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涼夏を求め  1
久し振りに方淵が出てくる話です。頑固な人といったら出てくるのはこの方か李順さん。どちらにしようか迷ったのですが、弄れるのは方淵の方かなと。 あ、妄想二次創作ですので、「こんなんある訳ないだろうー!」と思われる方は回れ右をされて下さいませ。自己満足の世界です。御了承下さいませ。 寝やすい夜と蒸し暑い日中で、体調崩れやすいので気をつけようと思っていたら娘がダウンです。皆様もお気をつけ下さい。


では、どうぞ














会議用に殿使用許可申請書を頂きたいと、一官吏が申し出たのは夏も盛りの或る日のこと。
秋に予定されている中秋節、重陽節までに王宮書庫の古い竹簡や書簡の一斉手入れと掃除を行う恒例行事の前準備があり、その段取り調整のため担当する書庫と、各責任者及び配下を決める必要があるため、話し合いをする場を借りたいと。

問題なく許可が下り、一回目の会合が行われることになった。
梅雨が過ぎ、全ての窓を開放し全ての書簡や竹簡の手入れや掃除を一斉に行う大掛かりな仕事。 基本、若手文官が主として動くこととなる。 限られた人数で広大な王宮の書庫の書簡、竹簡を手入れ、及び掃除するのは大変な作業となるため話し合いを始めたのだが、各書庫担当責任者を決め、その下で動く者、昨年を鑑みて必要とされる日数や時間分配、必要物品などを長時間話し合っている内、その話し合いに飽きてくる補佐官が出て来た。

「こういう時期って、下町では祭りとかで賑わうんだろうな」
「ああ、去年は章安地区で大掛かりな催し物があったらしいぞ」
「知ってる! うちの邸の使用人が腰を抜かしそうになったと言っていた」
「お化け屋敷だろう? 馬鹿らしい。 子供騙しみたいなものだろう」

最初は二人で密やかに話していたのだが、いつの間にやら幾人かが話しに加わり、そしてそれぞれが知っている怪奇談へと話しは変わっていった。 
真夜中に下町の井戸近くで女性が髪を銜えて立っていたとか、山中で足を引っ張る血だらけの武人がいるとか、或る河川敷では青白い火の玉が宙に浮いているとか、亡霊が出る朽ちた邸があるとか。 集まった文官の内、半数近くがその話に耳を傾けだし、真面目に取り組んでいた官吏らが苛立ちも露わに怒声を放つ。

「そんな話をしている暇があるなら、さっさと配下を決めて段取りを決める方が先だろう」
「有りもしない話しでサボるのは止めろ」

強く言い放つ補佐官らに、怪談話に興じていた皆はぐっと息を詰まらせたが、その内の一人が立ち上がり、止せばいいのに反論を始めた。

「小休憩は必要だろう。 それに有りもしないと誰が決めた」
「霊だの火の玉だの、空想の代物だ。 それよりも早々に決めてさっさと帰りたいのだが」
「空想と言われるものを幾人もの人間が目にしている事実がある限り、絶対にないとは言い切れぬのではないだろうか」
「今はそんな馬鹿な話より、こっちを先にすべきだろう」
「馬鹿な話しと決め付けるのは早計であろう。 事実見た者がいるというのだから」

互いに譲り合わず、実証出来るのかとか、それだけが事実とはいえないとか、目の前の話し合うべき懸案を放り出し、喧々囂々と必要の無い話し合いが始まってしまった。

最初は馬鹿馬鹿しいと無関心を装っていたが、段々高揚する話し合いに青筋が立ってきた。 深い溜め息を吐き、するべき事を早々に片付けたいと柳方淵は立ち上がる。

「いい加減にしないか! 己のすべき仕事を前に呆けている場合か!」
「柳殿はどう思われるのか?」

勢いよく怒鳴ったはずなのに逆に問い掛けられ、方淵は眇めた視線で相手を見つめ返すが、相手は気にもせずに問いの答えを待っていた。

「そんなのは気のせいだと一笑すればいい話だろう。 それよりも仕事を」
「気のせいに出来ないことも世の中には多くあることは事実だ」
「邸に鳴り響く奇怪な音とか」
「それは家鳴りだろう? 古い邸には多いと聞くぞ」
「しかし知っているか? 没落した趙の邸で透き通る人影を見たと・・・・」
「それ知ってる! あと山中にある朽ち果てた邸跡で女の泣き声とか」
「有名心霊場所に皆で行かないか? 誰が一番に逃げ出すのか見てみたい」

