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心騒  25
次は「もしもシリーズ」の短編を書きたいな。ここまでバイト妃が長くなると、短い話が書きたくなる。でもバイト妃と方淵もいいし、バイト妃が痛い話もいいな。・・・・ああ、妄想って止まることを知らないのね。それなのに今週、来週は超忙しくなる予定。有給申請しておけば良かった。

では、どうぞ












だけど食後、素直に受け取れない事態が起こる。

「駄目だよ、夕鈴はここでこのまま寝た方がいいよ!」
「それは駄目です! 李順さんも却下と言っていたでしょ! 無理なものは無理っ!」
「無理じゃないよ。 僕が夕鈴に付き添うから、浩大には他の仕事を任せたし、第一閉じ篭るにも鍵が無ければ部屋が開かないだろう? 大丈夫だよ。 僕、ちゃんと添い寝して夕鈴が危ないことしないように見守ってあげるから」
「それなら部屋に戻って寝ますからっ!」
「この時間に妃がひとりで回廊を歩いていたら、夜間警護兵がどんな噂を流すかな?」
「ぐぅ・・・・。 で、では、陛下は寝台に、私は長椅子をお借りします!」

これ以上揉めていると、陛下の睡眠時間を削ることになると夕鈴は妥協案を提示した。 しかし、膠も無くすっぱりと陛下に却下される。

「いいよ? 夕鈴が寝るまで僕は起きているし、夕鈴が寝たら寝台に移動するだけだ」
「そっ、そんなの横暴ですっ!」
「可愛い妃を長椅子に寝かせるなんて出来る訳が無いだろう? それなら最初から寝台で寝た方がいいよ。 今日は風も強い、早く休まないと本当に風邪をひく」
「だっ、だから無理ですってば! もう・・・・へいかぁ」

泣きそうな顔を見せる夕鈴の手を引き、陛下は事も無げに寝台へと誘うと早く横になれと顔を近付けて来る。 余りにも近くに顔が寄るから、慌てて後ろに下がると寝台に足がぶつかり、思わず腰掛けてしまった。 すると沓が脱がされ、足を持ち上げられ、あっという間に夕鈴は寝台奥に転がされてしまう。

「衣装は明日侍女が持って来る。 着替えるなら夕鈴の夜着はそこに届けられているよ。 心配性の夕鈴のために、ほら、僕の分の掛け布は余分に用意して貰っている。 それでも気になるなら何処で寝ていてもいいけど、最終的には寝台行きだと覚えておいてね。 僕はもう少し仕事をしてから横になるから」
「あ、あの・・・っ! だけど!」
「寂しくて眠れないと言うなら、添い寝して寝かせ付けてあげようか?」
「・・・・っ! お休みなさいませ!」

くすくすと笑う声が聞こえてきて、言葉では敵わないと諦め、夕鈴は掛け布を自分側に寄せて、陛下分の掛け布を整えた。 寝所から姿を消した陛下が居室部分で仕事をするために燭台を増やしたのか、衝立越しにさっきよりも灯りが覗く。 陛下の言う通りになってしまうことが悔しくて、だけどこそばゆいくらいに温かいと、夕鈴の身体から力が抜けていった。

謝らない、卑屈にならない、迷惑を掛けていると思わない。
悪いのは自分じゃない。 今は出来ることをそれぞれが頑張るだけ。
だけど何度も「ごめんなさい」と謝罪の言葉が口から零れそうになり、その度に口を引き結ぶ。

どうしたって張り詰めた気持ちになる日々だというのに、何故か陛下の部屋で寝台に転がされ、有り得ないほど翻弄されていることが可笑しくなる。 李順さんに知れたらすごい叱責の雷が落ちそうだけど、陛下と一緒に謝ってもいいかなと口端が自然に持ち上がってしまう。 

「・・・・だけど、寝られる訳が無いわよね。 緊張して目が冴える」

下ろされた天蓋の向こうには衝立があり、その隣の部屋で陛下が仕事をしている。 
天蓋越しに耳を澄ませば筆を置く音や、書簡を函に仕舞う音が聞こえ、先に横たわっているのが申し訳なく感じた。 温かいお茶を淹れてあげたいと寝台から起き上がり、そういえば沓は何処に持って行かれたのかしらと目を凝らす。 
闇に慣れた目で近くの卓下、長椅子、棚下に目を遣り、大きな鏡に映る人物に驚いた。 
もちろん、それは自分自身で、自分の姿に驚くなんて少し恥ずかしいと誤魔化すように鏡に映った自分に向かって手を振る。 その手がゆっくりと寝台に下ろされると同時に、寝台から夕鈴の足も下りていった。





