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涼夏を求め  14
痛み止めで胃がおかしくなり、おまけに月のものが。ダブルパンチっす。月曜日が待ち遠しいけど、治療が始まると長いんだろうな。・・・・くすん。


では、どうぞ














一方、夕鈴は必死になって四阿へと足を進ませていた。 一応は警護兵に見つからないよう配慮しながら足を進ませる。 一人で庭園散歩という言い訳もあるが、言い訳としては訝しいものだろうと承知しているだけに潜み足にならざるを得ない。

「帔帛~・・・。 どこ飛んで行った~?」

木の枝や低木の陰、四阿周囲を隈なく探すが見当たらないことに夕鈴は蒼褪めた。 
確かに裾をはためかすくらいの風が吹いていたが、そんなに強かったかと眉を寄せる。 
あの時は目覚めた文官の叫び声に驚き、帔帛の飛んだ行方などに気を向ける余裕などない状態だった。 恐怖に怯えていた文官が持っていったはずはないから周囲にあるはずと目を凝らすが、白い帔帛は見当たらない。 焦る額にじわりと汗が滲み、夜風が心地良いと感じてしまうほどだ。 もしかしたら既に桐が見つけたのかも知れないと頭の片隅に過ぎったが、見つかっていなかったらと思うと戻ることも出来ない。

「・・・・汚れていたら・・・ それよりも破れていたら、どうしよう!」

一気に蒼褪めた夕鈴は、桐と李順、どっちに睨まれた方が怖いかを考えた。
しかしやはりバイト上司からの叱責の方が怖い。 怖いだけではなく借金増加と叱責だ。
膝が恐怖で笑いそうになるのを叱咤しながら点在する茂みや低木の陰を探し回る。 見つからない焦燥感にいつしか足がどんどんと四阿から離れていることに、夕鈴は気付かない。


その頃、桐が早々に帔帛を見つけ部屋に届けたはいいが、警護対象の妃が居ないことに酷く立腹しているなど、庭園で徘徊している夕鈴は知る由も無い。 

「あ、の・・・・暴れ兎め! 足でも切り落とさねば判らないのか!」

憎々しげな舌打ちが、主の居ない部屋に無為に響き渡った。




***




突然の寒気に襲われた夕鈴は身を起して周囲を見回す。 普段は怖がりの彼女だ。 
木々の梢が夜風に揺れ、儚げにさやと音を出すのを感じて肩を竦ませる。 怖くない、怖くない、李順さんの叱責に比べたら怖くない。 そう念じながら再び地面に視線を落として帔帛探しを続けていた時、ガサリと背後から音が聞こえ身体が強張った。

文官たちが叫び逃げて行った理由は自分を亡霊と見間違えたためだ。 
そう、『見間違え』
そんなものは後宮にはいないと陛下は言った。
以前老師から恐ろしげな後宮あるある話を聞いて怯えた私のために、陛下は稀なる力を持った霊験新たかな祈祷師を呼び、御祓いをしてくれた。 それで後宮に住まう恐ろしげな亡霊は根こそぎ綺麗に取り除くことが出来たはず。
だから今耳に聞こえたのは幻聴か、鼠の仕業に決まっている。 そう思おうとしているのに、確かに聞こえて来る砂利を踏む音は段々速まり、こちらへと近付いて来た。

「・・・っ!」
「叫ばないでっ!」

背後から伸びてきた手が口を覆い、抜けた腰を攫うように抱き上げる人物の声は。

「・・・ぃか!」
「うん、僕だよ。 お願い、叫ばないでね」

驚きに全身を震わせ、夕鈴は跳ね回る心臓を押さえながら陛下を振り返った。 ゆっくりと口から手が外れ、ただ怖かったと荒く息を吐く夕鈴は早鐘を打つ胸を撫で下ろし、安堵に浮かぶ涙目で陛下を見つめる。 何故ここに陛下がいるのかと考えるより早く、質問が投げ掛けられた。

