スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


スポンサー広告 | --:--:--
水泡ニ帰ス

「もしもシリーズ」成婚後のいちゃいちゃ御夫婦のお話です。 毎回甘すぎるのではないかと、これは別人の話ではないかと思われてますが、今回はいちゃいちゃが全くありません。 宜しければご覧下さい。


では、どうぞ










夕鈴が部屋の掃除を黙々としていた午後、予告も無しに突然陛下が后の部屋を訪れた。 突然の来訪に驚いたが、もちろん直ぐに笑顔で対応し、お茶と菓子を出していつものように甘く楽しい時を過ごす。

だが后のいつもより彷徨う視線と、必死に喋る様子、大袈裟な手振りに狼の目は段々細くなり、椅子からゆっくりと立ち上がると夕鈴の背後に回った。 
腕は夕鈴を挟み込みながら卓へと伸び囲うような体勢となり、低い吐息を耳朶に掠めながら落とされる。 その吐息に夕鈴の肌が粟立ち、目を瞠って振り向くと口角を持ち上げた狼が、意味深な笑みを浮かべながら顔を近付けて来た。 

「なぁっ!? ・・・ど、どうしたんですか、陛下?」
「我が后は何を隠しているのだろうか。 私が気付かないとでも思っているのかな?」
「・・・・気付き、ますよね。 あの、陛下、怒りませんか? あっ、もちろん悪いことをしている訳じゃありませんが、でも、ちょっと恥ずかしいかな。 一国の后としては少し格好が悪いかも知れないし」
「 ? 何?」

夕鈴が恥ずかしそうに頬を掻きながら、えへへと笑みを見せてくる。 
その表情を見て、陛下は狼から小犬になり隣に腰掛けた。 
はにかむように笑みを浮かべる夕鈴からは何の疚しさも感じない。 穿ち過ぎだっただろうかと黎翔が態度を変えると、夕鈴は身体の向きを変えて正面からじっと見上げてきた。

「バイトの時に着ていた衣装の中に、汚れがひどくて着れなくなった物や、ホツレが酷くて修繕にも出せない物があって、それを下町で売って来ようかなって。 年末に向けて養護施設に何か贈りたいので、少しでも足しに出来たらと思いまして」

でもそれらの品も王宮の財産であり、しかし二度と袖を通さずに仕舞って置くだけでは勿体無い。 王宮管轄の養護施設に還元出来るなら良いかと考え、整理をしていたと話す。

「財政難がまだ続いているのは承知ですから、上手くリサイクル出来たら良いなって。 でも后としては、何と言うか・・・ちょっと格好が悪いかしらと、こっそり動いていたの」
「・・・・夕鈴、ごめん。 僕、疑うような物言いになっていた」
「いいえ、コソコソしていたのですから私も悪いです。 で、いいですか?」

普段は僕からの贈り物さえ勿体無いと言う夕鈴だ。 普段は何も欲しがらないから、使っている品はバイト時代からの宝飾が多い。 王宮御用達の商人が来ても並べられた品を眺めるだけで、高価な品は気後れしてしまうと身に着けることさえ少ない。 
そんな夕鈴からの滅多にない願い事。 
質素倹約が過ぎるのではないかとさえ思えるが、夕鈴らしい優しさに僕は心打たれた。
もちろん良いに決まっている。 
後宮立ち入り禁止区域に置き去りのままの、過去の妃たちが使用していた簪や鏡台、茶器や椅子など、過去の品々も大掃除で片付け、専門業者に売却したと李順からも報告を受けている。 それらは全て養護施設や乳児院へ寄付されており、話しを聞いた時は流石僕の奥さんだと惚れ直してしまった。

僕が大きく頷くと夕鈴はとても嬉しそうな顔をするから、狼の声で問い詰めようとした自分が恥ずかしくなった。 仕事に戻ると告げ、僕も夕鈴に負けないよう頑張ろうと拳を握り締める。  
奥さんがそんな善行をしようとしているなど思いもせず、何を隠しているのだろうと、そのまま隠し通そうとするなら寝台に押し倒しそうかと考えていた自分が情けない。 
・・・・この行き場のないモヤモヤは政務に叩き付けるのが一番だ。 
政務室で手を休めている奴がいたら、咆哮を上げて、根性を鍛え上げてやろう。 
李順が何を言ってきても、政務が滞るよりはましだろう。 さあ、やるぞー!

