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心騒  7
台風の影響ということで関東は暑い!ちょいと犬が心配になりますが、義理母はクーラー嫌い。頑張れ、犬!アイスノンで涼んでくれ。 あ、月に一度くらいはとSNSにSS書きましたが、その分こっちが押せ押せです。手が遅い自分にジレンマです。


では、どうぞ













午前中、執務室へ新たな報告が届けられ、密かに話し合いが始められた。
まず城下で調査していた高官と某商家との癒着が判り、その商家の娘を後宮侍女として入宮させる代わりに王宮御用達商品を安く仕入れさせ、その差額を懐へ入れる予定だったらしいと桐が肩を揺らす。 安易な企てだと冷笑を漏らし、他にも数点の賄賂事件の証拠を挙げ、そして後宮侍女衣装を身に纏って死んだ女の死因について報告を始めた。

「女の口端に残る粉の成分がようやく判明し、致死性の強い毒と判りました。 首の傷は苦しさにもがき、自分で傷付けたのでしょう。 襟元以外着衣の乱れ、発見場所が荒らされていないなどの点から仲間による犯行だろうとの見解です。 香炉の灰もここ数日の晴天のお蔭で発見出来ましたが、こちらは強い睡眠作用としか判っていません」

夕鈴自身に暗示に掛けられた覚えがなく、体調に問題は見られない。 
想像の範疇ではあるが、暗示により妃自ら命を絶たせようと、それも後宮外での自害を目論んでいるらしい。 面倒な暗示を施したのは、次に輿入れさせたい妃のために後宮を血で穢したくないのだろう。 最近は妃推挙の話がなかっただけに、陛下は冷酷な表情でほくそ笑んだ。

「己の邪な欲を満たすために、私の唯一を殺す画策しようとしたと?」
「たぶん、ですがね。 そのためにお妃へ自害の暗示を掛けたのでしょう、後宮の外で死ねと。 お妃が後宮以外を徘徊・・・・ いえ、御歩きになっているということを知っているからこそ、そのような暗示を掛けるよう指示したと思われますね」

なれば画策した者は王宮に従事する者と限られる。 政務室や書庫に顔を出す妃を煩わしげに見る者が多いのも承知だ。 後宮から出て官吏と話したり書庫に通う妃など、今までの歴を知る者にとっては珍事にしか映らないだろう。 方淵のようにはっきりと物申す者が少ないだけで、裏でどのような噂が流れているのかも知っているが、今更後宮に引き籠らせる気はない。 
目の届かない場所に彼女がいるのは耐え難い。 
それが本来、彼女が住まう場であってもだ。

「李順、大方の調べはついているのだろう」
「怪しい人物は確かに居りますね。 先日の宴に乗じて刺客を招き入れたのでしたら、その流れを承知している者。 当日参加しなかった大臣が数名。 特に怪しいのが鍍大臣、會大臣、菱大臣の三名。 その傀儡として動いている高官が数名おります」

桐が頭を掻きながら呟きを落とす。

「催眠療法を生業としている民間の者と話をしました。 暗示の種類にもよりますが自分の命を害しようとする暗示は余り例をみないとのこと。 余程お妃が単純なのか、暗示の掛け方によるものか不明ですが、出来ることなら掛けた本人が解除するのが望ましいとのことです」
「・・・・・難しいということか」
「一度だけの発動かも知れませんし、後宮から出て様子を見るのも手でしょう。 原因となった動きや言葉も不明ですし、陛下殺害もあり得ると動いて下さい」

昨夜の夕鈴は魘されることなく、よく眠っていたと浩大から報告が来ている。 朝食も昨夜と違いしっかり食べてやる気に満ちた表情だったと言っていた。 囮としてやる気になった兎に心配が募る。 ああ、解除方法をもう少し調べてから呼ぶべきだったか?




