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涼夏を求め  2
あさ様、娘も胃を病んでます。どうにか薬で回復してますが、あさ様も充分御養生下さいませ。まだ暑い日は続きますから。 話しは変わって、お化け屋敷とか遊園地はしばらく行ってない。 カップルの時か子供が小さい時くらいですよね、お化け屋敷。 おばさんが集団で行くと、逆にお化けが逃げていく?(笑) 


では、どうぞ













小さな紙が回って来たのは翌日の政務中こと。
水月から受け取った紙に視線を落とすと、思わず持っていた書簡を落としそうになった。
その紙には肝試し開催についてのお知らせが書かれており、時間と場所が記されている。

「・・・・本気か?」
「らしいよ。 書庫の手入れが始まる前に一度開催しようという流れになったようで、今晩は天気も良いから早速、だってさ。 基本は全員参加だが、強制はしないって」
「なら参加などせずとも良いのだな」
「怖いと思う者は参加しなくてもいいって、さ」
「・・・・っ!」

全くもって馬鹿馬鹿しいことを考えるものだと怒りを露わに紙を見据えていると、水月が次の者へ知らせるのだと、紙を持ち去って行った。 

面倒ごと、それも政務には関係ないことだが、参加しないと臆病者と揶揄されることになる。 
文武両道をモットーにしている方淵にとって、それは不名誉なことであり、陛下のためにと日々心身を鍛え従事している自分がそんなレッテルを貼られることなど我慢が出来ない。 

陛下と自分の矜持のため、渋々参加するしかないかと覚悟を決めて指定された場所へ赴くと、そこには数人しか居なかった。 時間が早かったかと思ったが、集まっていた者たちから不満の声があがっており、その内容から本当に少人数しか集まっていないことが判った。

「・・・・参加しない奴は臆病者だと聞いて足を運んだのだが?」

今更ながら足を運んでしまった自分の不甲斐なさに呆れて、思わず文句が出てしまう。 
しかし、苛立った方淵の言葉に集まった者達も肩を竦めて首を振った。

「そうは言っても来てない奴がいるのだから仕方が無いよな」
「仕方が無い。 この面子で肝試しをすることとするか」
「そうだな。 仕方がないからさっさと順路を決めよう」
「この人数だから一人ずつ蝋燭を持って、仕方がないから始めるぞ」

仕方が無いなら帰らせてくれと言う前に順路が決まり、肝試しは始まってしまった。
もちろん集まった中に氾水月の姿も、居なくてもいいのだが柳経倬の姿も無い。
まあ、あの二人がこんな催しに出るはずはないか。 
氾水月は池の鯉と約束があるとか訳のわからない理由を言いそうだ。 
そしてあの馬鹿は・・・・。 いや、あの馬鹿に関しては考えることも馬鹿らしい。

場所は王宮から程近い山中で、廃墟と化した邸跡に行き、指定された場所に蝋燭を置き戻って来るという。 ふと見ると肝試しを言い出したはずの文官の姿が無いことに気付き、ブチ切れそうになった。 しかし切れる前にとっとと終わらせて帰る方が早い。 方淵は一番に名乗り出て、指定された場所へ蝋燭を置き戻って来た。 
順番待ちしている他の文官らが、集まった意味がないと文句を言い出し、書簡整理の後に改めて肝試しを行うべきだと話し合いを始めている。 書簡整理の後なら全員が揃っているし逃げることも出来ないだろうと話がまとまり、参加しない奴は怖がりに決定だと騒ぎ始めた。 方淵はもう二度と参加しないぞと、噂するなら好きにしろと硬く心に決めて帰宅した。



しかし方淵の思惑とは裏腹に、書庫の大掃除が始まった初日、遅くまで続いた仕事終了後に結局巻き込まれることとなってしまう。 
方淵は絶対に参加などしないと決めていたのだが、どこで聞いたのか面白そうな催し物があると聞いたと暇な大臣が足を運び、殆どの文官が強制的に参加することとなったのだ。
 
人数が多いことと遅い時間ということもあり、王宮の片隅で肝試しをしようと大臣が提案し、あっという間に順路が決まってしまう。 体調不良の文官以外、殆どがその場に居たため、知られて困るのは陛下とその側近、夜間警護兵、そして他の大臣らだ。 そのため肝試し最中は沈黙すべしと厳重に伝えられた。 

それを聞き、方淵は深い溜め息を吐く。
普段従事している王宮で何が怖いことがあろうか。 確かに陛下に知られるのは違った意味で怖いと思うが、王宮内を歩くくらいで悲鳴など上がろうものか。 
膨大な量の書簡を調べ、痛みや傷などがある物は修理へ回すよう指示し、問題ない書簡竹簡は明日天日干し出来るよう仕分ける。 同時に掃除を行い、そして今日纏め上げられた書簡は別場所へと厳重に保管する。 通常業務の後の仕事で疲れている上、馬鹿な兄は仮病を使い上手く逃げたと知り苛立ちが増す。 
頼むからさっさと終わらせて帰らせてくれと願うばかりだ。

