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心騒  19
やっと王宮に戻ります。城下が長くなったのは陛下のせいです。(笑)龍紋石でこんなにひっぱるとは、自分でも吃驚仰天ですよ。わははは。陛下も好き勝手に動くし、桐は爆笑しちゃうし、予定になかったことを書いている内にどんどん長くなり、焦る焦る。ぬほほほほほ。
そして、やっとunder up 出来ました。夏がとっくに過ぎましたが、良ければごらん下さいませ。なお、R指定作品ですので御了承の上、お読み頂けたら嬉しいです。


では、どうぞ













瞬時、陛下は掴んだ手をずらし、夕鈴の肩にぶつかった刀は乾いた音を立ててボロリと砕け零れ落ちる。 驚愕する陛下と桐に、術師と助手が叫び声を上げた。

「ひっ、ひぃいいっ!」
「た、助けておくれっ! そ、それは煎餅なんだよ!」

振り返ると、床に倒された二人が浩大に鞭で縛り上げられ、首に小刀を押し当てられた状態で悲痛な声を上げていた。 助手は浩大に押し当てられた刀と、目の前の桐が放とうとしている小刀を見て叫び声を上げて卒倒し、術師は腰を打ち付けたと悲痛な声でもがいている。 
陛下が床に落ちた刀を模した破片を拾い上げると、確かにそれは煎餅だった。 
夕鈴の動きに驚いたとはいえ、何故気付かなかったのかと呆れるほどだ。

「ご、ごめんね・・・・っ!」

浩大がそれに驚き、縛り上げていた鞭を解き慌てて助け起こす。 術師の女性は蒼褪めた顔で腕と腰を擦り、驚愕の視線を向けてきた。

「あ・・・・あ、あんたらの動き、それは何だい!? 下級貴族の娘が、あんたの許婚の代わりに暗示に掛かった・・・・。 ありゃ、嘘か?」
「嘘とは言い切れない事情があるんだよね~。 うー、それ以上は聞かないで欲しいんだけど、この娘ちゃんが大変なのは判るだろ? それを助けたいってオレたちの気持ちもさ。 だから、今のは赦して欲しい。 本当にごめんなさい! 赦して下さい!」

浩大が助け起こしながら必死に謝罪すると、腰を擦りながら術師は眉を顰めた。

「まあね、事情がある者が多く訪れる商売だ。 これ以上の詳細は訊かないよ。 訊いたこっちが危なくなるからね。 だけど、こんな痛い目に遭うとは思いもしなかったよ」
「はい、ご尤もで。 ・・・・でも言ってくれたらいいのに」

術師は浩大が恭しく勧める椅子に腰掛け、睨むように三人へ話し出す。

「最初からこれが煎餅だとわかっていたら、あんたらから緊張感が消えるだろう。 それは娘さんにも伝わる。 暗示の強さを知るためもあったけど、これで自害したと思えば、解ける可能性もあったからね、慎重を期したんだよ。 ・・・・だからくれぐれも動くなと言っただろうに」
「・・・・はい、確かに仰ってましたね」
「では、これでは失敗ということか?」

項垂れたままの夕鈴はピクリとも動かず、力の抜けた手から刀の柄が零れ落ちた。 先んじて伝えてくれたらと思う気持ちもあるが、術師の言い分を聞けば今更だ。 

「もしかして、今ので自害した気になって暗示は解けているかも知れないよね」

浩大が期待を込めて言うと術師は難しい顔をした。 周囲の動きを暗示に掛けられた状態でどう思ったかは彼女次第だと。 確かめるために催眠を掛けて深層心理に問い質すと話し、気を失った助手を乱暴に叩き起こす。 ひどく怯えた様子を見せるが、助手は違う蝋燭を準備し始め、今度は別の石を取り出して術師に渡した。
取り出したのは真白な石。 
紐で括られた石を夕鈴の目の高さまで持ち上げると、目を開けるように話し掛ける。 術師の声が届いたのか、顔を上げると虚ろな瞳が目の前の石を捉えた。 揺れ出した石を追う夕鈴はひどく疲れて見え、見つめる陛下の眉が顰められる。

「あんたの心の奥へと沈むよ。 今、娘さんは一度死んだ。 刀が刺さり死んだ」
「・・・・わたしは、しんだ」
「死んだ心へ沈んでいく。 一番深い場所にある扉を、鍵で開ける」
「・・・・かぎ。 とってが・・・・ない。 かぎは、いらない」
「では開けてごらん。 開けて、何が見える。 見えたものを言う」