午後、侍女に編み込んで貰った、いつもと違う髪形の夕鈴が執務室に顔を見せる。 
昨日突然倒れた妃を心配していた侍女の心配りか、淡く明るい色合いの衣装を身に纏った夕鈴はとても可愛らしい。 李順を見るとひどく緊張した面持ちになったが、勧められた椅子に腰掛けると背を正す。引き攣った表情で李順を真っ直ぐに捉え、膝上の手が強く握られている。 
李順相手に何故そんなにも緊張しているのだろうと、陛下が声を掛けようした瞬間、夕鈴が膝に額を叩きつける勢いで低頭した。

「李順さん、団扇を壊してしまって申し訳御座いませんーっ!」
「ええーっ! 夕鈴、まずそこ? 大丈夫だよ。 団扇の一つや二つ、気にすることはないよ。 夕鈴が悪い訳じゃないんだから。 昨夜蒼褪めていたのは、それを気にしてた?」
「思い出したのは先ほどです。 妃用の品は全てレンタルですから気になって!」

涙目の夕鈴はカタカタ震えながら唾を飲み込み、李順を見上げる。 自分の命が危ない時にレンタル品の心配なんて、本当に君の考えは予想出来ない。 しかし金銭に関しては夕鈴よりも厳しい側近が嘆息を零して眼鏡を持ち上げた。

「あれは一点ものでした。 壷の時同様、壊したのは夕鈴殿ですね」
「はいぃ・・・・・」
「前回は陛下の危機に無我夢中で投げた。 今回は暗示によって折った」
「はいぃ・・・・・」
「どちらも仕方がないと謂えば、それまでですが・・・・」
「かっ、覚悟は出来ていますっ!」

膝の上で握った手は力を入れすぎて震えている。 
陛下は夕鈴の前に跪くと震える手を包み込み、厳しい態度を崩さない李順を睨んだ。

「あれは夕鈴が暗示に掛かっていたための行動だ。 少しは温情を掛けるべきだろう」
「温情で団扇が元に戻りますか! 夕鈴殿、借金へ加算させて頂きますので、いいですね」
「かっ、覚悟は出来ていました!」
「李じゅ・・・っ。 そうか・・・・借金が増えると、その分夕鈴は長く・・・」

陛下の一言はとても小さく、バイト上司とバイト妃には届かなかった。 二人の遣り取りがまとまった後、夕鈴を慰めながら、押さえ切れない笑みが陛下の口端から零れそうになっているのを、浩大が緩みそうな口元を引き締めつつ眺め、そして思い出したかのように話し出す。

「ところでさ、暗示で動いたお妃ちゃんの、そのきっかけは何?」
「・・・・政務室で他の者と話していた時は普通だったらしいから、『狼陛下』が近寄ると・・・・か? 後宮ではいくら近寄っても問題なかったが、後宮以外で暗示は発動するのかも知れないな」
「後宮でいくら近寄っても・・・・とは?」

李順が白く輝く眼鏡を持ち上げながらバイト妃を詰問する。 夕鈴は蒼褪めながら首を振るが、叱責するなら陛下の方にでしょう?と憤りを感じた。

「兎に角、政務室に行ってみるか。 今日は飾りのない髪型をしているし、手には何も持っていないから大丈夫だと思うよ。 まずは試しに動いてみるしかない。 心配しないでいいから」
「・・・・・お仕事は大丈夫ですか?」

陛下と李順を見比べながら恐る恐る夕鈴が口にすると、側近は小さく、小犬は大きく頷いた。
それならと陛下と連れ立って政務室に行くことになったが、侍官姿の浩大も背後に付き従い、夕鈴はひどく緊張している自分に何度も気合を入れることになる。
官吏の前でおかしな行動を取る訳にはいかない。 
自害を目論んでいる妃など、そんな噂が流れることになったら陛下まで変な目で見られることになるだろう。 そんな妃が狼陛下の唯一ですか、と周囲に噂されることになったら、暗示より先に本当に自害した方がいいのかも知れない。

政務室に足を踏み入れると、夕鈴が思っていたよりも少ない人数しか居なかった。 官吏の人数が少ないことに安堵して、顎を引いて大きく息を吸い込む。 夕鈴の肩を掴んだ陛下が途端に妖艶な狼陛下の笑みを浮かべ、引いたばかりの顎を持ち上げた。

「少しだけ待っていてくれるか、我が妃よ」
「ええ。 では、いつもの席にて陛下のお越しをお待ち申し上げておりますわ」

動悸が激しいが、いつも通りに妃演技が出来たと思う。 
陛下と共に政務室に足を踏み入れたが、暗示は発動していない。 早速、陛下の傍に官吏が近寄り、政務の指示を受けようと書類を持ち集まり始めた。 所定場所の椅子に腰掛けた夕鈴の横には侍官姿の浩大が立ち、周囲をそれとなく窺っている。