しかしそんな方淵の苛立ちも知らず、集められた部屋の明かりが落とされ、大臣が笑みを浮かべる。 
文官が足を運ぶことのない刑房へ向かう事となり、近くには罪人の骸が埋められた場所があるとか、夜な夜な罪人の苦しげな呻き声が聞こえるとか、夜になると斬首時の音が聞こえてくるなど、蝋燭の灯を持ち虚ろな表情で語る大臣からの話しに、既に幾人かの文官が足を震わせ始めていた。

方淵がくだらないと溜め息を吐いている内に、早速第一班が出立した。 
戻って来た時の表情を見て怖がらなかったかを判別するというのだが、しかしいくら待っても戻る気配がない。 翌日の政務に差し障るのではないかというほど時間が経過し、様子見を兼ねて次に予定されていた班が次々と出立することとなった。 
そして五つの班が出立したが、どの班の誰一人として戻る様子がない。

流石に奇怪しいと大臣が焦り出し、様子を見てくるよう指示を出した。
これ以上面倒が続くのは勘弁と、捜索隊に名乗りを上げたのは方淵と水月。 
水月は 「早く切り上げたいからね」 と珍しく参加意欲を見せるが、方淵は理解していた。 
こいつは今にも現れそうな陛下の存在に酷く怯えているのだと。 

兎も角、戻ってこない輩の捜索を開始するため、方淵と水月は出立した。



実は、普段足を運ばない場所ということもあり、蝋燭の明かりだけでは心許ないと幾つかの角を曲がったところで足が竦む者達が続出し、次の班と合流したはいいが皆が動けなくなり、結局は大人数で固まり進退に悩んでいたと聞き、方淵は頭痛でもあるかのように額を押さえ込む。 
話しだけで終わらせて置けば良かったものを、肝試しなど言い出した奴と賛同した奴らを陛下の御前に突き出しやると怒鳴りたい気持ちを押さえ込み、殿に戻るよう声を掛けていると、勇気を振り絞って先に進んだらしい幾人かが必死に走り戻って来る姿が見えた。

「叫ぶな、走るな、静かにしろ!」(小声)
「みっ、しっ、みっ! お、お・・・っ!」

両手を広げて爆走する者たちを止めると、唇を震わせながら地面に座り込んでしまった。
意味不明な呟きを漏らし、蒼白の面持ちで全身を震わせ酷く狼狽している様子に、その場に居た他の文官たちが声なき悲鳴を上げて、脱兎の如く殿へと走り戻って行く。
水月が片膝をつき何があったかを問うが、震え続ける彼らは荒い息を整えようと必死に口を開けるばかり。 背を擦り続けると、しばらくの後、ようやく一人が水月に顔を向けて頷いた。

「何があったのですか?」
「し、白い・・・・・ 女が、み、いっ、いた!」
「貴方達が進んだ方向は、どうやら刑房とは違うようですね。 あちらは・・・・後宮があるはずです。 間違って後宮庭園へと迷い込み、侍女でも目にしましたか」
「闇夜に侍女の衣装を見て慌てふためいたか。 まあ確かに見つかったら大変な事態となるからな。 それはそれで怖いことになるだろう」

刑房のある指定された道順は左だというのに、彼らが走り戻って来た方向は右だ。 
その先にあるのは後宮であり、それなら侍女が女官の姿を見たのだろうと方淵と水月は考えた。 
遅い時間だ。 見つからずに済んで良かった。 もし侍女に気付かれ叫ばれたら、警護兵の警笛が王宮中に鳴り響き、想像するのも恐ろしい事態となっているはずだ。 

ひどく震える様を見て嘆息を零すが、彼らは違うと首を振り続けた。 
呟くように 「侍女などではない」 と繰り返すが、今はそれより場を離れる方が先決と戻るよう伝えると、一人が大きく目を見開き、方淵と水月の袖を掴んで来る。

「ふ、二人・・・・まだ、む、向こう・・・・」
「向こうって、後宮・・・・か?」

眉間に皺を寄せて額を押さえる方淵に震える男は涙目で頷いた。 問題多発だと、全て放り投げて帰りたくなる。 しかし放置する訳にはいかない。 もし恐怖の余り残った奴らがとんでもない方向に逃げ出したら、今晩集まった官吏ら全員の責任となり、陛下よりどんな叱責を受けるか想像に易い。 下手な肝試しより、その方が怖いと方淵はギリギリと歯噛みした。

「何があったのか詳細を報告しろ!」(小声)

