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頑固な迷路  12
ちょっと連続の飲み会は身体に堪えます(笑) 睡眠不足で、やっとの休みがこんなにも嬉しいとは。 でも暑い時のビールって、焼き鳥って、刺身って、イカリングって、どーしてあんなに美味しいのでしょうか! おまけに片付けをしなくて良いって最高です! 飲み会万歳! そして毎回思うのが、ドOえもんの何処でもdoorがあれば帰りが楽ということです。


では、どうぞ














「あ、あのっ! 手、手を離して下さいっ!!」

我慢出来ずに夕鈴が陛下の手を押さえ込みながら声を荒げると、桐が舌打ちと共に睨み付けてくる。 静かにしろと目で脅かされたばかりなのにと慌てて口を閉ざし肩を竦ませた瞬間、抵抗虚しく陛下の膝上に腰掛ける掃除婦が誕生していた。 とうとう乗せられてしまったと声も出ずに放心状態の夕鈴をよそに、陛下が続きを促す。

「浩大、何が無理なんだ?」
「その萌遊ちゃん、以前から決まっていた婚姻なんだって。 あ、それに無理やりじゃなく、本人同士の合意。 町の商家跡取との良~い話って親も喜んで認めたという正式な婚姻」
「・・・・え? 浩大、それなら、あの、この人の言ってるのは?」
「うん、あっちの隠密の調べだとね、まあ・・・・ 坊ちゃんの一方的な片思い?」
「・・・・っ!」
「だからおきさ・・・・ 掃除の人が係わろうが何しようが、坊ちゃんの妄想は実を結ばないって事なんですよ。 第一、萌遊ちゃんは坊ちゃんより年上だし、約束っていっても調べたところ、子供の頃の口約束だったらしいじゃんか~」
「・・・・口約束・・・」
「そうだってさ~。 掃除の人はただ坊ちゃんの妄想に付き合わされただけ。 良かったね、演技する前にわかって! さあて・・・・と、オレは小腹が減ったからじぃちゃんとこ行くね」

一気に部屋の温度が下がった。

原因は浩大の説明により怒気を放つ狼の仕業と判るが、それを誰が止められようか。 夕鈴を引き寄せる力が増し、蒼白になりながらも背後からの怒気に震え耐えるしかない。 浩大の説明を耳にした狼の怒りは激しく何と言って、どちらに声を掛けようか、いや掛けない方がいいのかと思案していると近くから大仰な嘆息が聞こえてきた。 そろそろと視線を上げると桐が髪を掻き分けながら床上で脱力している人物を睨み付けている。 ああ、ここにも怒っている方がいらっしゃった。 こうなると、いち早く部屋から出て行った浩大が恨めしい。

林さん、このままでは殺される!?

そう考えた夕鈴は慌てて林子頴に声を掛ける。

「あ、あのっ! 今日はもう居室に戻られてお休みになった方が宜しいかと」

長々と話している内に窓から見える景色の色合いもずいぶんと変わって来ていた。 
脱力して呆けた表情に夕刻の赤い色が掛かり、一見血色が良いようにも見える。 しかし虚ろな瞳とがっくりと落ちた肩からそれはただ夕日が映っているだけと判り、今度は涙さえも流さず愕然とした様子の彼に、夕鈴はそれ以上何を言えばいいのか判らなくなった。

浩大は部屋から出て行った。 陛下は私を固定している。 桐は・・・・・ 無理だろうな。 それでも可能性が有るのは桐だけだと、夕鈴は眉根を寄せて懇願することにした。

「き、桐さん? お手隙でしたら林子頴様を、この方の居室まで御誘導など、しては戴けませんでしょうかね? 私は今、掃除婦ですし、あっちの役だとしても無理がありますし・・・・。 でもこのままにはして置けませんでしょう? ですから、あのぉ~」
「放置した方がいい」
「そうだな、面倒だ」

端的な答えが即答で返ってきた。 陛下と桐が二人して同じようなことを辛辣に言い放ち、肩を震わせる林子頴が一層深く項垂れる様に夕鈴は同情してしまう。 

・・・・・片思いだったんだ。 子供の頃の口約束。
彼女は忘れてしまったのだろうか。 彼は未だに思い続け、親から勧められた結婚を反故にしてまで彼女を思い続けていたというのに、忘れられて捨てられて結婚してしまう。 結婚の噂は彼の耳にも届いていたのだろうか。 でも全身を震わせ打ちひしがれた様子から、知らずに居たと思われた。 今は悲しみに暮れ、戦慄くだけの唇からはあえかな吐息が漏れるだけだ。

