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頑固な迷路  7

いや~、最近中学から連続4年目の図書委員娘が運んでくる本にドはまりしておりまして、毎夜遅くまで読み耽っております。目の下の隈隠しが大変。(笑) 


では、どうぞ












その後浩大が姿を見せ、李順より 『おやつ』 は未だ持って来るなと告げられ、そのまま臨時補佐官を調べて来ると消えて行った。 包子を蒸し終えた夕鈴は片付けを終えて、さてどうしようか悩んだ。 
書庫で片付けをしようかと思ったが、件の彼に会う懸念があると止められた夕鈴は侍官姿の桐と後宮へ戻ることになる。 四阿での御茶も無くなったので、包子を持ち老師の許を訪れると浩大が片手をあげて待っていた。

「お妃ちゃん、待っていたよー!」
「浩大、あれ? 調べるって言っていたのに・・・・・」
「小僧もさっき来たばかりだぞ。 それより美味そうなモノを持参したのぅ」

老師がお茶を淹れている間に温かい包子を皿に乗せ差し出すと、早々に浩大が手を伸ばす。

「陛下は鬼の形相で書類の山を崩しているけど、五日分の山って、そう簡単には崩れないよな~。 李順さんが次から次へと運んで積んでいるしさ。 このままじゃ、その内に切れて逃走するか、逃走後に宰相の部屋に閉じ込められるかじゃね?」
「はははは・・・・。 李順さんなら容赦なく実行するでしょうねぇ」
「その李順さんから夕刻近いから、お妃ちゃんは後宮に戻って明日は掃除でもしてたらってさ。 あ、水汲みはオレがしておいたよ」

振り向くと二つの水桶が用意されており、既に水が入っていた。 
では明日は朝から掃除でもしましょうかと納得すると浩大が声を掛けて来る。

「そうそう、あの臨時補佐官だけどさ、周囲からの聞き込みだと純朴で真面目な性格って感じ。 本人自体には別に裏は無さそうなんだよねー。 なんで掃除婦に執着しているのかは未だ不明だけど、もしかしたらの可能性で調査継続中っす」
「では、お妃が掃除婦として接触したら何か判る可能性もあるということか」
「う~ん、それも有りだけど、陛下は赦さないんじゃない?」
「どう出るか、側近殿に相談してみた方がいいか? 可能性がある限りは調べた方がいいだろう。 演技が上手いだけかも知れないし、掃除婦に執拗なあの態度は不審だ」
「それなら念のために奴の実家も調べてみるか~。 他の隠密に調査させるよ」
「この間の貴族に懇意のある者かも調べるよう伝えてくれ」

なにやら隠密同士で話が始まり、夕鈴は目を瞠って驚いた。

「ね、ねえ、あの人が悪者方向で捜査をしようとしているみたいだけど、そんな先入観ってひどくない? 普通に真面目に働いている人かも知れないのに」
「・・・・お前は莫迦か」

端的な桐の言葉が酷く痛い。 隠密は疑うことが仕事だ。 疑って疑って、その先にある真実と事実を照らし合わせることが仕事で、更に警護対象の安全が第一だというのも判る。 
その対象である私が何か言うのも痴がましいのか。 出過ぎたことを言ったとは思うが何か悔しくて顔を逸らすと、浩大が包子を食べながら話してくる。

「お妃ちゃんもさ、掃除婦に何をしたいのか知りたいだろ? 疑ったままじゃ埒が明かないから調べてみようって訳。 まあ、李順さんがどう言うか判らないから、もし動けるようなら、その時は協力お願いしますよ」
「う・・・・うん。 李順さんが言うならそうするけど」
「じゃあ、まずは相談して来るわ~」

軽い感じで手を振って浩大が立ち入り禁止区域から姿を消し、桐がようやく冷めた包子を食べ始めたのを見て、取り合えず部屋に戻ることにした。 朝から李順さんに叱責され、陛下に翻弄され、桐に弄られ、臨時補佐官には会うし、一日がこんなにも長く面倒だったことがあっただろうかと額を押さえるほどだ。



