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頑固な迷路  3
オリジナルキャラの桐さんに温かいコメント、たくさんありがとう御座います。感無量で御座います。揉め事引き寄せ体質として登場の夕鈴にはもっと頑張ってもらおうと思います。桐の台詞のために。
今月号は激萌えで御座いました。 もう~~~~、じたばたしちゃいますね!!

では、どうぞ














翌日、朝からすこぶる天気が良かったので侍女さんと庭園を散策し、花を摘み部屋に飾ろうと歩いていた時、会いたくも無いのに方淵とばったり顔を合わせてしまう。 途端、眉間に皺を寄せた彼は厭なものを見たとばかりに口元を歪めるのが判ったが、夕鈴は落ち着いて精一杯の妃スマイルを浮かべた。

「御機嫌よう、方淵殿。 陛下もあと二日でお戻りになりますわね。 お戻りになったら政務室の皆様もまた忙しくなるでしょうね」
「陛下が不在でも己が出来ることを其々が邁進するだけだ。 まあ、貴女が政務室に顔を出さずにいるので精神的に楽に過ごせているがな」
「・・・・・陛下がお戻りになりましたら、まだ足を運ばせて頂きますわ」

夕鈴が口元に団扇を宛がい、ほほほほと乾いた笑いを零していると、方淵の背後をあの官吏が歩く姿が目に入った。 思わず目を瞠って固まると、方淵が訝し気な視線を向け、何を見ているんだとばかりに背後を振り向く。 妃らしからぬ表情を見た方淵の呆れたような嘆息を耳にするが、夕鈴はそれどころじゃない。 急ぎ方淵に近付き、視線だけを官吏に向けて問い掛けた。

「方淵殿。 ・・・・あの人って見たことの無い官吏ですが?」
「それは貴女に教える必要のないことだと思いますが」
「そ、それはそうでしょう・・・・ね」

ばっさりと斬り捨てられ、夕鈴は確かにそうだと項垂れるしかない。 
王宮に従事する官吏の名前や身元など、下っ端妃が知ろうとしてどうするのだと言われると、返答の仕様がない。 夕鈴がそれ以上は聞けないわよねと、渋々唇を結んで離れようとした時、方淵が嘆息と共に呟いた。

「臨時補佐官として最近地方州より出向してきたと聞いている。 名までは知らぬ」
「あ、ありがとう御座います、方淵殿!」
「くれぐれも余計なことはしないように! 貴女に何を言っても無駄だとは重々承知だが、一応勧告しておくぞ」
「・・・・・・ええ」

そう言い捨てて方淵は書庫のある方向へと去って行く。 
折角お礼を言ったのに、方淵の最後の言葉で夕鈴の笑顔が強張る。 それでも彼がどういう人なのか判っただけ良しとしよう。 そうか、来たばかりの人なんだ。 それなら私も知らないはずだと、去って行くその官吏を見ていると、彼が後宮近くの回廊へと歩みながら周囲を確かめているような素振りに気付いた。 

確かその先は水替えで通る回廊近くだと知った瞬間、夕鈴は眉を寄せてしまう。

もしかして今からあの場所へ彼は行くのだろうか。 
約束の時間は昼餉を過ぎた時刻のはず。
まだまだ早い筈なのに、まさか、でも。

桐と話しをして、もう彼には会わない方がいいと決めた。 
官吏が立ち尽くそうが、約束を反故されたことに立腹しようが、夕鈴のバイトがばれる方が一大事だ。 それに地方から出向して来ている人なら、短期間で王宮から離れることだろう。
二度と会わない方がいいに決まっている。

______そうした方が良いに決まっているんだけど。



「あの、これから老師のところに出向きます」
「ではお妃様。 宦官を呼びますので、少々お待ち下さい」
「あ、はい・・・・」

昼餉の後、立ち上がった私をやんわりと侍女が止める。 
そうだった。 部屋から出る時は誰か付き添いを付けることを厳命されている。 老師の許に行くのに侍女の付き添いは無理だから宦官姿の桐さんをと。 言われた通りに部屋で待っていると、拱手した桐さんが冷ややかな笑みで入り口に姿を見せ、ゆっくりと低頭してきた。

怖いっ! 怖いです、桐さんっ!

