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心騒  27
やっとここまで来た!本当に長い話で肩凝っちゃった。お付き合い頂いている方には感謝です。 もう担当している仕事が進まない苛立ちの中、忙しいのに自販機前で一服して長話している奴らにイライラ!そんなストレスを刑房シーンで解消しましょう!(爆) 
さて久し振りすぎて、お忘れかも知れない方が今回登場します。多少それなりの描写が含まれますので、御了承下さいませ。


では、どうぞ












動揺を僅かにも見せない妃の様子に舌打ちした兵が、唇を憎々しげに歪めて太刀を振り上げると、その軌道を追うように夕鈴の視線が動き、そして足を止めた。 
妃の下ろされていた手が軽く広げられ、兵は嗤いを零す。

「正面から迎え入れるとは潔いことだ。 王宮でその下賎な血を撒き散らすことに、些かの憂いも無いようだな。 まあ、妃を殺す場所など何処でもいいが」
「・・・・下賤な、血を・・・。 妃を・・・・殺すの」
「ああ、そのために依頼された。 次の妃推挙にお前が邪魔だとな」
「殺す・・・・妃を。 次の・・・高貴な方のために・・・・・」

淡い月明かりが流れる雲に隠れ、回廊は薄闇に包まれる。 
庭園に焚かれた篝火が兵の頭上に掲げられた太刀先を鈍く光らせ、虚ろな瞳に映す。

余りにも無表情な顔と達観した様子に眉を顰める兵は、目の前の女性が狼陛下からの寵愛を一身に受けている唯一と称される妃なのだろうかと訝しんだ。 
しかし、躊躇なく王宮へと足を運ぶ様と上質な絹の夜着。 
何よりこの場に合って動じない様子に、これ以上の詮索は必要ないだろうと判断した。 例え相手が侍女だったとしても、次の機会に改めて妃を仕留め直せばいい話だと。

「その度胸に免じて、苦しまぬよう一気に散らしてやろう」
「斬る・・・・。 妃を斬る」
 
太刀を持つ手が柄を握り直す。 
それを見つめ続ける妃へ向かい、真っ直ぐに刃が振り下ろされた瞬間、兵の背後から伸びて来た手が首を真一文字に斬り裂いた。 薄暗闇に迸る飛沫が彼の眼下に広がり、それが自分の血だと知った兵の驚愕に大きく見開かれる瞳と最後の空気を吸い込む口が、何かを訴えるかのように妃に向けられ、そして声もなく崩れ落ちた。 
倒れた兵の手から離れた太刀が回廊に鈍い音を響かせる。
 
回廊に落とされた太刀へ視線を移した夕鈴は、身を屈めて手を伸ばした。 
頬や顎から滴り落ちる兵の生温い返り血にも感情を表すことなく、重い太刀を手にすると肩へ乗せて自身の首へと宛がう。 重い太刀では咽喉を突くことが出来ないと思い、引こうとしたが何かに押しやられ滑らせることが出来ない。 
振り返ると誰かが立っているのが見える。 雲が流れ月明かりが回廊に届けられると、 立っていたのは凄然として冷ややかな視線を向けている陛下だった。

「・・・・陛下、のために、コレを・・・・」
「私のために、妃を屠ると?」
「下賤な、妃、は・・・・いらない。 陛下のために、役に立ちたい」
「・・・・私の望みを知らずにか」

太刀を押さえたのは陛下が持つ刀と判り、夕鈴の視線はその刀へと向けられる。
首近くにあった太刀は陛下の刀により押さえ込まれ、そのまま床近くまで下ろされ、それを追うように夕鈴の視線も下がっていく。 薄く開いた唇から囁くように何かを呟き続けながら二つの刀を見つめる夕鈴に、陛下が口を開いた。

「私が・・・・妃を殺してやろう」
「・・・・陛下、が」

聞こえて来た言葉に、落とされていた夕鈴の虚ろな瞳が揺れ、ゆっくりと正面を向く。 
冷たい双眸で見据える陛下よりも、その手の刀に注視したまま、夕鈴は重たい太刀から手を離した。 そして兵の血飛沫を浴びた妃が、兵に向けたように下ろした手を少し広げる。 