 



陛下が去って行くのを見送った夕鈴は、大きく息を吐き、寝所に戻る。

さっき陛下に話した内容は間違いではない。 
だが他にも理由があるのだ。 陛下には絶対に言えない、見られたくない理由が。 
もし知られたらと思うだけで全身の肌に鳥肌が立ち、襲われた寒気に二の腕を擦った。 
・・・・・これだけは絶対に知られる訳にはいかない。

「これは叩き割ってから持ち込んだ方が良いかしら。 そのままの方がいいのかな。 欠片が勿体無いから、そのままがいいか。 でも・・・・。 あ、これの説明書はそれぞれの瓶に紐で括りつけておこう。 ・・・って多いわね。 どれだけ飲ませる気なの、瑠霞姫様は」

夕鈴が床上に並べていた品。 それは叔母上である瑠霞姫から贈られた閨限定で使用する怪しげな品々。 それらを全て売却するためにまとめていた途中だった。 
翡翠やら水晶で出来た張り型、媚薬入り香油、媚薬そのもの。 他には精力剤、極端に布地が少ない夜着などなど。 精力剤など以ての外だと捨てたくなるが、外側の容器は緻密な硝子製でこれだけでも高く売れるのではないかと夕鈴は見ている。 行李ですら異国情緒溢れる上質な一品だ。 一度出した品を鑑定し易いようにまとめ、仕舞い込む。
それらを衣装と共に大きな布に包み終えると、静かに執務室へと足を向けた。

以前から養護施設と乳児院へ寄付をしていた夕鈴は、冬に向かう時期に暖かい贈り物がしたいと李順に許可を取り、荷物を集めていた。 王宮からの補助もあるが、財政難の王宮から多くは出せないのが現状。 
宴の折に少しずつ話しをして、貴族たちからも寄付を募ることに成功したが、自分自身も何かしたいと今回思い立ったのだ。

李順に陛下の予定を尋ねると今日と明日は謁見が立て続けにあり、宰相との話し合いもあり、忙しいという。 それならば直ぐに行動した方がいいだろう。 下町に行く旨を伝え馬車の用意をお願いした。 思い立ったが吉日で、陛下に知られぬ内に出掛けないと、絶対に一緒に行くと言うだろうから本当に困る。

警護に就く浩大に下町風の姿になって貰い荷物を運び込み、実家に急ぐ。
実家に隠していた、もうひとつの贈り物はそのまま馬車に運び込んだ。 

「お妃ちゃん、その行李も立派だね?」
「そうよ、陛下が叔母上様に追加で頼んだ怪しげな品ばかりよ! いい? 国交のない国へ私が再び逃げ出す面倒が厭なら、絶対に言っては駄目だからね? 陛下は届けられた品の行方を尋ねないけど、知られる訳には絶対にいかないのっ!」
「了解っす。 お妃ちゃんに届けられたモノだろ? じゃあ、好きにしていいんじゃね」
「・・・・養護院への寄付にするんだから、後で文句は言わせないわっ!」

真っ赤な顔でフルフル震える夕鈴を見て、浩大は目を細めて薄笑いを浮かべる。 
再びお妃ちゃんが逃げ出すような面倒が起きなきゃいいだけ。 
愛しい余り、后の行動制限をしない狼だけど、狭量ゆえに束縛をし続け、兎キックを何度も受けている。 にも関わらず、懲りないのが陛下だ。 まあ犬も喰わないというのが現状なのだが、夫婦共に国のトップだという現状を忘れて好きに動き出すから困る。 見ていて飽きないし面白いが、不意に動き出されると警護も兼ねているから驚かされることが度々ある。

「よお! 知り合いの店を記した地図と、紹介状を持って来たぞ」
「ありがとう几鍔。 突然だったのに悪いわね。 ・・・・ん、思ったより近い」
「大物があるなら手伝おうと思っていたが、量は大した事なさそうだな。 しかし、それにしてもいつも通りの衣装で、変わらないというか垢抜けないというか」
「当たり前でしょう? 下町に来るのに、それも質屋に行くのに后衣装でどうするのよ」

夕鈴の実家に顔を出し、頼んでいた地図と紹介状を持ってきてくれたのは幼馴染の几鍔だが、いつまでも変わらない態度と横柄さには笑ってしまう。 それでも几家と懇意にしている店を紹介してくれた上、多少は高額買い取りもしてくれるよう手を打ってくれたと聞き、助かってしまう。

「一緒に行った方がいいか? 質屋なんて初めてだろ?」
「あー・・・、几家の坊ちゃんには悪いけど、それ以上はお構いなく」
「ぁあ? お前には聞いてねぇーよ。 そんな目で見られても他意はねぇからな」
「そんな目って、そういう目で見られる自覚でもあるんすか? ははっ」
「他意はねぇって言ってんだろ! 何が言いたいんだか、はっきり言えよっ」