「後宮管理人、張老師の許へ行かれるとのことで迎えにあがりました」
「え、ええ・・・・。 少し御指導を願いたいと思いまして」

顔を上げた桐さんの表情に呆れ果てたような表情が浮かび、私が何を考えているのか承知だと謂わんばかりで居た堪れなくなる。 だって、あの人、絶対にあそこで私を待つだろう。

歩き出して直ぐ、ひと気が無いことを確認した私は我慢出来なくなって口を開いた。

「き、桐さん。 あ、あのですね、やっぱり約束を違えるのは申し訳無いというかですね。 一度謝罪をして直ぐに戻ります。 一介の掃除婦が官吏を待たせっ放しで放置するというのも申し訳ないし、これで最後にしますからっ! あとは大人しく部屋に居ることにしますから! あと二日で陛下もお戻りになりますし、面倒ごとなど起こさないようにしますから!」
「・・・・・お前は自分が何をしようとしているのか判っているのか?」
「何をしようとって、だから約束を」
「お前の約束は陛下との約束だけにしろ。 許可する訳にはいかない」

立ち入り禁止区域に入り、桐さんの表情が冷たく変わる。 少し眉間に皺が寄った顔と突き放したような言葉に夕鈴は項垂れそうになり、それでもと必死に食い下がった。

「でもあの人、ずっと立ちっぱなしで待ちっぱなしだったら可哀想だと」
「勝手な約束だ。 ある程度時間が経過したら官吏としての仕事があるのだから、奴だって戻ることになるだろう」

それはそうだ。 掃除婦との約束よりも政務仕事の方が大事に決まっている。 
桐の言うことに間違いは無いのだが、どうしても夕鈴は腑に落ちない。 唇を噛んだまま夕鈴が言葉を捜していると、大きな、それは見事なまでに大きな溜め息を吐かれた。 
その桐の肺活量に驚いて夕鈴が顔を上げると、ガシガシと頭を掻きながら逡巡しているような表情が見え、目を瞠るとぐしゃぐしゃに頭を掻き回される。

「ぬぉ!? な、なによ!」
「・・・・・今回限りにしろよ。 約束通りに謝罪をしたら直ぐに離れること。 きっと男の機微など、お前は考えもしていないのだろうからな」
「桐さんの言っている意味は判らないけど、言われた通りに直ぐに離れます!」
「意味は判らないか。 ・・・・これでは陛下も苦労される訳だな」
「あの、それってどういう意味なのか教えて欲しいのですが」

眉を寄せて桐さんを見上げるが、返答は無い。
私が陛下に何を苦労させているのだろうと訝しむが、きっと答えてはくれないだろう。 そういう人だ、桐さんは。 それよりも取り合えず約束の刻限が近いから、急いで着替えることにした。 
短時間で素早く謝罪を終わらせるようにしなくては、桐さんからいつまでも苛められる上に、陛下に何て報告されるか判ったものじゃない。 これ以上自分の首を絞めるのは得策ではないことくらい承知している。



足早にその場所に向かうと、約束の刻限より随分前だというのに既に官吏が所在無げにウロウロとしており、その姿を見て夕鈴はこれから何を言われるのだろうと背筋に厭な寒気が走り、正直逃げ帰りたくなった。 

「お、お約束通り参りました。 あの、昨日のこと、もう一度謝らせて頂きます!」

それでも急ぎその場に膝をつき、拱手して低頭し謝罪した。
すると何故か目の前に官吏が跪き、拱手した腕を掴むと上へと持ち上げて夕鈴を無理やりに立たせ、じっと顔を見下ろして来る。 その顔には深い安堵が広がっているのが判り、約束通りに来て良かったと夕鈴は小さく息を吐いた。

「謝罪はもういい。 約束を違えなかったので赦す」
「は、はい。 ありがとう御座います」

官吏との約束を無事に済ませることが出来、では失礼致しますと御辞儀をして帰ろうとするのだが何故か掴んだ腕を放してはくれず、夕鈴は首を傾げて尋ねた。

「あの・・・・。 何か御用でも御座いましょうか」
「約束通りに来て、それで終わりと思ったか?」

言っている言葉の意味が判らず、夕鈴は目を瞠って更に首を深く傾げた。 
約束通りにこの場所に来たら終わりじゃないのかと。 
それにたった今、赦すと言ったじゃないか。 
昨日、他にも何か言われたかしらと額を押さえようとしたが腕を強く官吏側に引っ張られ踏鞴を踏んでしまい、夕鈴は叫ぶように懇願した。

