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涼夏を求め  12
夏コミに参加された方々、お疲れ様でした。超暑い中、コスプレされた方もお疲れ様でした。進撃の巨人や黒執事、ワンピースなどなどのコス、娘の写真を見て萌えました~。  


では、どうぞ














捕らえた君の手を引き寄せて唇を押し付け、上目遣いでそっと見つめる。 
夜目にも判るほど真っ赤になった夕鈴がガタガタ震え始めたのを楽しんでいると、君は手を引きながら逃げようとしたのか、急に立ち上がろうとして裾を踏んでしまった。 四阿の中は狭く、卓にぶつかっては危ないと瞬時に手が伸びる。 同時に卓に手を着こうとした夕鈴の体勢が崩れ、僕の腕の中に飛び込んできた。

「・・・・・っ!!」

卓に打ち付ける前に、抱き留めた君を強く引き寄せて膝上に乗せたまではいい。 
ただ、引き寄せた体勢のまま、僕達は動けなくなった。 
しっかりと君の身体に回った僕の手は初めての柔らかい感触に驚き、そして何を確かめようとしたのか・・・・・無意識に、その指先に力を入れてしまう。 
夕鈴の身体が大きく震え、同時に息を吸い込む音が聞こえた。 
反射的に夕鈴の口を塞ぎ、慌てて叫ばないようお願いをする。 ここは夜の後宮庭園だ。 
警護兵や侍女が来ることがないよう指示を出しているが、隠密達が近くに居るかも知れないし、何より僕自身が叫ばれたらショックを受ける。

「ごっ、ごめね! 危ないから支えようと手を伸ばしただけで・・・・っ!」
「・・・ぐっ、ん゛っ!」
「叫ばないで! 謝るから、叫ばないで夕鈴っ!」

口を押さえた僕の手に夕鈴の両手が掛かり、引き剥がそうと動き始めた。 ジタバタと膝上で暴れる夕鈴に僕は真っ青になり、更に強く身体を引き寄せる。

「ん゛! ン゛グゥ~~~っ!!」
「危ないと思って、助けようと思って手を伸ばしただけだから!」
「ムグゥ! グゥウ゛ゥ~ッ!!」
「あの・・・・・。 手を離すから叫ばないでね、夕鈴」
「・・・・・ぐぅ」

酷く震えながら、それでも頷いてくれる夕鈴に安堵し、ゆっくりと口元から手を離す。 ぷはっと息を吐いた夕鈴の手を逃げないで欲しいと掴むと、振り払おうとするから慌ててしまう。

「夕鈴っ! 謝るから逃げないで!」
「~~~陛下! 手っ・・・・ 手っ、離してぇ!」

振り払われた手を思わず見ると、夕鈴がバシバシッと僕のもう一方の手を叩き出した。 
叩かれた痛みに視線を移すと、夕鈴の胸を押さえ込む手が未だ最初の現状のままで、しっかりと包み込むように張り付いているのが見える。 緩慢な動作で手を胸から放した僕は、思わずその手をにぎにぎと動かしてしまった。
それが夕鈴の目の前だと解ったのは、手を強かに叩かれてからだ。

膝上から立ち上がった夕鈴は深紅の顔色で、戦慄く唇で必死に呼吸をしようと努めているのが判る。 声も出せずに叩かれた手を差し伸べると、大きく一歩下がった夕鈴に怒鳴られた。

「へ、へ・・・・陛下っ! またイヤガラセですかっ!?」
「・・・・ゆ」

そのまま背を向けて走り出す夕鈴を、僕は追い掛けることが出来なかった。 
余りにも驚くと人は動けなくなるのか。 
春の宴で僕に 『女ったらし』 と投げ掛け、叫んで逃げられた時も動けなかったなと、呆然としたまま思い出す。 薄い布地の帔帛が風を孕んで舞うように靡くのを、ただ見送るしか出来ずに、僕は一人四阿に佇んでいた。




駆け出した夕鈴は沸騰寸前の頭で、必死に自分を抑え込もうと陛下から離れていた。
あのままでは何を口にするかわからないし、何を言われるか判らない。 回廊で偶然口がぶつかった時と同じ、事故だと考えるように努めるのだが、生々しい手の感触が胸から離れない。