 
今日はもうのんびり寝ようと思うのだが、やっぱり予想通りに陛下が来た。 
その表情はいつも以上に険しく、怯えた侍女を急いで下がらせるが、長椅子に腰掛けた陛下は憮然としたままだ。 たぶん桐からの報告のせいだと判っている夕鈴は、精一杯の笑顔でお茶を淹れると、包子を卓上焜炉で蒸し直し始める。

「陛下、何やら想像以上の書類が山と積まれて、すごく忙しかった御様子と聞きました。 あの、大変お疲れ様で御座います。 すぐに包子が蒸し上がりますので少々お待ち下さい」
「・・・・夕鈴」
「いや、もう、陛下のための包子を作っておりましたら、時間が掛かってしまいまして、お持ちしようとしたら政務に集中されていると伺い、邪魔になると思ってお持ち出来なかった訳でして」
「・・・・一緒に四阿でお茶をしようねって言ったのに」
「いや、もう、御政務の方が重要ですし・・・・。 あ、蒸しあがりました!」
「・・・・夕鈴が持ってくるのを待っていたのに、李順が急ぎだという書簡を運び続け」
「いや、もう、熱々ですから御気を付けて食べて下さいね!」
「・・・・やっと開放された時にはすっかり夜で。 浩大と桐は夕鈴手作りの包子を食べながら臨時補佐官に関しての報告に来るし」
「いや、もう・・・・・・・」
「夕鈴、今日も会ったんだって?」

どう誤魔化そうにも逃げ場がないと判り、夕鈴は視線を卓上の包子から床へと落とした。
包子を持って行かなかっただけじゃなく、浩大と桐が(老師も)包子を先に食べていたこと、更に臨時補佐官である林さんにまた会っていたこと、いつの間にか夜になっていて四阿に行けなかったことなどなどが重なり、今陛下は私に向けて絶賛八つ当たり中だ。

だけど、だけどこれだけは如何しても言いたい!

「陛下! あの方に会おうとして会った訳じゃありません。 厨房に行く途中、偶然回廊で会っただけです。 でも、その時に未だ掃除婦に会いたがっていることが判りました。 掃除婦に何をしたいのか、何を言いたいのかを調べた方がいいと浩大らから聞いていると思うのですが」
「報告は聞いた」
「では、そのために囮掃除婦として働かせて下さい。 積極的に会うことはしませんが、偶然会った時その真意を聞くくらいは出来ると思いますが」
「それは許可出来ない」


包子を待ち侘びながら政務に励んでいると、李順が次から次へと書類や書簡を山と積み、苛立ちながらそれでも対応しているといつの間にか夕刻をとうに過ぎていた。 
政務の山が崩れたことに笑みを浮かべる李順を睨み付けていると隠密が入って来て、手作りの包子を手に持ちながら、こっちも笑みを浮かべている。 
更に夕鈴が臨時補佐官である奴に呼び止められたと聞き眉を顰めると、桐が吹き出した。 
妃衣装の夕鈴が妃として見られずに慇懃に問い掛けられていたと苦笑する桐を冷たく睨み付けるも、奴は肩を竦めながら美味そうに包子を口に運んでいる。

報告によると、奴は夕鈴が妃と知り驚いた顔で足早に場を離れたとのこと。 離れる前に奴が夕鈴に問い掛けたのは後宮側掃除婦と如何すれば会えるのかということで、それも眼鏡を掛けた掃除婦となれば夕鈴以外いないだろう。 
何故、彼女限定で会いたいのか。 
一度接触したから意図ある話を持ち掛けようとしているのか、それとも掃除婦である夕鈴自身に個人的な話があるのだろうか。  

それを突き止めるには、掃除婦の夕鈴が偶然を装い会った方が話は早い。 
それは判っているのだが、掃除婦姿とはいえ、夕鈴が奴と再び会うのは厭だと思った。
奴は夕鈴の腕を掴んで何処かへ連れ去ろうとしたというではないか。 そんな奴の前に夕鈴を差し出すなど考えもしたくない。 妃と掃除婦が同一人物とは知られていないが、もし知れたら面倒ごとに発展するのも困るし、何か裏がありそうな人物と接触させる危険は回避したい。 