「も、申し訳御座いませんが! 仕事に戻らなければなりませんので手をお放し下さいませ! 途中抜け出してきておりまして上司に怒られてしまいますっ!」
「上司とは言っても一官吏には逆らえまい。 いいから、少し付き合え」
「はぁ? いえ、あの人だったら逆らえるような気がするんですが」

掃除婦姿の私を何処へ連れて行くんだと瞠目していると、官吏が舌打ちしながら急ぎ場を離れようとする。 引き摺るように先を急ぎ、回廊を移動しようとするから夕鈴は必死に足を踏ん張り抗うが、文官といえど男の力には敵わない。
やっぱり不敬だと処罰を受けることになるの?
でも、地方州から来たばかりの臨時補佐官だって方淵が言っていた。
そんな来たばかりの人が、例え掃除婦であっても、王宮に従事する人間に対して勝手に処罰など出来る訳がない。 そう頭では判っているのだが、彼の考えが解らないから恐怖に身が竦んでしまう。

「すいませんが掃除途中なんです! お願いで御座います、お手を!」
「直ぐに済むから文句は言うな」

文句を言っているつもりは無い。 やはり桐の言う通りに足を運ばなければ良かったのか。 
この官吏は何をしたいのか。 謝罪はいいって言ったのに何処に連れて行く気なのか。



「如何されましたか。 その掃除婦にどんな御用がありましょうか」
「・・・・・っ!!」

涙目の夕鈴が聞き慣れた声に振り向けば、そこには水月さんがいて、既に政務室に程近い場所まで連れて来られたのだと判る。 掴まれた腕のまま拱手した夕鈴は急ぎ低頭して、水月さんに顔を見られないようにしたが、心臓は破裂寸前。 
次から次へと目まぐるしい状況が展開し、もういっぱいいっぱい。 
更にこれで水月さんに気付かれたら・・・・・・もうクビ決定だ。

「あ、・・・・いや。 宛がわれている部屋の掃除を頼もうかと思い、連れて行こうとしているところだが、何か? ・・・・ごほん、貴殿は確か」
「私は補佐官をしております、氾水月と申します。 王宮側に立ち入れる掃除人は管轄が別ですので、その者を連れて行っても近衛兵に止められましょう。 急ぎ別の者を向かわせますが」
「・・・・・そうか。 氾殿、知らなかったゆえ申し訳ない」
「掃除婦の貴女は担当場所へ戻りなさい。 こちらへは立ち入りを禁じられている筈です」
「・・・・は、はい゛・・・・」

急ぎ声色を変えて、夕鈴は顔を俯かせたまま足早に後宮側へと立ち去ることにした。 
震える手で胸と眼鏡を押さえながら顔を隠し、振り返りもせずに一目散に。



水月さん、いい所に来てくれてありがとう御座います。 本当に命の恩人です。 紅珠がこの先、どんな想像を広げても、どんな話を書いても、私最大級の笑みで褒め称えますから! 
本当にありがとう御座います、水月さん!


・・・・・・例え、早退のために偶然そこを通り掛っただけだとしても。








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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:25:03 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-06-25 火 01:38:13 | | [編集]
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2013-06-25 火 06:20:03 | | [編集]
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2013-06-25 火 07:07:54 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントありがとう御座います。 うん、純真無垢なあほ・・・・合ってます。(笑)方淵を出したので、どこかで水月を出したいと思っていたので良かったです。出番があって。本誌、本誌、すごいですよねー!もう、どうしたの陛下!! 来たー!! ですよね。 もう、ニヨニヨしながら、何度も読み直し!! 李順さんの動揺っぷりに興奮です!
2013-06-25 火 07:43:15 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントありがとう御座います。水月さんフラリと出せて良かったです。夕鈴がコレで終わる訳が無い?終わったら寂しいですよね(爆)もう少し頑張って貰います。
2013-06-25 火 07:47:26 | URL | あお [編集]
Re: 胃潰瘍&円形脱毛症…
ダブルS様、コメントありがとう御座います。なんやかんやと愛される夕鈴って可愛くて仕方がない。だって夕鈴だものね。モブの侍女さんの温かな笑みも見ていて好きですし、何だかんだと話し掛けてくる方淵も大好きです。水月も出せて良かったです。早く浩大も出したいっす。
2013-06-25 火 07:53:36 | URL | あお [編集]
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