目を伏せた夕鈴が薄く開いていた唇を結ぶ。 ゆっくりと瞬きして、深呼吸した。

「もう、あいている。 くらい、だけ」
「暗いのは、娘さんが死んだからだ。 よく目を凝らして見る」

揺れる石を見つめ直した夕鈴の口端が緩く持ち上がったように見えた。 
虚ろな瞳にそぐわない微笑を目にして、思わず夕鈴の名を紡ぎそうになり、陛下は強く手を握り締める。 無表情に戻った夕鈴が瞬きをして、口を開く。

「ちが・・・・ながれて、いない。 ながれて・・・・いない」
「血は流れなくても死んだ」
「・・・・いかの、かたな、で・・・・ななきゃならない。 ごめんな、さ・・・・」
「大丈夫、死んだ。 もう娘さんは死んだ。 これから死んだ娘さんに催眠を掛ける」
「しんだ・・・・、くらい、ばしょ、で、くさる・・・・。 げせん・・・・いらない。 たくさんの・・・・ひめが、くるから、もう、わたしは・・・・かの、やく・・・・ない。 ごめんなさ・・・・」

急に途切れ途切れに喋り出した夕鈴の眉が寄り、泣きそうな顔で石を見つめ、ごめんなさいと繰り返す。 術師に制され、触れることも出来ずにいる陛下の唇が固く結ばれる。

「ごめんなさい・・・・。 ごめ・・・さい」
「私の声を聞く。 死んだあんたは、もういない。 居ないあんたは、もう死なない」
「・・・・しんだ、わたし、もう・・・・・いない」

幾度か瞬きをして、夕鈴が頷いた。 最初は聞き取り難かったが、どうにか自分が暗示により自害したと納得はしたように見える。 伏せた視線の前に白い石がゆらゆらと揺れる。 顔を押し上げられた夕鈴はその石を見つめながら、小さく唇を動かし続けた。

「わ、たしは、しんだ・・・。 ・・・いか、まい・・・・もう」
「暗示により自害した。 もう自害はしない。 死んだのだから」
「しんだ・・・・」
「暗示は消えた。 娘さんは今まで通りの生活に戻る。 暗示は消えた」
「・・・・・・・」

術師が夕鈴の頭に手を置き、わかったかと問うと静かに頷き、目を閉じる。 そのまま深く眠り、次に目を開けると暗示は完全に解けていると強く伝えると、再び頷いた。 
寝かせるよう指示され、陛下がその身体を横たえる。 唇が何かを呟いているが、言葉として聞き取れない。 やがて深い眠りに入ったのか、夕鈴から規則正しい寝息が聞こえてきた。

「これで暗示は消えたのか?」
「一応、刀が身体に当たってはいるからねぇ。 あとは目が覚めた時、暗示が解けたと繰り返し伝えることだ。 周りから言われると、そうかなと思い込むタイプだろう?」
「そうだな、彼女は素直で一途だから。・・・・暗示が解けたと思い込ませればいいのだな」

寝台に腰掛け、夕鈴の髪を梳きながら悲しげな笑みを浮かべる陛下に、術師は溜め息を零す。

「まあ、素直そうだね・・・・。 暗示が解けたと思い込むことで発動を抑えることが出来るだろう。 本来は自分の命を左右する暗示や催眠など、有り得ないのだよ。 自己防衛本能があるからねぇ。 刀を渡されても、火に飛び込めと言われても本当なら足は竦むし、手は止まるものだ。 だからこそ何か鍵があると思ったが、鍵はないと言っていたのが気になるねぇ」

夕鈴は何度も本気で命を絶とうとしていた。 自覚も無しに繰り返された自傷行為は身体も心も傷付ける。 暗示を掛けた女を殺した男と、それを依頼した孔が脳裏に浮かび、心の深淵へと沈み行く。 どんなに奴らが苦しみ悶えようとも、彼女の苦しみは伝わるまい。 わからないからこそ、奴らは己の欲に忠実なのだ。 他者の痛みを知る者の行いではない。 人として欠落しているのだ。 では、それ相応に扱うべきだろう。

荷物をまとめ終えた助手が、窓を開けた。 
窓から見える空を見て、釈然としない思いに苛む。 鮮やかな夕暮れにはまだ早く、澄み切った青空は翳りを見せる、その中間刻の空の色に遣る瀬無さだけが浮かび上がる。
 





