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涼夏を求め  4
胃の痛さが咽喉の痛さに、そして鼻水に移行しているうちの娘。でもバイトは休めない。友人とのお出掛けはしたい。それじゃあ、しばらく治りそうも無いです。 あれ?確か夏風邪って・・・・・。 おかしいな、うちの娘に限って(笑)
 

では、どうぞ












「と、言う訳ですわ。 ・・・・お妃様、老師様の御指導をお受けになる際、遅くならないよう御気を付け下さいませ。 もし噂通りでしたら恐ろしいです」
「御指導でしたら、老師様に足を運んで頂くというのは如何でしょうか」
「日が長いとはいえ、夕刻以降は危のう御座いますわ」

心配げに妃に進言してくる侍女達に、夕鈴は柔らかく微笑んだ。

「ご心配頂き、ありがとう御座います。 老師様に御足労頂く訳にはいきませんので、これからは早い時刻に戻ることに致しますわ」

老師に足を運んで貰うなど出来る訳がない。 
私は老師に用事があるのではなく、掃除のために立ち入り禁止区域に行っているというのに。 
口から血を流しながら後宮を彷徨う無念の死を遂げた妃の亡霊や幽霊の噂に、侍女が怯えるのは判る。 確かに想像するだけで怖い。 お化けとか幽霊とかは見るのも聞くのも大嫌いだ。 お化け屋敷の看板を見るのでさえ怖い。

それにしてもそんな噂が政務室に流れるなんて、それを陛下が知ったらどうなるのか、その方が恐ろしい。 
厨房や侍女さんまで知っているということは、もちろん李順さんの耳にも届けられていることだろう。 李順さんなら怪文書の時同様に放置しろと言い放ちそうだが、噂の場所が後宮だけに放置するだろうか。 
・・・・・するかも知れない。 
陛下と政務に問題が無い限り、放置しても構わないと思うだろう。
まあ噂だ。 その内消えていくことだろう。 夏の風物詩として一時騒がれるだけだ。

「湯殿はいつも以上に灯りを用意致しますね。 陛下が渡られるまで部屋の灯りも多く燈すことにしましょう。 念のため祈祷師をお呼び致しましょうか」
「え、いや、そこまでは」
「そうですね。 今の内に御札の用意をお願いして参りますわ!」
「え、いや、そこまでは」
「それなら御供物の用意と炉も用意しましょう! 清めの水も急ぎ用意を!」
「え、いや・・・・・ ええっ!?」

蒼褪めた侍女が一斉に動き出し、夕鈴は蒼白になった。 
政務室の噂にここまで侍女が反応すると思わなかったが、考えてみると噂の亡霊は後宮に出るのだ。 侍女が恐怖に怯え、何か対抗出来ることはないかと動きたくなるのは判る。 
判るけど、お金が掛かることとなると話は別だ。 李順さんが許可する訳が無い! 万が一許可したとしたら、私の借金に追加されるかも知れない? そっちの方が怖いんですけどーっ!

後宮は女同士の陰湿な戦いが繰り広げられた、血で血を洗う闘争の歴史が詰まった場所。 
一人の男性を巡って、恐ろしい策略が駆け巡る華やかさを伴う戦場。 
その中で戦いに敗れた女の恨みが穢れた妄執のように建物に蔓延る恐ろしい場所でもあると、後宮に勤める侍女は身を以って知っているのだろう。
祈祷や清めの用意を始めた侍女に、夕鈴は彼女達とは違った意味で怯えるばかり。


 
いつもより早い時刻、妃の部屋に渡った陛下は部屋に多く燈る灯りに気付き、夕鈴を抱き上げた。 

「まあ、陛下。 今日はいつもより早い時刻のお渡りで御座いますね」
「まだ仕事があるのだが、君が心配で顔を見に来た。 我が妃に憂いは無いか」

妃を抱き上げたまま心配げな言葉を優しげに紡ぐ陛下に侍女達は一様に微笑み、急ぎ夕餉の仕度に奔走し始める。 夕鈴が 「御飯食べていけますか?」 と尋ねると、笑みを浮かべて抱き締める強さを増した。 夕鈴が困惑していると耳元に小犬の声で囁かれる。

「夕鈴、怖くない? 大丈夫? 怖い話し、嫌いだよね」
「だ、大丈夫ですよ、侍女さんもいらっしゃいますし。 ・・・・もしかして噂の件ですか? それで来てくれたんですか、陛下」
「怖いの苦手なの知っているし、内容を聞いて夕鈴が心配になったんだ」

陛下の言葉に夕鈴は思わずしがみ付いた。 思わずしがみ付いてから、まだ侍女がいると気付いた夕鈴は慌てそうになったが、そこは必死に妃演技で微笑みながら陛下に寄り添い、小声で侍女を下げて貰うようお願いする。 驚いた顔の陛下はそれでも手を上げて侍女に下がるよう伝え、いつも以上の笑みを浮かべた侍女は急ぎ夕餉の仕度を済ませて退室した。 

「えっと、急に抱きつくなんて嬉しいけど、やっぱり怖いよね、噂」

とりあえず夕餉を共にすることになり、椅子に座った陛下に問われた夕鈴は所載無げに視線を落とす。 肩を竦ませる様子に陛下は心配げに話し掛けるが、夕鈴は箸を持ったまま動かなくなった。 見ると涙目になり、ふるふると震えているのが判り、箸を持つ手を握ると反対の手が重なりぎゅっと握り返される。

