでいる。 泥で汚れて身体も濡れちゃったでしょ? 風邪ひいたら大変だよ。 あ、枕元に刀を置かせてね。 さあ、早く寝ようか」
「あ、だから、あの・・・・・・。 う、嘘ですよね?」

うろたえる夕鈴を無視して天蓋を降ろされ、夕鈴は悲痛な声を寝台内に響かせる。

「あ、あ、あ、あー・・・・雨の中、風の中、陛下が来て下さったのは本当に、う、う、嬉しいのですが、り、り、李順さんにみ、み、見つかると・・・・・た、大変なことになるのは想像に易いと」
「大丈夫だよ、李順はこっちには来ない。 不審者に関わっている輩の調査結果が密偵から来て、それに取り掛かっている。 それに警護兵がたくさんいる今日、側近が夜に妃の部屋に来るなんておかしいだろう? それに政務も大方終わっていると言っただろう。 だから心配も問題もない。 突然あいつが来ることはないから、安心して眠ってね、夕鈴」

腰を取られ、掛け布の中に引きずり込まれる。 声にならない悲鳴は陛下の胸の中に掻き消され、そこで全身を抱き締められていると気付いた。

無理無理無理ですっ! 心配も問題も有り過ぎです! 
こ、こんなの嫁入り前の娘にしてはいけません!
なんで陛下は陛下は平気なの? 動揺する私がおかしいの? 
バイト妃はここまでしなきゃならないの? いつも抱き上げるし、抱きつくし、妖艶な笑みを浮かべて髪に唇を寄せるし、実家では壁に追い詰めて人のこめかみ付近に唇を当ててくるし、宿では寝台に移動させるのも・・・・・・・・ 陛下ってそういうの・・・・・ 慣れてる。

目が潤み始めたたのが自分でも判る。 
鼻の奥が熱くて胸が痛い。 気付くと指先が陛下の衣装に触れていて、握り締めたいと泣きたくなったけど、手を出したら気持ちまで零れてしまいそうで強く目を瞑った。 

こんなに近くに居るのに、なんて遠い人なんだろう。 

李順さんが境界線を弁えなさいと何度も繰り返し伝えてくるのが少しだけ判る。
間違っちゃいけない。 これは演技だ。 女ったらしの演技が上手なだけだ。
ここで演技する必要があるかどうかは別として、これは演技。 そう思わなきゃ、やっていられない。 だから目も口も堅く閉ざして耐えるしかない。

「夕鈴、寒いの? 少し震えているね」
「いえ、大丈夫です・・・・・ (逆に熱いくらいです。 茹ります)」
「寒くないならいいんだけど、少しだけ枕を抱いて壁際に居てくれる?」
「・・・・・・・・え?」

硬質の音が頭上でしたと思ったら、陛下は天蓋を捲くり寝台から出て行った。 
何か動きがあったと判り、言われた通りに急ぎ枕を抱き締めながら寝台の壁に張り付く。 寝所から出て行った陛下が隣で誰かに指示しているのが聞こえ、邪魔にだけはならないように小さく身を竦ませていると、直ぐに呼ばれて顔を上げた。

「お妃、もう終わった。 ご苦労さんだったな」
「・・・・・え? 刺客、やっぱり来たのね。 あのっ! 捕まえることが出来たの?」

寝台の奥から声を掛けると桐さんが 「ああ」 と短く返答してくれた。 雨風が強く吹き付ける中、外から微かに兵の声が聞こえて来て、確かに捕縛出来たのだとほっとする。 

「嵐があった日に侵入したと思われる刺客らは全て捕獲。 その背後を今後調査するが、依頼者が繋がっている可能もあるらしい。 明日、李順さんより話があると思うが、たぶん通常のバイトに戻れるはずだ。 ああ、老師も明日には管理人室に戻ると聞いた」
「・・・・そうですか、皆捕まったと。 老師も無事にぎっくり腰が治ったと。 ・・・・・・浩大とか兵の皆さんも無事なのね」
「ああ、無事だ。 だから衣装を着替えてあとは一刻も早く寝ることだな。 早く寝ないと大変な事態になるだろうから、親切に教えておくぞ」
「・・・・・・・・・・は?」

