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靄の中で悩む夜

そのまんまの題名です。いつもタイトルに悩みます。 最後につける事が多いので、毎回産みの苦しみが! 久し振りの短いお話。 ちなみに私は平気です。夕鈴並みに対応出来ます。^^


では、どうぞ










侍女さんたちに貧相な身体を見られる。 ましてや跪き洗ってもらうなんて無理。
庶民である自分が、人に傅かれるのにも限界がある。

湯船の中でのんびりと四肢をのばして伸びをする。 湯殿の外には侍女が控えているが、中までは入らないで欲しいとお願いしているため、湯船で足を伸ばそうが、泡だらけになろうが、ここでは一人。

浩大だって此処までは顔を出さない。 (出したら大変!)
そのことにも満足しながら、ゆっくりとお湯に浸る。
侍女が関わるのは入浴剤。 今日は 『秘湯・一夜の夢の瞬き』。
・・・・意味が解からないけど、良い香りに包まれて夕鈴は至福の時を過ごす。 湯船の中で手足を伸ばすと、掃除婦の疲れも妃演技の疲れもお湯に溶けていくようだ。 
6人でも7人でも一緒に入れるほどの大きな湯殿に 今は一人で足を伸ばす。 こんな湯殿が後宮には数箇所もある。 もっと大きな規模の湯殿もあり、夕鈴が入っている湯殿は、時の陛下と妃が二人きりで楽しんだものと聞いたことがある。

「なんて贅沢な・・・・」

湯から出て体を拭きながら勿体無いことだと夕鈴は思った。
部屋にも簡易に汗を流せる用意はある。 いつもはそちらを使用しているが、陛下が後宮に訪れると先触れがある時は侍女がこの大きな湯殿を用意してしまう。 侍女の期待に満ちた視線に耐え切れずに、その都度湯殿を用意して貰うのだけど、やっぱり居た堪れない。

「贅沢過ぎるのよ! 全てにおいて、全く・・・」

湯煙で周囲が霞む中、備え付けられている椅子に腰掛けて髪を拭こうとした。
その時・・・・





闇に侵食され始めた時刻、生暖かい風が陛下の髪を攫う。
もっと早くに夕鈴の部屋に顔を出そうと思っていたが、宰相に捕まり遅くなった。 執務室に戻り溜め込んだ書簡に目を通す内、苛立ちが増したのに気付いたのか、李順が溜息を吐きながら 「仕方ありませんね」 と呟きを落とす。

「一度後宮に顔を出し、休息を取ってから政務に戻って下さい。 いいですか、陛下! 必ず戻って来て、今夜中にこちらの書簡全てに目を通すのですよ、わかりましたか?」

ぱあっと表情を明るく輝かせて盛大に尻尾を振る陛下に、李順は疲れ果てた溜め息を零す。 絶対ですよ、と釘を刺そうと思った時には、陛下はすでに執務室から姿を消していた。
残された側近は、戻る可能性が低いと知りつつ、それでも願わずにはいられなかった。




浮き立つ心と共に陛下が後宮へと足を早めていると、女人の悲鳴が微かに聞こえた。
腰に佩いた刀身を確認すると、陛下は声の方向に走り出す。 すぐに廊下に震える侍女を確認した。 場所は湯殿か! ここは浩大だけではなく、警護兵も他の隠密も、そして自分すらも入れない場所! こんな場所で狙われたのか、夕鈴!

「あっ! 陛下・・・! お妃様が!」
「中だな!」

蒼褪めた顔の侍女に眼もくれず、脱衣室へ足を踏み入れると息を詰めて辺りを窺う。 
耳に湯殿から湯が流れる音と、夕鈴の声が・・・・・。

「逃がすか!! この、この、この~~!」

バシッ! バシッ!

「飛ぶな! ・・・何処行った? 絶対逃さないから~~!」

バシャッ、バシッ!


荒い息遣いと何かで何かを叩く音。
・・・何者かに急襲された様子ではないなと、陛下はそっと湯殿の中を進む。 
湯煙が充満しており、全てがぼやけて見えた。 それでも目を凝らし続けると、白色の湯煙の中に肌色のモノが動いているのがわかる。 たぶん、それが夕鈴だろう。 ぼんやり霞む湯煙の向こうで、屈んで何かに狙いをつけたのか、夕鈴がぴたりと動かなくなった。
湯煙が邪魔と思い、静かに近くの窓の紐を解いた。 紐は湯殿全ての窓に連動しており、捲かれた紐が短くなると開放された窓から湯気が勢いよく外へと流れていく。 外の冷気が入り込み霞が晴れていった。

「え? なに? 寒っ! へ、陛下~??」

急に消えていく湯煙に驚いた夕鈴は振り向き、陛下の姿を捉える。 帯刀していた刀から手を離して、洗い場奥に佇む夕鈴に近付いた。

「あの・・・・ 夕鈴、一体何があったの?」
「え? あっ! どこ、どこに行った?」

陛下の言葉に瞬時に反応し、夕鈴は腰を落として敵を探し始めた。 その動作でどんな 「敵」 か解かった気がする。 それよりも・・・・・。

「夕鈴、えっと・・・、その・・・」
「何ですか? 居ましたか? 居たら教えて下さいね! アレは一匹居たら、その背後に少なくても三十匹は隠れているんですから! 絶対に許さない!! 見つけて殺処分よ!」
「見つけたらって・・・・。 あの、夕鈴・・・」

湯煙が消え、洗い場に伏せられた桶の陰に隠れていた 「敵」 を発見する。
夕鈴は昏い笑みを浮かべ、手に持った布靴を軽く持ち直し、敵に静かに近寄っていった。
集中し、腰を屈め、狙いを定め・・・・・ スッパーンッ!!!

