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心騒  17
台風の影響か蒸し暑い。厚手の物は乾きにくいと言っている時に限って、一度に溜め込んでいたジーパンを二本、スラックス一本を出す息子に殺意が。 さらに靴下を揃わないまま出され、そのまま戻すと、何故か次回また片方だけの靴下に出会う。片方だけの靴下を5足分預かっているが、相方は見つかっていないようだ。奴の部屋で遭難中か?


では、どうぞ












「掃除婦以外の衣装で眼鏡って見たこと無いから新鮮! 可愛いよ、ゆーりん」
「普通の下町娘は眼鏡など滅多にしませんから珍しいだけでしょう?」
「そう? だって僕とお揃いだよ。 嬉しくない?」

・・・・・実はちょっと嬉しいと思ってしまうから、陛下の顔が見れないほど恥ずかしい。 
顔が赤くなっているんだろうなと思いつつ、絡められた手指へと視線を落とす。 普通に手を繋いでいるけど、今更外すのも変かしら? 本当なら演技が必要ない場所で、手を繋ぐ意味もないのに、するりと指を絡める陛下に 『慣れてる?』 とモヤモヤしそうになる自分に眉を顰める。 
『女ったらし』 の演技が上手い人だけど、本当にこういうのはどこで会得したのかしら。

しばらく手を繋いだまま、普段目にしない下町とは違う店を眺めながら歩く。 綺麗な布地や、高級茶葉を販売する店、いい匂いを漂わせる茶飯屋などの前を陛下に引き摺られるように歩き続け、陛下はこのままで大丈夫なのかと心配になる。

「へ・・・李翔さんの用事はお仕事だったんですか? 本当はお忙しいのでしょう?」
「仕事じゃないよ、ちょっと買い物していただけ。 だけど桐と出掛けるなんて判っていたら、僕が一緒に買い物に行ったのに。 ずるいよ、夕鈴」
「ずるいって・・・・・。 気分転換が必要だと、二度も足を運んで下さる術師の方への土産を買いに来ただけですから。 ・・・・手ぶらに見えますが、買い物は終わりですか?」

ふと見ると、繋いでいない方の手は何も持っていない。 陛下は何を買ったというのだろう。
見上げると、すごっくニコニコしているけど聞かないでって雰囲気が見えるから、黙って溜め息を零すしかない。 何を言っても陛下は王宮に戻ろうとはしないだろう。 それは過去何度も教えられた。 何が楽しいのか判らないけど、下町に来ると役人スタイルで庶民を満喫している。

並ぶ店先に視線を移すと、きらきら輝く品々が目に入った。 
夕鈴は陛下に寄っていいかと声を掛け、早速その店へと足を向ける。 
先ほどの店よりも種類の多い宝飾や宝玉が飾られており、煌びやかな簪や笄の他に、羽飾りの付いた団扇や精緻な刺繍が施された飾り紐などが置かれていた。

「少し見ていてもいいですか? 術師さんから話を聞き、龍紋石が気になっていて」

小指の爪くらいから両手で持てるかしらという大きさまであり、綺麗な鱗のような紋様が見え、様々な色合いが取り揃えられていた。 値段も様々で、手持ちがないまま連れ出された夕鈴は買うことが出来ないが、高価な宝玉や宝飾は見ているだけで不思議と目が輝いてしまう。

「夕鈴、・・・・・こういう宝飾とか興味ある?」
「それは無いと言ったら嘘になりますけど、正直値段の方に目が行きますね。 身分不相応なものは欲しいと思いませんし。 それに高価な品が手元にあったら、父さんが売って闘鶏に賭けそうで怖い・・・・。 あ、想像したら寒気がしてくる」
「あー・・・・」

腕を擦りながら顔を上げると陛下が困ったような表情で笑っているから、身内の恥を晒してしまったと恥ずかしくなった。 父親の借金話など笑い話にもならないし、陛下に話すには残念すぎる内容だろう。 言われた方だって何と返せばいいのか困るだけだ。 いつまでも出世欲のない父が不甲斐無く、これ以上借金を増やさないで欲しいと心から祈る。

