スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
心騒  5
涼しくて過ごしやすいなと思ったら、翌日は暑い。8月も終わりに近付き、体調管理がしにくい時期到来ですね。 あ、今更ですがオリキャラ桐が出ています。ご了承下さい。
じわりといつの間にかunder更新中です。


では、どうぞ













念の為と言われた薬湯を、運んで来た医官姿の桐の前で飲み干す。 
余りにも苦い薬湯に思わず足をバタつかせると 「妃らしからぬことだ」 と呟かれ、必死に堪えた。 口直しの果物がなければ文句を言っていたかも知れないくらい、苦いそれを必死に飲み干した後で、昨夜飲んだ薬湯より格段に苦いことに気付く。 振り向いて桐を見ると視線を逸らされ、じっと睨み付けていると苦笑された。

「桐さん、何でこんなに苦いんですか!!」
「その方が甘味がより美味しく感じるだろう」

そのために余計に苦くして貰ってきたと言われ、夕鈴は地団太を踏んだ。 楽しそうな笑みを浮かべて桐が下がり、代わりに入って来た侍女に急いで茶の用意をお願いする。 次の薬湯は他の医官に持って来て貰うようにお願いしようか真剣に悩みながらお茶をお替りした。

何かあったのかの未だ説明はなく、訳が判らないまま薬湯を口にするのは正直面白くない。 いつになったら説明してくれるのだろうと、文句を口の中で言っていると侍女が李順さんの来訪を伝えて来た。 人払いを済ませた部屋で緊張しながら背を正していると、眼鏡を持ち上げた李順さんが昨夜の事情を語り出す。 待ちかねていた説明だと、唾を飲み込んだ。

「侍女姿の刺客らしき女が後宮内で見つかりました。 その女は毒を口にしたようで息絶えていました。 その後浩大が貴女の不審な深い眠りに気付き、無くなっていた茶杯が女の懐内より見つかっています。 女が夕鈴殿に何か飲ませた可能性がありますが、綺麗に拭き取られていて判らない状態です」
「・・・・元から・・・・後宮にいる侍女さんが亡くなった訳ではないのですね」
「ええ、間違いなく忍び込んだ刺客でしょうね」

昨夜突然浩大が消えたのは、茶杯が無いことを不審がっていたんだと判った。 何を飲まされたんだろう。 眠気があったくらいで、他に何があったかわからないまま夕鈴はいつも通りの朝を迎えていた。 いつも後宮で自分の面倒を見てくれている侍女さんに何も無くて良かったと胸を撫で下ろし、そして浮かんだ厭な考えを口にする。

「その人は殺されたんですね。 ・・・・たぶん、仲間に」
「何が目的で忍び込んだのか不明のままですが、発見当時の様子からそのようだと見解がまとまりました。 貴女自身、何も自覚されていませんが香の件もありますので、何か暗示を掛けられた可能性もあります」
「・・・・・暗示」

その言葉に、何かちりっとした感情が頭の片隅で痛みを発した。 一瞬で霧散したその感情を言葉に出来ず夕鈴が項垂れると、李順が苛立ちを混ぜた溜め息を吐く。

「陛下に害が及ぶことを考えますと、貴女の政務室通いを中止せざるを得ません」
「そ、そうですね。 わかります。 どんな暗示を掛けられているか判りませんし」

どきんっと鼓動が跳ねた。 陛下に害を及ぼすのが、暗示に操られた自分の可能性がある。
それだけは絶対に避けなければならない。 

「二人きりで陛下に会うのは禁じます。 菓子や茶を出すのも止めて下さい」
「はいっ! 原因が判るまでは陛下に何も出しませんし、会いません! ・・・・でもバイト妃として、それは大丈夫ですか? 妃推挙を避けるための演技が出来ませんが、後宮に閉じ篭っていて大丈夫ですか?」
「陛下が後宮で妃を慈しんでいると噂を流します。 夕鈴殿は立ち入り禁止区域で掃除をしていて下さい。 もし陛下が来たとしても二人きりは避けるように!」
「は、はいっ!」

嫌な汗が背を流れ、鼓動が跳ねる。 私が陛下に何かする可能性があると言われ、目の前が真っ暗になりそうだ。 それなら自分が狙われた方が数百倍マシだと思えた。 そんなことをしたら、絶対自分が赦せないだろう。 それくらいなら直ぐにでも退宮した方がいい。