「浩大に部屋に戻したと聞いて来たんだけど、どうして庭園に居るの?」
「・・・・え? あ、あのっ! 陛下、風で帔帛が飛んじゃったの! 汚したり引っ掛けたりしちゃ絶対に駄目な高級な一品なのにっ! さ、探してるのに見つからないの! どうしよう! もうずっと探しているのに見つからない・・・・」

伸びてきた夕鈴の手は陛下の襟を掴み、涙で潤んだ瞳で訴える。 
驚いたのは陛下も同じだ。
夕鈴の部屋へと向かっていたが、途中白いものが低木の陰で蠢いているのが見え、近付くとそれが部屋に居るはずの夕鈴と判る。 夏用の夜着は薄く、懸念していた通り妃衣装と違って身体の線がより明確だ。 こんな姿を、今は警護兵を下がらせているとはいえ不用意にひと気のない庭園で晒す夕鈴に眩暈すら覚える。 その理由も帔帛探しと聞き、全身から力が抜けそうだ。

「えっと・・・・夕鈴。 まず、何で一人で庭園に居るのかを教えて欲しい。 簪の時も言ったはずだよ。 無理して探して怪我や危険な目に遭う方が心配だと。 帔帛は朝日が出てから改めて探した方がいい。 まずは部屋に戻って上着を羽織って」
「さ、寒くはありません! 怪我にも気を付けますから続けて探すのを赦して下さい! さっきから李順さんが頭の中を駆けずり回っていて・・・・ こっ、怖いんです!」

抱き上げた状態なので夕鈴の顔が近く、今にも零れんばかりの涙が月明かりに震えているのが目に映る。 夕鈴の頭の中に李順がいっぱいと聞かされ面白くないが、こんなに近い距離にいるのに胸を掴んでしまったことは頭から抜けて落ちているようだ。 
どうか、このまま忘れてくれ!と思うが、それが希望的観測に過ぎないことは判っている。 
それでも、出来るだけ遅くに思い出して下さいと願いながら涙目で訴える夕鈴の背を撫で、僕はゆっくり踵を返した。

「夜目が利く隠密にすぐ探させるよ。 もし引っ掛けていたら李順に内緒で隠すから」
「は、・・・はいっ! ありがとう御座います」

やっと安心出来たのだろう。 目を細めて笑う夕鈴の眦からぽろりと星の雫が零れた。 その雫を指で拭いながら僕は気になっていたことを尋ねる。

「・・・・夕鈴、さっき文官たちに亡霊と間違われて叫ばれたそうだね」
「 ! ・・・・はぃ」

問い掛けた言葉に途端に笑顔が消え、夕鈴はがっくりと項垂れる。 また新たな噂の種を投入してしまったと肩を竦ませる夕鈴の背を撫で、陛下は暫し沈黙した。 
その沈黙が痛いと身を竦ませ続けたが、小さく苦笑する声が聞こえ夕鈴は顔を上げる。

「肝試しで再び後宮に間違えたと足を踏み入れたようだが、そろそろ仕事に精を出して貰わねばな。 いつまでも夏の風物詩に感けている暇はないだろう。 遊びたいなら書庫の整理が終わってから行うべきだ」
「・・・・でも、大臣からの通達では一官吏の皆様は逃げること叶いませんでしょう」

それでも上手く逃げる輩もいるんだと目が細まる。 
政務室にいた幾人かは、方淵らとの会話で陛下がそれを承知していると知り、臆病者の謗りを受けることを嫌い参加していたが、最初から面倒ごとから逃れる要領の良い者もいた。 
柳経倬はじめ、その腰巾着や奴を上手く利用している者共は最初の書庫整理から参加していない。 暑気あたりなど言い訳は幾通りも用意していたようだ。 
ただ氾水月が参加しているのには正直驚いたが、前回同様腰を抜かして動けなくなった文官救出に走り回ったと聞き、方淵と共に逃がしてやる方針を決めた。 逃がしてやるのは目溢しをしてもいいと思える動きをした者だけだ。 まあ、全員が政務室で身動き取れないほど自分に怯え出すと、仕事が回らないというのも理由の一つだが。
兎も角、残りの輩は少し急を据えてやろうと思っている。
夕鈴と合流出来たことだし、このまま呆けている奴らの前に姿を見せて恫喝してやろう。
その前に・・・・・。

