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心騒  3
痛みに耐えて走るランナーや、子供たちの頑張りなど、毎年つい見てしまう24時間テレビ。今はHPからも募金が出来るんだよね。時代の流れに驚くけど、どんな方法でも気持ちが伝わればいいなと思ってます。大野君のドラマにボロ泣きしちゃいました!


では、どうぞ














夕鈴は部屋に戻ると宴の余韻もそこそこに妃衣装から簡衣へ着替え、すぐに湯殿へと向かう。 湯上りは夜着へと着替え、妃って無駄に着替えが多いわねと思いながら部屋に戻り、そこで漸く一息ついた。 昼過ぎから妃衣装の用意や着付け、化粧して髪型を整え、その後は宝飾を飾り付け、貴族子女が出掛ける時にどれだけ時間が掛かるかを思い知らされる。 
後宮では陛下のお渡りを待つ妃達が日常的に昼間から湯浴みをして香油を纏い、化粧して着飾り、妖艶に誘うための学びをしていたのだ。 常に陛下のために着飾ることが当たり前の後宮で、戸惑うのは庶民だからなのか元からの性分なのか。

振り返れば考えても仕方がないことをぐちゃぐちゃと考え、ちゃんと真剣に催し物を見ていなかった自分が悔やまれる。 王宮で催される楽団など、もう二度と見ることがないかも知れないのに勿体無いと項垂れた。 陛下にもちゃんとお礼を伝えていないと思い出し、申し訳ないと恥じる。 
ただ楽の音は本当に素敵だったなと頷き、水月さんが今日の曲を演奏するなら紅珠の邸で聞ける機会があるといいなと微笑んだ。

「お妃様、もうお休みされますか?」
「もう少しだけ陛下をお待ちしてから休みますわ。 皆さんはさがって下さい」
「では暑い夜が続いておりますので、白湯を用意してから休ませて頂きます」

今日は宴の準備に侍女や女官も借り出され、妃の衣装や宝飾を用意するためもあり人手が多く、皆忙しそうだった。 そして、下っ端妃をここまで着飾る必要はあるのだろうかと思うほど化粧と衣装に凝っていて、いつもはお世話したりないと言う侍女たちも満足そうだったのを思い出し、夕鈴は小さく笑いを零してしまう。

「宴の御様子を思い出しておいでですか?」
「あ・・・・、はい。 とても楽しい宴でしたので」

苦笑していた自分を見て侍女が柔らかに微笑む。 妃らしい笑みを浮かべていたかしらと慌てて袖で口元を隠すと白湯を差し出され、素直に受け取り口に運ぶ。 侍女がそのまま傍で控えているため待たせてはいけないと急いで飲み干し、空になった茶杯を渡そうとした時、急にぐらりと目の前が歪んだ。  

その急な眩暈に夕鈴の鼓動が跳ねる。 
顔を上げると柔らかに微笑んだ侍女が夕鈴の手から茶杯を受け取り、懐から出した手巾で丁寧に拭き始めるのが見えた。 まさかと目を瞠ると、長椅子に腰掛けた夕鈴の前に侍女が跪く。

「白湯の味はいかがでしたか、お妃様」
「すぐに・・・・捕まるわ。 外には警護のための隠密がいるのよ」
「まあ御心配ありがとう御座います。 でも私はお妃様を傷付けるようなことは致しませんわ。 お妃様がご自身の命を絶とうとする、そのお手伝いをさせて頂くだけですから」
「どういう・・・・意味・・・」

嘔気がするほど目の前が歪んで見え、急激な眠気に襲われる。 力が抜けそうな腕で椅子の座面を押しながら体勢を保つ。 意識を失わないように腕を強く引っ掻きたいが、力が抜けた状態では思うようにならない。 眠気と焦燥感に震える私の身体を、侍女はそっと長椅子に横たえると耳元に囁きを落とした。

「御自身で御自身を葬り去るのですわ。 もちろん後宮以外で命を絶つようにしましょう。 次は高貴で雅な妃が参りますのに、貴女の穢れた血で後宮を汚す訳にはいきませんから」
「・・・・そんなこと・・・・ しない」
「目覚める頃には私のことは露ほども覚えておりませんし、もちろん証拠も残しませんわ。 これでもプロですので御心配なく。 では始めましょう」
「だめ・・・・・」
「陛下からの寵愛が薄れたと嘆く妃が勝手に死ぬだけです」 