「李順! 我が妃と二人で何を話している!」

突然の狼陛下の声色に夕鈴は椅子から飛び上がらんばかりに驚いた。 振り返れば眉根を寄せた険しい表情の陛下がいて、思わず立ち上がってしまう。 
大仰な嘆息を吐いた李順が 「陛下、宰相との話し合いは終わったんですか」 と呆れた声を出して陛下に振り返った。

「ああ、毎日毎日、何故あのように大量の仕事が回ってくるのか不思議でならない」
「それは陛下が時折姿を消して何処かへ雲隠れするからではないでしょうか」
「少しは見直しが無いよう、まともな書簡を揃えるよう官吏に伝えよ」
「御意。 では今度は執務室でお仕事が待っていますよ、陛下」

静かに立ち上がり退室を促す李順に、陛下が冷めた視線で言い返す。

「私は、何故我が妃と二人で居たか問うたはずだが?」
「夕鈴殿に注意事項を伝えに来ただけですよ。 昨夜の説明もあり、後宮より出るのは不安要素が多いため私がこちらに出向いた次第です。 では、急ぎ執務室に御戻り下さい」
「少し夕鈴と話がある」

険しい表情のまま、陛下が椅子に腰掛けようとするから夕鈴は慌てて部屋の入り口へと走った。
たった今、李順さんから注意事項を受けたばかりだ。 陛下と二人きりになってはいけない。
万が一自分に何らかの暗示が掛けられていたとしたら、陛下に何をするかわからない。 
それだけは絶対に厭だと眉を顰めた。

「陛下っ! お仕事頑張って下さい。 私はこれから掃除に励んで来ます!」
「夕鈴、話があると言っただろう。 ・・・・少しでいいから、座って」
「でも。 ・・・・あ、あの」

どうしたらいいんだと上司を見ると、大きな溜め息を吐かれた。 険しい表情のままの陛下に太刀打ち出来るはずもなく、そろそろと椅子に腰掛けると李順さんも隣に腰掛ける。 眉間の皺を深めた陛下が李順さんを睨み付けるが、鬼の側近殿は表情を変えることなく促した。

「陛下、急ぎの政務がありますと伝えていたはずです。 バイトへの話は済みました。 暗示の可能性があり、陛下に危害が及ばぬよう二人きりは避けるように伝えています」
「夕鈴に何かあっては困る。 政務室に来て他の者の目があった方が安心だろう」
「残念ながら忍び込んだ鼠はその後一匹見つかっただけです。 死んだ女の身元もまだ不明な状態で、不安材料を取り除こうとするのは至極当たり前のことです」

今の自分は陛下にお茶も淹れてあげられないのだと、夕鈴は膝上で手を強く握り締める。 
李順さんの言っていることに間違いはない。 万が一があっては絶対ならないと自分も思う。 
だからこそ、バイトより陛下自身を優先して欲しいと夕鈴は口を開いた。

「陛下が政務に励まれている間に、浩大たちがきっと敵を捕まえてくれます。 その間、大人しく後宮にいますから。 私は掃除を頑張りますから、陛下もお仕事頑張って下さいね!」
「・・・・夜は必ず顔を出すから。 掃除中も必ず老師や浩大、桐を傍に就けるように」
「はい、わかりました」

陛下が困ったような顔で渋々立ち上がる。 李順もその様子に小さく息を吐き、そして二人は部屋から出て行った。 窓を叩く音が聞こえ、振り向くと浩大が手を振っている。

「・・・・掃除に行くわ」


何だか泣きそうな気持ちになり、何度も瞬きをした。 昨夜何があったか覚えていないというのは気持ちが悪い。 何かあったらしいが、自分がどう係わっているのか不明のまま。 自分が陛下に何かしそうだと聞かされた時の恐怖が蘇り、このままバイトを続けていいのか不安になる。
ハタキを持つ手に力が入らない。 
老師が 「よく眠れたか?」 と聞いてくるから頷いた。

「・・・・いつもより深く眠れたと思う。 普通に寝台で横になっていただけだと思いたいけど、忍び込んだ人が侍女の衣装で死んでいたのでしょう? 何かを飲まされた形跡があるって言うけど、思い出せない。 老師、どうしたらいいんだろう、私」
「何を飲まされたのか不明じゃが、一応解毒剤を飲んでおるじゃろう。 あと、眼鏡小僧が暗示の可能性もあると言っていたのぅ。 ・・・・妃が暗示により陛下を弑いることあれば誰が得をするか、それも調べた方がいいか。 念のため、しばらくは二人きりにならぬことじゃ」
「・・・・・いっそ毒薬だったら」
「何を言っておる! そんなことがないよう日夜警護の者がおるのじゃろうて」