「せめて目を閉じてはくれぬか」

虚ろな瞳が宙を彷徨ったあと、陛下が手にした刀が頭上に持ち上がるのを見て安心したかのように瞳を閉じる。 空を裂く音と共に夕鈴の肩から胸へ衝撃が走り、その衝撃に背後の回廊へと弾き飛ばされた。  


血に染まる回廊で先に倒れた兵の傍に倒れた妃を見下ろす陛下の憐憫を帯びた瞳がゆっくりと闇へと染まり、その闇に篝火で弾けた火の粉のような紅が浮かんだ。  









**








刑房に足を踏み入れた浩大が孔大臣の房へ近寄り、血に染まる帔帛を放り投げた。
ゆっくりと顔を上げた孔の顔は目が酷く窪み、頬は痩け、大臣の面影は今や何処にも無い。 
餓鬼の如くやせ細った男の瞳が大きく見開き、地に落ちた帔帛を凝視して薄い唇を戦慄かせた。 地に落ちた品を凝視しているため、猿轡の隙間から汚泥のような唾液が滴る。

「あんたが望むようにお妃は死んだよ。 それで満足?」
「・・・・・」
「今更あんたの娘が後宮入りすることはないだろうけど、あんたの祈願は達せられた訳だ」

孔の大きく見開いた目はそのままに、帔帛から鉄格子を挟んで立つ人物へと向けられる。 
浩大の口端がゆっくりと持ち上がる様を眺めて、彼は苦しげな呻き声を漏らした。 きつく締められた猿轡は茶褐色に染まり、意味の無い言葉を腐敗と共に染み込ませる。 彼の呻きにはどんな意味合いが含まれているのだろうか。 問うてみたくてしゃがみ込むが、返って来る返答など想像するのも莫迦らしいと浩大は口を歪ませた。
孔の背後、同じ房内で、ゆっくりと動く気配がする。 胡座を掻いた菱がその身を震わせたあと、静かに頭を垂れた。 くぐもった声で侘びの言葉を紡ぐが、今更なことを呟かれても意味がない。 自分より長く生きている癖に先を見るのが下手な人たちだと、浩大は呆れたように溜め息を吐いて立ち上がる。

「これで狼陛下を止める人物は居なくなったからね、覚悟をした方がいいよ」
「では、陛下は直ぐに御越しになられますか?」

浩大の背後から刑房監理官が穏やかな口調で問い掛けて来る。 浩大が 「さあね」 と肩を竦めると、一度頷き、そして対面の房のモノをどうするか尋ねてきた。 
監理官の視線の先には刺客の男が鉄椅子に括りつけられた状態で、未だ浅い息を繰り返している。 殆どの皮膚が剥がされた状態で、それでも生きているのは適切な防腐処理と感染防止策のお蔭だろう。 但し、肌色は赤へ、赤は茶へ、そして黒から土色へと変わり、近くに置かれた虫除けの香が無ければもっと悲惨な状態となっているはずだ。 
自分でも敵の口を割ることに多少長けていると自覚はしているが、生かさず殺さずという手法に長けている訳ではない浩大は、男が呼吸するたびに動く背と時折痙攣を起こす下肢を見て、刑房従事者の手腕と手法に素直に感心した。

「季節の移ろいのように変わり行く色合いも、眺めるには飽きていたところです」
「ああ、もう要らないかな。 しっかし、まだ生きていたんだなー」
「はい。 鼻から胃へと管を通し、流動食を流し込んでおりました。 でも、もう要りませんでしょう? お妃様がお亡くなりになられた今、次の妃へ寵愛がお移りになられたのですし」

刑房監理官の言葉に、孔の肩が震え、殊更に開かれた瞳が二人を凝視した。
その視線に監理官は細めた視線を返し、柔らかな笑みを浮かべる。

「国王陛下様は新たにお迎えになられたお妃様へ御寵愛を移されましたよ。 それはそれは深く慈しんでいらっしゃる御様子で御座います。 貴方は見ることも敵わないでしょうがね」
「寵愛が過ぎて、側近様が倒れそうだよ。 妃の部屋から出て来ないってね!」
「それは、それは・・・。 では、こちらの処分はまだ先ということになりましょうか」