冷たい彼女の手が私の瞼を閉ざし、強制的に暗闇へ沈められる中、妙に甘い香りが頭の中を掻き回し出した。 耳元に低い声が響き、聞いては駄目だと思うのだけど足元から真っ暗な深淵がじわりと広がり、這い上がるように全身を侵食し始める。 
彼女が何を言っているのか理解出来ない。 理解したくない。 
どうしよう。 自分で自分の命を絶とうとするって、どういうことなの?
わたし、死にたくないのに死んじゃうの? 
このまま陛下に会えなくなるの?
青慎、父さんにも? そんなのは厭だ。 絶対にいや。
そう強く思うのに身体からは力が抜け、唇を薄く開くことしか出来ない。
  

「・・・・・この言葉を耳にするたび、貴女は死出へ旅立とうと御努めなさいます。 何度止められても御励み下さいませ、私の雇い主のために。 次の妃を推挙なさっている御方は大きな野望をお持ちですわ。 推挙される方はとても高貴で御綺麗な貴族子女様ですから、陛下もきっとお喜びになるでしょう。 ですから何の憂いもなく死んで下さいね」

大きな野望を持った人物が推挙する妃なんて、陛下のためにならない。
後宮は陛下を癒す場所だと教えられた。 老師の言うとおり、まずはそこが大事だろう。 
教養ある見目麗しい妃が心から陛下を慈しみ癒すならいい。 だけど大臣らの私的な思惑や駆け引きで国政に何かを仕掛けようとするのは間違っている。 
それは陛下のためにも、この国のためにもならない。
小犬の本性を隠して、恐れられても怖がられても狼陛下で頑張っている人なのに。 
私はそんな陛下の役に立つだけで、傍に居られるだけでいいのに。

「下賎な妃は早々に消えて欲しいと皆に望まれていますわよ」
「・・・・・・・」

陛下の役に立ちたいの。 狼でも小犬でも、私は傍にいたい。 
私はそのためのバイト妃で、臨時花嫁で・・・・・。

「では、さようなら。 お妃様」










浩大が部屋を覗くと仄かな明かりの中、寝所で既に眠っている妃の姿が見え、昼過ぎから湯浴みだ、着替えだ、化粧だと翻弄されていた姿を思い出した。 未だぎこちない演技をする彼女の強張った笑みを思い出し、ゆっくり休んでくれと周囲警護に回ることにする。
怪しい動きの侍女は目星をつけていた。 他の侍女と違い目が笑っていないから注意していたのだが、陛下との話し合いで一旦目を離していた。 
何処に姿を消したかなと目を凝らしていると、警護兵が慌ただしく動いているのに気付く。
浩大が屋根伝いに移動し、その騒ぎの許へと足を向けると程なく騒ぎの原因が見えてきた。

「・・・・確認を急げ!」
「女官長に連絡を。 陛下へ報告は済んだか?」
「念のため、侍医を呼ぶように」

何の確認を急ぐのかと眇めた視線を向けると、回廊の下に何かあるらしく、囲むように警護兵が立っている。 呼ばれた侍医が何かを確認して項垂れた首を横に振った時、今度は陛下がやって来た。 その険しい表情を見た瞬間、浩大は急ぎ踵を返して妃の部屋へと向かった。 
背に恐ろしく厭な感覚が這い上がり、額にどっと汗が噴き出る。


部屋の窓を乱暴に開き、寝台で眠る彼女の呼吸をまず確かめた。 落ち着いた呼吸を確かめたが、浩大の眉間に刻まれる皺は深まるばかりだ。 大きな音にも反応せず深く眠る妃に違和感を感じ、窓から身を乗り出すと他の隠密を呼ぶ。

「至急侍医を呼び、陛下に知らせろ!」

寝台の彼女は深く眠ったままで大きな声掛けにも反応せず、浩大は部屋の中に残る香りに眉を顰めるしか出来ない。 それが鎮静作用のある香りだというのは判ったが、それに重なる異なる香りに胸が悪い方向へと騒ぐ。 部屋に訪れた陛下が乱れた髪で息を切って寝台へ真っ直ぐ足を進め、彼女を強く揺さぶり出したのを見て、窓下に控える隠密に次の指示を出した。

「他の鼠を取り押さえろ! 生死は問わない!」

侍医と医官、老師が来たところで浩大は部屋から出た。 他にも鼠はいる。 少なくてもあと二人はいたはずだ。 不審な動きは早々に動きを止めたほうがいいだろう。 
やがて浩大の耳に侍女の衣装を身に着けた女性の死が届けられた。 警護兵が囲んでいたのは後宮立ち入り禁止区域近くの回廊下だ。 普段は人が立ち入らない場所近くであり、夜の巡回場所ではないはずだが、何故見つけられたのか。
確認すると浩大が目を付けていた侍女とわかった。