その言葉に違和感を覚えて天蓋を捲くると、目を細めて口角を上げている桐さんがいて、意味が判らないと夕鈴が首を傾げると手を上げて部屋から出て行った。 
床には水滴が滴り落ち水溜りを作っていて、寝台から降りた夕鈴は緩慢な動きでそれを拭き始めながら、大変な事態とは何だろうと眉間に皺を寄せる。

心臓がバクバクしてる。 何だろう、何があるというのだろうか。 大変な事態って、大変な事態って、早く寝ることと関係しているの?
明日、何か刺客に関して報告があるから早く寝ろって言うのかな。

不安だけが広がる中、床を拭き終えた夕鈴は衣装を脱ぎ夜着へと着替えることにした。
取り合えず、言われた通りに寝ることだけに専念して、明日目覚めてたら判るだろうと考えることを放棄する。 刺客は捕まったと言っていたのだし、李順さんは危険手当を出すと言ってくれた。 バイト妃がばれたとは聞いていない。
きっと自分が悪い方にばかり考えるから、桐さんの言葉も深読みしてしまうだけだ。
そうそう、気にしない方がいい。 あの人は人をからかうのを趣味にしているところがある。
気にしないで、安心して寝よう。



_____________ 大変な事態って何ーっ!?




窓から外を見ると暗闇が映り込み、鏡のような窓には水滴がたくさん付いていた。 叩きつけるような雨に水滴が流れ、こんな中皆が刺客捕獲のために動いていたんだと改めて気付かされる。 もう自分がすることは言われた通りに寝るだけだ。
不安いっぱいだけど、心臓バクバクで寝られるか判らないけど、寝るしかない。

夜着に着替え終え寝台に膝を乗せたところで、燈したままの灯りに気付いた。 もう安心して寝るのだから灯りは消そう。 勿体無いものね。
そう思って夕鈴が灯りを消そうとした瞬間。


「夕鈴、まだ起きていたの? やっぱり添い寝してあげるね!」


夜に相応しくない、陛下の爽やかな明るい声が寝所に響き渡った。





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 02:30:01 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-06-19 水 03:14:04 | | [編集]
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2013-06-19 水 06:22:35 | | [編集]
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2013-06-19 水 09:17:07 | | [編集]
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2013-06-19 水 19:50:24 | | [編集]
Re: タイトルなし
らぁ様、コメントありがとう御座います。 二度目のチャンス到来。陛下の政治手腕が発揮出来るか、乞うご期待? マジに暑い日が続いていますよね。 クーラー大好きなので、外に出るのがすごく厭な時期です。 犬のせいにしてクーラーつけることもしばしば。 今からコレで大丈夫でしょうか、私。
2013-06-19 水 21:15:18 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。次の話には桐を出します!! 次には桐に頑張って貰いますから~。 今回はすいません(汗) 陛下がどうするか、まあ・・・・・・ね。 はははは。 きっとご想像通りだと思います。
2013-06-19 水 21:33:22 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。 そうそう、除湿替わりと犬のためという大義名分の元、使用してますよ~。本屋とかスーパー行くと思わず涼んでしまいますよね、この時期。 ヘタレ陛下の頑張りは如何に?なんですが、まあ、陛下ですし、夕鈴ですよ。ははははは。すれ違いと勘違いと疑いが上手な夕鈴で御座いますしね。そのすれ違いが好きなんですが。
2013-06-19 水 21:48:49 | URL | あお [編集]
Re: 眠れないね~(^_^;)
ダブルS様、コメントありがとう御座います。 そうなんです、あっさり刺客捕縛されちゃって、ぎゅううしたのもつかの間で御座いました。 可哀想? にへっ! 桐さんの台詞は殆どがからかいでしょう。そういう人です。からかうことに生きがいを感じていらっしゃいます。ちゃんと仕事はするでしょうけどね。(酷い設定)
2013-06-19 水 21:54:44 | URL | あお [編集]
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