触れただけじゃない。 柔らかく、だけど感触が思い出されるほどに握られたのだ。
思い出すなと思うと余計に思い出され、掻き擁く胸の動悸が激しくなるばかり。 
ワザとじゃないのは判っている。 陛下は助けてくれただけだと自分でもわかっているが、感情が追い着かない。 事故で触れた唇や仕事の一環で触れた口付けと同じだと思えと念じるが、胸から離した手を目の前で開いたり閉じたり、指を動かす必要が何処にあるんだと叫びたくなる。

気付けば後宮庭園を突っ切り、建物の近くまで来ていた。
月明かりを頼りに見回すと後宮立ち入り禁止区域近くと判り、見慣れた建物を目の前に夕鈴は庭木に凭れて呼吸を整える。 ここまで一気に走って来た。 
もちろん陛下が後を追い掛けて来る様子はない。 やっぱりさっきの手の動きはイヤガラセだったのかもと潤んでしまう目を擦っていた時、奇妙な呻き声が夕鈴の耳に聞こえてきた。

息を飲み込むような吸い込むような妙な呼吸音。 それも風に乗って聞こえてくるから、その呼吸音が何処からなのか判らない。 姿を隠すように帔帛を頭から被り、そっと木の影から顔を覗かせると四阿近くで数人の人影がこちらを凝視しているのが判る。 
何故こんな時間帯に人がいるんだろうと考え、警護兵による夜間巡回だろうと納得した。 不審者扱いされては大変と、夕鈴は背を正して妃らしくゆっくりと木の影から足を踏み出す。 

途端、野太い叫び声が庭園に響き渡った。

「・・・・ひぃい!?」
「・・・・うっ・・・・ひゃああああっ!!」
「でっ 出たぁあああっ!」

夕鈴が驚きで足を竦ませるその目の前で盛大な叫び声が幾つも上がり、それと共に駆け出す人の群れは後宮立ち入り禁止区域とは別方向へと消えて行った。 
大きく目を瞠ったまま動けなくなった夕鈴は木に縋りながら、呆然と立ち尽くす。


何があったのかと目をぐるぐるさせながら必死に考えた。
しばらくして、また文官が後宮内にまで足を踏み入れたのだと理解する。 肝試しの再開で、またこんな場所に足を踏み入れ、おまけに自分の姿に怯えて走り去った彼らが政務室でどんな噂話を新たに流すか容易に想像出来、夕鈴は蒼白になった。

「あ、待っ・・・・」

思わず追い掛けようと足を踏み出すが、文官の姿はもう何処にも見当たらない。 
文官達が新たに流す噂で、今度こそ侍女や女官が御祓いや祈祷師を呼ぼうと動き出し、李順が眼鏡を持ち上げて面倒ごとの発端を調べ上げる姿が脳裏に浮かんだ。 
夜に徘徊する妃が起した面倒ごと。 
掛かった費用は全て借金へ加算され、いつまでも陛下に翻弄され続ける自分が想像出来る。 
だけどその間は陛下の傍に居られると思ってしまう自分を思い切り頭から追い出して、今は取り敢えず、この現状をどうしようかと蒼褪めた。

カタカタと震えながら木の影で思案していると、四阿近くに人の足らしきものが見え、腰を抜かしそうになった。 驚きが過ぎて声も出ない。 痛いほど心臓が跳ね、息が吸えているのかも判らない状態で、それでも必死に目を凝らした。

ぴくとも動かない足に、もしかしたら文官が倒れているのかしらと思い、夕鈴は逡巡する。 
このまま放置していいのか、それとも声を掛けて一刻も早く後宮から出てもらうべきか。 
夜の後宮庭園、それも立ち入り禁止区域近くだ。 もしここに陛下が来てしまったら、あの人の運命は決まってしまう。 死んだ方がマシだと思うほどに扱き使われるだろう。 狼陛下の怒号を一身に受け、餓鬼の如く痩せ細る文官の姿が想像出来てしまう。