いい加減に仕事をしてくれ。 この場に自分より上の立場の者がいるというのに、その者が一緒になって話に参加しているなど、この場を何だと心得ているのだ。 
方淵は深い嘆息を吐き、いつまでも話し続ける輩たちに一喝した。

「そんな馬鹿馬鹿しい話しなぞ、今は必要ないだろうがっ!!」

瞬時、場は静まり返ったが、直ぐに密やかな声が方淵の耳に届けられる。

「・・・・そういう奴に限って怖がりなんだよな」
「誰だ、今呟いた奴は! 私は怖がりなどではない!」

口だけで実は強がっているとか、実際にその場に行ったら武官でも腰を抜かした奴がいたとか、ざわめきが起こり始め、今まで参加していなかった文官たちも乗り出した。 文官だって武人に負けぬ心意気があるとか、納涼にはいいなと言い出し、方淵は愕然とした。 今はそんな話しをしている場合じゃないだろうと口を開く前に、一番年嵩の文官が纏めるように口を挟んだ。

「今日は担当責任者とその配下を決めるべきだ。 いいか、そのために今は集まっている」
「そ、その通りだ! くだらない話しをいつまでもしてないで」
「肝試しの場所と日時は追って連絡する。 いいか、基本全員参加だ!」
「・・・・なっ!?」

方淵が驚いて振り返ると、納得した文官たちが早速卓に向かって仕事を開始し始めていた。

「そんな馬鹿な催し、承諾した覚えはない!」
そう言おうと思ったのだが、急に静まり返った部屋の中で真摯に仕事に向き合い出した官吏たちに閉口してしまい、更に肩を叩かれ振り向くと微妙な笑みを浮かべた氾水月が居て、方淵は黙り込むしかなかった。

「君の担当は第一書庫だよ。 私と一緒だ。 決して広くはない書庫だがいろいろな書簡などが集まる場所だけに注意が必要なので、大きな卓が必要となるな」
「わ、判っている! 当日サボることのないよう、先に言っておくぞ」
「肝試しはサボりたいけどね・・・・・」
「・・・・本当にするのか?」

水月が曖昧な笑みを浮かべるのを見て、方淵は眉間に深い皺を刻み、余計なことは考えまいと目の前のスケジュール表に視線を落としながら深い溜め息を漏らす。






*****






「夕鈴殿、しばらくの間、書庫への立ち入りは厳禁となります。 文官らによる大掃除が始まりますので、足を運ばないよう先に伝えておきます」
「そ、そうですか。 わかりました」

呼び出された執務室で、夕鈴は小姑・・・・否、上司から注意事項を受けていた。
毎年梅雨が明けて気候が安定すると、全ての書庫内の大掃除を兼ねた手入れや移動があると聞き、大変だろうなと夕鈴は瞑目してしまう。 大量の書簡や竹簡、書類に図案、古い文献や地図などが幾つもの書庫に置かれており、それら全てを一度出して天日干しをし、手入れをして書庫の掃除となると想像するだけで溜め息が出る。
それも通常業務をこなしながら、夕刻から夜間に掛けて数日間続くというのだから体力も必要になるだろう。 方淵に八つ当たりで睨まれることにならないよう、出来るだけ政務室でも小さくなっているべきかと考えていると、李順から追加で注意を告げられた。

「文官らに見つからないよう、後宮立ち入り禁止区域での掃除は早めに切り上げて下さい。 水替えなどで万が一ばれる事のないように重々気をつけて下さいね」
「わかりました。 では掃除は午前中だけにします」

午前中を掃除の時間としておけば水替えのため回廊を歩いていても、政務に忙しい官吏らに注目されることはないし、ばれる心配も減る。 
短期間とはいえ暑い中、官吏たちも大変だなと思っていると陛下が戻って来た。

「李順、この書類は全て見直すように伝えておけ。 これでは不備が多くて穴だらけだ」
「わかりました。 卓上に未決済の書簡が山と詰まれております。 書庫の整理も始まりますので、取り急ぎ決済を行って下さい。 掃除が終わってから書簡が詰め込まれることになりますと、折角の整理が無駄になります」
「・・・・・本当に山だな」

