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涼夏を求め  11
いつものことですが、何故長くなるのか!? 当初は短い話だったはずなのに、勝手に散歩に行くことになるわ、文官が大勢捕らわれるわ、プロットと方向が違ってきたー!(笑) 
娘と買い物に行き、娘の友達母とばったり。小学一年時からの付き合いで、お喋りに花が咲き、気付けば一時間以上立ち話。 腕に買い物した荷物の跡がつくほどで、それにもお互い大爆笑。 お店の方、マジにすいませんでした~。 

 
では、どうぞ














後宮庭園と建物の間を、前屈みに走り抜ける二人は互いにひどい頭痛と戦っていた。
場に残した文官らの中で、いち早く正気に戻った者に月から判断した出口方向を教え、出来るだけ静かに王宮へ向かうよう伝えた。 侍女や女官に見つからないよう厳重注意はしたが、あとは奴ら次第だと気持ちを切り替える。 
今は奥で腰を抜かした数人を連れ帰るために移動するだけだと二人は足を急がせていた。
陛下のために日々従事するはずの臣下らが、唯一と慈しむ妃が住まう後宮に忍び込んだなど知れたら一体どんな事態となるか、想像すると頭痛が酷くなる。 全体責任となるだろうし、切捨てられる文官らのせいで政務が今以上に逼迫することは想像に易い。

全身を襲う寒気を無理やり振り払い、水月に視線を向ける。 視線に気付いた水月が小さく頷き、周囲を確かめた。 しんと静まり返った後宮。 後宮建物から一番近い池畔の四阿に腰を抜かした文官が数名居ると聞いてここまで来たのだが、その姿が見当たらない。
中で倒れているか身を竦ませているのかと足を踏み入れるが、やはり無人と判り、方淵は舌打ちをした。 

「これでは・・・・ 戻るしかないだろうね」
「恐怖の余り何処かへ移動したか? 下手なところに逃げ込まれると面倒だ」
「明日の政務室が炎獄となり業火に息絶えるか、氷獄の中で凍えて息絶えるか・・・・。 ああ出仕したくないな。 やはり明日は」
「休むなと何度も言っている! それより随分奥まで入り込んでしまった。 ここから奴らを探し出すのは困難だろうが、あと少しだけ」
「・・・っ! 方淵殿っ」

四阿から出ると周囲の茂みから黒衣の人物が数人現れ、そして多方向から小さな球を投げ付けて来た。 少し黄色かがった白煙は先ほどの霧状のものとは違い、咽喉に痛みを伴いながら周囲が見えないほどの量で、袖口で口周りを押さえ込んだが嫌でも吸い込んでしまう。 
場を離れようにも大量の煙で退路を見極めることが出来ず、細めた目で隣に居たはずの水月を確かめようとした時、彼の崩れ落ちる姿が目に入る。 
途端、方淵の目の前が朦朧とし手足の感覚が痺れ、急ぎ何処かを刺激して意識を取り戻そうとするが、混沌とした闇に飲み込まれる自分を自覚した。 何かを見極めようと足掻くが大きな闇は全てを覆いつくし、そこで方淵の意識は失われる。





***





庭園池畔の四阿柱に凭れ掛かっている陛下の姿を確認した桐はその足元に静かに跪き、大まかに隠密たちの動向を報告し、じっと顔を窺った。

「詳細はわかった。 引き続き隠密らに文官を予定の場所へ誘導するよう伝えよ」
「御意。 ところで、あー・・・・陛下は御一人ですか?」
「・・・・・ああ」

桐は陛下を見つめていたが、険しく寄せられた眉の意味を知り僅かに口角を持ち上げる。 陛下からそれ以上は訊くなの雰囲気が醸し出された瞬間、意を汲み取った桐が僅かに苦笑を漏らした。 舌打ちが聞こえ、桐が表情を落とすと陛下が腕を組みながら睨ね付ける。