ぽつりと呟いた言葉に胸が痛くなる。 自分が死ぬのは厭だ。 したいこともあるし、青慎の今後もある。 親より先に死ぬのは駄目だと思うし、第一陛下の政敵を喜ばすために私が死ぬのは間違っている。 見も知らずの人の思惑のために、何故私が死ななきゃならない?
だけど、自分が陛下を傷付けるのはもっと厭だ。 それなら自分が傷ついた方がいい。

「浩大、いる?」
「いるよ~。 お妃ちゃん、何か思い出したか?」

その問いには首を振るしかない。 何か思い出せたらいいんだけど、思い出せるようなものは何もない。 それより浩大が私の傍にいてくれるなら、お願いがある。

「もしも私が陛下に何かしそうになったら、全力で止めて欲しいの」
「まあ、お妃ちゃんが陛下に飛び掛かっても敵わないと思うけど、お妃ちゃんが傷付く前に止めてやるよ。 でもその前に敵を捕まえて原因を突き止めるから安心してね」
「飛び掛って押さえ込まれるならいいけど、簪で背後から襲うとか、卓の茶壷を投げるとか、腰紐で首を絞めるとか・・・・。 考えたらお妃って陛下に何か仕掛けるには容易な立場なのね。 もしそんな暗示だったら浩大、本当に止めてね。 全力でお願いします」
「茶壷を投げつけて陛下殺害を目論むって、どんな暗示だよ。 大丈夫だって。 それよりお妃ちゃんに異常はないんだよな。 何かあったら直ぐ教えてよ」

深く頷き、流石に茶壷で殺害は無理かと少し恥ずかしくなった。 
兎に角、まずは陛下と二人きりにならないことだ。 自分に何があっても大丈夫。 皆が守ってくれているのに、余計なことを考えていては、いざという時動けないだろう。 
気を取り直して、お役立ちプロ妃として頑張ろう!!






そう決心した私の前に現れた陛下は、二人きりで涼みに行こうと夜の庭園へ誘ってきた。
微笑ましく見つめる侍女の手前 「二人きりは危険です!」 とも言えず、夕鈴は引き摺られるようにひと気のない庭園へと連れて行かれてしまう。

「へ、へ、へ、へいかぁ・・・・・」
「夕鈴、落ち着いて。 僕は大丈夫だから」
「だっ、だって何かあったら私・・・・。 死んでも償えませんっ!」
「大丈夫だって。 今日一日掃除していたんだろう? そこでは何もなかったし、今だって夕鈴は夕鈴のままだよ。 僕だっているし、大丈夫だよ」

明るい小犬の声に顔を上げると、いつもの陛下がいて、だからこそ余計に怖くなる。 せめて距離を置きたいのだが、逃がさないとばかりに膝上に乗せられ背後から伸びる手がしっかりとお腹に廻っていて動けない。 自分が何をするか判らないと蒼褪める夕鈴は慌てて拘束する手を外そうと暴れるが、陛下は巻き付けた腕から力を抜いてくれない。

「お願いですぅ・・・・。 本当に何かあってからじゃ・・・・遅いからぁ」
「え、夕鈴、泣いてるの? 僕のこと信用出来ない?」
「陛下じゃなくて、私が信用出来ないんです。 だから離してぇ」
「でも夕鈴は夕鈴のままだよ。 ね、大丈夫だから泣かないでいいよ」

横抱きに変えて、しゃっくり上げる夕鈴の顔を胸に押し付ける。 香炉は発見したが、中身は何処かに撒かれていたようで成分が判らない。 夕鈴が飲まされただろう茶の内容も判らないままで、念のためと解毒剤を飲ませているが今のところ変化は見られない。 何をされたか覚えていない夕鈴自身も不安だろうに、自分よりも僕の心配ばかりしてくる。

「い、今は武器になるようなもの持ってないけど、妃衣装の時は絶対に近寄らないで下さい。 簪とか帔帛で陛下を襲うかも知れない。 茶壷は難しいけど、何をするか本当にわからない。 庭石とか書簡とか箸とか皿とか、周りは武器だらけじゃないですか!」
「茶壷でどうするつもりか判らないけど、大丈夫。 夕鈴は安心してていいよ」
「私のことは信用しちゃ駄目です! だから、離れてぇ・・・・っ!」