「そ・・・そんなの政務室で見たら、毎晩悪夢だわ・・・・・」

夕鈴が震える足を叱咤して木から離れ四阿の影の足を確認すると、そこには三人の文官が気を失って倒れている姿が見える。 早くこの場から逃げ出して欲しいと揺すると、すぐに瞼が動き意識を取り戻し始めた。 妃の姿にまた叫ばれては大変と急ぎ身を隠したのだが、頭から被っていた帔帛が風に舞い、それを目にした文官が首を絞められた鶏のような悲鳴を発して飛び起きる。 
逃げるように四阿の中にしゃがみ込んだ夕鈴でさえ、余りの悲鳴に叫び声を上げ、その悲鳴に文官が叫び声を重ねて上げる。 場にいた全員が意識を取り戻したのだろう、声を掛け合い逃げ出していくのを耳にして、夕鈴はようやく腰を抜かした。

男性の発する叫び声というのは、こんなにも迫力があるのかとバクバク跳ねる心臓を押さえ、そして気が付く。 風で飛んだ帔帛は何処に行ったと卓に縋りながら如何にか立ち上がると、目の前に浩大が立っていた。 
驚きの連続で夕鈴の心臓は停止寸前。 
開いた口から息を吸うことも吐くことも出来ず、震える指で浩大を指すしか出来ない。 

そんな夕鈴を目の前に、浩大はにっこりと笑いながら口元に人差し指を立て、静かにこっちに来いと手招きをしてきた。

「悪いけどお妃ちゃん、こっちに移動して頂戴ね~」

来いと言われても足がガクガク震え、上手く歩けない。 それでも進むしかないのだろうと四阿から出ると黒衣の隠密が数人浩大の背後に控えているのが見える。 
夕鈴が目を瞠ると浩大は首を傾げ、その視線の先を確かめると 「ああ」 と呟いた。

「気を失った文官たちを迎えに来たんだけどさ、お妃ちゃんが “起してくれた” から、他の用事を頼もうと思って。 陛下の指示だから安心して頂戴ね」
「へ、陛下の指示? 何が? 隠密さんたちがここにいるのが?」
「・・・っ! そ、そうっ!! 肝試しの文官が後宮に走って行ったのが見えたから、急いで追い出そうと思ってさ! 侍女さんとかに見つかったら大変じゃんか!」

急に慌て出した浩大に違和感を覚えながら、それでも確かに侍女や女官が後宮に迷い込んだ文官を目にしたら大事になるだろうと納得した。 
それにしてもいつの間に陛下は浩大らに指示を出したのだろうか。 
後宮に来る前に? いや、そんなはずはない。 だって肝試しに参加している文官が間違って後宮に入り込むなんて想像出来るはずがない。 でも初回の肝試しでは間違って後宮立ち入り禁止区域に入ってしまった。 再びの肝試しでも文官らは確かに後宮に紛れ込んでいたのを目にしている。 それを懸念していたとしたら、陛下の指示で後宮内に隠密がいるのは不思議ではないのだろう。

「えっと、お妃ちゃん?」
「・・・・何よ、浩大」
「何かお考えのご様子ですが、ちょっと尋ねても宜しいでしょうかねぇ」

眉間に方淵ばりの深い皺を作っていた夕鈴は眇めた視線で浩大を睨ね付ける。 その瞬間、見間違えでなければ浩大の視線は宙を彷徨ったように見えた。 何か隠しているように思える浩大を見つめている内に、文官らの叫び声で萎えていた足腰はすっかり元に戻っていたが、夕鈴は気付かない。

「えっと、ですね。 陛下とお散歩の筈なのに、どうして一人なのかな~って疑問に思いまして。 もしかして・・・・何かあった?」
「何か・・・・。 っ!!」

隠密の存在理由を訝しんでいた夕鈴は、浩大からの突っ込みに陛下の存在を思い出し、そして真っ赤になって口を押さえ込んだ。 ここで叫んだら大変だと、無意識に手が口を押さえたことに自分で自分を褒めたいと強く思うほどだった。 
夕鈴の態度に今度は浩大が目を瞠り、そして意地悪そうな笑みを浮かべる。