*****





目が覚めた夕鈴は、もうすっかり見慣れた天蓋に気付き、後宮に戻ったんだと気付いた。 
では暗示は解けたのかと、催眠は上手くいったのだろうかと身体を起こす。 天蓋を払い、足を下ろすと冷たい床に素足が触れた。 冷たいとは感じるが現実感が薄く、寝台に腰掛けたまま何をしたらいいんだろうと夕鈴は茫然と足元を眺め続ける。
どのくらい経ったのか、寝所入り口の帳が払わる音に顔を上げると、そこには陛下がいた。

「夕鈴、目が覚めたんだ! 暗示は上手くいったよ」
「・・・・上手くいきましたか。 上手く・・・・良かったぁ」

僕の笑顔に、夕鈴は眉尻を下げて笑う。 心から安堵したとは言えない、不安混じりの笑みを浮かべる夕鈴の頭を撫でながら寝台に腰掛ける。 見ると素足を床につけているから、膝上に夕鈴を乗せて掛け布を巻き付けると、途端に真っ赤ないつもの顔を見せてくれた。

「な、なんで膝上に乗せるんですか! 重いでしょ、下ろしてっ!」
「床上に素足でいるから冷えちゃうなって。 もう少し僕の体温で温まったら下ろしてあげる」

いつもと変わりない夕鈴に安心するが、宿で垣間見た虚ろな瞳と沈痛な表情を思い出すと胸が痛む。 もう暗示は解けたのだと何度も強く繰り返し伝え、後は様子を見るしかない。 後宮以外での行動は様子を見なければ判らないのだから。 まずは自分が信じなくては、夕鈴に気取られてしまうだろう。

「夕鈴、寒くない? お腹空いてない?」
「・・・・もう、すっかり夜なんですね。 陛下はお仕事大丈夫ですか?」
「あー、大丈夫とは言い難いから、監禁される前に夕鈴と一緒にご飯を食べようと思って持って来たんだ。 侍女はまだ呼び寄せてないから、お茶を淹れてくれる?」

寝所から出ると卓の上には、暗示が解けたお祝いだと豪華な食事が用意されていて、夕鈴は困ってしまう。 城下では食べ歩きや浩大差し入れの菓子などを食べていたのに、たいして身体を動かしてないし、掃除はしてないし、気付けば寝台で寝てばかりいた。 これでは太ってしまうのではないかと卓上を凝視しながらお茶を淹れ終えると腕を引かれ、またもや陛下の膝上に座らされている。 今度は横座りで、背後から回る陛下の手が腰からお腹を固定し、これでは動けないと項垂れた。

「・・・・・これでは食べにくいですよ?」
「僕を置いて城下に行った妻へのお仕置き。 夕鈴が落ちないようにしっかり押さえているから、食べさせて。 お腹空いたし、しっかり食べておかないと政務が山積しているから」
「ですから早く王宮にお戻りになればと何度もお伝えしましたのに」

あーんっと口を開ける陛下を待たせる訳にもいかないと、急ぎ箸を持ちおかずを運ぶ。 
私は親鳥かという突っ込みは心の中に置いておいて、大きな口を開けてパクパク食べる陛下に運んでいると、唇に何かを押し当てられた。 目を瞠ると、陛下も箸を持ちおかずを運んでくれていると判り、おずおずと口を開ける。

「なんか、太りそうな気がする・・・・。 秋の味覚って恐ろしい」
「もっと食べてね。 ここ数日はいろいろあったから、いっぱい食べて元気出して欲しいな。 無事に暗示も解けたし、お嫁さんとして皆に仲良し夫婦を見せつけようね」
「そ、そうですね! ちゃんとバイト出来るようになったのですから、え、演技しませんとね! だ、大丈夫です。 町でもちゃんと演技してましたものね!」

にっこり笑う陛下におかずを運ばれる。 ぱくんっと音を立てて食べ、今度は陛下におかずを運ぶ。 暗示が解けたのだから、プロ妃としてしっかり演技しなければという使命感がむくむくと擡げ、夕鈴はおかずを運びながら妃らしい微笑を浮かべた。 
なのに突然狼陛下が降臨し、困惑するほどの妖艶な笑みを浮かべると、微笑を浮かべた頬に顔を近付け、ぺろんっと舐め上げるから、夕鈴は目を瞠って固まってしまう。 頭の中は真っ白になり、何度瞬きを繰り返しても理解が出来ない。  

「・・・・へーか? 今のは何で御座いましょーか」
「おかずが付いていたから取ってあげたんだよ。 夫婦演技だと普通でしょ?」
「・・・・まあ、ふつーで御座いますか。 頬を舐めるのがふつーと仰る?」