「あのね、夕鈴。 幾人かは浩大らが誘導して後宮から出したんだけど、まだ多数が迷い込んでいるんだって。 で、狼陛下で怒ろうと思うんだけど一緒に来て欲しいんだ」
「ほぇ? い、一緒にですか?」
「うん。 妃と庭園散策中に邪魔されたって狼陛下で怒るから。 それでね、一緒にいて欲しいけど、絶対に奴らを庇わないでね。 馬鹿らしい噂が二度と流れないようにしたいだけだから。 だって、また噂が流れて女官らが祈祷師だー、御札だーって騒ぐと夕鈴困るでしょ? だから」 

大きく目を見開いた夕鈴は、それもあったかと思い出した。 
自分の姿を見た文官らが新たに噂を流すと陛下の言う通りに今度こそ侍女や女官が騒ぎ出し、余計な経費が掛かりそうだと原因追求する李順さんが現れる可能性が大きい。 
それは厭だと夕鈴は眉を寄せる。

「それに・・・・ 夜着で夜出ちゃ駄目って、前に言ったよね。 怖い目に遭ったら大変だからと。 人払いが済んだ部屋でなら気楽に過ごしてもいいけどって、言ったよね」
「あ・・・・」

確かに以前言われた言葉だと小さく頷く。 更に浩大にも部屋から出ないように言われていた。 桐も今頃、部屋に居ない妃に腹を立てているかも知れない。 そう思い出すと陛下に会って安心した分、余計に蒼褪めてしまう。

「ごっ、ごめんなさいっ!!」
「約束を破った分、今回は大人しく妃として僕の傍に居ること。 いい?」
「はいっ、大人しい妃を演じます! 申し訳ありません!」

震えながら謝る兎を腕から開放すると、陛下は夜着の上に羽織っていた紗の簡衣を一枚脱ぎ、夕鈴に纏わせた。 大きな衣装に夕鈴は裾を引き摺っては大変と急ぎ手繰り寄せるが、袖も長いので身動きが取りにくい。 

「夕鈴には大きいけど、夜着姿の妃をこれ以上見せる訳にはいかないからね」
「ああ! 帔帛があったら陛下の御衣装をお借りせずとも良かったですのに・・・・。 本当に重ね重ね申し訳御座いません。 寒く、ないですか?」
「大丈夫だ、常から鍛えている。 それに妃を抱き上げて歩けば寒さなど感じぬ」
「なぁ? 何で急に狼陛下ぁ!?」

大きな衣装で身動きの取れない夕鈴を抱き上げると、妖艶な笑みで紅い瞳を細める陛下。 近距離での妖艶な笑みは夕鈴を慌てさせ、更に妃演技を余儀なくさせる。 大股で歩き出した陛下に急ぎしがみ付きながら、夕鈴は声を震わせた。

「あ、あんまり酷くは・・・・・怒らないであげて下さいね」
「反省の色があれば考慮しよう。 妃は黙って顔を伏せていた方がいい」
「あ!! ・・・・あの、陛下! お、お願いがあります!」

急に大きな声を出す夕鈴に驚き、足を止める。 涙目の兎は狼に一つお願い事を申し出た。






隠密の一人が陛下の姿を確認すると、気を失っている文官らの風上から、ある薬品の匂いを嗅がせ始める。 気付けとして用いられる成分は文官の鼻をツンッと刺激し、彼らは眉間に皺を寄せ呆としたまま鼻や目を擦り、次第に意識を取り戻していった。 
意識が戻り出すと目を瞬き、確か自分たちは王宮方向へ走っていたはずと首を捻る。
柳と氾に指示を受け、足を進ませていると見たことのある回廊が見え、更に門も開放しているのが判り安堵で足を速めた気がすると、重い頭を振る。 
周囲の文官たちと互いに目を擦りながら正気を確かめ合い、周囲を恐々と窺った。

