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頑固な迷路  9
少し前の朝、自転車で大転倒した娘。 ラインで助けてと来たが、そんな暇があるなら電話しろ!膝小僧がズル剥けで超痛そうで急遽車での送迎になりました。 自転車買い直しだよ~。 そう言えば大人になると転んだり、傷を負うことって少ないな~とふと思いながら、久しぶりに消毒なんかしました。 結構傷負い人の娘。 先月も路肩で転んで足に傷。 生傷だらけの人生。


では、どうぞ
















「お妃を呼ぶのは 『お前』 か 『こいつ』 でいいか」
「うわ、オレ報告どうしよ~。 あ、突然笑い声聞こえたらごめんね~」
「・・・・桐さん、ちゃんと演じて下さい。 浩大、笑ったら困るから」

掃除婦姿の夕鈴の隣には、侍官衣装に身を包んだ桐が並び、浩大は回廊下で隠れながら林子頴を待っていた。 約束よりも早い時刻から待っているのだが、今日に限って刻限を過ぎても林子頴は現れない。 このまま桐と二人で立っているのも居た堪れないのだが、夕鈴一人ではまた何処かに連れて行かれるかも知れないと演技して貰うことにした。

掃除婦の・・・・・・・・・・ 許婚として。

これなら、そばで直接警護していても不審ではないし(?)、もし話が拗れるようなら浩大が李順さんを呼びに行くという段取りになっている。 李順さんを呼びに行くような事態にはならないと良いなと祈っているけど、どうなるか不安は残る。
李順さんには計画を話すと思い切り鼻で笑われたのを思い出し、夕鈴は肩を竦めて床を蹴った。 だって仕方が無いじゃないか。 衣装を贈られた上に親に会えなんて言われて、意味が判らないままでは話が進まないし、本当にそれが彼の話したいことなのかが見えて来ないのだから。 もちろん、陛下が来ないように李順さんにお願いもしている。

「そう言えば、お前、あいつに名前を聞かれていないよな?」
「あ、はい。 ・・・・・そう言われると聞かれたこと無いですね」

言われてから気が付いたが、親に会わせる相手の名前も知らないとは、林さん奇怪しくないですか? 桐さんも急に黙り込んでしまって怖いんですけど! それに昨日、浩大に頼んで衣装を返して来て貰っていることも改めて謝罪した方がいいのかな? いや、今日はきっぱりと断りを入れて、ちゃんと政務に励んで貰わなきゃ困る。
何のために地方から王宮へ来て研修をしているのか。 大体、掃除婦に構っている暇など無いだろう! もしも林さんが王宮に来てからサボり魔になったら、わたし、後宮の掃除婦悪女って言われることになるかも知れない? そ、それだけは絶対に厭だ。 掃除をしていることは下町の皆が知っているんだから、そんな噂が万が一流れたら実家に帰れなくなる!!!

「・・・・・・来たぞ。 何か荷物を持っている」
「あ、朱色の・・・・・・」

半刻過ぎたところで林子頴が姿を見せ、その手には返したはずの衣装が包まれた品を持っているのが判る。 林子頴は近付くなり眉間に深く皺を寄せ、桐を睨み付けると夕鈴に手を伸ばして来た。 その手が夕鈴に届く前に桐の身体が前に出て、静かに林子頴を見下ろす。

林子頴も体躯の良い上背のある人物だが、桐の方が高い上に冷徹な表情を浮かべながら少し顎をしゃくるような動きを見せ、相手を黙らせた。 桐の背後にいても緊迫した雰囲気が伝わって来て、夕鈴は慌てて掠れた声で叫ぶ。

「あ、あのっ! 折角ですが衣装はお返しさせて頂きます。 そして親御様へ会うことは出来ません。 今日は先ず、それをお伝えしようとお待ちしておりました」
「それと、私のモノに勝手に衣装などを贈らないで欲しいと伝えに来た」
「・・・・何だとっ!」

桐の言葉に林子頴が正面から強く桐を睨み付けた。 
「モノ」 呼ばわりされた夕鈴も桐の袖を引いて無言の抗議をするが、こっちはまるで相手にされない。 それにしても桐さんはいきなり、余りにもはっきり言い過ぎではないのか。 これでは彼が本当に求婚だけで掃除婦に近付いたのか判別出来ずに終わりになってしまう可能性も有る。

「その前に! あの、昨日おっしゃっていた親御様へ会って欲しいというのは、もしや」
「・・・・私は貴女に婚姻を申し込もうと思う。 だから衣装を贈ったし親にも会わせたい。 だが、この慇懃な侍官がここにいるのは何故なのだ。 誰なのだ、こいつは!」

慇懃な態度で、桐さんを慇懃だと言い切った林子頴に何と言おうか、この状況では何を言うのが一番か頭の中をぐるぐるさせながら夕鈴は袖口から顔を出した。

「えっと、あのですね、あの・・・・」
「お前は黙っていた方がいい。 ・・・・話は私が致します」

桐が私を制して、林子頴を見つめ直す。 おもむろに話を切られた上、眇めた視線で見下ろされた彼は眉を顰めて怒り心頭に見えた。 そしてそんな彼らを余所に私は、やっぱりかー! と打ちのめされ床にのめり込みそうになっている。
浩大が呟いていた通り、婚姻の申し込みのために衣装を贈って来たとは。 
まさかと思っていたが、掃除婦の時には名乗って貰ってないし、逆に聞かれてもいない。 
一方的に翻弄されていただけだ。 第一、何故数回しか会っていない掃除婦と結婚しようなんて思うのか、貴族の考えって、本当に全く意味が判らない!