「余計なことは口にせずとも良い」
「御意。 で、今はどちらに?」
「・・・・部屋へ向かった・・・・はずだ。 ・・・・たぶん」
「ま、浩大が向かっておりますので大丈夫でしょう」

口角を上げた桐は、対照的に口元を引き締めた陛下にそう告げると、受けた指示を実行すべく立ち上がった。 浩大の想像通り、陛下はお妃をからかい過ぎて傍を離れざるを得ない状況を自ら招き入れたのだろうと思い視線を向ける。 このままここに居て、視線も合わさず腕を組み続ける陛下の悋気に触れては大変だと、桐は踵を返して場を離れた。


再び虫の音が響き出した庭園で、陛下は深く溜め息を吐く。
突発的に跳ね回る兎に振り回され、今まで何度溜め息を吐いただろうか。 
確かにからかいが過ぎたことは認めるが、何故あんなにも涙を浮かべて人を翻弄するのだろう。 
皿に乗っているのかと思い手を伸ばすと、後ろ足の厳しい蹴りが飛んで来る。
同じことを繰り返さぬようにと距離を置くと、袖を掴んで擦り寄って来る。 
自分を律して会う時間を減らすと 『私、クビですか!?』 と泣き喚く。 

『陛下! またイヤガラセですか!?』

つい先程夕鈴から言われた言葉を思い出し、眉間に皺が寄るのがわかる。 
少し・・・・からかいが過ぎたのは認めよう。 少し悪戯が過ぎたのは反省しよう。
でも、あの時は手を出さざるを得ない状況だったんだ。 それなのにあんなに怒るなんて。
いや・・・・・怒るだろうな。 
間違って唇が触れただけで大変だったというのに、学習能力がないのは僕の方か? 
あの兎の前では小犬も狼も通用しない時がある。 それが楽しい時もあれば面白くない時もあり、夕鈴に通じないと愚痴を言いながら、でも通じては困ると狼陛下で覆い隠す。

確かに翻弄しているのだろう。 距離を取るべきかと考えたこともあるが、結局は君に触れたい自分が居るのだ。 もう逃がせないと本心から望むのに、周囲の現状が未だそれを赦さない状況。 李順を含め、腹心にも狼のまま対応せざるを得ない。

「・・・・はぁ」

組んでいた腕を外し、手の平をじっと見下ろす。
深い溜め息を何度も吐いてしまうのは、脳裏に浮かぶ夕鈴の涙目が思い出されるからだ。 
そんなつもりはなかったと、必死に伝えれば伝えるほど兎は距離を置き、そして踵を返して逃げ出した。 逃げた兎は戻って来てくれるのだろうか。

煌々と輝く月が雲に隠れる様を目に、僕はまた溜め息を吐く。 
逃げた兎が本格的に逃げ出さないよう、僕は溜め息を零しながら必死に考え続けた。
強固な囲いがいいのか、美味しい餌がいいのか。 
・・・・それとも、いっその事、狼の餌食にした方がいいのかと。






***






夕鈴は激しく怒っていた。 
さっきまで陛下と手を握り、甘い夢が見せる幻想に蕩けていた夕鈴は居ない。
闇雲に進むと危ないと承知しているが、今はそんなことさえ頭から飛んでいた。 
腹が立って仕方がないと足元の石を蹴り飛ばすと、近くの木に当たった石は甲高い音を立て何処かへ転がって行った。 荒い息を吐きながら、胸元で押さえ込んだ帔帛を握り直す。

ワザとだ! 陛下のあの言動はバイト妃を翻弄することをただ楽しんでいるだけだ。
仲良し夫婦演技に必要だと、演技の勉強だと言いながら、あれは絶対に私をからかって楽しんでいるだけ。 狼陛下は政務のストレス解消にバイトを翻弄して楽しんでいるんだ!
何が虫の音を楽しもう、だ! 月の下でゆっくり散歩を楽しもうね、だ!
もう、一人で勝手に楽しんでて下さい!