余りにも悲しげな様子を前に、夕鈴は後ろを振り返り陛下に訴えた。

「このまま放置では可哀想です。 それに、きっと彼はこのまま此処で一晩明かしてしまいそうです。 えっと・・・・正直、このままの状態では仕事にもなりませんでしょうし、部屋に戻り休んで頂きまして、明日にでも早々に御実家に連絡した方がいいと思うのですが」
「いい歳をして自分本位もほどがある。 お前も放っておけばいい」
「王宮に研修に来て、この様だ。 言い訳も何も聞く必要など無いだろう。 本来なら即刻処分対象だぞ。 王宮での研修の意味をどう考えているんだ、こいつの親も含めて」

確かにその通りだ。 国の重要な書簡が行き来する政務室に立ち入ることが出来る研修期間中に、私事に逆上せて、さらに一掃除婦を巻き込み、果ては陛下までを(自主的では無いにしろ)関与させてしまった。
 
でも陛下。 
『こんな輩に無駄な時間を遣っちまった』 感をたっぷりと漂わせ、苛立ちも露わに人の髪を何度も指に絡ませながら、腰を引き寄せるのは別次元の話だと思うのです。 確かに厄介ごとに足を踏み入れた私にも責任が多少あるかも知れませんが、最初から申し上げているように親切心で書簡を拾い上げたのが始めです。 他に他意は御座いませんからね。 
それなのに掃除婦の腰をきゅうきゅうと引き寄せて髪に指を絡めながら、首筋に吐息を掛けるのは、何かのいやがらせですか?
背筋のゾクゾク感を耐えて私は力強く陛下に振り向いた。

「で、でも陛下、このままでは夜番の見廻りの方が驚きますよ?」
「知らん、驚かせておけ」

面白くないのは判るが、放置は駄目だと思う。 困った顔で陛下と林子頴を見比べていると、顎を掴まれ睨むように見つめられた。 強い視線に蒼白になり、何故そんな顔で怒っているのか判らないと涙目になると急な浮遊感に陛下の肩に縋り付き目を瞠った。

「・・・・桐、部屋に連れて行け」
「はぁ。 ・・・・おい、話は聞こえたか? 立て、歩け、出て、戻れ」
「桐さん。 そ、そんな矢継ぎ早な言い方・・・・可哀想では」 

桐の冷たい言葉と態度に思わず声を掛けると、ゆっくりと顔を上げた林子頴と目が合う。
憔悴しきった顔は一気に歳を取ったかに見え、その瞳は何かを訴えるかのように揺れているのが判る。 陛下にしがみ付きながら痛ましく林子頴を見た夕鈴は、そこで漸く自分の立場と今の状況に意識が戻る。 
今、自分は掃除婦の姿で陛下に抱き上げられているではないか! これは不味い。 
彼だけじゃなく、このまま廊下へ出て誰かに見られでもしたらどうなることか!

「陛下、降ろして下さい! 私は掃除婦です」
「・・・・・掃除婦も可愛いのに」

何を言われても賛同出来ない。 
どうにか開放された夕鈴は林子頴に改めて顔を向けるが、何を言えばいいのか判らないまま視線だけを合わせていた。 ぼんやりした彼の瞳が歪み薄く開いた唇が小さく息を吐く。

「萌遊は・・・・・」

掠れた声で呟き出した彼の前に膝をつく。 潤んだ瞳に涙が滲んでいるのが判り、手巾を取り出して手渡す。 素直に受け取った林子頴が口元に諦めを乗せ、静かに語り出した。

「萌遊の親が家に来たのは僕が生まれた頃だ。 乳母として働いた後、侍女となった母親と共に僕の遊び相手として過ごしていた。 私は子供の頃からずっと萌遊が好きで、いつまでも一緒に居たいと、だから大人になったら結婚しようと何度も繰り返し伝えていたんだ。 幼少の頃から萌遊しか見てなかったし、見えなかったから」
「ずっと萌遊さんだけを?」
「ずっと。 何度も結婚するなら僕としようねと、好きだと伝えていたのに。 問題は僕の両親で、だからそれさえ乗り越えることが出来るなら結婚できると思っていたけど」
「萌遊さんが結婚するって話は耳にされなかったんですか?」
「・・・・・・・・」

耳にしたことはあったんだ。 だから余計に焦っていたのかな。
視線を床に落とした林子頴から涙が零れる。 

「身分違いだけじゃない。 本当は・・・・萌遊が本気じゃないのは判っていた。 年下の、幼い頃から見知っている邸の息子なんて、弟くらいにしか見てないって・・・・・ 本当は」
「・・・・林子頴様」
「それでも、どうしても萌遊が欲しかった。 弟としか見られなくても、立場を確立して親を説得出来たら、気持ちが僕に向くかも知れないと・・・・・。 だけど今度の奴とは、結婚まで話が進んでいたなんて。 あ、あいつは、あの男は駄目だ! 駄目なんだ!」

