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嵐の後に凪  3
さあ、夏休み突入です。水着を新調した娘が披露してくれましたが、何というか、ポロリが心配なビキニだなと言うと、本人も着用してから黙り込む始末。ひと目見て気に入って即購入した品だというのだが、さて、どうする? そしてラストとなりました。今回も楽しく書けて満足、満足。


では、どうぞ














きっと惚れた方が負けなのねと少し悔しげに抱き返す夕鈴だが、対する陛下も同じことを考えながら抱き締めているなど知る由も無い。 ただ互いの熱を共有しながら木陰でしばらく佇んでいた。 二人の世界に浸っている姿を羨ましげに見られているなど気付きもせずに。
 
やがて、ゆっくりと解かれる陛下の手に戸惑いながら顔を上げた夕鈴は、期待に胸膨らませた輝く瞳で陛下が見下ろしていることに気付き、目を瞠る。

「さ、呼んで。 僕のこと!」
「え、と。 あ・・・・ あの」
「名前じゃなくていいから。 でも李翔は駄目だよ?」

くすくす哂う陛下からの言葉に、それもあったかと今頃気が付く。 だけど遅かった。 李翔さんなら照れもせずに素直に口に出来ただろうに、駄目といわれた後では惜しむしか出来ない。 真っ赤な顔で意を決した夕鈴は正面から陛下を見ると、一度深呼吸した。

「あ・・・ あなた」
「うん、可愛い愛しい奥さん。 もっと言って欲しいな」
「よ、用も無いのに何度も言うのは変ですよ」
「ただ呼んで欲しいだけ。 それも駄目?」

小犬の声で首を傾げる陛下を前に、夕鈴は思わず後ずさる。
ずるい言い方だ。 それでも抗えないのは惚れた弱みだと承知している。 悔しげに掴んだ手に力を込めると握り返され、退路を立たれた気持ちになった。

「あ、あなた。 ・・・・・庭園を歩きましょう? 帰りが遅くなっちゃいますから」
「そうだね、もう一度呼んでくれたら歩くよ。 ね、可愛い夕鈴」
 
もうグチャグチャのドロドロだと思った。 溺れて嵌まって、もう絶対に抜け出すことなんか出来やしない。 もちろん抜け出す気は無いが、一方的に溺れるばかりは辛いと睨み上げた。

「あなたっ! 帰ったら一度しっかりと話し合いをしましょうね」
「お手柔らかにね、奥様」



夕刻まで手を繋ぎ庭園散策を満喫した夫婦は、帰宮早々、側近から雷を貰うことになる。 

勝手に王宮を抜け出した陛下への叱責と、叔母とはいえ他国に長期滞在していた后への叱責。 王宮から脱走することは李順に報告をしていたが、予定より長くなったのは瑠霞姫の引止めが原因だ。 しかしそれを李順に言っても通用するはずが無く、夕鈴が為さなければならなかった使者との謁見、会合などを反故してしまったことを長時間に亘り、クドクドと説かれることになり、その夜は遅くまで互いの仕事で夜を明かすこととなる。
幽鬼の如く官吏が持ち運ぶ大量の書類に陛下が嘆息を零し、献上品や目録の確認、礼状と詫び状の用意に夕鈴は泣き、そして深夜もとうに過ぎ、疲労困憊で目の前の仕事を終わらせた二人に、側近は無表情のまま眼鏡を持ち上げた。

「今日のところは良しとしましょう。 続きは朝食の後に致します」
「・・・・朝食の後って、数刻しかありませんが」
「李順、せめて少しでいいから寝かせてはくれまいか? 流石に疲れた」
「黙らっしゃい! 私は、もう既に二日間完徹ですよ!!」
「・・・・・・」

夫婦は目の前の鬼から逃げること叶わず、数日間は仕事に忙殺されることとなる。 もちろん、寝所でいちゃいちゃなどする暇も与えられず、ただひたすら目の前の仕事に追われ続けた。






瑠霞姫からのお土産の行李を開いたのは、数日経ってからのこと。
早く中を確認して礼状を送らなくては蓋を開くと、夕鈴が見たことのないような品がぎっしりと詰め込まれていた。 その上に置かれた紙片を開くと流麗な文字が見える。

『夫婦円満は国のためでもあるから、頑張って』

紙片と共に入っていた品は、確認するのに躊躇するようなものばかり。

珍らかな南方異国の夜着だという衣装は、一体身体の何処を隠すのだと悩むほど布地が薄く少なく、象牙や翡翠で出来た品は良くわからないが、たぶん閨で使うのだろうと思われた。 他には無味無臭で効き目ばっちりお墨付きと書かれた媚薬の小瓶、卑猥な図柄が描かれた房中術の書物、北方珍獣の角だの睾丸だのの粉末だと書かれた、これ以上陛下を絶倫にしてどうするんだと叫びたくなるような精力剤まであり、礼状に何と書けばいいのか夕鈴は苦悩してしまう。
 