キィッと扉が開く音がする。 

寝所側から庭園へ降りるための大きな硝子扉が開かれたと判り、足音を消して寝所へ入ると、夕鈴が大きく開いた扉から出て行こうとするところだった。 急ぎ上着を持ち、後をつける。 再び暗示により動いたと判り、先の自害は本人の中では無効だったのだと知る。 咽喉を痛め首に傷を付け、それでも死んだと思わなかったのか。 
直ぐにでも止めた方がいいのか、浩大たちが話し合った疑似体験をさせて死んだと信じさせるよう見守った方がいいのか。 逡巡している間にも夕鈴の足はどんどん王宮側へと進んで行く。 追い掛けて上着を羽織らせ、そのまま隣を歩くが、気にした様子も無い。 

今の彼女の関心は王宮内で死ぬことだけだ。
その彼女の口が薄く開き、何かを呟いているのに気付き、そっと耳を寄せる。 

「今の妃は要らない・・・・次の妃が来る前に・・・・なきゃ駄目」

夕鈴から漏れ出た言葉に眉が寄り、思わず足が止まりそうになる。   
虚ろな瞳はゆるりと誰も居ない政務室内を巡り、また何か呟きを零し始めた。

「・・・陛下のため・・・あの妃を殺そう。 あの妃の穢れた血を流さなければ」
「ゆ・・・っ!」

聞こえた言葉に血の気が引く。 彼女が呟くあの妃とは彼女自身だ。

身体の向きを変えた夕鈴は政務室に置かれた、いつも腰掛ける椅子へと向かった。その椅子の背を掴み、政務室から外回廊へと足を向け、階段を下りて庭園に置かれた大石に叩き付ける。 大きな音がしたため警護兵が走り寄るが、それを手で制して下がらせた。

「穢れた血を流す。 陛下のために。 ・・・綺麗な高貴な御方が来るから・・・・」

誰も来ないと夕鈴の肩を掴んで訴えたい。 僕のためと言うなら傷付かないで欲しい。

跪いた夕鈴が折れた椅子の足を虚ろな瞳で選ぶ。 折れた箇所が鋭い木片を手にすると、咽喉から胸を触り、何処を突き刺そうか悩んでいるような表情をする。 
近寄ると今度は夕鈴の顔に、薄く笑みが浮かぶのが見えた。 

「陛下のために・・・・あの下賎な妃を殺しましょう。 何度でも」

呟きが途切れた瞬間笑みが消え、咽喉を目掛けてささくれ立った木片を突き刺そうとする。
僕は木片を持つ夕鈴の手を掴み、同時に項に手刀を当てて昏倒させた。 声も無く崩れる彼女を抱き留め、そして胸の軋みにそのまま動けなくなった。 

夕鈴は陛下のために自分を殺そうと暗示を繰り返す。 
後宮にただ一人いる妃を、陛下に相応しくない妃を排し、他の女性を後宮入りさせるためには殺すべきだと、その妃を殺すことを繰り返す。 
彼女が行っていたのは自害ではなく、『妃殺害』を繰り返していたのか。 自害するよう掛けられた暗示なら、本能的に拒否や躊躇が出るはずだと言った術師の言葉が思い出される。 しかし夕鈴は自害ではなく、自分ではない『妃』を殺そうとしていただけだ。 それが自分とも思わずに。

では、夕鈴を妃の任から解けばいいのか? 
バイトを解消して、王宮から離れたら命の心配はなくなるのか? 
庶民の生活に帰せば、君らしい君に戻れると?

「・・・・・夕鈴」

いや、それでは駄目だ。 根本的な解決になっていない。 きっと君もそう言ってくれそうな気がする。 それでは敵の望む通りになっていると、敵を減らすことにはならないと。 
妃が居なくなることが目的ならば、死でも退宮でも同じことだ。 
邪な考えを持つ輩どもに、同じような考えを指標にさせる訳にはいかない。 

「陛下、部屋に戻らないと寒いっすよ。 お妃ちゃん、風邪ひいちゃうからさ」
「・・・・夕鈴が傷付かずに妃を葬れる策はないのか、お前も考えろ」
「道具に思考を求めちゃ駄目だよ。 ・・・・そんな難しいことをさ」