「・・・・何かあったんだぁ!」
「ううっ! ぐぅううっ!」

口を押さえたまま首を激しく横に振って否定するが、浩大のニヤニヤ顔は止まらない。 違うと言いたいけど、違わない訳で、夕鈴は真っ赤な顔で首を振り続けるしか出来ずに呻き続けた。



***



楽しそうな笑みを浮かべた浩大に指示され、肩を落として部屋へと移動することになった夕鈴は頭いっぱいに蘇ってしまった手の感触と陛下の顔に顔を上げることも出来ない。 

「陛下にお妃ちゃんは無事に部屋に帰ったと伝えて来るよ。 部屋から出ないでね」

口を強く噤んだまま頷いた夕鈴は部屋に入り、項垂れながら寝台に腰掛けた。 なんて日なんだと呻きながら項垂れていたが、ふと何かを忘れているような気がして顔を上げる。
何を忘れているんだろと首を傾げつつ、ゆっくりと立ち上がり周囲を見回す。 そして帔帛がないことを思い出し、夕鈴は真っ青になった。 

あの帔帛はきっと高い! 
侍女さんが微笑みながら陛下の希望に添うようにと用意した一品。 
絶対に汚さない、引っ掛けない、落とさないと誓いを立てたのに、どうしよう!!







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 02:33:12 | トラックバック(0) | コメント(10)
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2013-08-11 日 11:00:49 | | [編集]
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2013-08-11 日 12:59:20 | | [編集]
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2013-08-11 日 19:41:07 | | [編集]
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2013-08-12 月 21:22:04 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。 にぎにぎって反射的にしちゃったんでしょうね。事故で唇が当たった時も夕鈴は口に手を当てちゃってますしね。すれ違いバージョン、うん、納得です。 長くてもいいというコメントに落涙です。本当にこんなに長くなる予定ではなかったのに、まあ、どうしましょう状態ですから。お付き合い頂けたら嬉しいです。
2013-08-12 月 23:27:08 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
さき様、コメントをありがとう御座います。本当は頬を叩く・・・と思っていたんですが、背後から掴んでいたので、体勢的に無理かなと苦慮しました。振り返ってバチーンも有りだったかな。いつも夕鈴を翻弄するのが上手な陛下を翻弄させるのが、楽しくなりません。凹んだ陛下って、超可愛いですよね~。によによ。
2013-08-12 月 23:29:08 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。コミ参加の娘が言うには、救急車も来ていたと。ストレッチャーで運ばれていくコスプレは皆太っていたと言っていた。(本当か!?) 娘たちは取材も受けたようで、プロに写真を撮ってもらったと喜んでたよん。 帔帛が飛ばされたので、夕鈴をどう動かそうか楽しみで仕方ありません。凹んだ陛下を動かすのも楽しいですし。もう少しお付き合い下さいます様、お願い致します。
2013-08-12 月 23:44:15 | URL | あお [編集]
Re: ラッキー事故万歳!!
ダブルS様、コメントをありがとう御座います。あ、判ってくださって嬉しいです。「多事多難」での上書きがほんのり残っていたので、この場でえいっと握らせましたー!(爆)にぎにぎワキワキは余計だったけど、若い陛下の今後のおか・・・・おっと、危ない危ない。ふー。寝苦しい夜が続いておりますが、皆様ご自愛下さいませ。
2013-08-12 月 23:47:16 | URL | あお [編集]
この世で一番怖いのはお化けよりも陛下だということがよくわかりましたw陛下は文官、隠密、バイト妃をどこまで痛ぶる気なんでしょうw←楽しみ。ふふふ

娘さん、コミケ楽しまれたようで何よりです(*^^*)
コミケ、意外と?体力勝負なんですね…
2013-08-14 水 04:32:31 | URL | Norah [編集]
Re: タイトルなし
Norah様、コメントをありがとう御座います。 王宮内では陛下に逆らっちゃいけません、いろいろな意味で。今は凹んでいる陛下ですが、その怒りをどんな風に文官にぶち当てようか思案中です。 コミコスで楽しんだ娘は苦しんでいる母を置き去りに、今度はオフ会です。知らぬ間にデートしてるし、まったく夏を謳歌してますよ、あいつは! 痛いです・・・・(泣)
2013-08-14 水 20:19:37 | URL | あお [編集]
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