確かに自分は惚けていた。 宵闇に包まれた庭園で、夜空の月や星、涼しげに啼く虫、池に映える月影、遠くから香る夜の花香に。 
だけど二人で居る時に何故狼になる必要があるの? 
突然の狼化に多少慣れたとはいえ、あの妖艶な笑みで近寄られると直ぐに対応するのは難しく、更に触れてくる熱に眩暈がしてしまう。 迫力ある狼陛下の微笑に対抗出来る女性などいるのだろうか。 人をからかうためだけに庶民には見慣れぬ高貴な男の色気を駄々漏れにして、手を取り腰を取り、顔を近付ける意味が判らない。

『二人きりでいる時は、互いの目を見て語り合おうではないか』
『とっ、突然、何で狼陛下になるんですか?』
『君の笑みが強張るのは狼の時が多いから少しでも慣れるようにね。 さあ、二人きりの時間を愛しい妻と過ごす夫の言うことを聞いて欲しい。 顔を上げて、その瞳を向けてごらん』

指先を絡ませながら笑みを浮かべて顔を近付ける。 何か変なことを言った覚えはないのに、急に狼になったと思ったら目で語ろうとか理解不能なことを宣い始める陛下に、夕鈴の目は点になるばかりだ。 その上、演技指導だと顎を持ち上げられ、間近に迫る陛下にどう対抗しようかと深呼吸を繰り返すしか出来ない夕鈴は、何んでこうなるのかと叫びそうになった。





***





夕鈴が怒りながら庭園を足早に歩き出す、少し前。 山の頂上から池や庭園、夜空を楽しみ、陛下と手を繋いで山を下り始めた夕鈴は後ろ髪を引かれるように何度も振り返る。 
次の夏、陛下と一緒に庭園に足を運ぶのは貴族子女である本物の妃になるだろう。 
そう思うと、もう少しその場に留まりたいと思う気持ちが溢れ足元が疎かになっていた。 木の根に躓き、転ぶと覚悟した時には陛下の腕の中で、バクバクと跳ねる心臓を押さえて目を瞠る。 

「・・・・さっきから何を考えている?」

頭上から落とされる低い声は狼陛下で、驚いた夕鈴が顔を上げると眉を寄せた険しい瞳で見下ろされていた。 驚いたまま返事が出来ずにいると抱き上げられ、そのまま坂を下りて池の畔近くの四阿へ到着する。 何を言えばいいのだろうと考えていると、四阿内の椅子に下ろされた夕鈴を囲むように陛下の腕が伸びて来た。 

「さっきから泣きそうな顔をしている。 何を憂いているんだ?」
「え? いや、躓いて転びそうになっただけで憂いてなんて・・・・」
「違うだろう? 庭園で虫の音を聞き始めてから、ずっと憂い顔だ。 夕鈴、隠さずに話して欲しい。 噂の件がまだ気になるのか。 それとも他に何かある?」

息が止まりそうになる。 
目の前には心配げな表情なのに少し嗜めるような視線を落とす陛下がいて、心臓が痛いほどに高鳴る。 俯きそうになる夕鈴は自分を叱咤して、真っ直ぐに陛下を見つめながら口を開いた。

「・・・・憂いなんてありませんよ。 そんな風に見えるのは・・・・きっと月が池に映っているのが綺麗だったり、虫の音が素敵だったからです。 夢見心地になっているだけですよ。 後宮庭園を陛下と散策なんて、庶民では想像も出来ない夢の世界ですし!」
「それだけ? 何度も哀しそうな表情で周りを見ていたけど、本当にそれだけか?」