膝裏に手を回し、抱き上げると深く眠る夕鈴の顔が迫る。

「では術師に夕鈴が呟いた言を伝え、策を講じるよう伝えよ」
「了解。 あと鼠を一匹捕まえたけど、ただの偵察だった。 李順さんに引き渡しているよ」
「刺客が潜り込んでいるはずだが?」
「動きが無くて難航中。 だけど、もちろん・・・」

腕の中で夕鈴が寒さに身震いした。 言葉を切った浩大が 「ほら、部屋に」 と急かし足早に姿を消す。 上着を羽織らせたとはいえ、力なく眠る夕鈴に夜風は冷たいだろう。 腕の中、深く眠るいとけない熱に胸が締め付けられる。 自害ではなく、殺害を繰り返していた事実を彼女に知らせるべきだろうか。 それを知った時の表情を思い、陛下の唇は強く引き結ばれていた。





「・・・・な、な、なぁ・・・っ!」
「おはよう、夕鈴。 咽喉の痛みは消えた? 寒くない?」
「ど、ど・・・・? あっ・・・・、そうか。 思い出した」

目が覚めると近距離に陛下の顔があり、急ぎ下がろうとして掛け布に包まれているのに気付く。 
簀巻き状態で寝ていたのかと驚きながら、どうにか掛け布を剥いで開放された。 

陛下は陛下で、別の掛け布を使っていたようだが、寝たのは同じ寝台とあり真っ赤になっていいのか、蒼褪めていいのか動揺が止まらない。 最終的に納得して寝台に横になったはずだが、その後何かしようとしたような覚えがあると額に手を当てると、陛下が顔を近付けて来るから慌てて叫び声を上げそうな口を押さえる。 

「熱っぽいの? 今度寝る時は抱き締めて寝た方がいいかな」
「こ、今度なんて無いですからっ!」

衝撃の連続で夕鈴はくたくたになり、考えることを放棄した。

「朝飯を食べよう、夕鈴。 お腹空いたでしょ?」
「・・・・空いているのかも判りませんよ、もういろいろ有り過ぎて」

抱き上げようとする陛下を手で制して立ち上がる。 陛下が寝所から離れると女官が妃衣装を持参し、洗顔から着替えまで手伝ってくれた。 寝所を出ると陛下が膝を叩いて、ここにおいでと誘うけど、女官がいるのに出来る訳が無い。 睨み付けると苦笑が返ってくる。

「ご飯を食べ終えましたら、私はすぐに老師の許へ参ります」
「朝から我が妃はつれないことを言う。 今日は朝から政務に携わっている姿を見せてやろうと思うに、そのようなことを。 それとも、もしや」
「悋気させようなど思ってもおりませんわ、陛下っ!」
「では決定だ。 このまま私と共に執務室へ行く」

女官がいる場では陛下の思うように転がされてしまう。 笑みを絶やさず、反撃の言葉を必死に考える私の顔を、わくわくしながら眺める小犬陛下に苛立ちを感じる。

「でも側近殿より、陛下が宰相の部屋で仕事をされる御予定と伺っております。 ですから私は老師の許へ足を運ばせて戴きますわね、陛下」

このままバイトに係わっていると李順さんに宰相部屋へ連れ行かれ監禁されるぞ!と目を細めて訴えると、陛下も口角を持ち上げるだけの笑みを返してきた。 
城下に陛下が同行するのは李順さんも既に諦めている。 
しかしその分、仕事は早々に片付けろと叫んでいたでしょう?という意味合いを含めて首を傾げると、陛下は小さく頷き茶を口へ運ぶ。 無言の戦いはどうやら夕鈴に軍配が上がったようだ。

勝利の余韻に浸っていると、肩を竦めた陛下が溜め息を吐いた。 拗ねたような諦め顔が可愛いと朝からほっこりした気分になったが、その気分は後にあっさりと裏切られた。 

彼は諦めずに実行に移したのだ。




「夕鈴、さあ休憩の時間だよ! 作業能率向上のために小休止だ!」
「あーっ! な、なんでここに? それに宰相からの言葉を乱用しないで下さい! 第一、陛下が掃除婦と小休止なんて無理に決まっているでしょう!」

午後になって直ぐ、陛下は後宮立ち入り禁止区域に現れると、そう言いながら私に手を差し出した。 もちろん、良しと言う訳にはいかずに抗うが、嬉しそうな顔をして埃まみれの掃除婦を抱き上げて移動しようとする。 せめて妃衣装に着替えさせてくれと言うが却下され、結局はそのまま後宮立ち入り禁止区域の奥へと連れて行かれた。 
心地の良い風が、木々の葉を揺らす。 少し気の早い紅葉と夏の残滓を残す色合いを織り交ぜる築山を目の前に、夕鈴は無理やり小休止させられていた。