「陛下・・・・・。 ご、ご、ご・・・・・」
「ごはん? 怖くて食べられない? 僕、今夜泊まろうか?」
「いえ、そうじゃなくて。 ま、まずは・・・・ごめんなさいっ!!」

立ち上がった夕鈴は卓に頭を打ち付ける勢いで頓首し、大きな声で謝罪した。

「ど、どうしたの夕鈴っ!?」
「あの、あのっ、噂の件ですが、詳細を教えては頂けませんでしょうか!」

箸を放り出して真剣に聞いてくる夕鈴に驚きを隠せない。 怖がりで、以前老師から後宮であった妃同士の陰湿な血に濡れた話を聞いた時は僕に攀じ登るほど怯えていたというのに、自ら話しを聞きたいなど何があるというのか。
怖さとは違う様子で怯える夕鈴を抱きかかえ、背を撫でて落ち着くように告げた。

「噂の件って、夕鈴は何処まで知っているの?」
「じ、侍女さんが厨房で聞いたって言って。 ・・・・後宮に過去亡くなった妃の幽霊が出るって。 立ち入り禁止区域の回廊を彷徨っているって。 白い衣装で歩いているって・・・・」
「あー・・・。 僕が耳にしたのと同じだね」

蒼褪めた顔を上げる夕鈴は、陛下の襟を掴むと今にも零れそうな涙目で問い掛ける。

「それって出所は・・・・? 警護兵からではないですよね?」
「うん。 僕が耳にしたのは昼過ぎだけど、幾人かの文官が具合が悪いと早退を申し出て、李順が怒っていたよ。 出所はたぶん文官だと思う」
「・・・・文官の皆さん」

襟を掴んだまま項垂れた夕鈴の背を撫で、大丈夫かなと顔を覗くと、蒼白の顔色に驚かされる。 このままでは倒れちゃうかなと、夕鈴の口におかずを詰め込み、促されるまま続きを話す。

「昨日から書庫の大掃除と手入れが始まったんだ。 それは知っているよね、李順から聞いているだろ? 書庫に入っちゃ駄目って言われているでしょ」
「・・・・んぐ」
「はい次食べて。 その掃除の後に莫迦な輩が王宮で肝試しをしたらしいんだ」
「ぎも・・・・っ!」
「ちゃんと噛んでね、夕鈴。 で、どうやら間違って後宮立ち入り禁止区域に足を踏み入れた馬鹿がいるようで、その馬鹿が恐怖の余り何かを見間違えて騒いだらしい。 迷惑な話だ」

最後は狼陛下の口調で言い捨てながら、次のおかずを夕鈴へと運ぶ。 その冷ややかな口調に少し我を取り戻した夕鈴が慌てて箸を持ち、陛下の口へとおかずを運び返す。

「で、では立ち入り禁止区域に間違って来た人が噂の元? その人は今日、どうされているんですか? その噂を李順さんは何て?」
「・・・・・噂は肝試しで、後宮立ち入り禁止区域にまで踏み込んだ者が見た幻に怯えた様を広めたようだ。 立ち入り禁止区域にまで入り込んだ者は熱が出て今日は休みと聞いている。 李順は馬鹿なことをしたものだと文句を言っていただけで・・・・。 夕鈴、本当にどうしたの?」
 
口いっぱいのおかずを飲み込むこともせず黙り込んでしまった夕鈴の背を撫でると、大きく震えた後、突然咀嚼し始めた。 目を瞠って眺めていると、おかずを飲み込んだ夕鈴が膝から飛び降り、床に座り込むと平伏してまた謝罪を始める。

「もっ、申し訳御座いませんっ!!」
「夕鈴っ! どうしたの、起きて、立って、謝らないで!」

床から剥がすように長椅子に座らせると、夕鈴は長椅子の上で正座して謝り続ける。

「う、噂の亡霊は・・・・・ 私なんですっ!」
「・・・・え? 夕鈴、どういうこと?」





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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:53:04 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-07-28 日 02:04:36 | | [編集]
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2013-07-28 日 07:36:54 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。ダラダラ長くなりそうで、慌てて纏め作業に入ってますが、つい本を読んだり、遊びに行ったりと、中間テスト前の学生のようです。 お付き合い、宜しくお願い致します。
2013-07-28 日 23:20:22 | URL | あお [編集]
Re: 「馬鹿」連呼(^_^;)
ダブルS様、コメントをありがとう御座います。怖がり夕鈴、夜中に掃除は無いですが、・・・似たような? 陛下をどう動かすか、楽しく書いてます。が、ダラダラ~になりそうで時間を作りながらダラダラ書き直してます(笑) あ、私「G」捕まえられます。というか、捕まえるのが私だけ。男共は役に立たないので(爆)
2013-07-28 日 23:36:09 | URL | あお [編集]
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2013-07-29 月 21:14:46 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。 そうそうお化けは夕鈴です。コレが書きたくて、方淵を登場させちゃいました。あ、桐もこの後出て来ますので、どうぞ宜しくです。まあチョイ役ですけどね。方淵との絡みより、陛下との絡みが多くなりそうで、ダラダラ修正しながら楽しんでます。もう少しお付き合い宜しくお願い致します。
2013-07-30 火 00:29:49 | URL | あお [編集]
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