李順を見つけ、妃の異変を伝える。 
李順は眉間に皺を寄せて浩大を凝視した後、持っていた書類を揺らした。

「先程、警護兵が不審な女性の死体を見つけました。 それは承知ですね。 女官長に確認させましたが、見たことがない侍女だということが判明しています」
「侍女の衣装を身に纏っていたということは、お妃ちゃん狙いか?」
「たぶん、そうでしょう。 身元を調べ始めたところに、桐より城下で調べさせていた情報が届けられました。 やはり金銭が絡むと人間は本性を見せますね。 この件と関連がある可能性も合わせて調べるつもりですが、証拠が出るとは思えません」

細められた視線の先には揺れる書類。 まあ、面白い内容でないだろうことは直ぐ判る。

「・・・・女は口封じに殺されたのかな?」
「まだ詳細は調べているところですが、自ら毒を煽ったのか、無理やり飲まされたか。 無理やりだとしたら侵入している鼠の中に仲間が居るということでしょう。 結果を報告する者が未だ王宮内にいる可能性は高いと思われますね」

日中、妃の傍には常に侍女が控えているが就寝時は離れている。 夜間は侍女も寝所内には立ち入らない。 陛下が照れ屋の妃のために人払いをする場合もあるが、本当はバイトである彼女が唯一気が抜ける場所を作るためと、浩大が警護しやすいようにだ。 
囮としても配された夕鈴を直ぐに守れるように寝所内は彼女だけにしている。 侍女がいては守る対象が増えて困る場合があるためだ。 
今回はその隙を突いて寝所で狙われたようだが、妃の命に別状はない。
あの状態で妃を狙わなかった意味が判らない。
刺激に反応もせず深く眠る妃を見ると何かがあったのはわかるが、それが何かがわからない。 仕掛けた相手は死んだあの女なのだと確定も出来ず、ただ離れていた時間が悔やまれる。

「桐にも夕鈴殿の警護を任せましょう。 陛下に一旦執務室に戻るように伝えて下さい」
「了解っす。 ・・・・陛下に傷一つ付けないって言ったばかりなのにな」
「悔やむ暇はありません。 まずは出来ることをすべきでしょう」

端的な返答に、落ち込みそうな気持ちがすっぱりと切り落とされる。 気持ちを直ぐに切り替え、同じことが繰り返されないよう注意すべきだ。 まだ怪しい輩は潜んでいるのだから。



李順からの言葉を伝えに浩大が妃の部屋に向かうと、見慣れた顔の侍女が安堵の表情で部屋から離れて行くのが見えた。 この騒ぎに気付き、妃を心配して様子を見に来たようだ。 続いて侍医が恭しく低頭して退室する。 他に人が居ないことを確認して部屋に顔を出すと、途端に騒ぎ出す彼女の声が聞こえて来た。

「もっ、もう離して下さい! ど、何処を触っているんですかぁ!」
「何処ってお嫁さんの身体を支えているだけだろう。 ほら、零さないように飲んでね」
「じ、自分で持ちますから! 本当に離してぇ~!」

ああ、いつものお妃ちゃんだと安心しながら壁を叩く。 その音に驚いて振り向いた兎の顔は真っ赤で、狼にどれだけ翻弄されたのだろうと浩大は頬が緩むのを感じた。
少しだけ張り詰めていた緊張が解れ、深く息を吐く自分に苦笑してしまう。









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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:40:01 | トラックバック(0) | コメント(4)
コメント
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2013-08-26 月 09:03:49 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。歯科はイケメンに担当されています。マスク取るたびにいい顔だなとニヤついてしまいますよん。一週間経過見て、次の段階にいきます。痛みも無くなって来て、ほっとしています。
2013-08-26 月 11:38:22 | URL | あお [編集]
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2013-08-26 月 21:34:16 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。連日雨降ってますね。大雨の音に怯える弱虫なうちの犬は、こういう時だけ娘の膝上に攀じ登る。人間で言うと60歳近い男が何甘えてるんだと突っ込みを入れています。週が開け、またのんびり更新となりますが、よろしくお付き合い下さいませ。
2013-08-27 火 00:49:26 | URL | あお [編集]
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