急に、王宮は財政難だと李順さんが言っていたのを思い出す。 
それなのに備品を破損し借金を作り、本来は短期だったバイトが結果借金返済のために長期となり、陛下の傍にいる時間が長くなった私は身分不相応にも恋をした。 庶民バイトが陛下に懸想しているなんて李順さんにばれたら、借金が残ったままクビになってしまうのだろうか。 ただでさえ必要ない接触には小言を言われるし、陛下を煩わせないよう注意を受けている。
私の気持ちが露見したら、役に立たないと容赦なくばっさり斬るだろう。

「・・・・・っ」
「大丈夫? ・・・・少し顔色が悪いな、宿に戻るか?」

何だか急に目の前が真っ暗になった。 
貧血なのか、血の気が引くようで全身から力が抜ける。 
握っている手の感覚が痺れたように朧気で、吐き気に似た気分不快に襲われた。 
でも陛下に心配は掛けたくない。 何か陛下が心配しないような言い訳を考えなきゃ駄目だと、夕鈴はお腹を押さえて笑みを浮かべた。 

「実は、お昼抜きで焼き菓子しか食べてないから・・・・。 力が出ません」
「あ、そうか。 夕鈴寝ていたからお昼食べていないんだよね。 焼き菓子の一つや二つじゃ足りないか。 それなら少し早いけど、夕飯にしようね」
「へ・・・李翔さんの奢りでお願いします」

もちろんと楽しそうに笑った陛下に安堵して、咥内に溜まった苦い唾を飲み込む。 頭の片隅に残る厭な想像を追い出し、夕鈴は握った手の感覚を取り戻そうと力を入れた。 視界の隅に見えた陛下が佩くモノから視線を外し、もう一度唾を飲み込む。 視線を下げると目にしそうで、目にしたら足元から崩れ落ちそうだと、夕鈴は顔を上げて陛下に笑みを向けた。

茶飯店に入ると早い時間のため、眺めの良い二階の奥が空いていた。 出されたお茶を飲みながら、大きく開放された窓から見える店先や町並みを眺める。 宿から見る景色と違い、茶飯屋からは王宮が見えた。 大きな外門が白く輝き、外朝だろうか、鮮やかな色合いの何処までも続く瓦屋根が夕暮れ近い日差しを浴びて光って見えた。 城下といっても王都からは少し離れた場所にあるため、遠く見える王宮がとても荘厳で神聖なものとして目に映る。

だけど、あの場所にはいろいろな思惑が渦巻いている。
水面下での醜い争いや、相手を蹴落とす策略、陰謀。 己の欲を満たす思惑を隠し、陛下のためにと勧められる妃推挙。 邪魔な妃へ向ける不躾な侮蔑の視線。 陛下のため、国のために従事するべき廷臣は、自己の昇進と宮内での力を誇示する欲を満たすため、悪いことを悪いと思わず、命を命と思わず、ただ己のためだけに蠢く。
もちろん、そんな人達ばかりではない。
国のためにと怖い王様を演じる狼陛下は、本当は小犬の本性を隠して日々政務に勤しんでいるし、それを補佐する人たちが毎日どれだけ政務室で頑張っているかを夕鈴は目にしている。 李順さんや宰相を始めとした多くの人が、国のためにと連日忙しくしているのかを知っている。
だからこそ、陛下の敵の思惑通りになってはならないと、暗示を解くための試しにここまで来たのだ。 面倒な暗示に掛かった私を放り出すことなく、尽力してくれている人のためにも、精一杯頑張ろうと心から思う。
 
そう思うのに、頭の奥を掻き回すような闇が力を削ぎ、もう諦めろと囁きを落とす。
もう駄目だと、もう終わりだと、暗示は解けないと繰り返し囁き、深く根を張るように侵食する。 聞こえてくるその声に諦め項垂れそうになる自分が厭で、必死に笑みを浮かべて顔を上げた。
大丈夫だと、みんながいるから自分は頑張れるのだと口にする。 思い込むように何度も何度も繰り返し口にしないと、侵食されたまま何処かに落ちていきそうで・・・・・立っていられない。

「料理が来るまで休んでいてね。 はい」
「ほぇ? ちょっ! ・・・っ!」

肩を引き寄せられて頭が落ちた場所は陛下の太腿の上。 こんなことは駄目だと思った瞬間、目の前に闇が落ちた。 目を開けていられない。 ぐらりと回った世界が闇を広げようとするから、囚われたくないと無理やり目を開くと心配げな陛下の顔が見えた。