いきなり険悪な雰囲気になる二人の間に割り込んで、夕鈴は浩大を背に几鍔に顔を向ける。

「ちょっと二人とも! 訳が判らないけど、止めっ! 几鍔、案内は地図だけで大丈夫。 あんただって仕事があるでしょ? でも本当に助かった、ありがとう。 これで養護院と乳児院に素敵な贈り物が出来るわ」

その言葉に舌打ちをして息を吐いた几鍔は、夕鈴の頭をぐしゃっと掻き回してから踵を返す。 肩越しに浩大へと冷たい一瞥を落としてから、几鍔は片手を上げると軽く振って帰って行く。 
夕鈴が浩大を睨ね付けるも、飄々とした態度で馬車へ急ごうと急き立てて来た。 
口を尖らせて見るけど、確かに急がないと王宮に戻るのが遅くなるかと、夕鈴は不承不承の態で馬車に乗り込むしかない。


几鍔に紹介された質屋は一見してそうと判る作りになっておらず、高貴な身分の出入りもあると聞いていた。 そのためか身なり正しい男性の案内で個室に連れ行かれ、そこで査定が始まった。 
浩大は荷物を運ぶと部屋の外で待つと場を離れ、査定を始めた人は寡黙に算盤を弾く。 値を吊り上げようにも、大半の品が瑠霞姫からの贈り物で怪しげな閨の品々。 口出すことも出来ずに耐えていたが、提示された金額は夕鈴の予想よりもずっと高いものだった。

「媚薬や精力剤などの成分が高品質なものであること、瓶も異国の硝子製ですし、これ位にはなりますね。 行李は他国の品ですし綺麗な一品物。 何より換金後の用途を存じております。 多少の色は私達からの気持ちとして御納め下さいませ」

穏やかに言われ、心から嬉しくなった。 持ち込んだ品の内容は兎も角、これで子供達を喜ばせることが出来ると夕鈴は目が潤みそうになるほど嬉しくて何度も頷き、感謝を告げる。 
浩大が受け取った金額を知り目を丸くして笑うから、我慢出来ずに泣き笑いしてしまった。

「良かったじゃん。 年末にいい思いをさせてあげられるね」
「うん。 年明けに顔を出す予定があるから、その前に喜んで欲しくて」

おまけに悩みの種だったあの品々を一掃することに成功したのだ!
気分もいいし、金額も満足だし、浩大の無邪気な笑顔も嬉しいと夕鈴は涙を拭った。




王宮に戻ってからも嬉しさは続き、翌日、いつものように政務室に向かった夕鈴は、水月に困った顔をされるほどだった。 浮かれ過ぎていたかしらと急ぎ団扇で顔を隠すと、近付いて来た水月が柔らかい声を落とす。

「お后様、そのような笑みを零されておりますと我らが王が焼きもちを妬かれます」
「・・・・? 変な顔ってこと、ですか?」
「何か良いことがあった御様子ですが、笑みは陛下だけにお向けになられた方が良いと存じます。 官吏にまで花の如き微笑を振舞っておりますと、悋気された陛下が嵐を呼びますゆえ」
「・・・・? つまり笑い顔が変ってことですか?」

困ったような笑い顔のまま首を捻るから、夕鈴も一緒に捻ってしまう。 
そこへ方淵が眉間に皺を寄せたまま近寄り、水月の腕を取り 「仕事しろ」 と連れて行った。 方淵からも何故かいつも以上に怪訝な顔をされ、そんなに変な顔をしていたかしらと周りに視線を向けると、確かに注目を集めていたようだ。 みんなの仕事の邪魔はいけないと書庫へ移動することにしたが、恥ずかしいと頬を染めて歩き出す自分がさらに注目されているとは露にも思っていない。 心の澱が取り除かれ、おまけに養護院に贈り物が出来る喜びでいつも以上に注目を集める笑みを零していたとは思わずに、足取り軽く夕鈴は書庫へ向かう。
そして、官吏が集まり 『お后様大好き同盟』 の会合を急遽開くことを決定した。 



数日後、晴天の中、后部屋の大掃除が行われることになった。 
家具の配置を換えたり、季節に合わせた敷物にしたり、衣装を入れ替えたりする一方、何か仕掛けられていないかを調べる目的もある。 その間は侍女が忙しく動き回る邪魔をしてはいけないと、夕鈴は老師の許で大人しく過ごすことにした。

「・・・・のう」
「はい? どうされましたか」

何故か言いにくそうに視線を逸らす老師が淹れたばかりの茶杯を指差し、小さく呟いた。 
呟かれた言葉に思わず噴き出しそうになり口を押さえると、眉尻を下げた老師が眇めた視線を向けながら、深い溜め息を吐く。 