二人が軽やかに話をしていると、刑吏が近付き一言告げる。 その言葉に酷く楽しそうに微笑んだ監理官は、いそいそと場を離れて行った。 
浩大が首を傾げて 「流石にもういちゃいちゃに飽きたか?」 と呟くと同時に刑吏らがいくつもの水桶を房前へと運び、そして孔と菱の房扉を大きく開放する。

間を置かずに現れた陛下の姿に、菱が黙したまま平伏し、孔が顎を突き出し何かを訴えようと身を捩った。 直ぐに刑吏らが棒で押さえ込み、地面に額を擦り付ける体勢となったが、顔だけは横を向きくぐもった声を上げ続ける。

「・・・・久しいな、菱」
「陛下からの処断をお待ちしておりました。 先にお伝えするのは息子への寛大な御配慮、痛み入ります。 もう私に心残りは御座いません」

一度上げた顔には安堵の色が浮かんだが、すぐに地に額を落とした。 

「・・・・ただ、お妃様には・・・・」
「あれは死んだ。 暗示により自害を繰り返し、もう戻らぬと知り私が手を下した」
「・・・っ! 誠に・・・・申し訳なく・・・っ!」
「死んだ者は戻らぬ。 それは世の常だ。 お前も先の内乱で知っているはずだ」

陛下からの抑揚のない口調に菱が身を震わせて蹲る。 後ろに括られた手が白くなるほど握り締められ、背を大きく震わせた。
陛下と共に足を運んだ李順が懐から書面を出し、処断を告げる。 菱の息子は今回の件に加担しては居ないが、親である菱の王宮除籍と重罪により財産没収の上、一家は皆王都より追放されることとなった。 菱自身には賜薬が与えられることになり、それを耳にした彼は涙に掠れた声で感謝の言葉を何度も紡いだ。

それに反発したのは孔だ。 猿轡をギリギリと噛み締め、血走った目で菱を睨み、押さえ込まれたままの体勢でにじり寄ろうとする。 その顔近くに小刀が突き刺さり、動きを止めた孔は背に回された手を動かし、懸命にも小刀を奪おうと蠢く。 すぐに刑吏がその背を棒で押し止めた。 

「ああ、陛下。 オレ、焦らすより一気にヤリタイ」

浩大が小刀を抜きながら孔の顔を覗く。 李順が嘆息するが、浩大は口を尖らせて陛下を見上げ、駄目かと問うた。 表情を落とした陛下は黙したまま孔を見下ろし、李順に声を掛ける。

「こいつは?」
「孔は杖刑後に凌遅刑が妥当と思われます。 一族は家名及び財産没収、男は宮刑後に無期禁錮を命じ、女子供は白陽国よりの追放。 尚書省刑部長官と話し合い、検討した結果です」
「陛下、直ぐにお命じになりますか? ご用意致しますが」

監理官の声に、孔が悲痛な呻き声を上げた。 背後に立つ刑吏が孔の頭を掴み持ち上げ、さっそく杖棒を持参した様子を見せ付ける。 痙攣を起こして白目を剥き意識を放り投げた孔を横に、陛下は背後を振り返り、刺客の男を見遣った。

「菱を先に済ませておけ。 あとは奴が目を覚ました後に二人だな」
「御意。 では夜までに用意を済ませ、お待ち申し上げております」

恭しく御辞儀した監理官が刑吏に菱の用意を指示した。 陛下が李順に一旦後宮に戻ると告げると、監理官が 「お妃様の許へですか?」 と柔らかな笑みを浮かべる。 

「ああ。 このまま政務に戻ると官吏が怯えるだろう。 妃の許で癒されようと思う」
「それが宜しゅう御座いますね。 日々の御疲れを陛下だけの花に存分に癒して・・・」
「監理官、それ以上は仰らないで下さい! そのまま執務室に戻らぬ陛下を連れ戻すのに、どれだけ私が苦労しているとお思いですか?」

