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涼夏を求め  10
暑くなりました!それもすごく! そんな中、娘は夏コミの準備に勤しんでます。コスプレをするためにミシンを動かし、普段は使わないだろうオバサンサンダルを買い、カツラをネット購入してます。好きにしていいけど、頼むから熱中症にだけはならないで欲しいです。
under更新済み。やっとラストとなりました。R指定をご了承の上、御覧下さいませ。


では、どうぞ














陛下と夕鈴は後宮裏手にある小高い山へと向かった。 近くまで足を運んだことはあるが、普段は侍女を伴っているので登ったことがなく、夕鈴は初めての場所に口角を上げる。 
その頂へと続く階段には亭にあったような小皿が置かれ、足元を仄かに燈しているのが判り、陛下はどこまで人を喜ばせるのだろうと、嬉しくて夕鈴の目が潤んでしまう。 
階段を前に、握ったままの手を強く掴むと包み込むように陛下のもう片手が重なり、夕鈴の心臓が大きく跳ねた。 絶対に女ったらしだと思ってしまうのは、陛下の動作が流れるように自然だからだ。 でも、そこは演技の参考にするべきかしらと少し笑ってしまう。
 
階段へと足を進ませる陛下が振り向き、笑みを浮かべて提案してくる。

「折角の月明かりを楽しむために、進みながら吹き消して行こう」
「帰りの足元が心配じゃないですか? 転んでしまいそうですよ」

粗忽な自分が思い浮かび、陛下が消していく小皿を困った顔で見つめてしまう。 どんどん消しながら山へと登り茂みを抜け、そして少し平らな場所へ連れて行かれた。

「夕鈴、どう?」
「・・・・う、わぁ・・・。 すごい、綺麗・・・・・」

小山の横には池が広がり、その黒い水面に月が映っている。 
周囲に広がる庭園の素晴らしさと、所々に置かれた篝火、遠くから香ってくる夜香樹の匂い、涼やかな虫の音、そして夜空の星々に夕鈴はぽかんと口を開けたまま、目を大きく見開いた。 
夜風が髪を撫でた時、陛下の手が伸びて来るのが判り顔を向けると 「落ちそうだよ」 と挿したままだった夜来香の花を摘むのが見える。 香りは少し消えかかっていたが受け取った花を夕鈴は胸の合わせに入れると、ぽんっと押さえた。

「この風景と一緒に、夢に花の香りが出て来たら嬉しいです!」
「その夢に僕も登場出来たら、もっと嬉しいな」
「そ、そうですね。 陛下と一緒に歩いた庭園ですものね」

夢のような世界を夢で見る。 
バイト終了後、下町に戻ったら何度も思い浮かべるだろう夢の世界。 目の前に広がる光景は、本当に一時だけの夢なのだと夕鈴は目を細めた。 気付けば夜風が帔帛を攫うほどに強くなり、慌てて手繰り寄せると陛下に肩を引き寄せられる。 ぎょっとして顔を向けると小犬陛下が首を傾げて来た。

「風が強くなって来たけど、寒い? また少し歩くけど、こっちから行くと近道なんだ。 この先は灯りがないから手をしっかりと繋ごうね、夕鈴」

返事も聞かずに歩き出す陛下に手を強く握られ、足元が見えない道を前の背だけを頼りに進み出した。 強張る手で帔帛をしっかり掴みながら、跳ね回る鼓動を抑えるように胸に押し付け、夕鈴は足を進める。






***







「風が少し強まって来たね。 ・・・・さて、ここは何処かな?」
「・・・・王宮内に決まっている!」

王宮を把握しているはずが、幾ら考えても頭の中の地図と一致しない場所に佇む羽目となり憤慨する柳方淵。 このままでは埒が明かないと元の道順を引き返すことになったのだが、違和感だらけの道を進み続け、気付けばかなりの距離を歩いていた。 
いや、歩かされている感が強いと方淵は呟くが、それでも休む訳にはいかず建物の壁伝いに足を進めていると、しばらくして回廊が見えて来た。 
回廊の天井から吊り下げられた見慣れぬ灯篭が揺れるのを目にして、二人は安堵の溜め息を吐く。 見慣れない灯篭があるということはたぶん後宮側だろうと周囲を見回した。

「下手に進むと、この間の馬鹿どものように後宮立ち入り禁止区域へ足を踏み入れる危険性がある。 気を付けないと陛下直属の隠密に誘導され、馬鹿な者たちの仲間入りとなるぞ」
「ああ、それは勘弁して欲しいね。 陛下から冷たく見下ろされると思うだけで一年は邸に籠もりたくなる。 いや、見下ろされるだけじゃ済まないか。 それどころか」
「・・・・静かにっ」

人の気配を感じた方淵が周囲を窺い腰を落とした。 水月もそれに習い腰を落としたが、その足元に何かが転がって来て思わず飛び退がる。 
それは手の平ほどの大きさの球と判り、二人が眉を顰めて顔を付き合わせた瞬間、その球から白煙が立ち上がった。 急ぎ袖で口元を隠して場を離れるが、進む方向に球が転がり出て来て、避けながら走っている内に誘い込まれたのか、後宮庭園へ足を踏み入れていると気付く。