「・・・・やはり宿に戻るか? さっきより顔色が悪い」
「卓の影になっているだけですよ。 ・・・・料理が来たら声を掛けて下さいね」
「うん。 無理なら持ち帰りにして貰うから我慢は駄目だよ。 ・・・・寝てて」

陛下が腰に佩く太刀が椅子に当たる音が近くから聞こえ、咽喉が詰まった。 
陛下の膝上で寝るなんて駄目だと思うけど、身体は動かないから素直に力を抜くことにする。 こんなにも優しくされて、気を遣われて、恋をするなという方が無理だろう。 好きだという気持ちがばれないように、気付かれないようにするだけで精一杯。 力を抜くと途端に睡魔が瞼を下ろそうとするから、陛下の言葉に頷き甘えることにして、夕鈴はそのまま瞼を閉じた。

急に顔色が悪くなり、喘ぐような息を吐きながら、それでも笑みを浮かべる夕鈴。 
術師に笑わせて安心させるよう言われていたのに、手を拱いている内に君は再び眠りに落ちる。 暗示だけではない悩みがあると言っていたが、それは何だろう。 
刺客が現れたと知ってからも夕鈴はいつも通りに妃として過ごしていた。 
暗示に翻弄され始めると、自分の行動が怖いと怯えることもあったが、逃げ出すことはしない。 暗示を解くためとはいえ、訳の判らない粗暴な試しにも嫌がらずに付き合っていた。
頑張る君は僕の心配を余所に、陛下の敵を捕まえるためならと自ら囮にもなる。
だからこそ愚かしい企てを画策した輩への憤りは増す。 唯一の妃である君を葬り去ろうとする輩への苛立ちや憤りは深まり、決して君には知られたくない闇が広がっていく。 

「急ぎ術師の屋敷を訪ね、試しは明日にして貰うよう丁重に伝えよ」
「・・・・御意」
「宿の二人にも伝えておけ」

少し離れた並びの席に座る隠密に伝え、体調の悪い夕鈴を今はゆっくり休ませることにした。 眠りに落ちた君を見下ろしながら懐へ手を伸ばし、小さな布袋を静かに取り出す。 
布の上から中の物を確かめるようになぞり、いつ渡すのが一番いいのかなと考える。 これを目にして、彼女は喜んでくれるだろうか。 きょとんとしながら 『高そうですね』 と言われそうな気がする。 贈り物だと伝えると、私は自分で買うと言っていたじゃないかと怒るかも知れない。

何度も髪を梳きながら、安心して眠るように語り掛けていると、夕鈴は僕の足の上で無理やり寝返りをしようと動き出した。 椅子の上じゃ硬いだろうと夕鈴の身体を引き上げ膝上に抱きかかえると、かくんっと項垂れるから君の顔が見えなくなる。

「・・・・もしかして、本当にイヤガラセ?」
また寝顔を見せてくれない夕鈴に小さく文句を言って、僕は静かに苦笑を漏らした。




目が覚めた夕鈴は直ぐに怒り出した。 
いつの間に陛下の膝上にいるのだと、料理が来たら起こしてと言ったと、すっかり夕刻じゃないかと真っ赤な顔で元気に文句を言って、それでも出された料理をしっかり食べ始める。 顔色も戻り、食欲も出た様子に安心しながら君の文句を聞き、例の物を懐から出そうか出すまいか迷っていると、夕鈴が突然席から立ち上がった。

「あ、あの人と約束してましたよね!? 確か夜に来るって!」
「それは大丈夫、明日にして貰ったから。 だからもう少しゆっくり過ごそう? 町で夕鈴と一緒に過ごすなんて久し振りだよね。 どうせ後で李順に叱られるなら、今の内に楽しんでおこうよ」

その驚いた顔も可愛いなと見つめていると、夕鈴はじわりと目を潤ませて腰を下ろす。

「わ、私が寝てしまったからですよね。 ・・・・・ごめんなさい」
「気分が悪かったんだから気にしないでいいよ。 浩大らは宿で食事をしているし夜の予定はなくなった。 だからゆっくり遠回りして帰ろうね。 夕鈴はこっちまで来たことある?」
「いえ、余りないですね。 大きな市が出た時に来るくらいで、下町でバイトすることが多いので、こちらまで足を運ぶことはないです。 へ・・・・李翔さんは?」
「前は時々、ね。 最近は来てないから、夕鈴と一緒に歩きたいな」