乾いた笑いを零しながら、何故か夕鈴の手を引き寄せる陛下に李順が咳払いをする。 夕鈴があららと首を傾げる間も無く扉へと近付き、回廊へと出ようとするから慌てて足を踏ん張った。

「陛下、李順さんのおっしゃっていること、聞いてましたか?」
「少しくらい休憩した方が仕事が捗る。 妃はそのために居るのだろう?」
「いやいや、李順さんから注意事項があるから来て欲しいと言われただけで、陛下の仕事の邪魔をするつもりじゃないんです」
「少しくらいなら李順も文句はないだろう」
「ありますよ、陛下! それに夕鈴殿はこれから老師の許で掃除です」
「そうか。 では、その前に」

李順が怒鳴り声を上げる前に抱え上げられ、そのままの状態で回廊に出ると微笑を浮かべた侍女が、四阿にてお茶の用意をして来ますと嬉しそうな顔で足早に移動を始めた。 
こうなると狼の思うがままとなる。 
李順が仲良し夫婦の演技を前に地団太を踏むが、陛下は知らぬ顔で執務室から離れて行く。 まあ、大量の政務が待っているのだから小休憩くらいはいいかなと夕鈴も思うのだが、抱き上げられた状態での移動は勘弁して欲しいと、周囲からの視線に真っ赤な顔を団扇で隠した。

「あの山を崩すとなると夜に部屋を訪れることは叶わぬかも知れぬ」
「そ、それは寂しゅう御座いますが、御政務ですから仕方ありませんわ」
「仕事と私、どっちが大事とは問わぬのか?」
「どっ・・・・どっ・・・・・ど?」

侍女の微笑が痛いと思いながら、夕鈴は真っ赤な顔で握られた手を凝視した。 ここでその先の台詞を言わない限り、この狼陛下は解放してくれないのかと。 

「私は・・・・御政務に励まれている陛下を心より応援しておりますわ」

上手く返せたと自分の台詞に満足して微笑を向けると、目を細めた狼が紅い舌先で唇をなぞりながら妖艶な笑みを見せる。 目を瞠った夕鈴の手を持ち上げると、艶やかに湿った唇へ近付けながら射るような視線を投げ掛けてきた。

「可愛らしい応援にやる気が出る。 いつも傍で応援して貰いものだが、他の大臣らに愛しい君を見せるのは辛い。 寂しいが少しの間だけ我慢してくれ」
「・・・・ええ、陛下」

やる気があるなら山になる前に、さっさと政務を片付けて下さい! 
強張った笑みを浮かべながら、夕鈴は心の中で李順が眼鏡を持ち上げながらイライラしている姿を想像し、背筋に寒気を覚えていた。









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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:55:55 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-07-23 火 09:47:53 | | [編集]
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2013-07-23 火 19:53:31 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。寝落ちですか!夜遅くにありがとう御座います。どうしても夜中に更新となるので、私も眠いです。 小学校の時、校内での肝試しではポイントで脅かしたら、男女ペアの男が逃げて行き、卒業まであだ名が「にげ」となりましよ、そいつ。中学のキャンプの時は先生がお化け役立ったので、怖い話しをしながら歩いていたら「やめろ」とマジに怒られました(笑)でも転がすまではしませんでしたよ。すごいです。尊敬します!
2013-07-23 火 20:14:43 | URL | あお [編集]
Re: 何だかんだで仲良しさん!?
ダブルS様、コメントをありがとう御座います。この時期を逃す訳にはいかない話しなので、少々焦り気味です(笑)そうか、狼陛下で納涼も楽しいですね~(え?楽しいですか?) 方淵を動かすのは楽しいですが、絶対に本誌の方淵は参加しませんね。ええ、しませんとも!でも妄想なので、ご勘弁を!!きっと彼なら武官以上の動きをしてくれると信じています。だってカッコいいから!
2013-07-23 火 20:17:31 | URL | あお [編集]
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2013-07-24 水 22:37:44 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。 ごめん、怖がり方淵もありでしたか!(笑)肝試しなんて、夕鈴には可哀想ですよね。次も水月さん出て来ますので、引き続きご覧頂けたら嬉しいです。underもゆっくり更新していくつもりですので、あちらもお付き合い頂けたらニヨニヨします。
2013-07-25 木 02:24:38 | URL | あお [編集]
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