「おい・・・。 あの回廊は」
「あの回廊は・・・・ まさか!」

見たことのある回廊。
しかし、その回廊は確か妃が政務室から出て、侍女を伴いながら去って行く回廊に思える。 今自分達がいる場所からその回廊が見えるということは、自分達がいる場所はまだ後宮なのだろうか。 その事実に気付き立ち上がった幾人かが、蒼白の呈で自身の口を押さえ込んだ。 
その様子に周囲の者も訝しげに回廊を見てようやく気付き、恐ろしいほどの重いざわめきが広まり、未だ呆けたままの文官に潜めた声でその事実を伝え、静かに次の行動に当たるよう指示が飛ぶ。 つまり、誰も叫ばずに一刻も早くこの場から逃げ出すのだと。

ほぼ全員が正気に戻り静かに腰を上げようとした、その時。
最も聞きたくない声が、背を震わせながら耳に届けられる。

「・・・・何故、後宮に我が臣下が居るのだ」
「・・・・っ!!」
「それも夜半を過ぎたこの時分に、だ。 まさか後宮に忍び込み、善からぬ相談でもしていたと? ・・・・佩いているモノへ手が伸びる前に、明確な説明を求めたいのだが?」

頭上から聞こえて来た声に、その場に居た文官らは一斉に振り向いた。 
そこには白い夜着姿の陛下が藍色の布地に包まれた妃を抱いて立っており、二人の居る場所は後宮奥へと続く回廊だと判る。 奇しくも以前立ち入り禁止区域に迷い込んだ文官が白い亡霊を見たという場所は、今いる回廊を進んだ先だ。 
息を呑む音が聞こえて来て、その後の囁きにも似たざわめきに陛下の目が細くなる。

「誰ぞ説明する者はいないのか?」

竦み上がり震え続ける文官は口を聞ける状態でないのは、一見して判る。 それでも現状を打破しようと一人の文官が戦慄く己を叱咤して、如何にか拱手の形を取り低頭した。

「も、申し上げます。 大臣より肝試しの再開を命ぜられ、その催しに参加致しました。 それが何ゆえ我らがこの場所にいるのか・・・・・我らにも見当がつかないというか、何というか・・・・」
「・・・・はっきり申せ」
「それがっ! いっ、いつの間にか皆この場所にて昏倒していたのです!」
「そ、そうです! 刑房に向かう順路を進んでいたのですが、気付けば・・・・何故か庭園へと移動していまして、周囲を窺っておりましたら・・・・・・」
「ああっ! し、白い影が見え・・・・見えたので御座います!」
「噂の亡霊だろうか。 昔の亡妃が立ち入り禁止区域をさ迷い歩くという・・・・」

一斉に騒ぎ出した文官らは互いに顔を合わせ、後宮庭園で目を覚ました後に四阿から見えた白い影について語り出した。 陛下の腕の中で文官からの声に夕鈴は身を竦ませ、顔を伏せる。 その白い影は自分ですと皆の前で謝りたい気持ちになるが、陛下に文官たちを絶対に庇うなと言われたばかりだ。 開きそうな口をぎゅっと結び、瞼を閉じた夕鈴は文官たちから視線を逸らして陛下の肩に額を押し付けた。
陛下は夕鈴の頭をそっと撫でた後、耳元に優しく囁く。  「そのまま静かにね」 と。

すっと顔を上げた陛下の顔は冷酷非情そのもので、ざわざわと騒めく輩を俯瞰した。 その視線に気付いた文官たちは息を呑み、一気に静まり地へと目線を落とす。 

「・・・・お前達の話では、この後宮に過去の亡鬼がいるということになるか?」
「あ・・・っ、うぅ・・・・・」
「い、いえ・・・・。 あの・・・」
「私が愛しい妃と後宮庭園を散策している中、不埒な輩が足を踏み入れたと聞き足を向けた。 どんな輩かと顔を見れば我が廷臣だ。 その上、我が妃を怯えさせる言で耳を穢そうとしているとあっては・・・・。 憤るなと言う方がおかしかろうな」
「・・・・・っ!」