強くなった口調には萌遊の婚姻相手に対しての怒りが迸り、夕鈴が息を呑む。

「もしかして酷い男の人なんでしょうか?」
「僕より少し背が低いし、少し太っているし、ただの商家だし、何より年寄りだ!」
「年寄り!? 萌遊さんよりずいぶん年上なのですか?」

それでは浩大の言っていた本人同士の同意という話には無理が生じてくる。 親も喜んで認めたと言っていたが。 そう思っていると、林子頴は大きく頷き口を開いた。

「萌遊より四つも上だ! わ、私より十も上だ!」
「では林様は萌遊さんと六歳も違うの?」
「・・・っ! そ、それがどうした! 六歳くらい問題は無いだろう!」

幼い頃から彼女しか見ていないと泣きそうに叫んだ彼に対し、自分の言葉が更に彼を傷付けたのだと夕鈴は唇を噛む。 背後から二人の呆れたような溜め息が聞こえてくるが、身分違いと歳の差を乗り越えて成就したいと足掻いていた彼の必死さを思うと、叶うことが無い自分の恋心が重なり、一緒に泣きたくなってしまった。 
・・・・・だけど泣くばかりでは駄目だと判っている。

静かに息を吐いた夕鈴は、ゆっくりと顔を上げて林子頴を正面から真っ直ぐに見つめた。

「・・・・萌遊さんがとてもお好きなんですね」
「そっ、そうだ! ずっと・・・・ ずっと彼女しか見てない!」
「では、彼女の幸せを祝えませんか?」

はっとした顔を上げた林子頴は泣きそうな夕鈴の顔を見て、当惑した表情となり、薄く開いた口のまま何も言えずに床に視線を落とした。 

「・・・・気持ちが届かなかったのは悲しいですが、大好きな萌遊さんの幸せを祝ってあげることは出来ませんか? 相手が幸せなら、自分も幸せに・・・・なれませんか?」

ゆっくりと語る言葉は掠れてしまい、夕鈴は自分の発する声に泣きたくなっていた。 すでに眦に溜まった涙が今にも零れそうになりながら言葉を紡ぎ続ける。
 
「明日、結婚されるという萌遊さんの幸せを願えませんか? 互いが好き合って結婚出来るというなら、萌遊さんは幸せなのでしょう。 それを共に祝えませんか? ・・・・今すぐには無理でも、いつかはそんな気持ちになれると信じることは出来ませんか?」
「いつかは・・・・・・」 

林子頴の声は掠れ震えていて、夕鈴は彼の膝に視線を落とす。 自分もいつかは同じような気持ちになれるようにと願いながら瞼を閉ざすと、熱いものが頬を伝わりそうになり急ぎ拭う。 静かに息を吐き、強張りそうな笑みで林子頴を見詰め直すと、強く言い切った。

「好きな人が幸せなら、自分も幸せだと思いましょう。 思っている内に本物になりますよ。 本物になったら自分も幸せになれますから。 だから・・・・!」
「・・・・・・・・」

大きく見開いた瞳が揺れながら、それでも何か言いたげに床から浮上する。 
臨時補佐官として王宮に来た貴族子息に対し、掃除婦がこんなことを言うなんて何て痴がましいのだろうと思いながら、それでも思いが伝わるようにと真摯に向き合った。

沈黙の中、溜め息を吐いた桐が彼の腕を掴み取り立たせる。 されるがままで林子頴は立ち上がり、床に座り込んだ夕鈴を一瞥した後、無言のまま部屋から出て行った。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:22:28 | トラックバック(0) | コメント(4)
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2013-07-14 日 02:16:31 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、真夜中のコメントをありがとう御座います。 陛下が掃除婦を翻弄するに決まっています。(爆) 翻弄される夕鈴をどう書こうか、そこが難しいのですけどね~。
2013-07-14 日 02:18:57 | URL | あお [編集]
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2013-07-14 日 06:58:16 | | [編集]
Re: ちょっとフラグ立ってる!?
ダブルS様、コメントをありがとう御座います。フラグ立ってますか。えへへへ。そういう流れにしようか思案中だったのですが、どうしましょうか、うぬぬ。桐との演技に関してもコメントが多くてニヨニヨしてましたから、どうしようか考え中。もう次の方淵で頭がいっぱいなんです~。仲直りの陛下も書きたいし、違う話も書きたいし~。(笑)
2013-07-14 日 11:38:46 | URL | あお [編集]
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