面倒ごとばかり起こしやがってと口調荒く方淵が問うが、恐怖に震える男は首を振って呻き続ける。 他の者が蒼褪めた顔で首を竦め、口篭りながら答えた。

「言われた順路とは違うと気付いて戻ろうとした時、コイツがどこかを指差したんだ。 俺は蝋燭に気を取られて見ていなかったのだが、他の奴らが短い悲鳴を上げて。 次の瞬間二人がその場に崩れ落ち、俺はそれに驚いて走り出した他の奴らの後を追って・・・・・。 だからコイツが何を見たのかは判らない」
「悲鳴を上げたのか・・・・。 侍女か女官に声を聞かれた可能性があるな」
「それより後宮に二人残っている方が問題だよね。 困ったな」

悲鳴を上げることも情けないが、侍女が叫ばずに済んで良かったと思うしかない。 警護兵が来たら、その場で斬首も免れないだろう。 命が助かったとしても何と言って誤魔化せようか。 こんな夜更けに迷子になりましたなど、通用するものではない。
   
後宮には悔しいことにあの陛下が何故か大事にしている呑気な顔をした妃が一人だけ。
が、普段の寵愛ぶりからして、例え間違えとはいえ足を踏み入れたなどと陛下が知れば首が飛ぶだけでは済むまい。 一族郎党この世から消滅させられてしまうだろう。 
あんな呑気顔の一介の妃妾如きに、清廉にして偉大な貴き陛下が何故あのように寵愛を示すのか解らないが、それでも一応、妃は妃だ。

その時、ようやく呻き声を漏らしていた男が正気に戻った。 蒼褪めた顔を上げた男は方淵と水月に縋るような視線を向け、震える手を差し出す。

「ふ、二人があの場に残っている。 た、助けに行ってくれないか?」
「行くしかないだろう。 そもそも侍女を見たくらいで叫びながら逃げ出すなど、見つかったらどうするつもりだったんだ。 順路を間違えるのもおかしいだろう。 王宮に何年従事しているのだ。 第一こんな馬鹿な催し物を誰が提案したのかと・・・・」
「方淵殿、今はそんな話をしている場合じゃないだろう。 まずは二人を早々に回収することだね。 まあ侍女に驚くのは恥ずべきところだが」
「違う、侍女なんかじゃない。 あ、あれは・・・・ゆ、幽霊だ」
 
怯える男に方淵が眇めた視線を落とすと、男は大きく震えて 「回廊を青白い女が彷徨っていた」 と掠れた声で答え、そこで気を失ってしまった。 場にいた班の者に昏倒した男を連れ帰るよう指示し、肝試しの中止と詳細を出発地に居る皆へと報告するよう伝え、急ぎ撤収するように話す。 これ以上の危険は長引かせるべきではない。 一刻も早く場に残された二人を回収して帰るのが一番だと方淵は判断した。 

「さて、私も付き合うよ。 まだその場で動かずに居てくれると助かるけどね」

場に残った方淵に水月が悲しげな顔で告げる。 その言葉に、慌てふためいて見当違いの方向に移動する二人の姿が脳裏に浮かび、方淵は寒気に襲われた。 出来ることなら気を失っていてくれと願ってしまう。 どこまで入り込んだのか見当もつかないが、後宮の更に奥で腰を抜かしている可能性もある。 せめて叫び声を上げるのだけは勘弁してくれと願うばかりだ。

警護兵に遭うことがないよう緊張を漲らせ、それでいて面倒ごとに足を突っ込んだ自分に歯噛みしながら方淵は回廊下を潜り抜けた。 危険は充分解っている。 自分が助けに行く謂われはないし、助けに行く義理もない。 だが見つかれば陛下の怒りが文官全員、特にこの肝試しに参加した者たち全員に落とされるのは間違いがない。 その際、どれだけ冷酷非常な目に遭うか。

想像することさえ今は出来ないと額に手を宛がった。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 02:26:01 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-07-25 木 06:23:49 | | [編集]
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2013-07-25 木 09:30:13 | | [編集]
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2013-07-25 木 22:53:56 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。はい、文官は全員集合ということで(数人逃げましたが)水月さんにはちゃんと出て貰いました。underもご覧頂き、ありがとう御座います。あっちはいつものんびり更新なので、気長にお待ち頂けたら助かります。
2013-07-25 木 23:12:04 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。バイト妃のアラレモナイ声。うん、無理だよね~(爆)誰もいないはずの後宮立ち入り禁止区域をうろつくったら、やっぱり女の幽霊を想像しちゃう。心霊関連の番組も多くなる時期ですしね。今回は痛いことなしなので、気楽に楽しんで書いてます。 気楽じゃないのはunderの方で、同時進行なので寝不足です(自爆)
2013-07-25 木 23:15:51 | URL | あお [編集]
Re: 何だかんだで面倒見がいいよね(笑)
ダブルS様、コメントをありがとう御座います。私は生徒会で肝試しした時、地元の墓に集合で10人で敢行したことがあります。田舎の墓って外灯もないし、超怖いし、虫多い。香に刺されまくった記憶がありますよ。本物は一生見なくていいです。怖い話しや映画は好きだけど、本物は絶対にちびる自信あります!
2013-07-25 木 23:19:04 | URL | あお [編集]
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