「・・・・林子頴殿、貴方は研修のために王宮に来ているはずですよね。 それが何故、後宮の掃除婦に求婚するのかお教え願えますでしょうか」

対峙する桐の表情や声は冷淡だが落ち着いていて、林子頴は唇を噛み視線を逸らした。
彼が何を考えているのかを知るにははっきり問うのがいいのだろうが、桐の態度は威圧的で背後にいても怖いと思ってしまう。 それに桐の態度に林子頴が唇を噛締め、視線を落としたまま黙り込んで仕舞い、話を聞けないと夕鈴は足を踏み出した。

「林様、数回会っただけの掃除婦の私に求婚とは余りにも性急な御話しで御座います。 もしや、何か他に御事情でもあるのでしょうか?」
「・・・・事情?」

夕鈴の声に顔を上げた林子頴は眉間に皺を寄せたままの表情で、桐をちらっと見るとまた視線を落とす。 もう一歩近付き 「何かあるのでしたら」 と問うと、勢いよく手を伸ばされたが、その前に桐が夕鈴を背後へと引き寄せる。 驚きの余り心臓を跳ねさせている夕鈴に一瞥をくれた桐は、舌打ちをしながら 「しばくぞ・・・」 と声を落とし、跳ねていた心臓を止まらせた。
大人しくなった夕鈴から林子頴へと視線を戻した桐は静かな口調で問い掛ける。 

「先ほども御伝えしましたが、これは私ので御座います。 先に貴方の話をお聞かせ下さい」
「話などっ! わ、私のと貴殿は何度も言っているが、まさか結婚しているというのか!?」
「・・・・・はぁ。 ・・・・・・許婚です」

思い切り厭そうに溜め息を吐きながら桐が予定していた台詞を伝える。 
その溜め息に夕鈴が桐の衣装を引っ張り、ちゃんと演技をしてくれと目を瞠って訴えるが、ちらっと振り向いただけで無視された。 夕鈴の額に青筋が一気に二本浮かんだが、奥歯を噛締めて我慢する。 
一応予定されていた台詞を言ってくれただけで良しとしようと。
しかし、林子頴は何故か安堵の表情になり、目を細めて桐を見た。

「許婚、か。 では結婚が確定するまでは私にも機会を与えて貰おう」
「へ? あのっ!! 林様は研修ということで王宮に来ているのですよね!? そ、それでしたら御政務に励まれたら如何でしょうか? そ、掃除婦に構っている暇はないですよね? それに貴族で御座いましょう? 私はただの掃除婦ですよ。 機会も何も、無理なものは無理です!」
「そうです。 これは私の許婚ですから勝手に機会など与える訳無いでしょう」

やる気の無い声でそう言われて、夕鈴はがっかりする。 
もしかして桐さんに演技を頼んだのは間違いなのだろうか。 しかし他に人材がいない。 
浩大では茶化されて終わりそうだし、李順さんでは掃除婦とでは無理がある。 いやいや侍官とだって普通掃除婦と許婚なんてある訳がないだろうが、王宮にいるという設定じゃないと現実感がないし、説得力もないと思ってのことだ。

「それに関しては問題ない。 私は親から許可を貰って来ている。 研修も大事だが、嫁を連れ帰る約束をして来ているのだ。 私は君が良いと思った。 働き者だし、相手がどんな立場の者でも物怖じせずに大事なことは大事と伝えることの出来るその心意気が気に入った」
「しかし彼女と私は許婚ですので、他の女性を見つけて下さい」

・・・・・せめて声に張りを入れて、少しでもやる気を見せて欲しいです、桐さん。
いや、それよりも林子頴は何を言った? 
研修も大事だが、よ、よ、よめ、嫁を連れて帰る約束って言いましたか? 言いましたよね? 
それも親から許可を貰ってって。 
いやいやいや、王宮で出会うのは通常、官吏や大臣らばかりですよ! 王都に下りれば別でしょうけど、後宮に足を運ばない限り侍女さんにだって普通は会えません。 

今は臨時花嫁の私が時折政務室に顔を出すから、その時に付き添ってくれる侍女が回廊で待つことがあるけれど、官吏だって声は掛けられない。 未婚の貴族子女である彼女らに容易に声を掛ける者など普通はいない。 後宮に従事する未婚の女性はいつ陛下のお手付きになるか判らないからだ。