楽しげに笑う監理官に李順が嘆息を零し、刑房から出て行った陛下を急ぎ追って行く。 

「さて、いつ御越しになるかは判りませんが、用意は万全にしておきましょうか」
「・・・・マジにいつ来るか判んないよ?」

浩大が呆れたように腕を頭の後ろに回すと、監理官は眉を上げて 「問題ありませんよ」 と用意された鉄鋏を手に、カシャンと高い音を響かせる。

「目が覚めましたら、その前でゆっくり様々な道具の手入れや磨く様子を見せて差し上げようと思いますので、御越しにならなくても問題ありません」

次々に運ばれてくる拷問具と油や鑢などの手入れ道具。 刑吏がそれらの品々を運ぶのとは別に、もうひとつの動きが奥で行われ始めた。 
最奥の部屋へと連れ行かれる菱が、浩大に向かい静かに頭を下げる。 
寡黙であり、よき大臣の一人でもあったが息子の躾に失敗し、それが後に孔を歪ませた。 
血の繋がりが悪いのか、同じ大臣として従事していた孔の嫉妬深さが悪いのか、そこは理解出来ない世界観だなと浩大は踵を返す。

半刻もすると賜薬を持った薬師が到着するだろう。 それで終わりだ。
息の根も、陛下の関心も。



 




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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

長編 | 00:02:07 | トラックバック(0) | コメント(12)
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2013-10-05 土 01:02:56 | | [編集]
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2013-10-05 土 03:44:02 | | [編集]
はじめまして
はじめまして! いつも楽しみに読ませていただいています。
迫力のある陛下にゾクリとしました。夕鈴、どうなってしまったんですか!? きっと救いがあると信じてますが、早く続きが読みたいです~(。>д<)
目次には28がすでにありましたがリンクはないので、後があるってわかり、期待は高まるばかりです(笑)
お仕事大変そうですが、よろしくお願いしますm(__)m
2013-10-05 土 08:57:20 | URL | ふしあつ [編集]
賜藥ってなんですか?
2013-10-05 土 12:23:15 | URL | 秋 [編集]
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2013-10-05 土 18:36:20 | | [編集]
Re: タイトルなし
ぽんちゃん様、コメントをありがとう御座います。夕鈴はきっと大丈夫のコメントに嬉しくなりました。マジにここまで来るのに時間が掛かってしまい、私自身が一番ジレジレしてました。わははは。陛下が佩いている刀が常に煎餅だったら超面白いかもしれないっすね!想像して仕事のイライラが吹っ飛んでしまいました!!
2013-10-05 土 20:03:00 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。桐の切り傷へのコメントが多くて、スルーするつもりだったのですが、次に少し出そうと思ってます。やっと終わりになりますので、もう少しだけお付き合い下さいませ。
2013-10-05 土 20:04:33 | URL | あお [編集]
Re: はじめまして
ふしあつ様、初めまして&コメントをありがとう御座います。迫力ありますか?うわい、すごっく嬉しいです。力技のシーンは毎回頭を絞っていますが、上手く書けてるのか不安になる箇所です。目次までご覧頂き、ありがとうです。次で終らせるつもりです。・・・・たぶん。(爆)終るかな~。余計なことを思い浮かばなきゃいいんだけど。ははははは。
2013-10-05 土 20:11:06 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
秋様、コメント遅くなりましてすいません。 賜藥とは、いうなれば『死薬』でして、毒薬です。君主が臣下、特に貴人に対して死を許す、賜わるという時に服薬させる毒薬です。死を許されたということで、菱も感謝したんです。言葉が足りずに申し訳ありませんでした。日本でいうと切腹を許された武士でしょうかね。
2013-10-05 土 20:15:14 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
ろろ様、コメントをありがとう御座います。やっと・・・です! やっと長い話もラストになります。刑房お仕置きも、妥当ですかね。余り酷い描写を連想するのは遠慮したのですが、その前に剥皮刑を書いていたからな~(笑)
2013-10-05 土 20:33:49 | URL | あお [編集]
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2013-10-05 土 21:08:00 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、コメントをありがとう御座います。忙しいです、正直目と腰が痛い。(歳だから:笑) もう、次は短い話にします。あんだーに流れちゃうような、おほほほほの話にする!(今、少し壊れています) 最後の一撃が陛下で嬉しいとあり、きゃあ、ありがとうです。そして、やっぱり桐登場をお待ちですか?によによしちゃいます。明日のお休みには仕上がるよう、鞭打ちますね~。
2013-10-05 土 22:45:52 | URL | あお [編集]
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