「ちっ! このままでは不味いことになる。 水月、政務室方向へ向かうぞ!」
「体力的に無理がありますので、このまま周囲が明るくなるまで動かずに居るというのは」
「却下だ!」

白煙を吸い込むとどんな作用があるか不明だが、この先に誘われる方が面倒だ。 方淵は水月を叱咤しながら白煙の中へ飛び込み、足早に政務室方向へ向かった。
いつの間に後宮へと続く門をくぐったのか判らないが、それよりも現状をいち早く把握し、この場から離れることが先決だと周囲を見廻す。

後宮庭園と王宮側の庭園は基本別れている。 不用意に男性が後宮に紛れ込まないように門や門番が置かれ厳重に管理しているはずだが、現在いる陛下唯一の妃がいつでも政務室に来られるように、その門を開放していることが多いと聞く。
後宮から出ずに閉じ籠もっていればいいものを全くもって面倒な妃だと苛立ちが増す。
夜間は特に多いはずの警護兵の姿もなく、隠密と思われる者に誘導されたかのように足を踏み入れてしまった後宮庭園。 見つかればどんな言い訳もどんな立場も通用するはずがない。 更に不名誉な謗りを受けるだけに留まらず、命があるかどうかさえ判らない。 
あの妃に対し、陛下がどれほどの寵愛を示しているのか厭でも目にして来た。 
あの妃の何処が良いというのか陛下の御心は未だ理解不能だが、ここにいて不味いということだけは充分理解出来る。 背を流れる汗に夜風が掠め、ゾクリとした寒気に襲われた。


その時、前方から妙な地響きが聞こえ、足を止めた方淵と水月は佩いているものに手を伸ばす。 月が雲に隠れ、建物に反響して何による音だか判明しない。 険しい表情で前方を凝視していたが音が近付くにつれ、それが人の足音だと判った。

「~~~~~~っ! ひぃっ、ぃっ!!」
「わ・・・・っ! でっ! で・・・・っ!」

意味不明な悲鳴を上げながら勢いよく近付く者たちを見ると、それは肝試しに参加したはずの文官たちだった。 眉間の皺を深くした方淵が走り来る者たちを急ぎ手で制し、走るのを止めるよう告げると気が抜けたように皆、座り込んでしまう。

「いや、座るな! お前達、ここが後宮の庭園だと判っているのか? 静かに場を離れなければならないというのに、座り込んでいる場合ではないだろうがっ!」
「声が響きます。 方淵殿もお静かに・・・・・」
「ぐっ!」

水月が座り込んだ文官の背を叩き、起き上がるよう声を駆け回っている間、方淵は一人地団太を踏みそうな自分を渾身の思いで抑え込んでいた。 今にも叫びたくなる自分を律するだけで精一杯。 今、己がいる場所が後宮であるということ、消えたはずの文官が情けなくも地に座り込んでいること、直ぐにでもこの場から離れなければならない状況だというのに陛下直属の隠密の考えが不明なことなどで苛立ちが爆発しそうだと奥歯を噛締める。
しかし、これ以上苛立っていてはまともな考えも浮かばないだろうと、地面に座る文官たちに背を向けて、方淵は眉間の皺を指で伸ばし荒い呼吸を必死に整えた。

「兎に角、この場から脱するのが先決だろうね。 静かに移動するよ」
「お、お・・・。 は、氾殿・・・・、み、見た・・・・・」
「・・・・これ以上の面倒ごとに巻き込まないで欲しいなぁ」

どうにか立ち上がった文官が縋るように水月に近付くと、蒼白の表情を浮かべ震えながら訴えて来た。 今以上の面倒ごとなど、考えるのも厭だと水月は嘆息しながら首を振る。 最悪の状況下、今彼の気持ちを支えるのは邸で待つ池の可愛い鯉たちだ。

「し、白い女が・・・・・ああああっ。 いた、見た・・・」
「俺も見た・・・・。 頭から足先まで白くて・・・・・」
「風にふわぁあって・・・・。 それも恐ろしい形相でこっちを、み、み、み」

今にも膝から崩れそうな体勢の男達に囲まれ、水月は意識を飛ばしそうになる。 
しかし意識を飛ばしている訳にも、このまま彼らの愚痴を聞いている訳にもいかない。 月明かりだけが頼りの薄闇の中、一刻も早く庭園を抜けて政務室側へ抜けることが先決だ。 少しは落ち着いたように見える方淵に視線を送り、月を指差し脱出の方角を確認する。 皆に静かに移動するよう伝えて足を進め始めると、幾人かの文官が短い悲鳴を上げた。