「陛下の衣装が汚れちゃうから、近寄っちゃ駄目です」
「さっきまで夕鈴を抱っこしていたんだから、今更だよ。 気にしないで」

いや、気にして下さい!と心の中で突っ込みを入れながら、初めて目にする風景に気を取られてしまう。 ここは、今は妃が居ない後宮立ち入り禁止区域の奥で、愛でる人が居ないため放置されているに等しいはずの場所だ。 
だが、よく見ると最低限とはいえ掃除や剪定が施され、自然のままを装う手の入った柔らかい美しさがある。 季節ごとに最低限の手が入れられた庭は野山を思わせる和らぎがあり、眺めていると力が抜けていくほど目に優しい。

「午前中は我慢したんだから、午後は執務室に来てよ。 夕鈴が老師や浩大たちと楽しく過ごしていると思うと、やる気が出ないんだー」
「・・・・そんなことを言っていると、また李順さんに監禁されますよ?」

力が抜けていたから笑いが自然に零れる。 笑うと少し咽喉が痛むけど、今は手巾を咽喉に巻き傷も隠していた。 陛下の明るい表情を前に昨夜の暗示のことは忘れようと心に蓋をする。
ふいに陛下の手が伸びて夕鈴の頤を持ち上げた。 
驚いて目を瞠ると妖艶な笑みを浮かべた顔が近付いて来る。

「そうならないためにも我が妃の協力が必要だ。 これからの時間は妃としてそばで過ごして欲しいと願うのだが、叶えてくれるだろうか」

いつもの狼陛下の言葉に何故かぐらりと回る視界。 聞き慣れた言葉だというのに、胸が詰まったような苦しさと眩暈を感じて、視線を落とす。 何かが引っかかったような違和感に眉を寄せるが、答えが見えない。

「夕鈴? 顔色が・・・・」

大丈夫と返事をしようとして急に暗転する世界。 闇が広がり意識が飲み込まれていく。
怖いと思う間もなく、意識は薄れて何かに飲み込まれていった。

表情を落とした夕鈴はゆっくりと椅子から立ち上がろうとする。 無意識に手を掴み動きを止めると、虚ろな瞳が振り向く。 掴んだ手とは反対側がそっと伸びて陛下の頬に触れた。

「・・・・陛下のために頑張ると、貴方の敵を減らすと決めたんです」

抑揚の無い口調からは何の感情も感じられず、ただ漠然と語り続ける。 
紡がれた言葉は以前にも聞いた君の決意。 
涙目で、頬を染めて僕に言ってくれたのを思い出す。 
だが今の君は虚ろな瞳をまっすぐに僕へと向けている。 暗示に掛かっている状態なのはわかるが、いつもとは違う状態にどう対処していいのか戸惑う。 真っ直ぐに向けられた視線なのに、焦点が合わないだけで別人にように見える。 零れ落ちる次の言葉に息を詰まらせた。

「陛下の許へ高貴な方がいらっしゃるのですから、コレは必要ありません」

穏やかな仕草で陛下の手を外すと、視線を王宮側へと向けた。 夜と違い、今はまだ官吏も多い昼間だ。 もちろん、自害の疑似体験など二度とさせる気も無い。 

「後宮に新たな妃が来ることは無い。 妃は一人で充分だ、消す必要は無い」

今の状態で言葉が届くかわからないが強い口調で伝える。 すると夕鈴の首が横に振られた。

「華のような妃が、陛下の望み通りに揃います。 舞姫の如く妖艶な肢体、高貴な身分、強固な後ろ楯など、どの妃も陛下のお役に立つことでしょう」
「それを私が望んでいるとでも?」
「陛下が望む望まぬに係わらずとも、必要なことで御座います。 コレを消すことも必要。 私は陛下のお役に立ちたいのです。 心から・・・・・」

落とされた表情に色が乗る。 淡いその色は今にも無に戻りそうなほど微かで、だけど痛いほどに切ない。 すぐに消えたその色に陛下が戸惑っていると、夕鈴が踵を返して回廊へと駆け上る。 一気に追い着き、前に回ると身体を反転させようとした。 その腕を掴み引き寄せると、胸の中にいつかの彼女が思い出される。 
息が出来ないと、苦しいと腕を掻き毟っていた姿だ。