予定がないのでしたらと小さく呟いた夕鈴に 「どこへ?」 と尋ねられる。 
僕は少し考えた後、少し歩いた先に廟があり夜でも開放されているはずだから暗示が無事に解けますように願いに行こうと誘った。 
茶飯屋から出ると店先に灯りが燈り夜の帳が下り始めていて、夕鈴が驚いたような顔で周りを眺めている。 それはそうだろう。 余り遅い時間に未婚女性が町を歩くことはないし、区画ごとの門が閉まる前に自分の住区へ戻るのが普通だ。
 
手を繋ぎ、夜の賑わいを見せ始めた店先を眺めながら歩くと、次第に線香の匂いがしてきた。 
途中の店で買ったお供え物を持ち、赤い大門をくぐるとたくさんの蝋燭の明かりに浮かび上がる廟が見える。 信仰心が薄い僕と違い、夕鈴は下町でも廟に行くことがあるようで廟前の台座にお供え物を順番に置き並べる。 線香に火をつけて手を合わせた後、夕鈴が繋ぎ直した手を強く握ってきた。 顔を覗き込むと強張った表情で僕を見上げる。

「・・・・暗示、解けますよね」
「うん、大丈夫。 あの術師はちゃんとした術師みたいだしね。 僕、追い出さなかったでしょ? 夕鈴は安心して任せていてね。 あ・・・・、これもあるから安心して」

懐から布袋を出して、夕鈴へ手渡す。 不思議そうな顔をしながら布袋の口を開けた君は、手の平に転がるものを前に口をぽかんと開けたまま固まった。

「・・・・龍紋石。 それも赤いのが二つも。 ・・・・陛下」
「神様への捧げ物にすることがあるから廟がある場所では良く売られているけど、邪気を祓う効果もあるから、これは夕鈴が持っていた方がいいよ。 精神安定にもなるって術師も言っていただろう? 良い運気を取り込むって言うし。 ね?」
「・・・・・・・・」

戸惑いの顔は想定外で、怒るとか値段を訊くとか、いつもの夕鈴なら直ぐに飛んで来そうな言葉が零れない。 手の平の石をじっと見つめた後、指でそっと石をなぞりながら困った顔をしているから、本当に心配なんだと伝わって来る。 

「贈り物するといつも文句を言うけど、それは受け取って欲しいな。 耳飾なんだ」
「あ・・・、本当だ。 でも・・・・」

指で摘んで灯りに揺らす。 でも・・・の後には何が来るかと苦笑しそうになるけど、簪ひとつ君に贈っていない僕は、これくらいは受け取って欲しいと願う。

「夕鈴は下町だと僕からのお土産とかお見舞いを受け取ってくれるだろう。 今回は暗示で辛い目に遭った君を癒したいと思っての贈り物。 だから何も言わずに受け取って?」
「・・・・・バイトを甘やかしてはいけないと何度も伝えてますのに」
「違うよ、夕鈴」

ああ、やっぱりそう来るか。 困った顔のまま、それでも興味津々な視線を耳飾に注ぐ夕鈴が可愛くて、だけどやっぱりバイトを出すかと可笑しくなる。 

「君を甘やかしているのではなくて、君の力になりたいだけだよ。 早く暗示が解けるように、こんな小さな石に頼るような僕だけど、その気持ちを受け取って欲しい。 これで君の気持ちが少しでも楽になるなら嬉しいな。 そういう気持ちを受け取ってくれる?」
「う・・・・あ・・・・。 で、でも・・・・」
「バイトだから。 夕鈴はいつもそう言って頑張ってくれるけど、本当のバイトは僕のお嫁さんでしょ。 暗示で君が何度も傷付いているのを、僕は見たくない。 少しでも気持ちが楽になって暗示が解ける手伝いが出来たら・・・・そう思って、贈りたいと思ったんだ」

唇をきゅっと結んで思案する夕鈴の頭を撫でる。 二つに分けられた髪の束を掴み、手の内で遊ばせながら顔を窺うと、困ったような視線が僕を見上げ、やがて困った顔のまま笑みを浮かべた。