「やった!! 仕留めた!」

夕鈴はすごっく嬉しそうな顔で早足で脱衣室に消えたかと思ったら、布を持ち戻って来た。 その姿を眼にして、陛下は慌てて視線を逸らす。 「敵」 を消し去り満足した夕鈴は、殺処分に使用した布靴をどうしようかと思案し始めたようだ。 夕鈴に 「それは捨てること!」 と告げると、小さくブツブツ言うのが聞こえてくる。

「・・・・洗ってもダメかしら?」
「駄目だよ、夕鈴。 とにかく、手を洗おうか。 ・・・・えっと、疲れ様です・・・・」
「陛下のお陰です! 窓を開けてくれたので上手く発見出来ました。 良かったぁ」

明るい声の彼女。 きっと 「敵」 を撃退出来て満足した良い笑顔なんだろうな。
余所を向いたままの僕に不思議そうな声で夕鈴が訪ねてくる。

「陛下? どうされましたか?」
「・・・いや、僕は大丈夫。 それより夕鈴はもう一度湯に入った方がいいね。 湯冷めしちゃうから。 あ、ソレは僕が片付けるよ」

足元に置いてと、告げられ夕鈴は自分の足元を見る。 あら、裸足だ。
そうだった。 湯上りに 「アレ」 を見つけて湯殿に追いかけて、追い詰めて・・・・。 侍女が長湯だと心配して来てくれたけど 「アレ」 に気付くと叫びながら逃げて行って・・・・。
・・・・・湯冷めしちゃうって・・・・・
陛下の心配げな言葉に、ふと、自分の身体を見ると体を拭こうとした時の大判の布が簡衣のように巻き付けただけの・・・・。 真っ赤な顔で、恐る恐る顔を上げると、陛下は自分に背を向けて立っているのがわかる。 なのに気配に気付いたのか、陛下が振り返るから・・・・。

「ぎゃあああああああああああっ!!」
「わっ、夕鈴、落ち着いて! 見てないからっ! 見てないから!」

夕鈴は湯殿に飛び込むと頭まで浸かり、そのまま奥の壁際にビシッと貼り付いた。 バシャバシャッと水面が叩かれる音がして夕鈴が身悶えしているのが解かるが、叩き続けさせる訳にはいかない。

「ゆーりん、見てない! 本当に見てないよ! 湯煙がひどくて、何も見えなかったから安心して。 悪いけど、侍女が居るから余り大きな声は・・・出しちゃ困るから」

その言葉が夕鈴の耳に届いたのだろう。 夕鈴の手が湯面から離れたようで水音が止んだ。
「のぼせないでね」 と声を掛けて、布に包まれた 「アレ」 を持ち湯殿を出る。
廊下で怯えている侍女に、新しい浴衣と浴布、布靴、白湯の用意を指示し、そして、きっとのぼせるまで入っているだろうなと思い、温まったら直ぐに出るように追加の指示を出す。
陛下が持っている 「アレ」 に怯えながら、侍女は拝礼して用意のために走り去った。
場所が場所だけに警備兵も近場で躊躇していたようだ。

「大事無いでしたでしょうか? 陛下がいらしたので・・・良かったですが」

場所が場所だけに躊躇われました、と言われた。 私が居ない場合は 『緊急事態対応』 として警備兵が、または浩大が湯殿に突入していたのだろうか。 
・・・・いや、するしかないのだろうな。 しかし、・・・・あの姿を他の男に見られるなんて!
お前らには絶対に見せない、見せられない! 私だってうっすらとしか確認していないのに。
・・・じっくり見たら・・・今まで通りの演技が出来なくなる。
急に冷気を帯びた陛下に怯えながら、手渡された布を受け取る兵。

「・・・湯殿での刺客だ。 処分しておけ」
「?? ・・・・はっ!」


大判とはいえ布で簡単に捲かれただけの夕鈴の姿態。 
寄せられた胸の谷間も、くびれた腰も、普段は絶対に見られない四肢も、濡れてまとめられた髪に項も・・・。 湯煙の中から、くっきりと浮かび上がっていた。
屈んで 「アレ」 と対峙していたから本当にどきどきした。
しかし、夕鈴は平気なんだな。
通常女性はみんな、嫌いなんだと思っていたけど、流石僕のお嫁さん。

まあ・・・あの家では夕鈴が強くなるしかないんだろうな。
すばしっこいから追い詰めるのが大変だったろうに。
何処でも発見と共に急いで追い詰める。 だから湯殿でも・・・・。


暫らく逢わない方がいいのか、それとも平気な顔で逢えば良いのか。
陛下も夕鈴も悩む夜となった。



ゴ〇ブリのせいで。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

短編 | 07:57:00 | トラックバック(0) | コメント(0)
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