僕の胸をぐいぐい押しながら暴れる兎を強く抱き締めて、大丈夫を繰り返す。 
君が必死になればなるほど、僕は離せなくなる。 
逃げた鼠はあと一匹らしいが、死んだ女を含めて全ての鼠が関係しているのか不明のままだ。 夕鈴に何をしたのかも判らないままで、二人きりは避けた方が無難だと李順は判断したようだ。 それには勿論、納得出来ない。 一晩経過し、夕鈴はいつものままだが、だからこそ不安が募る。 残った鼠が再び夕鈴に仕掛ける可能性もある。

「陛下ぁ~。 ちゃんと見ているからさ、それこそ大丈夫だよ」
「・・・・浩大か。 今は夫婦演技向上を図っているところだから邪魔をするな」
「お妃ちゃんが疲れちゃうだろうって思ってさ。 昼間も一生懸命掃除してたしさ、もう休ませてあげたらぁ? もう眠いだろう?」
「は、はい! そうです、眠いです、陛下。 私すごっく眠いんです!」

力いっぱい眠い宣言されて、僕は面白くないと口を尖らせた。 屋根の上から浩大が忍び笑いを漏らすけど、涙目の夕鈴の気持ちを考えると仕方がないと諦めるしかない。 

「僕・・・、添い寝してあげたいな」
「眠った私が暗示で陛下に何かしたら如何するんですか!」 
「え、何をするの? それはちょっとドキドキしちゃうかも」

夕鈴の顔を覗くと、途端にすっと顔色が変わるのが見えた。 あれっと思った僕を胡乱な視線で見上げ、呆れたような溜め息を吐き、僕の手を力いっぱい振り払い立ち上がる。 
今の夕鈴にこの台詞は不味かったかなと反省したが、やはり遅かったようで、振り向きもせず足早に後宮へと歩き出すから慌ててしまう。

「ご、ごめん、夕鈴! 今の台詞は本当に、あのっ!」
「ではお休みなさい。 陛下もどうぞ、ごゆっくりお休み下さいませ」
「あの、ゆう・・・・・。 はい、お休みなさい」

部屋に入った夕鈴は振り向いてくれたけど冷たい視線で僕を一瞥し、そのまま寝所へと消えてしまう。 少しだけ涼しくなった僕は項垂れて部屋へ戻るしかなかった。



それからの夕鈴は数日間、毎食後苦い薬湯を飲み、午前中は侍女と後宮で過ごし、午後は立ち入り禁止区域で掃除をして過ごした。 特に問題は見られず、本当に暗示を掛けられたのか、香は睡眠を誘うだけの品だったのではないか、無くなった茶杯も欠けていたから片付ける途中だったのではないかと夕鈴は考えてしまう。

ただ、侍女に扮して死んでいた女性の身元が未だ不明のままで、それが不安だった。 
自分が万が一陛下に何かしてしまった後、捕らえられ身元が調べられ臨時花嫁のバイトだとばれた場合が大事だと説明されると唇を噛むしかない。 確かに、何故一介の庶民が後宮で陛下の臨時花嫁をしているんだと詰め寄られ、隠したい陛下の二面性や妃推挙阻止など、今は未だ知られたくないことを調べられてしまう可能性が出てくる。
そうなると陛下の足枷になるのは自分自身。

陛下を傷付けるのも、足枷になるのも嫌だと、全ての調べが終わるまでは大人しくしようと自分を律しているのに、その邪魔をするのは当の本人である国王陛下様だった。







→ 次へ

スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:00:05 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-08-29 木 13:48:21 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-08-29 木 14:38:57 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。次回、動きますのでごらん頂けたら嬉しいです。もっとサクサク書けたらいいんですが、すいません。引き続きよろしくお願いします。(^^)
2013-08-29 木 20:29:08 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
お名前なし様、コメントをありがとう御座います。じわりじわりと蝕む中、夕鈴は頑張ってます。それを翻弄する陛下です(笑) ああ、桐も遊んでますね。困ったな、まじめな話を書きたいのに(爆)
2013-08-29 木 20:30:30 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-08-29 木 21:06:51 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。 underの陛下は我が侭状態、放置してます。(笑)もう、あっちは好き勝手に好き放題しています。止めようがありません。わはははは。 こっちの陛下も我が侭ですが、次から少し動きますので、引き続きごらん頂けたら嬉しい~!です。
2013-08-29 木 21:18:51 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。