「まあ、緊張しないでいつも通りに、ね」
「顔を隠せないっていうのは手持ち無沙汰で辛いんだね。 二本も折るのは勘弁だけど」
「今のところは気分不快とかないか? どっか熱くなったり痒くなったり」
「熱くなったり痒くなったり?」

眉を寄せて浩大を見ると、拱手した袖から楽しそうな顔が見える。 からかっているんだと判り、睨み付けていると狼陛下の怒気を孕んだ叱責が政務室に響き出した。 右往左往する官吏や肩を竦めて書類を探し始める高官の姿に夕鈴は蒼褪め、袖で口元を隠すと視線を床に落とし、暗示に掛かりませんようにと必死に祈り始める。


ふと気付くと視界に足が見え、顔を上げると嫣然と笑みを浮かべる陛下が立っていた。 

「待たせたな、我が妃よ。 ・・・・今日はいつもの香とは違う香りがするな」
「ええ、実は夜来香の花を髪に編み込んでいるのです。 いつもと違う香りを陛下に楽しんで頂けたら嬉しゅう御座いますわ」
「・・・・本当に良い香りだな。 もっと傍に来て楽しませてくれ」
「香りは強く御座いませんか。 昨夜陛下がお仕事でお戻りの後、侍女が警護の方にお願いして夜来香を摘んで来て下さったそうです。 陛下に褒めて頂けて嬉しいですわ」

その表情はとても柔らかく、さっきまで緊張していた君とは思えないほど楽しそうな笑顔を見せてくれる。 次に部屋に来た時は必ず侍女に聞こえるように今日の髪型を褒めて下さいねと小さく囁く君の肩を引き寄せ頷いた。 

「我が妃の香りに酔いそうだな。 私だけがこの香りを愛でたいものだ」
「・・・・・・・」

狼陛下の甘い台詞に、慌てた夕鈴が袖で顔を隠すが真っ赤な耳朶が丸見えだ。 
その耳朶を撫でようと手を伸ばすと、夕鈴は静かに立ち上がり何処かへと歩き出した。 
今の台詞に夕鈴を翻弄するような言葉など何もなかったはずだと驚いて追い掛けると、足早に進んだ君はそのまま回廊手摺にぶつかり、そのまま身を放り出そうとする。 
急ぎ背後から腰を攫い抱き上げると意識を失った夕鈴が居て、胸が抉られるような痛みに襲われる。 侍官姿の浩大が困惑した顔を見せたが、直ぐに書庫へ移動するよう目で訴えて来た。

普段から妃を抱き上げている陛下を見慣れているため、訝しく思う官吏はいない。 文句を言う者も勿論居らず、視線を逸らして仕事を続けている。 浩大が怪しい動きをしている官吏がいないか確認している間、僕は前回と同じように意識のない夕鈴を書庫の長椅子へと下ろした。 

何を言った? 何があった? 前回と今回、何が類同しているというのだ。




目を覚ました夕鈴は、呆けた表情を見せた後、また僕と二人きりだとわかると長椅子から勢いよく飛び起きて書架に身体ごとぶつかりに行った。

「痛っ! え、あれ? 政務室に居たはずなのに・・・・・また?」
「ああ、今度は回廊から落ちようとしていた。 やはり夕鈴は暗示で自害しようと動いている。 今回は傷付けようとするものを何も手にしていなかったから転落しようとしたようだな」
「・・・・・・。 じゃあ、他の人に襲い掛かるとか陛下に何かしようとした訳じゃなく」
「そのきっかけは不明だが、他の者へ向けられた殺意は見られない」

長椅子に座らせると何か言いたげだった唇がきゅっと締まり、ゆっくりと息を吐き出す。 僕を見上げた夕鈴は泣きそうな笑顔で 「良かった」 と呟いた。

「陛下に・・・・他の方に何かしようとする暗示じゃなくて良かったぁ」

その言葉に驚いていると、李順が書庫に飛び込んで来る。 

「やはり後宮以外で自害しようとする暗示ですか? 後宮で問題なく過ごせるなら、夕鈴殿の政務室通いを中止するのが一番手っ取り早い方法ですね」
「それでは根本的解決ではないだろう。 第一私のやる気が著しく低下する」
「仕方ありませんでしょう。 これ以上面倒が続く方が政務に差し支えます」