陛下には絶対に見せられない品々。

これらの存在を知られたら大変だと、だけど何処へ隠せばいいのだろうとオロオロしていると、そういう時に限って狼は突然やってくる。 一体どんな嗅覚をしているのだと尋ねたくなるが、今は急ぎ蓋を閉めて衣装の置かれている行李近くへ無造作に置いた。

「夕鈴、忙しいか?」
「いいえっ! 何か御用でしょうか」

夕鈴は寝所から飛び出すように姿を見せて、精一杯の笑みを浮かべた。 眉根を寄せた陛下が寝所を窺うような視線を送るから、腕にしがみ付き何の用だと甘えた仕草をしてみせる。 沈黙を落とす陛下を大きな瞳でじっと見上げ続けると、小さく息を吐かれ、そして他国から来た后への献上品目録に目を通して欲しいと伝えられた。 李順から言われた仕事をようやく終えたと思ったが、まだ残っていた品があったのだという。

「私が瑠霞姫の邸に滞在中、たくさんの国と謁見があったのですね」
「ああ、貿易に関して新たな取り決めがあり、歓待をしていた。 后にも会いたがっていたが次の機会にでも会わせることにしよう。 覚えて欲しい顔だからな」
「それは申し訳御座いませんでした。 ええ、次の機会には是非!」

ちゃんと后の仕事が出来なかったと項垂れそうになるが、伯母様の邸に逃げなかったとしても、果たして寝台の上から起き上がれたのかしらと首を傾げたくなる。 
兎も角、これからは后としての仕事はちゃんとしよう。 陛下からの寵愛を受け入れながら、唯一の后として上手く手綱を捌くのも務めですと李順さんに教えられたばかりだ。 それこそが難しいのだと苦笑するしかないけれど。
でもそれが出来るのは貴女だけですよと言われると、正直嬉しいと思うのが本音。
あの李順さんにそんなことを言われ、思い出すだけで胸が熱くなる。
 
陛下からの想いを受け止める喜びを独り占め出来る。 そんな妃が過去、後宮に居ただろうか。 それを陛下が望んでいるなど、歴を知る大臣らからすれば有り得ない事だというのに。 拗ねても逃げても怒っても、陛下は私でいいと言ってくれる。 そんな后でいいと、そのままでいいと言ってくれる。 愛しいと何度も紡いでくれる・・・・。

夕鈴が頭の中に桃色の花を満開に咲かせていると、突然可憐な花畑に低い声が降り注いだ。

「ところで、何を隠したの?」
「・・・・ほえ?」

その時の自分はぼんやりして居たんだと思う。 
部屋にいた女官に下がるよう伝えた陛下が、そのまま寝所へ入って行く姿が見え、ぼんやりしたまま追うように寝所に入ると、見慣れぬ華美な行李を凝視している狼が立っていた。

「・・・・これ、見たことが無いけど商人から何か買ったの? それとも献上品? いや、行李じゃ献上品ではないか。 中身を見てもいい?」
「そ、れは!」

ぼんやりしていられたのも、そこまでだった。 
強張った顔を思い切り横に振り、急ぎ手を伸ばす。

「こ、こ、これは叔母様から頂いた品です! お、お、おーんな同士の内緒の品ですが、私には高価過ぎる品々でしたので、礼状を認めたら直ぐに送り返そうと思って!」
「夕鈴、動揺し過ぎ。 逆に怪しいって」
「・・・・っ!」

行李に覆い被さっていた私の頬に大きな手が掛かり、ふわりと陛下の秀麗な顔が近付いた。 赤く染まった頬に陛下の唇が触れ、驚いた瞬間口付けへと変わる。 啄ばむような口付けはゆっくりと深い口付けへと変わり、軽やかな音がいつしか淫靡な水音として耳へ届けられていく。 
陛下との口付けはいつもそうだ。 甘く蕩ける口付けに場所も時も思考さえも溶けてしまう。 ゆっくりと離れていく唇を呆けた視線で追っていると、陛下の手には綺麗な行李があるのが見えた。 あら、いつの間に陛下の手元に移ったのかしらと呆然と見つめ、そして正気に戻る。

声なき悲鳴を上げたと同時に行李の蓋が外され、部屋の中に微妙な空気が流れた。
一瞬にして蒼白になった夕鈴は震える足を叱咤して部屋からの脱走を図ったが、呆気なく背後から腰を掴まれ、逃げることは敵わない。 
今更ながら綺麗な花には毒があるとか、瑠霞姫から何故受け取ってしまったのだとか、何故直ぐに確認しなかったんだろうとか、もっとちゃんと隠せたら良かったとか頭の中がぐるぐる回り出した時、腰を掴む腕に力が入り引き寄せられた。