「でも、陛下。 会って話をした方がはっきりすると思うのです」
「夕鈴は僕が居るのに、他の男に興味があるの?」
「・・・・はぁ?」

こんなに真剣に心配しているのに、僕の言葉に君は途端に呆れたような白けた表情を浮かべると 「実は既に」 ときっぱり言い出した。

「李順さんから面倒ごとは早期解決したいと、掃除婦で接触するのを許可されています」
「僕は聞いてない。 だってまた腕掴まれたらどうするの? 僕は許可出来ないって言ってるのに、どうして僕の奥さんが他の男に会いに行きたがるのか理解出来ないよ!」
「いや、会いに行きたがるというのは語弊がありますが、バイトの規約内容に囮も含まれていますし。 それに疑わしい人物が王宮に居ること自体、李順さんの言うとおり早期解決が必要だと思います。 悪いことを考えているようには見えない人ですが、過去侵入してして来た人たちを思い返すと、不確かな人物を王宮にいつまでも放置する訳にはいきませんよね!」
「でも、夕鈴」
「私、陛下のために、役に立ちたいんです!」

力強く決意を込めた瞳でそう言われると、僕は閉口してしまう。 
君らしい矜持で君らしく頑張ろうとする姿を前に、面白くはないが諦めなきゃならない気にさせられてしまう。 おまけに李順が浩大らの案に賛同し、偶然に再び近寄ってくる分には様子を見るべきと言い出していた。 それを僕が自室で着替えている間に夕鈴に伝えたのだろう。

本当に君は僕の気持ちを知らないで心配ばかり掛けるんだ。 
真面目な君を抱き上げ膝上に乗せると、顔を近づけて夕鈴を凝視した。 瞬時に真っ赤に染まる君は目を逸らそうとするけど、唇を噛むと僕を真っ直ぐに見つめ返してくる。 譲れませんとばかりに僕を強く見つめて来るから、僕もじっと見つめ返すと、真っ赤な顔の兎は次第に瞳を潤ませてプルプルと震え出した。

ああ、ずるいよね。 そんな顔を見せるなんて。
夕鈴をぎゅっと抱きしめて僕は降参するしかない。

「李順が言ったのは、掃除婦として水替えのために回廊にいる時、偶然会ったら話を聞くだけだよね。 万が一、何処かに連れ去られそうになったり腕を掴まれたら大声で叫ぶこと。 夕鈴から声を掛けるのは禁止だよ」
「は、はい!」
「浩大と桐に警護させるけど、不用意に近付かないこと。 午前中は政務室に来て、昼は僕と一緒に食べること。 おやつを作ったら直ぐに持ってくること。 一番に僕が食べること」
「は、 ・・・・・はい?」
「守れるなら許可をする」
「あ、はい! では陛下、冷めちゃう前に包子を召し上がって下さい!」

卓上の包子を指差すと、陛下は口を開けて私をじっと見つめて来た。 またこれかと思ったが、包子を持ち口へと運ぶと満足そうな笑みを浮かべるから良しとしよう。 ただ手首を掴んで指まで舐めるのは止めて欲しい。 本当に陛下は女ったらしの演技がお上手でいらっしゃる。 こういうのは何処で覚えるのだろうか。 陛下の演技はいつもすごいと思うのだが、この演技はいつまで経っても慣れないし、参考には出来ないわと夕鈴は思った。





翌日、執務室では執拗なほどの甘い演技と、膝上抱っこで食べさせ合う食事を終え、ようやく午後から掃除をすることになった。 掃除が出来ることがこんなにも嬉しいなんて、やっぱり自分は庶民なんだと思い知るというか、確認させられたというか・・・・。 
ちょっと待て。 今そんなことに打ちのめされている場合じゃない。
まずはいつものように掃除をして、いつものように水替えに行くだけだ。 そして偶然会ったら何て言ったらいいのだろう。 いや、話し掛けられたら、その時に考えよう。 何をしたいのか聞かなきゃ話が進まないし、もしかしたら掃除婦へはもう興味が失せたかも知れない。 話し掛けられない可能性だってあるのだ。