「従事する廷臣全員に伝わるよう、これの命を絶たねばなりません」
「・・・・駄目だ」
「私は陛下の望み通り、コレの命を絶たねばなりません」
「そんな望みを持ったことなど無い!」
「下賎な妃は消えるべきです。 ですからコレの命を、何度でも」

これ以上は紡がせないと、背が撓るほどきつく抱き締める。 君を繋ぎ止めるために抱き締めながら、刑房へと足を運びそうな自分を押さえ込む。 怒りのまま斬り殺しては、あとできっと後悔するだろう。 ヤツの苦しみもがく様を存分に味わうことなしに溜飲は下がるはずもない。
 

憤りに任せて君を強く抱き締め過ぎたらしい。 我に返ると腕の中の夕鈴は意識を失っていることに気付く。 真っ赤な顔色に酷く安心しながら申し訳なさに頬を擦ると、瞼が震えて幾度か瞬きを繰り返し、そして激しく噎せ込み出した。 

「げ、ほ・・・。 な、んか背中から腰が痛い」
「ああ、暗示で王宮に行こうとするから強く抱き締めたんだ。 でも強過ぎたみたいだね」
「・・・・また、ですか。 ・・・・っ」

謝罪の言葉を飲み込んでいるのが伝わり、僕は勢いよく夕鈴を抱き上げた。 夕鈴が慌てて僕の肩に手を掛け、戸惑いの表情を見せる。 

「あ、あの。 小休止が終わったのでしたら、陛下は急いでお戻りに・・・・」
「さっき約束しただろう? 妃として僕のやる気を向上させると。 だから着替えたら一緒に行くよ! 文句を言うなら掃除婦姿でもいいや。 要は夕鈴がいればいいんだから」
「きっ、着替えさせて下さいっ!」

約束したかしらと眉を寄せて陛下を凝視するが、敵う訳がないと夕鈴は小さく息を吐く。

そして、急に多くなる自害行動に戸惑いながら、夕鈴は吐いた息の影で唇を噛んだ。
噛んだ痛みに、胸に泥のような塊が浮かびそうな感覚を覚え、掴んだ陛下の肩を強く握った。

 






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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 21:02:05 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
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2013-10-02 水 21:58:41 | | [編集]
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2013-10-02 水 22:02:48 | | [編集]
Re: タイトルなし
ぽんちゃん様、コメントをありがとう御座います。長い話にお付き合い、本当にありがとう御座います。ああ、本当に長いわ~と自分でも哂ってしまう。そうなんです、自害ではなく、殺害を主とさせた暗示ですので、夕鈴はせっせと頑張っていたんです。さて、陛下からの暗示は利きますかね?
2013-10-02 水 23:02:07 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
aki様、コメントをありがとう御座います。妄想が流れすぎて、本当に長くなってますのに、お付き合い頂き感謝申し上げます。「集中力」が売っていたら、是非買いたいと常々思っております、私。痛い夕鈴がお好きとあり、もっと苛めちゃおうかと思案中です。(笑)
2013-10-02 水 23:06:28 | URL | あお [編集]
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2013-10-02 水 23:21:10 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。寝台いちゃいちゃは省いてますが、じっと寝顔を見るくらいはしたんだろうなと御想像下さいませ。意外にストイックな本誌陛下なので、こちらの陛下も我慢の子です。簀巻きにした夕鈴を暗がりの中、じっと見るくらいで・・・・? うん、手は出してないと思います。SNSの陛下じゃあるまいし。引き続き、お立ち寄り戴けると嬉しいです。
2013-10-03 木 01:11:59 | URL | あお [編集]
こんばんは。いつも楽しく読ませて頂いています。
あおさんのお話は、とっても、読み応えがあって好きです。良くこんなに沢山の文章考え付くなっと尊敬してしまいます。
私、結構甘々なのも大好きなんですが、ゆうりんが辛い思いをしちゃうのも好きなんですよね。
もちろん、最後は・・ね。
今回のお話続きが気になりますね。
更新楽しみにまっています。
2013-10-03 木 21:54:00 | URL | ろろ [編集]
Re: タイトルなし
ろろ様、初めまして!そして、コメントをありがとう御座います。甘甘好きですかー。書くのも楽しいですよ、甘いのは。バイト編も「もしも」編でも、甘いのは楽しいです。痛いのはどうしても時間が掛かるので一苦労しちゃいます。何度も読み直しする癖に誤字が多いので、いつでも突っ込んで下さい!(自慢出来ませんが)引き続き、ご覧頂けると嬉しいです。
2013-10-03 木 23:21:47 | URL | あお [編集]
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