「今度は何だっ!?」
「・・・・あ、あっちにまだ二人か三人ほど残っているはず・・・・」
「なっ!?」

またか!と頭を抑え込んだ方淵の肩を水月が優しく叩き、乾いた笑いを零す。

「今回も助けに行くべきだろうかねぇ、方淵殿?」
「~~~~~~っ!!」
「誰か一人でも見つかれば口を割り、一蓮托生になる予感がするよ」
「~~~~~~っ!!」

方淵の苦悩の深さが判り、水月はもう一度肩を叩いた。






***







「そろそろ陛下が登場され、うろつく文官を一喝ではなかったのか?」
「う~ん、その予定だったんだけどねぇ」

広い後宮庭園を屋根の上から眺めながら浩大は肩を竦める。 予定通りなら陛下が隠密に移動させられた情けない文官たちの前に現れ、陰悪な視線で恫喝しているはず。 それが如何してこうなっているのだろうかと口を尖らせた。
まあ、お妃ちゃんをからかっている内、からかいが過ぎて何らかの不都合が生じたのだろう。 怒ったお妃ちゃんを宥める陛下の姿が浮かび、浩大は酒の肴になるだろうかと思案する。  
隠密たちは文官の右往左往する様を見てかなり満足していたが、さて、この後のまとめをどうしようかなと浩大が宙を見上げる。 そこへ桐が状況の変化を見下ろしながら呟いた。

「夜間は陛下とお妃が庭園散策するため、篝火などの用意や移動で庭師が徘徊すると伝えてあるが、こうも騒がしいと不審だと思われないか? 警護兵も下がらせているのだろう?」
「ああ、それは大丈夫。 後宮庭園に文官たちを移動させた時、念のためにと弱い睡眠香を侍女と女官部屋に焚いてきたから気付かれることはないと思うよ」

ああ、と頷き庭園を見下ろした桐は、皆に指示を出している二人の補佐官を指差した。

「柳と氾の子息は前回の肝試しで他の文官を助け出し怯えることはなかったと聞く。 他と引き離し、陛下に引き合わせる予定ではないはずだが」
「う~ん。 そう伝えておいたんだけどねぇ。 何故かこっちに来ちゃったみたい」

ケラケラと嗤う浩大は面白そうに立ち上がる。 

「当初の方針通り、柳と氾の坊ちゃんはあの集団から引き離して陛下の逆鱗から遠ざけてやろう。 あとはお妃ちゃんがどう動いているか調べてみるとするか!」
「・・・・どうやらあの二人は、腰を抜かして動けない文官らを助け出しに動くようだ」
「あらら~。 面倒ごとに首を突っ込むのが好きなのか、義侠心が強いのか。 まあ、親と違うのは見ていて面白いけど、今回は余計な動きを止めなきゃな」

背後に現れた黒衣の隠密に小声で指示を出し、浩大は桐を見た。 桐もゆっくりと立ち上がると、他の隠密の動きを陛下に報告するため移動を開始する。 
それを見送った浩大も夕鈴の動きを把握するために静かに屋根から離れることにした。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 02:08:08 | トラックバック(0) | コメント(8)
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2013-08-08 木 10:38:52 | | [編集]
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2013-08-08 木 11:15:55 | | [編集]
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2013-08-08 木 21:27:46 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。隠密たちは嬉々として画策したことでしょう。やっぱり脅かし役って楽しいですもの。underもごらん頂き、感謝感激です。そうそう、后が勝手に出奔すると、国家レベルの夫婦喧嘩となります。現代でも離婚やスキャンダルでニュースになり、株も大きく変わりますからねぇ。最後に甘いいちゃいちゃだけで終わる話も書いてみたいのですが、どうしてもギャグに走ってしまいます。とほほ。
2013-08-08 木 22:28:13 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
さき様、コメントをありがとう御座います。白い女、もうしばらくお待ち下さいませ。落ちは見えて来ていると思いますが、もうしばらくお付き合い頂けたら超嬉しいです。 陛下の理由はご想像通り、しょーもない理由です。(笑)
2013-08-08 木 22:29:49 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。キャンプお疲れ様です!! そういえばキャンプですが、旦那がランタン収集に一時凝り、家族分の誕生年に作られたランタンをいまだに飾っています。 それも楽しい思い出です。 ネットでキャンプ好きが集まって、新潟や静岡で集団キャンプも体験しました。 ネットで集まるのも楽しいですよ。 メーカーさんと一緒にキャンプするのも楽しいっす。 子供と一緒に私もいろいろな体験をしてます。自分が子供の頃は学校でのキャンプしかしたことがなかったからね~。 怪我だけはお気をつけ下さいませ。
2013-08-08 木 22:34:53 | URL | あお [編集]
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2013-08-09 金 21:19:00 | | [編集]
Re: 巻き込まれ型…
ダブルS様、本当にお久し振りです。体調は戻られましたか?コメントをありがとう御座います! 暑さが苦手な北海道生まれですが、いまや北海道も熱気むんむんで親に電話するとバテバテと泣いてます。この異常気象はいつまで続くんでしょうかね~。そしてこの話もいつまで続くんでしょうかね~。(笑)
2013-08-09 金 23:41:23 | URL | あお [編集]
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