「老師ー! 水替えに行きますね。 その間に菓子屑なんか零さないで下さいね!」
「零したくて零しているんじゃないわい。 勝手に零れるんじゃ」

睨み付けるが素知らぬ顔で菓子を食べ続ける老師を見てがっくりと肩を落とす。 言っても無駄だと判っているのだが、言わなきゃ余計に零すから始末が悪い。
水桶を持ち回廊に出るとやはり緊張してしまう。 研修で来ているのだから、臨時補佐官である林さんもそんなに回廊ばかりに足を運ぶ訳にはいかないだろう。 暇なはずはない。 忙しいのが当たり前の政務室で学ぶことは多々あるはずだ。 



それなのに・・・・・・・。



官吏の姿を見て、いつものように回廊端に下がり膝をついた途端に声が掛かった。

「暫く見なかったな。 お前に話があるんだが良いか?」
「・・・・っ! あ、あの、以前にも申し伝えましたが、私は後宮掃除の担当で御座います上、仕事中です。 お手を離して下さいませんでしょうか」

拱手した腕を掴まれ、前と同じように無理やり立たされた私は懇願してみた。 腕を引こうとするが、しっかりと掴まれた腕は容易に外せそうもなく、顔を上げると眉間に皺を寄せた林さんが怒っているようにも見え、その表情に困惑してしまう。

「私は話が有ると言っているんだ。 すぐに終わる」
「そ、そうですか。 ・・・・お話とは何で御座いますか?」

後宮側の掃除婦にする話とは何だろう。 桐さんが懸念していた悪い話じゃ有りませんようにと願いながら承諾すると、掴んだ腕を引き摺るように何処かへ移動しようとする。 驚いて足を踏ん張るが、以前同様男の力に敵うはずもなく、どんどん後宮から離れて行く。

どうしよう。 すぐに大声を上げるべきだろうか。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:50:01 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-07-01 月 09:19:19 | | [編集]
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2013-07-01 月 10:02:35 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。 ああ、言われてみると、皆勝手に暴走中ですね~。リアでも暴走しているので、疲れ果てている様が出ちゃうのかな。もう、しんどいですわ~。今週はのんびり更新させて貰います。トラブル引き寄せ体質なのは自分かも? 目も痛いです。(これは歳か?)
2013-07-01 月 21:50:50 | URL | あお [編集]
Re: 屑籠持って食べください(笑)
ダブルS様、コメントをありがとう御座います。 うるうる瞳の夕鈴って好きですね~。ぐっと堪える感じが尚いいっす。いつも陛下はそこで黙り込んでいるので、余計に「萌え」で御座います。 そして彼、登場。やっとまともに会話が出来る。 もっとさくさく進む予定だったのに、こんなに話数が進むとは計算外。ああ、ほんとに大した話じゃないのに、申し訳ない思いでいっぱいです。でももう少しお付き合い下さいませ。
2013-07-01 月 21:53:45 | URL | あお [編集]
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2013-07-02 火 04:42:45 | | [編集]
Re: タイトルなし
春風様、コメントをありがとう御座います。 大ちゃんポジションとか、超受けましたー! ご馳走様です。嬉しいー!(いや、駄目だろう) 桐さん、そんなに活躍してませんが、この先ちょい働かせましょう。 陛下に焼きもち妬かせてとリクエストもありましたので頑張ります。桐コメント、嬉しいです。
2013-07-02 火 20:34:37 | URL | あお [編集]
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2013-09-04 水 23:20:32 | | [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントをありがとう御座います。過去作品を愛でて頂き、感謝感激、ありがとう!です。桐の辛辣な冷たい言葉好きな人が多くて超うれしいです。カフェオレ噴き出しって結構辛いですよ~。おまけに飛び散った処理が大変。台所で咽込んだ時はその後の悲惨さに泣きたくなりました。引き続きお付き合いお願い致します。
2013-09-05 木 21:25:36 | URL | あお [編集]
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