「・・・・夕鈴」
「ひゃぁいっ!!」

もう逃げられない。 解っているが足は場から逃げようと必死に歩を進めようと床を掻いていた。 しかし床から足が持ち上がり、下ろされた場所は寝台の上。 恐る恐る顔を上げると、そこには喜色満面の狼の笑みが。

「叔母上への礼状は僕が書くよ。 それに折角頂いた品だ。 使用後の感想などを添えて礼状を書かねばならないだろう。 早速いくつか試してみようか」
「・・・・やっ、やです・・・っ!」
「妻が世話になったのだから、直ぐに礼状を送らねばな」
「礼状だけ送って・・・・それだけで充分だと思いますがぁ・・・・」
「それでは叔母上の御気持ちに反するのではないか? さて、どれから試そうか」

いきなり狼全開で淫靡な雰囲気を醸し出さないで欲しい!
それに叔母上のこと小さい頃会ったきりでよく知らないって、仲良くは無理だって言っていた癖に、行李の中身を見てそんなこと言い出すのは卑怯です! 
李順さんっ! 陛下がお仕事サボって后を苛めてますよ! 早く連れ戻しに来て下さい! 
第一、私が逃げ出した理由をこの狼は覚えているのだろうか!

「陛下! 何故私が長期間、後宮を不在にしたのか、もうお忘れですか?」
「忘れてないよ。 でも夕鈴が後宮から姿を消して叔母上の邸にいると判るまで、どれだけ僕が悲しんだか解るかい? 反省も後悔もたっぷりとした。 自分の行動を顧みて酷いことをしたのだと猛省した。 だけど叔母上から頂いた品への礼状は別だろう? すぐにでも返礼しないと要らぬ心配をさせてしまう。 もう余計な心配はせずとも良いと知らせねばな」
「いや、違うでしょ! ちょ・・・触っちゃ駄目です!」

寝台の上で狼と兎の攻防が始まるが、劣勢なのはもちろん兎だ。 じりじり寝台奥へと追い詰められる兎は涙目で抗うも、舌舐めずりしながら追い込むように近寄る狼から逃げる術は無い。

「余計な心配をさせぬよう、送られた品への感謝を込めて感想を書こう。 そのためには」

壁際まで追い詰められた兎の耳朶に甘く噛み付きながら、狼の低い声が落ちる。

「甘く情熱的な感想が書けるよう、妻の協力が必要だ」

その声音に腰が抜けてしまう。 捕食側である狼に敵うはずもないが、抜けた腰を引き寄せられ背に大きな手が這い回る頃、夕鈴は再び決心をした。
絶対にまた逃げ出してやるっ!! この狼は反省なんかしないんだ! 
今度は周宰相の邸に隠れるのはどうだろう。 怖い予言を聞かされるかも知れないが、狼よりマシだ! 他に候補はないかしら。 絶対に有り得ないと裏をついて柳大臣の邸は? 女官長の部屋もありかも知れない!
 

次の逃亡先を考える兎は、果たして狼の囲いから逃げ出すことが出来るのでしょうか。







FIN

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 03:33:33 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-07-21 日 06:40:59 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。反省しない狼が書きたくて!!結局夕鈴は翻弄される運命なのですよ。(笑)使用後の感想を書けるか、陛下!兎が逃げ出すのは間違いないでしょうね。どうしますかね。皆様の予想は?
2013-07-21 日 11:44:30 | URL | あお [編集]
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2013-07-21 日 20:47:06 | | [編集]
Re: いつ?!
makimacura様、夕鈴にとっての凪は陛下が政務に取り組んでいる時や、就寝時かな。あとは嵐が続いているでしょうね。承知で嫁に言ったのなら、諦めも肝心。そして叔母上からの贈り物は陛下だけを喜ばせ、夕鈴をどん底に陥れてますが、さて次はどこに逃亡するのやら。
2013-07-21 日 22:23:12 | URL | あお [編集]
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2013-07-22 月 21:10:12 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。やっぱりunder行った方がいいっすかね? ドキドキ。(笑)一応考えようかなと思ってますが、どうしようかなとも思うし。うぬぬ。なんか夜具を使うとなると、いいのかな?って悩んでしまう自分がいて。(えええ??)当時もちゃんと使われていた品ですけど、陛下と夕鈴で、それは有りか?とか。ちょいと悩んでみますね~。
2013-07-22 月 22:58:17 | URL | あお [編集]
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