酷薄な瞳で一瞥された文官たちは枯渇した沼の底辺で痙攣している魚のように薄く唇を開け、はくはくと息を吸い込むばかりだ。 酸欠状態の文官たちが拱手したまま固まった姿で揺らぐのを見下ろし、陛下はゆっくりと息を吐いた。

「明日以降、王宮の何処でもいい。 私の耳に今夜のことが届けられるようなことがあれば、諸君らが望む場所へ案内しよう。 肝試しの順路である、刑房へとな」
「っ!」
「我が廷臣が二度も後宮に足を踏み入れるなど在り得ぬことだろう? そのような気分を害する話が再び我が耳に届けられぬよう、努々忘れぬことだ!」
「御意!!」

深く腰を折った文官たちが慄然としながら返答する声と、頭上から聞こえて来る凄然とした陛下の声。 夕鈴は怖くて怖くて、それなのにそれらの様子から目が離せずに震え続ける。

陛下が静かに夕鈴を腕から下ろし、回廊手摺りを音を立てて叩いた。 
その音に、腰を折って低頭していた文官らが背を震わせながら姿勢を正す。
口端を嫣然と持ち上げた陛下が、すっと片腕を挙げると手で払うような仕草を見せた。 その仕草に、その場にいた文官らがもう一度深く低頭し踵を返す。 いつの間に居たのだろう、背後に控える警護兵に付き添われ、覚束無い足取りで闇に消えていくのを夕鈴は愕然と見ていた。 



砂利を踏みながら去って行く足音が消え虫の音が聞こえ出すと、何故か恐々と陛下が振り返る。 すっかり小犬になった陛下を目にして、突然かくんっと夕鈴の膝から力が抜けた。
 
「わっ! 夕鈴、大丈夫?」
「・・・・だ、大丈夫です」
 
伸びて来た腕に縋り付いた夕鈴は、足を踏ん張ったが膝がガクガク震えてしまう。 でもそれは仕方が無いと思った。 狼陛下の怒声を近距離で聞いたのだから震えが止まらなくて正解だと。 本当に陛下は狼陛下の演技がお上手でいらっしゃると強張った笑みを浮かべるのが精一杯。

「お、お疲れ様で御座います、陛下」
「夕鈴もお疲れ様。 じゃあ部屋に戻ろうか。 夕鈴からのお願い事もあるしね」
「・・・・もう居ない可能性もありますけど、もし居たら・・・・・ 怖い」

文官たちが去って行ったので、夕鈴は借りていた陛下の衣装を脱ぎ返そうとした。 これ以上汚してはいけないと思ってのことだが、これから戻る部屋に居るかも知れない人物を思うと恐怖に手が震える。 片袖を抜いたところで手が知らず陛下の衣装をぎゅっと握っていた。

その様子を見つめながら、陛下はドキドキしていた。 
未だ夕鈴から胸を掴んでしまったことに関して、文句も叫びも涙も無い。 いつまでこの状況が続くだろうかと、いつ夕鈴が思い出して怒りを再燃するだろうかと心臓が痛い。 

「あー・・・、桐には僕が夕鈴を連れ出したってちゃんと言うから安心していいよ」
「・・・・はい。 本当に・・・・お願いします」
「帔帛だって桐が見つけているだろうし、損傷があったら僕が上手く処分するから」
「しょっ・・・・処分は駄目です! 高価な品ですよ? 勿体無いです! もし破れていたら、ちゃんと職人の手により修復出来る・・・・・といいなぁ・・・・」

勢いよく言った後に、しょんぼりと項垂れる夕鈴が可愛い。 いつもならここで肩を抱き寄せて慰めるけど、今は容易に手を出せない。 

「じゃあ、李順には内緒で修復させるよう手配する。 だから安心して、ね?」

僕の言葉に小さく、こくんっと頷く夕鈴が可愛すぎて胸が苦しい。 手を出す訳にはいかないけど、出したくなるほど可愛い夕鈴が悪い。 汚さないよう器用に脱いだ夕鈴が、器用に宙で畳み終えたのを確認して君を抱き上げた。