バイト上司である李順から面倒と言われ、夕鈴は背を正した。 政務の邪魔になりたい訳じゃないと言おうとして口を開くが、それよりも早く陛下が口を開く。

「我が妃に関することだ。 放置は出来ない!」
「放置という訳ではありません。 解決方法が見つかるまで後宮に下がっていた方が安全だと伝えているだけでしょう。 桐に急ぎ解除方法を模索させてますから」
「後宮では問題ないとはっきりした訳ではあるまい。 ・・・・夕鈴?」
「・・・・・? 夕鈴殿、何処へ行かれますか。 話はまだ」

ふらりと立ち上がった夕鈴に二人の視線が集まる。 表情を落とした夕鈴に険しい顔を向けた陛下は李順を制して、後を追った。 すぐに浩大が姿を見せ、夕鈴の顔を覗き込む。

「・・・・何考えているか判んない顔してるよ」

書庫から回廊に出た夕鈴は目の前の別の書庫へと足を進める。 そこには数人の官吏がいて、妃と共に姿を見せた陛下と側近に驚き、拱手一礼すると直ぐに場を離れて行った。 
足を止めた妃はゆるりと周囲を見回し、窓へ足を向けると開け放たれた窓枠に足を掛けようとする。 急ぎ腰を攫い振り向かせて頬を叩く。 目を瞬き、意識が戻った夕鈴は至近距離の陛下に悲鳴を上げそうになったが、肩越しに李順の姿を見つけ悲鳴を飲み込んだ。 
何が何だか判らないが、バイト上司の前だ。 距離を取ろうと必死に陛下の胸を押す。

「あ、あの・・・・っ!?」
「・・・・我が妃は私から離れて何処へ行こうとした?」

一瞬で夕鈴の表情が変わった。 何も映さない視線が陛下の胸に当てられた自身の手を見つめると力なく落ちる。 落ちた手はそのまま陛下が佩いている刀へと伸びていくが、強く手を掴み取るとそのまま崩れるように夕鈴は意識を投げ出した。







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長編 | 01:46:07 | トラックバック(0) | コメント(10)
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2013-08-31 土 02:12:14 | | [編集]
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2013-08-31 土 02:17:02 | | [編集]
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2013-08-31 土 09:32:32 | | [編集]
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2013-08-31 土 13:15:40 | | [編集]
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2013-08-31 土 23:19:43 | | [編集]
Re: タイトルなし
ユリア様、コメントをありがとう御座います。いえいえ、当たりです。皆様からの予想にによによしてました。ありがとう御座います。私の頭が単純なので、答えなど簡単ですよん。引き続き、お付き合い頂けたら超うれしいです。
2013-09-01 日 01:56:00 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントをありがとう御座います。 毎回、本当に短い話のつもりで書き出しているうちに、流れがどんどん長くなって、自分の首を絞めております。どうせ締めるなら腰を締めたいのに、こればかりは・・・。くっそー!どうしたらいいんだーーーーっ!
2013-09-01 日 01:58:00 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
お名前なし様、コメントをありがとう御座います。そうか、危険手当がありましたね!相殺してあげましょう。可哀想ですものね。これからどんどん病んでいくので、妄想して下さいませ。
2013-09-01 日 01:59:24 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
さき様、コメントをありがとう御座います。正解で御座います。次で正解発表となります。夕鈴が陛下にも暗示にも翻弄されちゃう、可哀想な展開になりますので、お付き合い下さいませ。
2013-09-01 日 02:01:15 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。健気な兎を狼はどうするか。考えるのが楽しいのですが、時間が欲しい。(笑)桐も出したいけど、もう少し御待ち下さいませ。桐好きって言って貰えると、五体投地してしまいます。上手く辛らつな台詞付きで出せるよう、ない頭を必死に振りまくっているところで御座います。 湿気混じりの暑さです。御自愛下さいませ。
2013-09-01 日 02:05:18 | URL | あお [編集]
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