陛下の膝の上で深紅に染まった夕鈴はふるふると震えながら、固まった笑みのまま陛下を見上げた。 夕鈴を見下ろす陛下は腰を掴んだまま、妖艶な笑みを浮かべて頬を指でなぞる。 触れた感触にひくんっと頬が強張り、眉間に皺を寄せて陛下を睨むと、驚いた顔で見下ろされた。 

「これくらいで根をあげる夕鈴じゃないよね? はい、口開けて」
「ん、ぐ。 ・・・・でも、皆様の前で食事をするなんてことは御座いませんわよね」
「普段からそのように慣れていないのは、プロとしては失格ではないだろうか。 日々の研鑽が必要だと私は思うのが、君はそう思わないか? 常にプロとして過ごすことが必要と」

口では狼に敵わないと解かっているが、悔しいと思う気持ちは抑えられない。 こんなことくらいで泣くのは違うとぐっと堪えるが、それでも目は潤み、手はカタカタと震えてしまう。
こうなったら一刻も早く食べ終えて陛下を政務地獄へ送り出そうと、夕鈴は箸の動きを速めた。







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長編 | 02:53:19 | トラックバック(0) | コメント(10)
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2013-09-19 木 07:24:53 | | [編集]
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2013-09-19 木 09:59:10 | | [編集]
Re: タイトルなし
ぽんちゃん様、コメントをありがとう御座います。陛下の切り返しの台詞はもちろん、本誌参照です。結構、コミックを読み直して、出来るだけ副うような台詞を使用してます。あまりにも違う陛下と夕鈴じゃ、違和感あるし、でもそのまんまじゃ困るし。台詞は毎回、一番時間が掛かります。
2013-09-19 木 22:30:48 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。暗示はもう少し掛けちゃいます(笑)ちょいと詰め込み過ぎて、流れが変わりそうで、必死に思い出して詰め込んでいたら、長くなりました。わはは。underは思った以上に時間が掛かり、自分でも季節の流れにオロオロしました。マジに焦りました、今回は。宰相の膝上でも、結構安定感がありそうな気がする。あと、出来るのは李順、克右とか?いっそのこと、几鍔をひっぱって来い!(笑)
2013-09-19 木 22:34:33 | URL | あお [編集]
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2013-09-19 木 23:04:57 | | [編集]
陛下やりたい放題ですね、笑っちゃいます
しばらくは宰相に捕まって大変なんでしょうけど自業自得って事でお仕事に頑張って下さい
しかしunderでも有りましたが宰相のお膝に座る夕鈴…笑えます
プププ宰相グッジョブ!一体
2013-09-19 木 23:45:27 | URL | 名無しの読み手 [編集]
桐様笑笑笑
爆笑桐さんいいですなぁー
桐様と夕鈴が呼ぶ状況また読みたいな🌝
2013-09-20 金 01:25:45 | URL | おはぎ [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。術師は敵ではありませんでしたー。王宮に戻って来れてよかった。城下町で陛下がいろいろするものですから長くなり、自分でもどこで切ればいいのか、楽しんでいる内に長くなってアワアワしてました(笑) あ、underもご覧頂き、ありがとう御座います。結局は狼陛下に翻弄される運命だということですよ、兎は。あの時代のお道具は、まあ、いろいろと・・・・(爆)でも詳細に使うと、引かれるかなと自制しました。これ以上、酷くなると陛下が壊れすぎて嫌われてしまうと。お仕置きに几鍔を出すのは、逆効果?でも、楽しそう!!!
2013-09-20 金 21:06:07 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。はい、陛下はやりたい放題です。李順さんなんて、いつ邸に帰っているのでしょうな。たぶん、王宮には専用官舎があるのでしょうけど可哀想ですよね。underもご覧頂き、ありがとう御座います。宰相は黙ってお后を乗せるでしょうね。あの無表情で・・・・・。
2013-09-20 金 21:30:45 | URL | あお [編集]
Re: 桐様笑笑笑
おはぎ様、コメントをありがとう御座います。桐が壊れても大丈夫なようで、ほっとしています。桐様ね、恐ろしい暴君となりそうです。 あと、以前おはぎ様より『ユーリと夕鈴の共演』で妄想炸裂。今、一生懸命プロットを作ってます。その内、ご覧頂けたら嬉しいな。
2013-09-20 金 21:33:25 | URL | あお [編集]
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