「あ・・・・ありがとう御座います、陛下。 本当は嬉しいです」
「貰ってくれるんだね。 こっちこそありがとう!」


そう言って笑う陛下はずるいと思う。 
優しい笑顔に顔は赤らむし、手の上の龍紋石は綺麗だし、嬉しいのに恥ずかしすぎて顔を上げることが出来ない。 この優しい人のそばに長く居られたら嬉しいなと思う気持ちと、いつか来る現実を目にする前に借金を返さなきゃ駄目だと思う気持ちが、ぐるぐると頭の中を駆け巡る。
胸が痛くなるけど、この痛みは人を好きになったから感じる痛みなんだと、顔を上げて陛下を正面から見つめた。

「とっても嬉しい、ありがとう御座います。 早速飾らせて頂きますね」
「あ、髪の毛が邪魔じゃない? 一度解いて・・・・星離宮の時みたいに高い位置でまとめるのはどうだろう。 耳元で揺れるのが良く見えると思うんだ」

蝋燭の明かりが人影のない廟前に立つ夕鈴を照らす。 赤い廟に淡い色合いの灯り。
左右に分けられた髪を解き、高い位置で纏め上げた夕鈴は、早速耳へつけてくれた。
赤い龍紋石が耳元に飾られ、はにかんだ顔でそっと手を当て、揺れる耳飾を確かめている。 

嬉しい時には本当に嬉しそうに笑みを零す夕鈴を、気付けば腕の中に閉じ込めていた。 驚いた夕鈴が小さな悲鳴を上げるが、胸に押し付けるように包み込むと声は僕の胸に響くだけとなる。いつまでも続く妃推挙の声と、それを成し遂げようとする輩の愚かな行為。 己の欲を推し進めるだけの行動を、私が良しとする訳がない。 君は敵を誘き寄せるため、小犬を隠し狼を演じる陛下のためにとバイト妃を頑張ろうとするが、囮なんかさせたくはない。 最初の思惑から、大きく外れた君の言動に翻弄され、溺れた私を、君はどう思っているんだろう。

「宿に戻ったら鏡で見てね。 すごく似合っている、可愛い」
「こ、これでは陛下、見えませんよね? だ、抱き締める意味がわかりませんし!」
「夕鈴が可愛いから。 最近演技も出来なかったから、忘れないようにね」
「・・・・わ、忘れないように・・・・ですか・・・・」

腕の中の君から強張りが抜け、僕の胸に凭れ掛かる。 何もいらないと、夕鈴だけでいいのだと知らしめるには、暗示を解き、多くの者の前で仲良し夫婦を見せつけるのが一番だ。 彼女だけでいいのだと、彼女に溺れているのだと解からせるためにも、そして何より夕鈴が傷つかないように、早く暗示が解けるよう、強く願う。

夢の中で涙を流す君を見つめるだけで、何も出来ずにいるのは余りにも辛い。 王宮に戻れば、刑房に足が向きそうな自分を止めるのは君だけだ。 そして足を向けさせるのも君だ。 これ以上憂いないよう、心からの笑みを僕に見せて欲しい。






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 01:53:32 | トラックバック(0) | コメント(6)
コメント
こんにちは。
こんな小さな石に頼るような僕だけど、その気持ちを受け取って欲しい。(≧∇≦)
死んでしまうかと思いました
弱気な陛下はおおかみですか?子犬ですか?
2013-09-16 月 11:41:54 | URL | 秋 [編集]
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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-09-16 月 12:09:44 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-09-16 月 18:45:20 | | [編集]
Re: タイトルなし
秋様、コメントをありがとう御座います。気弱な陛下はおおかみですか?小犬ですか?・・・・両方です!(笑)台詞に突っ込んで貰えると、超うれしいです。ありがとう御座います!二人だけのシーンで終ってしまい、進まないとウノウノしてましたが、褒めて貰えると嬉しいです。
2013-09-16 月 20:58:19 | URL | あお [編集]
Re: デートですねデートですね
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。あら、陛下可愛い?うきゃ!娘からの突っ込みは、もう私もすっかり慣れました。ああ、すいません、under放置してますよね。うぬぬ、もうしばらく時間が欲しいです。すっかり台風シーズンだけど、題名は気になさらないで下さいませ。
2013-09-16 月 21:13:20 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
お名前なし様、コメントをありがとう御座います。結構硬くて高さに文句が出そうな膝枕ですが、される方も長時間だと痛いんですよね。(笑)なので直に抱っこする陛下。目が覚めた時の夕鈴の羞恥が問題ですけど、いちゃいちゃする時間が長いのはいいよね?
2013-09-16 月 21:15:42 | URL | あお [編集]
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