「望んで望んで、やっと手に入れたお前さんが大事で、あのようなことをワシに持ち掛けて来たというのは、わかってくれたんじゃよな」
「はい。 陛下にはきついお灸を据えましたし・・・。 老師、もういいんです」
「そろそろ茶の成分も身体から抜ける頃じゃろうて」
「ええ、害のないものだとも承知しています」

老師が肩を落とすのは、陛下と共謀して私に飲ませた子が出来にくい茶の一件だ。 
知った時は驚きの余り茫然自失となったが、今は互いに話し合い蟠りも消えている。 その後も閨に関しては陛下から翻弄され続けているが、もう素直になることにした。 羞恥心は消えず抗うことも多いけど、それでも幸せだと感じている。

「薬湯の効能が消えたら、自然に任せます。 生まれたら抱いてくれるのでしょう?」
「抱かせてくれるのか?」
「もちろんです。 陛下の次になりますけどね。 ・・・父さんや弟にも会わせることは出来るのかしら。 って、懐妊の前からこんな心配、早いですけどね」

笑って誤魔化すが、老師は潤んだ目で大きく何度も頷き 「家族に会うことなぞ問題ない」 と太鼓判を押してくれた。 明るい未来を思い描いて、ほんのり心が温かくなる。     

「じゃから頑張るんだぞ!」
「・・・ちょ・・・、それは・・・。 えっと・・・・はい」

何を頑張るのかは明らかなだけに恥ずかしくなった。 真剣な眼差しをした高齢者に夜の営みを激励される。 それは想像以上に恥ずかしく、夕鈴の身体は足元からじわじわと熱くなり、ほんのり温かくなった心が一気に噴火したように悲鳴を上げた。



その頃、部屋の片付けをしていた侍女がある物を拾い上げる。 異国製の珍らかなガラス瓶と括り付けられた紙片。 片付けの最中、大方破れ捨てられてしまったのだろうか。 残った紙片には少しの説明しか残されていなかった。

「・・・飲用限定? 混ぜても可。 美肌効果絶大。 まあ、お后様の私物ですわね」

よく見ると瓶の表面、精緻な模様の一部が欠けており、そのままでは危ないだろうと急ぎ使ってしまうことにした。 明日は后の休日になるので、きっと陛下のお渡りもあるだろう。  

「今宵、湯上りの果実水に混ぜることにしましょう」

敬愛する后の美しさに磨きをかけることに熱心な侍女は、清らかな笑みを浮かべてそれを懐に仕舞い込んだ。 全ては后のためにと。





FIN

スポンサーサイト

テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

もしもシリーズ | 00:01:02 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-10-08 火 00:51:45 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-10-08 火 01:06:27 | | [編集]
Re: タイトルなし
ビスカス様、早速のコメントをありがとう御座います。几鍔に知られる訳には行きませんから、どの道案内は断っていたでしょうね。はははは。危ない、危ない。どんな目で見られることになるか。それはそれで楽しいか?え、誰が? その後の夕鈴を御想像頂けると、嬉しいです。次は仕事次第になりますが、「パラレル」を書きたいなと思っています。もうお終いと言っていたのですが、リクがあると妄想しちゃうんです。困ったものだ。
2013-10-08 火 01:08:35 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
名無しの読み手様、コメントをありがとう御座います。 underへ・・・・続くかな。正直、仕事次第です(笑)まあ、時間があればのんびり・・・・? 翻弄される夕鈴が可哀想で、想像すると・・・・・書きたくなります! うぬぬ。困った(爆) 
2013-10-08 火 01:10:47 | URL | あお [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-10-08 火 06:36:45 | | [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-10-08 火 14:12:55 | | [編集]
Re: タイトルなし
ますたぬ様、コメントをありがとう御座います。あちらの部屋へ移行しそうな雰囲気ばっちりで放置はだめですよね(笑)暫くお時間を戴けたら・・・・・どうにか、出来る、かな? リクが多いようでしたら頑張ります。やっぱり、そっちも好きなのでー!(爆)
2013-10-08 火 20:03:30 | URL | あお [編集]
Re: タイトルなし
お名前なし様、コメントをありがとう御座います。そうか、そうかも。几鍔と浩大との絡み、初かぁ! 几鍔と桐の絡みは・・・・・うん、怖いかも!(笑) 几鍔の猪突猛進に冷静な桐。 もしかしたらツボに嵌って桐が爆笑するかもだし。
2013-10-08 火 20:06:01 | URL | あお [編集]
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。