まあ、陛下は二面性隠しと大臣からの妃推挙を退くためにバイト妃を雇うほどだから、侍女や女官に手を出すことはしないと思うけど、それを知らない官吏が声を掛けることはしない。 それにそんな暇があったら指示された政務を行う方が先決だ。

それよりも・・・・・。
初めて男性から直接面と向かって婚姻を申し込まれたのだが、何か・・・・ 違う気がする。 正直、嬉しいとかドキドキするっていうのは感じず、上手く言えないけど違和感が強く伝わってきた。 間に合わせ的なことを言われた訳じゃない。 ちゃんと私の言動を見て申し込んだのは話す内容で伝わって来たけど、何だろう。 違う・・・・ としか思えない。

桐さんの衣装を知らず引くように掴んでいたようで、振り向いた顔が怪訝そうに見下ろして来た。 私の顔が酷く強張っていたのだろうか、短く息を吐くと林子頴に向き直った桐さんは強めた口調ではっきりと言い放つ。

「もう一度言います。 これは私のです。 ですから他をお探し下さい」
「・・・・こんな所で何の話だ」

突然響くように聞こえて来た声に思わず私は身を竦めて桐さんの背に張り付いた。
 
間違いようの無い聞き慣れたこの声は、白陽国国王陛下様! 
何で? どうして? 政務は? 李順さんはーっ!?









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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 23:35:01 | トラックバック(0) | コメント(14)
コメント
やばいぞっ!桐さん、林子頴!狼に噛み殺されるぞー! 次の桐さんの演技に注目します。 萌えさせて下さい桐さん。 陛下の前でもしれっとやる気ない演技を続けるか?! どう転がっても夕鈴はお仕置き確定ですがね(^o^)v
2013-07-06 土 00:52:23 | URL | ユリア [編集]
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2013-07-06 土 00:55:17 | | [編集]
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2013-07-06 土 01:09:24 | | [編集]
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2013-07-06 土 01:17:37 | | [編集]
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2013-07-06 土 06:59:48 | | [編集]
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2013-07-06 土 09:48:17 | | [編集]
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2013-07-06 土 16:59:33 | | [編集]
Re: タイトルなし
ユリア様、コメントをありがとう御座います。狼に噛み殺されますか。もう、いっそのことザックリと噛んで去勢・・・ いやいや、やばいですか。(笑) あー、桐さんは兎も角、夕鈴はお仕置き確定ですか(爆)
2013-07-06 土 21:19:10 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。「しばくぞ・・・」は低く響くように耳に届けばいい。夕鈴を思い切り怯えさせましょう。 桐さんは演技が下手そうですね。というか、やる気がないのが見え見え。引き続き哂ってくれると嬉しいです。
2013-07-06 土 21:21:05 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
らぁ様、コメントをありがとう御座います。桐の「これは私のです」お気に召して頂けたでしょうか。この回を始める前に桐メインになるかなと思っていたのですが、これは書いていて自分が楽しいです。 さあ、陛下をどう弄ろうか、次も楽しみです。夕鈴は・・・・・・・・うん、可哀想です。
2013-07-06 土 21:23:57 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントをありがとう御座います。桐の「しばくぞ・・・・」に興奮、ありがとう御座います。冷たい視線付きですが、宜しいですか?(笑) 予定に無かった陛下を思わず出しちゃって、下書きを大幅変更中です。困ったものです。 どうしましょうか?とほほです。
2013-07-06 土 21:27:16 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
rita様、コメントをありがとう御座います。 結構、桐「しばくぞ」が好評ですげぇ嬉しいです。 桐の背中に隠れたのは、まあ仕方が無いですよね。今、掃除婦だし。あとでどうなるかは・・・・不明ですけど。 ああ、もうフラグが立っているようで可哀想?(笑)
2013-07-06 土 21:29:53 | URL | あお [編集]
Re: 浩大の気持ちが良くわかる(笑)
ダブルS様、コメントをありがとう御座います。 あー、やる気のない桐さんも人気なんですね。ニヨニヨしちゃいます。ありがとう御座います。 やる気無さ過ぎて「モノ」扱い。夕鈴も抵抗出来ない状況で。 あと、仕事ですが、あとで李順さんから雷が落ちること間違いなしでしょうね。 下町行き過ぎるし、夕鈴に構いすぎるし。 そんな陛下が大好きです!!!!
2013-07-06 土 21:32:20 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。いやいやいや、マジにビスカス様のコメ無い日々が続いて、あれれ状態でしたもの。でもお子様が第一ですからね。良かったです。あ、うちの娘は4日間大型絆創膏を貼ってて、痛みはないのですが見た目がアレで笑えます。  桐の台詞に笑って下さって毎度ー!で御座います。 そして方淵の背中にしがみ付いてunder流れ、ありましたね~。 ほほほほ。 バイト夕鈴なのでunderには流れませんが、今「仲直り」その後を妄想中です。 こっちサイトにしようか思案中です。うぬぬ。
2013-07-06 土 21:42:56 | URL | あお [編集]
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