大きく頷いた夕鈴は真摯に陛下を見つめる。
バイトの境界線だとか、立ち入ってはいけない立場とか、自分が係われない妃問題とか、頭の中をぐるぐる回る問題は陛下に気付かれてはいけないと。 自分はバイトとして王宮に居るだけの、借金返済が済むまでの臨時花嫁だと繰り返し思い出さなきゃ駄目だと律する。 
陛下の甘い演技に気持ちが浮ついていては、ちゃんとプロ妃の演技が出来ないじゃないか。 
常に毅然と職務を全うするプロ妃を目標としているはずなのに、憂いている場合ではない。
自分の気持ちと請け負った仕事。
それはきちんと分けて考えるべきで、陛下に気遣いを受けている場合じゃない。

「それと遠くから聞こえて来る叫び声のせいです。 今日はこの間のように立ち入り禁止区域で私を見間違えするような何かがある訳ないのに、何でって思うと眉だって寄ってしまいますよ」
「・・・・叫び声は気にしなくていいけど、それでも気になる?」
「だって・・・・・。 何度も何度も叫び声が聞こえてましたよ」

顔の両脇に伸びた腕を押しやりながら尋ねると、呆気ないほど離れて行く陛下の身体。 ドキドキする胸の上で帔帛を押さえ込むと、その上に陛下の手が重なる。 ぎょっとして凝視すると、手を重ねながら隣に腰掛ける陛下が囁くように話し掛けて来た。

「こんなに手が冷たくなるほど怖いんだ。 肝試しで情けない声を上げる文官どもの叫び声より、私が囁く甘い睦言だけに集中していたら怖さなど感じないだろう」
「違う怖さに襲われそうで・・・・・怖いですわ」

何かを隠している雰囲気の夕鈴に、正直に話して欲しいと尋ねると怯えているだけだと答えが返ってくる。 そんな答えで満足する訳がないだろうと思いながら見つめると、強く見つめ返された。 さて、どうしようかと思案しながら夕鈴の冷たい指先をなぞり、憂いを忘れさせるには狼で翻弄するのが一番だろうと変貌していく。
多少慣れて来てはいるようだが、近寄ったり触れたりするだけで涙目になる夕鈴に苦笑が漏れそうになり、余計に翻弄させたくなる。 意地悪しちゃ可哀想だと思っていても、君は僕の嗜虐心を上手に煽るから、つい手が出てしまうんだ。

挙動不審の瞳をじっと見つめ、そして顔を近付け囁きを落とす。

「二人きりでいる時は、互いの目を見て語り合おうではないか」 と。

途端真っ赤になる夕鈴はいつもの聞き慣れた台詞を叫ぶように言い放つ。

「とっ、突然、何で狼陛下になるんですか?」 

可愛い夕鈴が悪いよね、と口の中で呟きながら僕は君の頤に手を伸ばした。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:40:55 | トラックバック(0) | コメント(6)
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2013-08-10 土 08:56:53 | | [編集]
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2013-08-10 土 19:29:04 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。陛下の肝試しに、思わずニヤリです。文官たちも上手く逃げられるのでしょうかね。有能な隠密ばかりですから無理かな~。(笑)
2013-08-10 土 19:58:08 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。バイト妃が可愛くて仕方がない狼ですが、本末転倒になりそうな、実は恋愛経験少ないのか、実は?の、陛下を書かせて頂いております。 それを桐が失笑するって、書いてて自分がすごっく楽しいな~。ビスカス様もこの暑さに負けないよう、ご自愛下さいませね~。
2013-08-10 土 20:04:16 | URL | あお [編集]
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2013-08-10 土 23:27:22 | | [編集]
Re: DNAに組み込まれてるのですよ、多分
ダブルS様、コメントをありがとう御座います。猛暑が続きますので、ご自愛下さいね。 さて陛下ですが、狼で頑張り口説き落とそうと・・・・ いや、翻弄しようと画策してますが、そのままで済む訳がない(笑)さて、陛下虐めの時間です。書いては消し、消しては書きを繰り返してますが、どうにか更新出来そうです。連日更新が出来ない最近ですが、お付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-08-10 土 23:42:26 | URL | あお [編集]
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