「ひぇっ!? へ、陛下? 衣装も脱ぎましたので一人で歩けます!」
「夜風で身体を冷やすことは無いだろう。 衣装は抱えて持っていて」

いそいそと君を抱き上げたまま部屋へ向かう。 周囲に人が居ないのに抱き上げる必要はないと騒ぐが、違う意味で騒ぎ出す前に君の熱を楽しむことにした。







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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:04:04 | トラックバック(0) | コメント(12)
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2013-08-18 日 00:52:38 | | [編集]
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2013-08-18 日 06:25:40 | | [編集]
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2013-08-18 日 12:13:02 | | [編集]
Re: 大丈夫ですか?
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。夏の暑さは大丈夫ですが、歯の痛みが頭痛を併発して老体には堪えます。くくく・・・・。温かいコメントありがとうです。もう少しですので、お付き合い下さいませ。
2013-08-18 日 12:41:59 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。暴れ兎に座布団一枚に思わずニヤリ!ありがとー!山田さん、早く座布団を!月曜日に歯科行けるのが、こんなに待ち遠しいのは人生初です。こんな人生もあるんですね~。
2013-08-18 日 12:43:41 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
さき様、コメントをありがとう御座います。予言がずばりで思わず爆笑です。ここでの陛下は楽しい日々が長く続かないんです。そうなんです!次回はラストまで持っていけるように頑張ります。方淵、水月の続きも書きたいし、今回は欲張り過ぎましたでしょうか。だから歯痛が?(笑)
2013-08-18 日 12:49:00 | URL | あお [編集]
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2013-08-18 日 17:34:09 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。ようやく月曜日です!人生初ですよ、歯科営業再開を望むなんて。そして同じです。食べない、食べれなくても体重は変化なし。ちくしょー! 陛下のヘタレ具合を楽しそうに心配する隠密たち。(え? たち?) 楽しく楽しくイジルでしょうね。さて、次は桐と方淵と水月のまとめです。長い話にお付き合いありがトウです。今、纏めるのに必死です。TV見ながら・・・・(爆)
2013-08-18 日 21:13:43 | URL | あお [編集]
続きが気になってウズウズしてしまいますが、まずは月のものが去って歯の治療がひと段落して、あお様が痛みや不快感から早く解放されますことを願っております(^ ^)

イケメン歯科医師は日頃のブログ活動の行いの良さに、きっと神様がくださったご褒美です*\(^o^)/*ご堪能あそばせwすっぴんでヨダレでちゃう咥内をイケメンに…なんて、Mな私には最高の羞恥プ…ゴホゴホ(以下自粛)桐様な感じならなおのこと…(再度自粛)

早くお体の調子が良くなりますように(^^)食欲の秋にむけてはの治療は最優先ですわ(o^^o)お大事に☆
2013-08-27 火 20:43:02 | URL | Norah [編集]
Re: タイトルなし
Norah様、コメントをありがとう御座います。体調はすっかり良くなり、あと二回の歯科治療予定。ただ肩こりが酷いので、整形を受診したところしばらく通うように言われ、がっかりです。(笑)ですのでのんびり更新になると思いますが、のんびりお付き合い頂けたら嬉しいです。 歯科医はマジイケメンです!
2013-08-27 火 21:00:06 | URL | あお [編集]
肩こりの時に歯医者さんに行って口を開け続けると、さらに肩凝りますよね(^_^;)ストレッチする、読書やパソコンの使用を控える、睡眠をとる…わかっているけど、心の栄養を求めてパソコンいじって眼精疲労、肩こり悪化な私ですw整体行くとよだれ出してねちゃったこともw誰か、肩こりが即効で治る薬作ってくれないかな〜と他力本願な私です(^^;;このコメントUpしたら、申し訳程度にストレッチしてきますw
2013-08-27 火 21:53:52 | URL | Norah [編集]
Re: タイトルなし
Norah様、今回整形に行って、医師より「半端ねぇ~な、この肩凝りは!」と太鼓判を貰いました。電気治療と温熱治療、軽いリハビリに通うことになっちゃった。運動不足だよね~。判っちゃいるけどPCの前に座ると座りっぱなしになっちゃう(笑)
2013-08-27 火 22:24:00 | URL | あお [編集]
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